過敏性腸症候群(IBS)についてです。
私自身も、忙しい会社員だった若い頃、これに悩まされました。
インド伝統医療のアーユルヴェーダでは、これをどう捉えているのでしょうか?
二回に分けてシェアします。
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ジェニファーは、名が世に出始めた熟練した芸術家だ。彼女の住まいは、郊外の森に囲まれた4エーカーの土地で、絵を描き、次の展示の準備をし、版画を販売し、家や庭の手入れをして暮らしている。シャム猫を飼っているが、彼女といつも一緒にいるのはコッカースパニエルのレイリーだ。56才、独身、親友は多い。暮らしはとてもうまくいっているけれど、ジェニファーは不安だ。お金や次の展覧会のことが心配だ。彼女に何かあったらペット達がどうなるかも気をもんでいる。落ち着かず眠りは浅い。
ジェニファーのスケジュールは決まっておらず、大抵は日々混乱している。起きたいときに起き、時どき買い物をする(家に食べ物がないことをよく忘れる)、うっかり不渡りを出したり、時々支払いを忘れ、無意識に午後に休みを取り気分のままに出かける。毎日絵を描き展覧会の計画をしようとするが、いつも締め切りに追われている。仕事に夢中になっていると、寝食を忘れ(別に大事じゃないからと彼女は言うだろう)朝方まで描き続ける。料理は好きでは無いので、だいたいは準備の要らない冷たいものを食べる。典型的な食事は、朝食にシリアルとお茶が1杯、昼食はピーナツバターを塗った米クラッカーと林檎、おやつに無脂肪のいちごヨーグルト、夕食は焼き魚とサラダだ。
ジェニファーは特に運動好きではない。時々、犬と一緒に森に散歩に行くがそれ以上はしようとは思わない。仕事も十分体を使うし、週に一回フォークダンスにも行ってるしと正当化している。彼女の体は細く活発だが、長いドライブの後に体が凝って痛いと感じるようになってきた。
1日の終わりの体力は様々で、特に最近は、消化器官が働き疲れているように感じる。ガスが溜まり、痛みや膨満感、不快感(パンツがきつくなる)を感じる。胃はゴロゴロ、グーグー鳴って、食事の後は重い。まるで胃の中に食べ物が居座っているようだ。時々、腹痛を起こして下痢を起こすのは大抵はストレスを感じた時だが(例えば展示会に絵を運んだり、締め切りに間に合わせようと必死な時)、それよりもよく便秘になる。
ジェニファーは、過敏性腸症候群(IBS)と診断された。彼女の医者が診断テストを一通り行ったところ(血液検査、S字結腸鏡検査、アレルギー検査)どれも陰性だったが、小麦と乳製品にやや反応を示した。医師は、便秘のために水溶性繊維サプリ(メタムシル)を勧め、症状を管理するいろんな薬品を処方した。整腸剤、下剤、下痢止め、消化器の蠕動を促す薬など。この状態は治るものではないと医師に言われ、これはセカンドオピニオンを聞いた専門医によって裏付けされてしまった。
過敏性超症候群って?
過敏性腸症候群は、診療で最もよく見られる消化器疾患だ。米国では約350万人がIBSにかかっており、一般的に若年から中年、また女性は男性の2倍になる。ジェニファーの過敏性腸症候群は典型的だ。便秘と下痢を繰り返す、膨満感、ガス、そして総じて消化不良。腹痛と便秘が多い人もいれば、頻繁に下痢する人もいる。大腸炎やガンのような深刻な状態に進むことがないという意味では深刻な疾患ではないが、IBSは、不快で落ち着かないものだ。
この病気に対し西洋医学では、ジェニファーのケースのように、より深刻な問題がないか検査をし、症状に対する治療を行う。ストレスが何らかの関係があることは明らかだが、IBSの原因がわからないため完治することは期待されない。ジェニファーのように、患者は大抵の場合それとうまく付き合っていくよう助言されるのだ。
IBSへのアーユルヴェーダの見解
生まれつきヴァータ・ドーシャの人は、こうした乱れを起こしやすい。消化パターンが不規則で、エネルギー・レベルも不規則(疾風に乗ってやってくる)。精神的にも感情的にも、ヴァータ・タイプは創造的で直感的であることが多い。どんな時も美と調和しているが、醜いもの(うるさい雑音、明るい光、強い匂い、不公平)には敏感だ。彼らの感受性ゆえに、自身と世界をもっと隔離する必要があると感じることがある。旅好きで変化に刺激を受けるが、すでに落ち着きのない心をより悪化させる。すぐに理解するが、すぐに忘れる。この気質のせいで、ローラーコースターに乗ったようになり、それが疲労させてより不安定で不安に感じることになる。アーユルヴェーダ療法の目標はヴァータのバランスを取り戻すことなので、不規則なことや冷えを最小限にし、ルーチンや暖かさを最大限にする。そして食事や飲み物、ハーブやマッサージ、運動などによって水分を増やすことだ。
ジェニファーの自己理解の旅が始まったのは、クラスに1人で行きたくなかった友人にハタヨガを誘われた時だ。2人は8週間のクラスに参加した。ジェニファーは、リラクゼーションに重点を置いたクラスが気に入った。クラスの後はいつも腸の症状が軽くなり、その夜はよく眠れることに気付いた。インストラクターにそう言うと、腸の状態を治すため、ヨガのリトリート・センターで行われる1週間のアーユルヴェーダ回復プログラムへの参加を勧めてくれた。
ルーチンに専念する
風は変わりやすく混沌としているため、ルーチンや一貫性はヴァータのバランスをとるのに不可欠だ。だから、回復プログラムの間、ジェニファーは、ウォーキング、睡眠、運動、休憩、食事、間食、リラクゼーションのきっちりとしたスケジュールに従うことになった。朝6時に起床し、シャワーで体を清潔にし、鼻腔洗浄を行い、レモンとはちみつを入れたお湯を一杯飲んで腸の動きを促進する。6時45分に導入リラクゼーションで終わるやさしいヨガクラスに出る。朝食は8時。その後、バイオフィードバックのセッション、ヨガセラピー、マッサージを受ける。朝のセッションの間にジュース休憩があり、12時半のランチの前に早歩きをする。
午後は料理教室に参加したり、サンドバッグ・ブリージングの練習をする(訳注:下記参照)。夕食は午後6時。そして夕刻、ジェニファーは、栄養学、アーユルヴェーダ哲学、ストレス低減のレクチャーを受ける。就寝前は体系的なリラクゼーションを練習して、午後10時までには床に入る。
ストレス解消の時間をとる
ヴァータの人は、気が散りやすく、無計画で混乱、不安になりやすいのだが、これがかなりのストレスを作り出す。速度を落とし自分を取り戻すとよい。ジェニファーのアーユルヴェーダ・プログラムでは腹式呼吸がストレス低減の基礎となっており、その理由はこれが副交感神経を活性化して体と神経を落ち着かせ、精神を集中することが容易になるからだ。腹式呼吸を基本にしたリラクゼーションの練習は、旋風と穏やかなそよ風に変えてくれる。
ジェニファーはまず、屍のポーズで仰向けになってリラックスすることを教わった。その状態で無理なく呼吸ができるようになると、サンドバッグ・ブリージングを紹介された。横隔膜を強化するため、3.5ー4.5キロの専用のサンドバッグを胸郭より下のお腹の上に置くのだが、これが深くゆっくりで均等な呼吸を促す。
また、頭からつま先まで、各部分を意識的に弛緩させながら、全身を通して導いていく体系的リラクゼーションを学んだ。これは元気が出るとジェニファーは感じる。自宅に帰っても使えるようテープを渡され、不安になったり落ち着かない時にいつでも腹式呼吸を練習するよう言われた。また、リラックスして栄養を受け取れるよう、食事の直前に数分間腹式呼吸をするよう助言された。
オイルマッサージは、ヴァータ・タイプがバランスを保つため、特に冬の寒く乾燥した時期は不可欠だ。温かいオイルはヴァータの肌に栄養を与え、血流を増やして乾燥を和らげる。また、とてもリラックスする。毎日のマッサージはとても落ち着き、いつも笑みを浮かべて出てくると、ジェニファーは感じている。
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次回に続きます。
(出典)https://yogainternational.com/article/view/gut-reaction-ayurveda-for-ibs
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