2019年6月28日金曜日

体と心と意識を癒すための簡単な3つの瞑想法
3 Simple Meditation Techniques For Healing the Body, Mind and Consciousness

瞑想というと、ちょっと興味があるけれど、難しいんじゃないかなと
感じる方も多いのではないでしょうか?
今回は、瞑想のヒントと効果についてです。
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健康や幸福をより求めていくと、物質的な体の状態だけに目を向けてしまうことがよくあります。体の健康が生活の質を高めるのに不可欠のなのは間違いがないのですが、心の状態もまた体の健康に直接的な影響を与えるということを忘れてはいけません。実際、私の先生方がはっきりと述べられたように、不調の99%は(少なくとも部分的に)精神からきています。これがわかっていると、本当に完全な健康(シュヴァシュタ)を得るには心や感情を癒さなければならないと言えるでしょう。

問題が何であれ、心や感情、神経のバランスを取り強化するために私たちができる最強で効果的なツールのひとつは、間違いなく瞑想でしょう。瞑想は、意識と無意識への直接的な道です。淀みや抑圧された感情や思考、感覚を解き、それらを処理して治癒しあるべきところへと送る能力を与えてくれます。
瞑想は初めてだとかうまくできないとか、ここでは関係ありません。それがたとえ1日に数分であっても、誰にでも瞑想する能力はあります。心が忙しくて落ち着いてくれないようだとしたら、それに向かって瞑想するのです。その忙しい思考を直視して、その後ろにある力を見るのです。これは単に私たちの「猿の心」に気づくだけでなく、徐々に落ち着いて冷静になる方法を掴む第一歩となります。一朝一夕にはできないかもしれませんが、続けて練習する心構えがあれば、瞑想の間だけでなく日々の一瞬一瞬に大きな変化を見始めることでしょう。


混沌とした心を鎮めるだけでなく、瞑想は健康の面でも有効です。脳の血流を増やし、記憶力、理解力、集中力などを刺激することが証明されています。瞑想をすると、バランスを崩したり病気の原因となる、体に溜まった根深い感情を見つけることもできます。精神的な毒素を浄化し、エネルギーが自由に流れ、明快に判断できるようになり、知恵、気づきをもたらします。過去のトラウマを癒し、日常の人間関係を向上させるでしょう。




瞑想の健康効果


▪ 明快な判断力、記憶力、集中力が向上

▪ 思考、感覚、感情への気づき

▪ 抑圧された感情を消し去る

▪ 過去の精神的トラウマ(PTSDなど)から徐々に回復させる

▪ 感情を処理するスペースを与え、やがて感情のバランスが取れていく

▪ いらいらが落ち着く(努力して実践すれば)

▪ 神経を鎮めて強化する

▪ 不安、心配、恐怖心を減らす

▪ 呼吸が落ち着き深くなる

▪ 体中のプラナ(私たちの生命力)を活性化する

▪ ほとんどの不眠障害を治す

▪ 睡眠前の実践で深い眠りを促す




では、私がいつも行なっている瞑想のパワフルな3つのテクニックに入る前に、いくつかの一般的な事項をまず見ていきましょう。



瞑想に最適な時間は?


瞑想に最適な時間は、実践が容易に継続的に行えるような実際的なスケジュールにするとよいでしょう。もし柔軟に行えるのなら、朝一番(理想的には夜明け前)、昼食の前、就寝前がよいです。



瞑想はどれくらいの長さ行えばいいの?


練習の長さもまら、実際的なスケジュールによって行うとよいでしょう。たとえ5ー10分という短い瞑想を朝に行なっても、精神がすっきりと落ち着き、これから始まる1日の準備が整うでしょう。もし、スケジュールを自身で管理できるのなら、10分以上の瞑想を1日に2、3回行うことをお勧めします。



瞑想の練習に最適な場所は?


瞑想はどこでも行えるのですが(例えば、お皿を洗いながらでも、散歩をしながらでも)、最もよいのは、落ち着きを感じることのできる神聖な場所でしょう。喧騒や邪魔のない比較的静かな場所がいいです。可能なら、神聖なものや意味のある絵や写真、像などのある祭壇を作ったりして瞑想の空間をよりよくすることもおすすめです。例えば、小さなテーブルに家族の写真やロウソクを置いたり、思い出深い休暇中に集めた石や、おばあさんにもらったちょっとした飾りを置いたり。個人的に神聖な空間にすることで、幸せで安心できて愛を感じられる場所へと私たちを連れて行ってくれるはずです。




その他のヒント・・・


▪ 瞑想は理想的には満腹状態で行わないほうがいい

▪ 瞑想の前に短いヨガやプラナヤマの練習をするとよりよい瞑想ができる

▪ 瞑想は足を組んだ姿勢で(蓮華座や半蓮華座)で行うこともできますが、どんな姿勢でも椅子に座ってもその時間の間快適に座れればよいのです。クッションやブランケットなど必要に応じて使いましょう!

▪ 就寝前の瞑想は、横たわって「シャヴァサナ」の状態で行うことも可能です(ベッドの中でも!)。



体と心と意識を癒すための瞑想法


ソー・ハム マントラ瞑想


この瞑想テクニックは簡単ですが、とても深い方法で、ヨガでもアーユルヴェーダでもよく使われます。息を吸う時に「ソー」の音を出し、吐くときに「ハム」と出す呼吸で、深い呼吸を行うのと同じように簡単に瞑想できます。この音の文字通りの意味は「私はそれである」で、全ての創造物と私たちの完全なる結合に対して瞑想することができます。


やり方:
1 快適に座って(夜間なら横たわってもよいでしょう)目を閉じ、舌の先を前歯の後方に優しく当てます。心を落ち着かせ、深く長い呼吸を何度か行なって、今を感じましょう。これを約1分間を行い、エネルギーを落ち着かせ練習の準備をします。

2 準備が整ったら、自然に沸き起こってくる思考を鎮めましょう。息を吸いながら心の中で「ソー」、息を吐きながら「ハム」と唱えます。このマントラは短いものですが、ゆっくり吸いながら「ソーーーーーー・・・」、そしてゆっくり吐きながら「ハームーーーーー・・・」と呼吸を深く長くしていきましょう。時間につれてどんどん呼吸が長くなっていきます。

3 この呼吸のマントラとともに瞑想に入りながら、このマントラが作り出す調和の感覚に意識を持っていきます。「私はそれである。それは私である」

4 特に初めのうちは、心があちこちへさまようことに気づくでしょう。これは全く自然なことで誰にでも、熟練したヨギにでさえ起こり得ます。諦めないでください!この心の動きに注意して、ただ呼吸へと、呼吸が作る「ソーハム」の音へと戻ってきます。

5 これを1ー5分間続けましょう。快適に行えるようになり、このマントラが自然に感じられるようになれば時間を長くしていきましょう。




サーキット呼吸瞑想


この特別な呼吸・瞑想法は私の先生であるシャドゥ・ヨガのシャンドール・レメーテに教わりました。この流派では、鼻から入って下腹部へと下りていき、最後に背骨を通って上がってくる呼吸に意識を向けます。そして、呼吸をまた下ろす時に円を描いていきます。心を落ち着かせて安定させ、呼吸を深く長くさせ、身体と精神を通してプラナ(生命力)を高めてくれるので、私はとてもこの呼吸瞑想を気に入っています。


やり方:
1 快適に座って(夜間なら横たわってもよいでしょう)目を閉じ、舌の先を前歯の後方に優しく当てます。心を落ち着かせ、深く長い呼吸を何度か行なって、今を感じましょう。これを約1分間を行い、エネルギーを落ち着かせ練習の準備をします。

2 準備ができたら意識を呼吸に向け、呼吸が鼻腔から入り体の前を通って下腹部に降りるのをイメージします。ストローがおへそにあって、その細い管から呼吸が吸い込まれるのをイメージしてもいいでしょう。呼吸はゆっくり、安定して緊張なく行います。

3 完全に息を吸ったら、ここでプラナ(呼吸)が下腹部に落ち着くまで少し静止します。最初は、この静止は1秒以下で構いません。が、慣れてくるとこの静止の時間が自然に長くなってくるのに気づくでしょう。呼吸と思考は共に動くため、この静止の間は思考も停止します。

4 この自然な静止が終わったら、息を吐き始めましょう。呼吸を背骨を通して上に動かします。吐く息も長くゆっくり行い、理想的には吸う息と同じ長さにしましょう。

5 吐く息が終わったら、呼吸を第3の目のあたりで止めます。再度、この静止は自然に行い無理にしないことです。最初は短いかもしれませんが、次第に長くなり、思考が止まり精神がはっきりとそして静かになり幸福感に満たされます。

6 この自然な静止が終わったら、このサイクルを繰り返し、息を第3の目から下に向かって引き下げます。

7 静止し、息を背骨から第3の目へと吐き、静止し、繰り返します。

8 このサーキット呼吸瞑想を少なくとも5分間続けましょう。快適に感じるようになったら徐々に時間を長くしていきましょう。



心を見つめる瞑想


心を見つめる瞑想は、ストレスを感じたり人間関係に悩んだり、人生でちょっとしんどくなった時などにとても効果があると私が感じる協力な方法です。この簡単ですが深い方法が、どれだけ思考や感覚、感情を処理する隙間や能力を与えてくれるかを言いつくせません。私のように、あなたもこの瞑想で素晴らしい効果が得られることを願います!


重要な注意: 神経系統に対する深く微細な活動であるため、最初は感情的な気の散漫が起こることがあります。これは癒しのプロセスの自然な部分で、時間が経つにつれ溜まった感情が消化されて自由になれば消えていきます。


やり方:
1 快適に座って(夜間なら横たわってもよいでしょう)目を閉じ、舌の先を前歯の後方に優しく当てます。心を落ち着かせ、深く長い呼吸を何度か行なって、今を感じましょう。これを約1分間を行い、エネルギーを落ち着かせ練習の準備をします。

2 準備ができたら、意識を自然に湧き上がってくる思考に向けます。これらの思考に注目し、思考により集中し一点に集まってきたらその動きを抑えましょう。

3 自然に起こる思考を処理しながら、それが「良い」とか「悪い」とか考えないようにします。そのかわりに、ただその思考と一緒にこの新しい気づきを感じましょう。思考に感謝します。もしうまくいかなかったら(例えば、1日のスケジュールを考え始めたり)、それを受け入れてその思考に感謝し流していきます。(例えば、「今日の予定をたてる必要があることに感謝するけれど、今はその時間ではない」)

4 これは管理された思考プロセスではなく、思考や感覚、感情を表面に出して気づきを与え、処理し、最終的に自由にするという自然な方法だということを忘れないでください。

5 この思考瞑想を少なくとも5分間続けましょう。快適に感じるように慣れば徐々に長くしていきましょう。

6 この練習に深く入っていくと、同じ思考がなんども起こることに気づくかもしれません。これは、あなたが注意を向け愛を与える必要のある何かを処理しているという良い兆候です。時間につれ、このなんども起こる思考や感情が、癒され自由になるとあまり起こらなくなってくるのに気づくはずです。




(出典)https://svasthaayurveda.com/3-simple-meditation-techniques-for-healing-the-body-mind-and-consciousness/

2019年6月13日木曜日

過敏性腸症候群のためのアーユルヴェーダ Vol.2 
Gut Reaction: Ayurveda for IBS


前回からの続きです。
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習慣的な(そして計画的な)運動


消化力の弱いヴァータ型の人には太陽神経叢の強化が効果的で、ハタにおいては最もよいエクササイズはアグニ・サラ。このエクササイズでは、骨盤底筋を閉めて体の基部を「ロック(締める)」する。そして恥骨から胸へと上方へ息を吐いた後、顎を胸骨に引いて顎も「ロック」する。このロックは、エネルギーであるプラナを保つ方法だが、アグニ・サラは、このエネルギーを作り、保ち、凝縮するのを助ける。毎日の短時間の練習でも消化力が高まり熱を作る。より強い練習をすれば、エネルギーを引き起こして精神が明晰になる。

ヴァータ型の関節は弱く不安定になりやすいので、ポーズを強化することに集中する必要がある。立位のポーズ(ランジ、戦士、三角形、角度など)や、バランス・ポーズ(木、踊り子)などは、両足から地に着かせるので特に有効だ。またヴァータ・タイプは、温めて消化力を強くする有酸素運動が必要となる。強度の低い運動、例えば水泳やウォーキング、自転車、ダンス、スケート、ローラーブレードなどがよいだろう。

ジェニファーは、フォークダンスを続け、もっと歩くよう勧められた。ヨガセラピーのセッションの間、セラピストと一緒に立位とバランスのポーズとともに、柔軟性を維持するポーズも行った。セラピストは、呼吸に意識をむけて動くことが大事だと強調する。初めのうち、ジェニファーはこれが難しいと思ったが、数日のうちに呼吸に集中できるようになり、頭の中だけでなく体の中に自分が確かにいるという心地のよさを感じている。



ヴァータを鎮める食事


ヴァータは、火を通した暖かく汁気の多い、少しスパイスを効かせた、栄養のある、やや油分の多い食事でバランスを取り戻す。甘く塩気のある味付けが特に重要だ。甘い食物(穀類や乳製品、果物、自然の甘味料)は滋養がある。塩分は水分を保持し乾燥を防ぎ、また消化の火もつけてくれる。ヴァータの人は消化力が弱くなりがちなので、消化の火を増やすハーブがよい。生姜、ニンニク、クミン、ターメリック、コリアンダー、シナモン、クリーブ、ローリエ、フェヌグリークなど。消化力が十分強くなれば、乳製品も取り入れられる。ブロッコリーやキャベツ、カリフラワー、ほとんどの豆のようなガスっぽい野菜は、当然のことながら避けるべきだ。冷たく、軽い、乾いた食物はヴァータのバランスをさらに乱す。サラダ、生のもの、パフにした子曇る、炭酸の飲み物、軽くてサクサクしたスナック、さらにイーストのパン(空気がいっぱい入っている)も、食べるのは少量にする方がよい。

ジェニファーは、こうした考え方の説明を受けた。滞在期間の彼女の食事は、全粒穀物(米、オーツ麦、スペルト麦、全粒小麦)、水気の多い根菜(スクワッシュ、カボチャ、ヤムイモ、人参)、甘い果物(オレンジ、梨、火を通した林檎)、ナッツ、豆腐、そして乳製品からなる。サラダやキャベツ科の野菜、ほとんどの豆は含まれない。午前中、人参と林檎のミックスジュース(甘く滋養があり、浄化する)を飲み、午後はスパイスの効いた温かいミルクと甘いスナックが出される。彼女は乳製品に軽いアレルギーがあるが、このリトリート・センターで作られた新鮮なチーズや、スパイスを入れたミルクはガスの問題を引き起こさなかった。

またジェニファーは、何をどのように食べるかに気づきを持つよう指導され、意識を向けて味わい、噛み砕き、飲み込む。参加する料理教室では、こうした食事を自分で作る方法を学ぶ。教わる食べ物の繊細な味わいに感謝し、家でのメニューが増えることにワクワクしている。



新しいハーブ・トニックを試す


一般的にヴァータタイプは、体を作り、力がつく滋養のあるハーブを摂る必要がある。最も強力なアーユルヴェーダのハーブ・トニックは、アシュワガンダ、シャタヴァリ、プナルナヴァだ。これらのハーブは甘い味で免疫、力、エネルギーを高める。

腸管にとっては、水溶性繊維(オオバコの種殻)は不可欠で、少なくとも腸の調子が再びよくなるまでは必要。水溶性繊維は、下剤としても下痢止めとしても働く。水分を吸収して下痢を止める一方で、その粘性と膨張性が整腸効果を持つ。トリファラもまた、腸機能を強化するのに良い。フスマのような不溶性繊維は乾燥しており、腸壁を刺激して下剤として働くが、ヴァータのバランスが崩れがちな人は避けるべきである。

ジェニファーは、毎朝オオバコの種殻を大きなコップ1杯の水かジュースに入れて飲み、就寝前にトリファラのお茶をカップ1杯飲む。また、上記の体力をつけるハーブ・ミックスの錠剤を1日2回、タツナミソウ、リコリス、五味子とともに飲む。



その次は?


帰宅してから、ジェニファーはこの養生法を最低2ヶ月続けることになる。腸が正常になればオオバコを摂るのを止め、3-6ヶ月の間にトリファラ・ティーや他のハーブを徐々に止めて症状が出た時だけ使うことにする。

家に帰ってから、毎日をきちんと整えるためのスケジュールの立て方を教わっている。決まった時間に、起床し、食事をし、寝て、運動(ストレッチ)をし、休憩をとるよう助言された。彼女の自由奔放な毎日を変えるのは難しいとわかっているが、症状がずっと改善しているので習慣を変えようと決心している。

やや不安に感じながらリトリート・センターを出た。本当に覚えたことをできるだろうか?スタッフは、それがどんなに小さくても、ずっと変わっていけばよい効果を生み、そしてそれが結局のところ他の変化への動機になるのだと彼女を安心させた。質問や心配があればいつでも電話で答えてくれるし、6-8週間は評価と促進のためフォローアップしてくださいと言われた。







(出典)https://yogainternational.com/article/view/gut-reaction-ayurveda-for-ibs

2019年6月7日金曜日

過敏性腸症候群のためのアーユルヴェーダ Vol.1 
Gut Reaction: Ayurveda for IBS

今回は、よくある症状でありこれといった治療法がないと言われる
過敏性腸症候群(IBS)についてです。
私自身も、忙しい会社員だった若い頃、これに悩まされました。
インド伝統医療のアーユルヴェーダでは、これをどう捉えているのでしょうか?
二回に分けてシェアします。
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ジェニファーは、名が世に出始めた熟練した芸術家だ。彼女の住まいは、郊外の森に囲まれた4エーカーの土地で、絵を描き、次の展示の準備をし、版画を販売し、家や庭の手入れをして暮らしている。シャム猫を飼っているが、彼女といつも一緒にいるのはコッカースパニエルのレイリーだ。56才、独身、親友は多い。暮らしはとてもうまくいっているけれど、ジェニファーは不安だ。お金や次の展覧会のことが心配だ。彼女に何かあったらペット達がどうなるかも気をもんでいる。落ち着かず眠りは浅い。


ジェニファーのスケジュールは決まっておらず、大抵は日々混乱している。起きたいときに起き、時どき買い物をする(家に食べ物がないことをよく忘れる)、うっかり不渡りを出したり、時々支払いを忘れ、無意識に午後に休みを取り気分のままに出かける。毎日絵を描き展覧会の計画をしようとするが、いつも締め切りに追われている。仕事に夢中になっていると、寝食を忘れ(別に大事じゃないからと彼女は言うだろう)朝方まで描き続ける。料理は好きでは無いので、だいたいは準備の要らない冷たいものを食べる。典型的な食事は、朝食にシリアルとお茶が1杯、昼食はピーナツバターを塗った米クラッカーと林檎、おやつに無脂肪のいちごヨーグルト、夕食は焼き魚とサラダだ。


ジェニファーは特に運動好きではない。時々、犬と一緒に森に散歩に行くがそれ以上はしようとは思わない。仕事も十分体を使うし、週に一回フォークダンスにも行ってるしと正当化している。彼女の体は細く活発だが、長いドライブの後に体が凝って痛いと感じるようになってきた。


1日の終わりの体力は様々で、特に最近は、消化器官が働き疲れているように感じる。ガスが溜まり、痛みや膨満感、不快感(パンツがきつくなる)を感じる。胃はゴロゴロ、グーグー鳴って、食事の後は重い。まるで胃の中に食べ物が居座っているようだ。時々、腹痛を起こして下痢を起こすのは大抵はストレスを感じた時だが(例えば展示会に絵を運んだり、締め切りに間に合わせようと必死な時)、それよりもよく便秘になる。


ジェニファーは、過敏性腸症候群(IBS)と診断された。彼女の医者が診断テストを一通り行ったところ(血液検査、S字結腸鏡検査、アレルギー検査)どれも陰性だったが、小麦と乳製品にやや反応を示した。医師は、便秘のために水溶性繊維サプリ(メタムシル)を勧め、症状を管理するいろんな薬品を処方した。整腸剤、下剤、下痢止め、消化器の蠕動を促す薬など。この状態は治るものではないと医師に言われ、これはセカンドオピニオンを聞いた専門医によって裏付けされてしまった。



過敏性超症候群って?


過敏性腸症候群は、診療で最もよく見られる消化器疾患だ。米国では約350万人がIBSにかかっており、一般的に若年から中年、また女性は男性の2倍になる。ジェニファーの過敏性腸症候群は典型的だ。便秘と下痢を繰り返す、膨満感、ガス、そして総じて消化不良。腹痛と便秘が多い人もいれば、頻繁に下痢する人もいる。大腸炎やガンのような深刻な状態に進むことがないという意味では深刻な疾患ではないが、IBSは、不快で落ち着かないものだ。

この病気に対し西洋医学では、ジェニファーのケースのように、より深刻な問題がないか検査をし、症状に対する治療を行う。ストレスが何らかの関係があることは明らかだが、IBSの原因がわからないため完治することは期待されない。ジェニファーのように、患者は大抵の場合それとうまく付き合っていくよう助言されるのだ。




IBSへのアーユルヴェーダの見解


アーユルヴェーダのアプローチはもっと大きな希望を持てる。全ての病気はドーシャ(体の3つの質)の乱れと考えられており、そのバランスを整えることでほとんが治癒可能だ。ジェニファーの様々な腸の症状は、ヴァータ(気に関連するドーシャ)が乱れている兆候だ。ヴァータは主に腸にあり、バランスが乱れると不安定な症状(特にガスや便秘)を起こす。風のように、ヴァータは乾燥、冷たさ、不規則な質を持つ。これらが、体の冷え、皮膚や目、口の乾燥、腸管の乾燥として現れ便秘の原因となる(潤滑が足りないとスッと通らない乾いて硬い便になる)。ヴァータの乱れはまた不規則な症状としても現れ、例えば、様々な消化の問題、予測できない月経、血糖の上下などだ。

生まれつきヴァータ・ドーシャの人は、こうした乱れを起こしやすい。消化パターンが不規則で、エネルギー・レベルも不規則(疾風に乗ってやってくる)。精神的にも感情的にも、ヴァータ・タイプは創造的で直感的であることが多い。どんな時も美と調和しているが、醜いもの(うるさい雑音、明るい光、強い匂い、不公平)には敏感だ。彼らの感受性ゆえに、自身と世界をもっと隔離する必要があると感じることがある。旅好きで変化に刺激を受けるが、すでに落ち着きのない心をより悪化させる。すぐに理解するが、すぐに忘れる。この気質のせいで、ローラーコースターに乗ったようになり、それが疲労させてより不安定で不安に感じることになる。アーユルヴェーダ療法の目標はヴァータのバランスを取り戻すことなので、不規則なことや冷えを最小限にし、ルーチンや暖かさを最大限にする。そして食事や飲み物、ハーブやマッサージ、運動などによって水分を増やすことだ。

ジェニファーの自己理解の旅が始まったのは、クラスに1人で行きたくなかった友人にハタヨガを誘われた時だ。2人は8週間のクラスに参加した。ジェニファーは、リラクゼーションに重点を置いたクラスが気に入った。クラスの後はいつも腸の症状が軽くなり、その夜はよく眠れることに気付いた。インストラクターにそう言うと、腸の状態を治すため、ヨガのリトリート・センターで行われる1週間のアーユルヴェーダ回復プログラムへの参加を勧めてくれた。



ルーチンに専念する


風は変わりやすく混沌としているため、ルーチンや一貫性はヴァータのバランスをとるのに不可欠だ。だから、回復プログラムの間、ジェニファーは、ウォーキング、睡眠、運動、休憩、食事、間食、リラクゼーションのきっちりとしたスケジュールに従うことになった。朝6時に起床し、シャワーで体を清潔にし、鼻腔洗浄を行い、レモンとはちみつを入れたお湯を一杯飲んで腸の動きを促進する。6時45分に導入リラクゼーションで終わるやさしいヨガクラスに出る。朝食は8時。その後、バイオフィードバックのセッション、ヨガセラピー、マッサージを受ける。朝のセッションの間にジュース休憩があり、12時半のランチの前に早歩きをする。

午後は料理教室に参加したり、サンドバッグ・ブリージングの練習をする(訳注:下記参照)。夕食は午後6時。そして夕刻、ジェニファーは、栄養学、アーユルヴェーダ哲学、ストレス低減のレクチャーを受ける。就寝前は体系的なリラクゼーションを練習して、午後10時までには床に入る。



ストレス解消の時間をとる


ヴァータの人は、気が散りやすく、無計画で混乱、不安になりやすいのだが、これがかなりのストレスを作り出す。速度を落とし自分を取り戻すとよい。ジェニファーのアーユルヴェーダ・プログラムでは腹式呼吸がストレス低減の基礎となっており、その理由はこれが副交感神経を活性化して体と神経を落ち着かせ、精神を集中することが容易になるからだ。腹式呼吸を基本にしたリラクゼーションの練習は、旋風と穏やかなそよ風に変えてくれる。

ジェニファーはまず、屍のポーズで仰向けになってリラックスすることを教わった。その状態で無理なく呼吸ができるようになると、サンドバッグ・ブリージングを紹介された。横隔膜を強化するため、3.5ー4.5キロの専用のサンドバッグを胸郭より下のお腹の上に置くのだが、これが深くゆっくりで均等な呼吸を促す。

また、頭からつま先まで、各部分を意識的に弛緩させながら、全身を通して導いていく体系的リラクゼーションを学んだ。これは元気が出るとジェニファーは感じる。自宅に帰っても使えるようテープを渡され、不安になったり落ち着かない時にいつでも腹式呼吸を練習するよう言われた。また、リラックスして栄養を受け取れるよう、食事の直前に数分間腹式呼吸をするよう助言された。

オイルマッサージは、ヴァータ・タイプがバランスを保つため、特に冬の寒く乾燥した時期は不可欠だ。温かいオイルはヴァータの肌に栄養を与え、血流を増やして乾燥を和らげる。また、とてもリラックスする。毎日のマッサージはとても落ち着き、いつも笑みを浮かべて出てくると、ジェニファーは感じている。

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次回に続きます。




(出典)https://yogainternational.com/article/view/gut-reaction-ayurveda-for-ibs