今回の記事は米国のヨガセラピストである著者による腰痛のお話です。
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孫がいる銀行員のカレンは53歳、最近までしつこい腰痛に悩まされていました。筋弛緩薬を6ヶ月、オピオイドを2ヶ月服用したものの、まだほとんどの時間腰痛を感じていました。「姿勢が悪いまま」の長時間のデスクワークや赤ちゃんの抱っこなどが原因のひとつだろうと気づいたカレンは、お昼休みに散歩をするとちょっとだけ楽になることに気づきました。そんなとき、坐骨神経痛が緩和したという同僚にリラックスヨガを勧められたのです。カレンは試すことにして、火曜の夕方の腰痛クラスに申し込みました。
ヨガのシーケンスは、強さよりもストレッチに焦点を当てたものが多いです。ストレッチは背筋の強張りを緩和するのに良く、マルジャリヤサナ(キャット&カウ)、バラサナ(子供のポーズ)、アーナンダ・バラサナ(ハッピーベイビー)など背中のストレッチが含まれるポーズやあおむけのツイストなどは心地が良いかもしれません。しかしこうしたポーズは、背中の健康に大切な体幹の強化にはなりません。背中側を強化するには、体の前を支えるバランスも必要です。ですから、背中の健康には、腹部と背部の強化を含んだポーズが重要なのです。
背中をケアするということは、健康的な姿勢や動きの習慣を築くこと、そして背骨を支えるのに必要な筋肉の強化をする姿勢や運動を練習することです。今日、医療専門家らは、急性・慢性腰痛の治療にはこうした方法を投薬よりも推奨し始めています。ですので、もし腰痛があるなら、薬はやめて(医師に確認してから)、背筋を伸ばして座り、より気づきをもって動き、体力作りのためマットに立ち、緊張を解くヨガをして、やっかいな痛みを鎮めて痛みのない動きをもう一度楽しみましょう。
そのクラスは、米国内科学会が最近発表した「腰痛治療のための臨床ガイドライン」に従ったものでした。様々な腰痛の非侵襲的治療を見直し、投薬では痛みのレベルが小・中程度しか改善しないことがわかり、米国内科学会は以下のように勧めています。痛みの発症から12週間以内の場合はまず「加温しながらの(中程度のエビデンス)マッサージや鍼、脊椎整復術(低程度のエビデンス)など投薬以外の治療」を試してみること。そしてカレンのように慢性腰痛の場合は「運動、総合的なリハビリ、鍼、マインドフルネスのストレス緩和(中程度のエビデンス)、太極拳、ヨガ、運動調節エクササイズ、段階的リラクゼーション、筋電図整体自己制御法、低レベルレーザー療法、オペラント療法、認知行動療法、脊椎整復術(低程度のエビデンス)など投薬以外の治療」が推奨されています。研究では、こうした副作用の低い方法であまり効果が見られない場合に限り、抗炎症薬を使うよう勧めています。
カレンには、ヨガが手頃で始めやすかったので、今では週2回クラスに参加しています。カレンは、ヨガセラピーと腰痛のトレーニングを受けた指導者が医師や理学療法士とともに行っていることが気に入っているようです。治療的なヨガクラスは他のクラスよりもやや高額であることが多いのですが、ちょっと多めに払う価値があるのだろうとカレンは感じています。またヨガだけでなく、温水プールの水泳を始めたり、ストレスや痛みの対処に役立つよう作られた毎日20分のヴィパッサナー瞑想を始めました。この新しい習慣を初めて数週間が経った頃、腰の不快感がずっと楽になり始め、痛みを感じることなく孫娘を抱き上げられるようになってきました。毎日がとても楽しくなったとカレンは言います。
ヨガセラピストとして、他のどんな症状よりも腰痛に取り組んできましたし、私の腰痛クラスは一番人気のあるクラスでもあります!以下は、カレンに伝えたシンプルな「べし・べからず集」で、他の慢性腰痛の方々にもシェアしました。(すべてのヨガクラスが腰痛を持つ人に適しているわけではないことを覚えておいてください。どんな動きを避けるべきかをあなたの医師や理学療法士を話し合った上で、腰痛の知識を持つ先生の治療的なクラスを探して、あなたの痛みや怪我、禁忌をヨガの先生に知っておいてもらいましょう)
🔸腰椎の自然な曲線を失くさないで
長時間オフィスの椅子に座り続けると促される悪い姿勢、つまり前屈みや背骨を丸めた姿勢は背中に負担をかけます。ほとんどのヨガポーズをしているとき、そして日中の生活の中で、座っていようが立っていようが、重要なのは腰の自然な前弯を保つことです。後頭部と骨盤の後ろを一直線に保ち(頭を前後に倒さないで)、肩は開いて腰の真上に重ねます。ヨガの先生が「背中をまっすぐに」と呼びかけたとしても(大抵の場合は腰を丸めたり反らしすぎて自然な背骨の曲線をなくなるのを防ぐため)、完全に平らな背中を作ろうとしているわけでありません。背骨の自然な曲線とは、腰椎がやや前弯、胸椎がやや後弯、そして頸椎がやや前弯している状態で、衝撃を吸収するので背骨の健康のためにとても大切です。ですから、曲線をなくさないでください!
🔸背中を強化するため座位・立位でのより良い姿勢を練習する
背筋を伸ばして座る練習をしましょう。椅子の上、または折り畳んだブランケットやヨガボルスターなどの補助具を使って床に座り、腰椎の自然な曲線を維持することを意識をします。座るときはいつでも、この新しい姿勢になりましょう。座るとき立つときは、体幹を使って下腹と骨盤底をやや持ち上げ、背骨を上に伸ばし「背を高く」してみましょう。
🔸立つとき歩くときは足先を外に向けないで
ほとんどの人にとって、外向きの足が梨状筋(坐骨神経痛の原因)の短くなる原因となり、また梨状筋が短いために足が外向きになっていることもあります。この深部にある股関節回旋筋が固まると、腸腰筋(腰椎から腿の骨頭に走る筋肉)もまた硬くなり腰痛の原因になります。
固まった梨状筋をストレッチするには、仰向きの鳩のポーズをしましょう。仰向きに横たわって片方の膝を胸の中心に向けて抱えます。あるいは片方の足首を反対側の立てた膝の上に載せて4の字にしてストレッチしましょう。腸腰筋が硬いときは、ヨガブロックを骨盤の下に置いた支えのあるブリッジポーズをするか、ハイ・ランジやロー・ランジ(アンジャネヤサナ)で骨盤をやや前に倒すと良いでしょう。
🔸両足は並行に
つま先が外に向いているなら、踵がつま先の真後ろにくるように踵を動かしましょう。足の人差し指がお互いに並行であること、そして膝の向きが足の中心と一致しているようにします。立っている時も歩いている時も座っている時も、この姿勢でいましょう(山のポーズでも立ち机で仕事をしている時もどんな時も)。
🔸脚を伸ばした立位の前屈から立ち上がるときは背中を丸めない
背中を丸めて立ち上がると背骨の前の椎間板を圧迫して腰椎を悪化させます。
🔸前屈から立ち上がるときは膝を少し曲げる
体幹(骨盤底と下腹部)を使って胴体を引き上げましょう。
🔸体幹の強さを忘れないで
腹筋の強化には、パリプルナ・ナヴァサナ(船のポーズ)、ウトカタサナ(椅子のポーズ)、プランクや上腕のプランク、ヴァシシュタサナ(サイドプランク)が、そして背筋の強化にはシャラバサナ(バッタのポーズ)やヴィラバドラサナIII(戦士のポーズIII)などのポーズがあります。腹筋と背筋を鍛えると、より良い背骨のアライメントを作ることができ、そうしたタイプのポーズは、背中の健康に焦点をあてたヨガクラスでよく行われます。
背中をケアするということは、健康的な姿勢や動きの習慣を築くこと、そして背骨を支えるのに必要な筋肉の強化をする姿勢や運動を練習することです。今日、医療専門家らは、急性・慢性腰痛の治療にはこうした方法を投薬よりも推奨し始めています。ですので、もし腰痛があるなら、薬はやめて(医師に確認してから)、背筋を伸ばして座り、より気づきをもって動き、体力作りのためマットに立ち、緊張を解くヨガをして、やっかいな痛みを鎮めて痛みのない動きをもう一度楽しみましょう。