2019年1月29日火曜日

年とともに体が動きにくくなる理由 
Why Do We Lose Mobility Over Time?


加齢プロセスにおける生体テンセグリティの役割

(訳注:テンセグリティとは張力によって構造を維持する力やその構造)


私たちは以前より長生きできるようになりましたが、加齢に伴って動きが制限され、若い時と同じような自由を謳歌することが難しい人も多くいます。徐々に可動域が失われていく速度を緩める方法はあるのでしょうか?それに対してヨガは役に立つのでしょうか?これらの問題に関して、ヨガセラピストであるダグ・ケラー氏の考えを聞いてみましょう。

体内のスペースが失われることが、徐々に可動域が失われていく最も一般的な原因のひとつだとダグ・ケラーは言います。


「結合組織の全体的なネットワークである筋膜は、テンセグリティ構造であり、その動きを維持しつつ骨と骨との距離を保っている」とダグは説明しています。「そのシステムに故障が起きると可動域が制限される。筋膜や軟組織が硬くなりすぎたり弱くなりすぎると、テンセグリティ構造のバランスに影響する。それにより、骨と骨の間のスペースが小さくなる。そして骨が擦れ合い始めると、軟骨が徐々にすり減って可動域を減少させたり関節炎を引き起こしたりする」

組織の破壊に対する炎症反応の結果として十分な運動が得られなくなるのも、可動域が狭くなる原因のひとつです。「筋膜は、毒素を排除したり免疫を維持するため、リンパ系よりも先に防御してくれる免疫の第一線だ」

「筋膜系には、老廃物を外に出す血管や心臓などの循環器がない。動きによって機能している。スペースが狭くなって骨が擦り合うと、骨関節炎などの炎症や体内構造の崩壊が起こる」

スペースがなくなって靭帯、軟骨、関節嚢が傷むと、慢性的な動きに伴う痛みが起こります。それにより、日常生活における活動が制限され始めます。そうなると、医師らの言う「痛みのサイクル」に陥る危険が生じてくるのです。



ヨガは「慢性疼痛のサイクル」を断ち切るのに役立つ


「慢性疼痛のサイクル」では、痛みを起こす動きを避けようとします。そうした動きを避けることで血流が減ってさらなる炎症となり、筋肉の状態が悪く弱くなり、さらに関節が悪化します。


疲労、不眠、社会的孤立、さらなる忌避行動につながり、これら全てが体の自ずから治癒しようとするのを妨げます。特に、一般的にあまり動かない高齢者ではより顕著となります。



このサイクルをどう断ち切れるでしょう?

運動、特に呼吸に基づいたヨガなどの運動がよいでしょう。

加齢に伴い、ただ動きというだけでなく、関節の統合性、潤滑、可動域を維持するようダグは勧めています。関節の健康的な可動域を使って身体中のスペースを保持するための様々な動きを取り入れることが重要です。


では、呼吸に基づいた、複数の局面を持つヨガの実践がどのように役立つのかを見ていきましょう。

「ヨガの良いところは、極端な可動域を狙う必要がないことだ。ヨガは、身体の可能な動きの面全てを網羅しており、関節を健康に保ち、筋膜系に栄養を与え、骨の間のスペースを維持するための筋肉の十分な強度を維持させるので、骨関節炎や主な関節の悪化など加齢に関係する問題を減らすことができる」

最近の科学によって彼の意見は裏付けられています。

ペンシルヴァニア大学の臨床医療教授でありリュウマチ学者のシャロン・コラシンスキ博士の膝骨関節炎の研究では、週一回90分の緩和したアイアンガーヨガのクラスを受けた者には疼痛の著しい減少と身体機能の向上が見られ、関節硬直にも明確な向上があったと報告されています。

「ヨガは関節炎の人とって疑いなくひとつの選択肢。エクササイズ効果だけでなく、精神と身体的効能がありリラックスを促しストレスを減少させる」とコラシンスキ博士は言っています。


加齢の進行に穏やかで美しく向き合うためのヨガに基づいたヒントを、ダグが教えてくれました。



ブラフマチャリヤ(節度):練習は優しく行う


ハタヨガ・プラディピカは、過度な努力がヨガをだめにするとしてやりすぎることに警告しています。たくさんするよりも、健康と幸福を保つのに役立つ練習が何なのかにマインドフルであるべきなのです。

それぞれの状態と関節の健康レベルに応じた範囲内で動かすことを、ダグは彼の患者に対し助言しています。「アサナの練習の主な目的は、臓器、血流、リンパなど身体の全てのレベルにおいて健康を保つため、筋膜系全体の統合性を維持するということ。ヨギがプラナと呼ぶものだ」

「私たちは、1はいい、だったら2はもっといいはず、ならば10やる方がいいに決まっているなどと、一所懸命になりすぎる。そして、より深く強くたくさんやるのがいいと。練習の正しい目的、つまりもっと自己を認識するということへの意識を失うのは簡単だ。自分にとって効果がある方法で行なっているだろうか?」



アヒムサ(非暴力):注意して運動し健康的なスペースを作る


ダグによれば、ヨガとは、身体の声をちゃんと聞く練習であり、どうすれば生き生きと健康だと感じる方法で運動し幸福を感じるられるのかを学ぶことです。

「体の声を聞くよう私たちは生徒に言います。しかし実際は、どのようにするかはいつもわかるわけではない。先生に尋ねるというよりは、自分自身を聞くことを学ぶところに一歩一歩繋がっていくのが練習だ。『ヨガが私を痛みつけているのか、それとも私のヨガへの誤解とそれに対する私の態度が私を痛みつけているのか?』と自身に尋ねる必要がある」


練習は、それぞれの状況、体重や生活スタイル、食事などに合わせて選択するべきなのです。同時に、乳酸などの炎症が原因の老廃物を体が燃やせるようにする方法が運動なのです。ですから、運動は重要ですが、それぞれの必要性や身体の限界を認識することもまた重要です。

ダグはこのように指摘します。例えば膝の骨関節症は、膝の屈曲を強めるとても深いスクワットのしすぎや、膝の伸展(ロック)しすぎ、そしてそれに伴う過可動が原因なのかもしれません。足をあげるところから正しいバランスをとるということが鍵なのです。



サムスカラ(癖や過去の行動):伸長と強化の間の最良点を見つける


テンセグリティに基づく練習は、体内にある自分の本質という感覚と再度繋がるために、強化と伸長の間にある健康的なバランスを含むものでなけれななりません。体内の神経のほとんどが筋膜にあり、そこでは身体がどこにあるのか(自己受容)また痛み(侵害受容)の両方のメッセージが脳へと送られる場所だとダグは言及しています。治療でダグは、患者を自己認識させるため彼らの姿勢と動きのパターンを観察することから始めています。

「自己認識が第一歩なのは、身体というのは自己修正し自己治癒する仕組みになっているから。行動を変えるには、まず意識を向け自己認識しなければならない。あまりにも多くの場合、他の目標や目的に惑わされて聞くのをやめてしまう。そうやって身体本来の自己治癒のシステムのスイッチを消してしまうようなものだ」



タパス(自己訓練):重力に抵抗する


悲しいかな、老化というのは重力との終わりのない戦いで、背中が曲がり筋肉が弱るのに屈するのがほとんどです。

「重力は、その力に逆らうことで実際のところ身体を跳ね返しているため、私たちの健康に必要なものだ。まっすぐ立とうとすれば、身体を健康に保つのと同じ方法で重力の引力に逆らって筋肉を活性化させる」

「しかし、これを忘れてしまうと重力に負け、当然もっと活動的である若年の頃持っているその弾性を失う。時間につれ、疲労したり感情的要因が現れる。少し諦めてしまうのは残念だ、なぜなら諦める必要がないからだ」



ヨガは若さの源なのか?


ダグは、ヨガの練習によってどれほど老化の影響を受けなくできるかについては断言していません。しかし、筋肉の質の向上、より素早い運動パターン、筋肉の柔軟性増加、より健康的な筋膜系を期待するのは無理なことではないと信じています。そしておそらく最も重要なことは、運動すると気分がいいということです。

「最悪だと感じる時、起きて外に散歩に出て何かをする。やりたくないと思っていても、最後にはやったことに嬉しく思う。単に筋肉や構造レベルで起こっている以上のたくさんのことが体内で起きているからだ。だから体が常になんらかの悪化へのプロセスを進んでいる間に、体が自ら再生しようとするプロセスをどれくらい手助けしているかが問題だ」と彼は説明する。

「もう一度言う、可能性の範囲は年とともに狭くなるがゼロにまでなるわけではない。そして、高齢になってもその運動能力を維持し、加齢の間も健康的で行動的なままでいられる人が大勢いるのを私たちは知っている」



2019年1月16日水曜日

サンカルパ:健康的な選択をするヨガ 
Sankalpa: The Yoga of Making Healthy Choices


YogaUOnlineからの記事です。

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新年をなんらかの決心とともに迎えましたか?The Journal of Clinical Psychology(臨床心理学ジャーナル)によれば、アメリカ人の62%がいつも、あるいは時々決心をするそうです。

その裏にある数字はあまり楽天的なものではありません。同じレポートでは、92%がその決心が達成されていないといいます。実際、これを読むまでに誓いを立てた人の約30%がすでに諦めているのです。

ほとんどの人がそうなのです。「禁煙する」「借金を返す」そしていつも話題になるあれ、、「痩せる」とか目標は高いのです。いついつまでに禁煙するとか返済するとか8キロ痩せるとかを決めます。決心したら、インターネットや本、グッズを買ったりジムの会員になったり、ダイエットする方法を探したり。

あっと言う間に、多くの人が新しいルールをあきらめて静かに負けを認めているのです。タイミングが悪かったんだ、もっと条件がいい時期にやろうと自分自身に言い聞かせます。自信喪失、目標は高すぎ、体はいうことをきかない。早い話が、決心は崩壊。

何が悪いのでしょう?「決心」という言葉に戻ってみましょう。揺るぎなく不屈に聞こえますよね。そこにはなかなかたどり着けないのです。そしてその症状に取り組むという目標を立てますが、その原因の目標ではない。例えば、体重計の数字を目標にしてみても、食習慣と今の体重に対しての取り組みがない。そして、人間というのは恒常性が好き。習慣や行動を変えるのは大変なのです!意思や動機にかかわらずほとんどの決心は、基本的に維持できないのです。

結果を変える良い方法は、もっと大きな絵を見ることです。ヨガは、そのための確実は提案をしてくれます。



サンカルパ


サンカルパとは、心構えのことです。ありふれた決心よりももっと深く、心の奥から湧き上がってくる願望に向かうことで、人生の目標へと舵を切るものです。その方法はとてもシンプルです。批判的な言葉を使わず、私たちの切望(高い目標と呼びましょう)に向けた短い言葉を作ります。厳しいタスク・ベースの基準で「成功」を測るのではなく、育みたいと願う質を肯定的に認めるのです。限りのない可能性を信じて私たちの最善で真の本質に挑むのです。

サンカルパを行うときは、性格の欠点を表現しないようにします。体重を増やさない、飲み過ぎない、カードを使い過ぎない、などではなく、行いたいことをはっきりと楽しく愛着をもって肯定的な言葉にします。過去の行いを振り返るよりも、今や未来について語るのです。
例えば・・・


  • 共感と思いやりをもって自分人を受け入れる。
  • だめな習慣を認めてこれからも変えていく努力をする。
  • この瞬間に幸せであるために必要なもの全てを持つ。

もっと具体的にしてもいいでしょう。だめな習慣を変えるというのが大きすぎるのなら、同じ意味の言葉で少しずつ細かく表現してもいいでしょう。


  • 体が可能な範囲で、楽しく感謝をもってエクササイズする。
  • 強い欲求は一時的なもので他の何かを必要としているという信号だと認め、新鮮で健康的な食事をする。
  • 禁煙の辛さは、自分の健康と幸福のために必要だ。




サンカルパを作る


達成不可能な目標を掲げるというより既に内にあるものを発見するというものなので、サンカルパを作るには、少し静かに考え深く耳を傾ける時間が必要となります。そのためには、自省や独習の意味を持つ「スワディヤーヤ」とよばれるヨガの練習を用いることができます。

はじめに、これからの数日か数週間、静かに座って魂に問いかけましょう。判断や期待を捨てて、心の中に何が本当にあるのかを尋ねましょう。今の行動をさせているのは何なのか?変わろうとさせているのは何か?人生の目標により近づく道を進むための行動とは何なのか?どんな言葉があなたを奮い立たせるのか?

目標ができたら、最も効果的にそれを強固にさせる方法を考えましょう。何度も行うことが大切です。これは、1、2度口にして忘れてしまうような簡単な宣言ではありません。サンカルパを、根を張り育つために栄養を与えて洗練させていく強い種だと考えましょう。どこでどのように行うかは、あなたが何と共鳴するかによります。

もし瞑想の練習をしているなら、目標はマントラを唱えるとか、瞑想の始め方や終わり方になるかもしれません。洗面鏡のメモや、机の上の小さな額に入れたカードがサンカルパを思い出すきっかけになるかもしれません。目標を見失わせる誘惑や欲望が邪魔をするときは、もう一度繰り返して思い出すこともできます。

ところで、サンカルパの概念がより日常の行動と相容れないというわけではありません。例えば、新鮮で健康的な食事をするには、食事計画やオンラインのサポートグループ、栄養士の協力でうまくいくこともあるでしょう。微細な違いですが、心の底からの愛情ある意思で動機付けられた行動は、負担が大きかったり一時的なものにはなりにくいのです。


失敗ですって?徐々に習慣を変えるのが目標なら、失敗はありません。ただ継続するにつれ前進するだけです。もとの習慣に戻ってしまう瞬間も成長の機会となってくれます。敗北の印ではないのです。





2019年1月10日木曜日

米・2012年以降ヨガ・瞑想人口激増 
The growth of yoga and meditation in the US since 2012 is remarkable


瞑想をするアメリカ人は3倍に、ヨガは55%アップ


ヨガと瞑想という2つの古代の実践は、今やアメリカで最も人気のある代替健康法で350万人の成人が行っている。

「Centers for Disease Control and Prevention(疾病管理予防センター)」によるヨガと瞑想、カイロプラクターの2012年から2017年までの変化をみた2つのレポートの言葉である。

2017年、CDCの国立健康統計センターによるアメリカの成人の調査では、過去12ヶ月で約14.3%がヨガを行ったと答え、14.2%が瞑想をしたと報告されている。2012年にはのヨガをしていたのは9%、瞑想は4%と増加している。

そしてそれは成人だけではない。ヨガや瞑想をする子供達も増えている。2012年には瞑想をしたことのある子供は0.5%にも満たなかったが、今では5%だ。子供のヨガは2012年の3%から昨年は8%まで増加した。

またレポートでは、アメリカ人のカイロプラクターの利用のやや小さい増加も示しており、2012年の9.1%から2017年の10.3%へと増えている。

ヨガや瞑想の大きな増加は、スタジオやクラス、無料オンラインアプリなどの急増によって明らかに行いやすくなったことにある。

しかし、不安症や注意散漫などの精神的問題や慢性疼痛などの肉体的問題に悩む人々が増えるにつれ、彼らは薬に頼らない治療法を探しているのだ。

「私たちの文化には、不安やストレスを増加させる力がある。恐怖に関するメディア内の大量のメッセージなどがそのひとつだ。そしてこれは人々を不安させる」ウィスコンシン・マジソン大学の神経科学者で、健康精神センターの創設者であるリチャード・デヴィッドソンは話した。「現代の状況に人々が折り合いをつけるのに役立つヨガや瞑想などへの関心が増えてきたのだと思う」その一方で、デヴィッドソンなどの科学者らは、ヨガや瞑想が少ない副作用で広い範囲の健康問題に少なくとも何らかの効果があることを見出している。では、健康のためにヨガと瞑想が もたらすであろう効能について簡単にまとめてみよう。



ヨガに期待される健康への効能



ヨガの健康効果を研究してきた研究者らは、おそらく様々なエクササイズと同じように健康によいと言う。しかし、特に腰痛の緩和、そして病気を寄せ付けなくさせる体内炎症の劇的な緩和に有望であるようだ。

また、いくつかの任意の実験では、ヨガは糖尿病患者のQOLを向上し、循環器疾病のリスク要因を下げ、高血圧の管理にまで役立つと示している。

どうしてこれが可能なのか?ひとつの可能性は炎症に関係がある。

炎症は2通りに考えられる。有用な炎症は、細菌が入ってきた時体の免疫システムが反応したものだ。有害な炎症もある。ストレスを受けると、体の炎症反応が過剰になってウィルスや病気と戦うのを妨害するのだ。運動不足や肥満、不健康な食事をしている人には高レベルの有害な炎症がある。そして、癌や循環器病、糖尿病などの様々な慢性疾病と炎症には関係があるということがわかっている。

太極拳や瞑想など他の心身エクササイズと同じく、ヨガは有害な炎症を減少させるのに特に有益であるようである。2014年の心身療法の免疫に対する影響についてのメタ分析では、ヨガが炎症ベースの血液マーカーを減少さえることがわかった。乳がん患者と乳がん生存者の女性に対する任意のコントロール実験でも同様であった。

UCLA医学部のマイケル・アーウィンは、炎症と心身エクササイズの2015年の記述報告の著者のひとりであるが、「炎症を減少させるために必要な有酸素運動を考えるとすれば、それはかなり強度を高く維持しなければならない」しかしヨガは、と彼は続ける。「(アイアンガーのストレッチのように)最小レベルの運動で大きな効果が得られる」その理由はまだわからないが、ヨガや太極拳、瞑想の瞑想するという要素が何か関係があると研究者らは考えている。


ヨガはまた、短期的にも長期的にも腰痛を緩和するのに役立つ。2017年に発表されたヨガと慢性腰痛に関する「コクラン・システマティック・レビュー」は、特にアイアンガー、ハタ、ヴィニヨガに注目した研究結果を総括している。

エクササイズをしなかったコントロールグループと比較したヨガによる腰機能の3ヶ月、6ヶ月後の軽〜中程度の向上には、低〜中程度の根拠がある。ヨガはおそらく3、6ヶ月で痛みにやや効果的であるが、その効果は決められている臨床的重要性の最低限を満たしてはいない。

つまり、これで全て終わるという治療ではないが、効果があるという証拠はあるということだ。したがって、2017年2月、米国内科医師会は医師と患者に、エクササイズや鍼、太極拳、ヨガ、カイロプラクティックなどの「薬物以外の治療」を勧めており、可能ならば薬の処方や外科的選択を避けるようにも促している。



精神鍛錬のために人間がもつ最高のツールのひとつが瞑想



マインドフルネス瞑想は、2600年前ブッダの教えから東および東南アジアで行われてきている。ビルマのS.N,ゴエンカが言うように、ブッダが教えたのは偏狭な宗教ではなく、むしろ生き方であり、明晰さ、心の平和、苦からの解放のためのツールである。過去数10年間で、ティク・ナット・ハーンジョン・コバット・ジンチョギャム・トゥルンパ・リンポチェタラ・ブラックジャック・コーンフィールドらにによって西洋にもたらされた。

瞑想の目的は、時に心を無にすることだと誤解されている。しかし、デヴィッドソンが言うように「実際は、私たちの心の本質を発見すること。むしろ探求、究明、開拓であり、私たちが誰なのか究極的に向き合うこと」

乱れた心と体を安定させるその力は、神経科学者、心理学者、そして医師らが魅了されるものとなっている。「瞑想は自己統制で、感情の支配から解放してくれるもの」『Why Buddhism Is True』の著者である革命的心理学者のロバート・ライトはインタビューでそう答えた。「不安から自責までそういったものを実際の身体的苦痛ととらえ、それらの支配から自分をある程度解放する視点を持つテクニックだ」

最近、臨床で科学研究者らがマインドフルネス瞑想が不安や鬱、痛みも減少させることを示している。

任意に管理された瞑想と精神衛生に関する実験は少ないが、アメリカ医療研究品質局のジョーンズ・ホプキンスによる2014年のメタ分析では、特にマインドフルネスの瞑想は、成人の鬱や不安症、痛みに対し投薬と同様の効果が副作用なく期待できることを発見している。瞑想はまた、精神的苦痛をより低いレベルにまで下げることがわかっている。

また瞑想は循環器病を防ぐ効果がある可能性がある証拠がいくつかはあるが、米国心臓協会が2017年に述べたように「全体的な質、また研究データの量が多くない場合もある」

子供に関しては、より多くの学校がマインドフルネス瞑想を取り入れ始めている。子供の瞑想に関する研究はまだ初期段階だが、 Journal of Child Psychology and Psychiatry (子供の心理学と精神医学ジャーナル)に10月に発表された任意管理実験のメタ分析では、マインドフルネスを基に児童と青年に対して行われたが、実行機能、注意、鬱、不安、ストレス、好ましくない行動などに明らかに好影響があった。

ヨガや瞑想はかなり注目されてはいるが、CDCのデータではこれらに接する機会は均等ではない。ヒスパニックや黒人の成人と比べて白人成人の方がよりヨガや瞑想を行なっている。

そしてヨガや瞑想をビジネスチャンスだと見る人が増えるにつれ「信頼性を維持し誠実さをもって教えるようにするのは難しい課題」とデヴィットソンは言う。つまり、歴史の長いこれらのに敬意を払いながら厳密に広く伝えていくことだ。

CDCの新しいデータの重要なことは、これらの実践を試してみる選択を私たちが持っていることだ。チベット仏教の瞑想テクニックでもアイアンガー・ヨガでも、アプリやビデオ、対面のクラスなど。「誰にでも合うというものはない」デヴィッドソンは言う。「アプリで効果がでる人もいるし、そうでない人もいる。でも、デジタル製品にますます注意を払わされている今、精神を鍛えることがすぐにでも必要とされているんだ」






(出典)https://www.vox.com/2018/11/8/18073422/yoga-meditation-apps-health-anxiety-cdc?fbclid=IwAR03Ph-1Rzx2lcqq4waF-r_9GWQoOgYNnT2hWzWMPIXcl-Lk73KZcXxrIyU