2024年8月27日火曜日

全てのレベルで癒すアーユルヴェーダの知恵 Vol.1
Ayurvedic Wisdom to Address Healing on Every Level


アーユルヴェーダは古代のヴェーダ文献を起源にしています。サンスクリット語の「命」の意味を持つ「AYUR」と「知識」である「VEDA」の2つの言葉から作られています。古代の人々によれば、科学は体系的かつ論理的に整理された知識であり、時と共にアーユルヴェーダは命の科学、すなわち体、心、精神など私たちの全てを包含する広範囲の科学となりました。



どのように私たちが存在するのか


アーユルヴェーダの文献はサンキャ哲学に基づいています。サンキャ哲学では、全ての人間は宇宙の完全な秩序(純粋意識)の創造物であり、プルシャという男性的なエネルギーとプラクリティという女性的なエネルギーの形をとっています。プルシャは選択不可の受動的な意識であり、プラクリティは選択可能な能動的意識です。プルシャは創造には加わらず、プラクリティは神聖な創造の意思です。プラクリティは世界の全ての形を創造し、プルシャはその創造を目撃するのです。


プラクリティはグナと呼ばれる3つの特性を含む根源的な物理的エネルギーで、(宇宙から生じた)自然界全てに見られます。3つのグナとは、サットヴァ(本質)、ラジャス(動き)、タマス(不活発)です。この3つがこの世の全ての基本です。プラクリティに調和をもって包含されていますが、このバランスが崩れるとグナは互いに作用し合い、そうして宇宙の発展を生じさせるのです。


最初にプラクリティから現れるのは宇宙の知性です。「mahad」から自己意識(ahamkar)が作られます。そして自己意識が五感(tanmatras)と5つの運動機関となり、サットヴァの力を借りて有機的な世界を作ります。同様の自己意識がさらに、タマスの力を借りて自己意識が5つの基本元素(bhutas)となり、無機的な世界を作ります。ラジャスは体内の動的な生命力であり、有機的、無機的世界をそれぞれサットヴァとタマスへと展開します。つまり、サットヴァとタマスは不活発な潜在的エネルギーであり、現れるにはラジャスの活発な動的エネルギーが必要となります。







個性の働き


全ての個々の意識には常にサットヴァ、ラジャス、タマス間の相互作用があり、個人個人の相対的優勢は精神的で倫理的な性質の違いに起因します。例えばサットヴァな性質は、気づき、純潔、認識の明確さとして現れ、結果として善良性や幸福をもたらします。サットヴァが優位にある人は、敬虔で愛情深く、思いやりがあり純粋な心を持ちます。そうした真実や道徳的な正義に従う人は、礼儀正しく、良い行いをします。すぐに動揺したり怒ったりしません。精神的に勤勉ですが、心が疲労することはありません。健康的で注意深く、また意識が高く、輝きや知識、喜び、幸せに満ちています。


動きやエネルギーはラジャスによるもので、これが感覚的な楽しみや喜び、痛み、努力、絶え間ない動きなどをもたらします。ラジャスな性質が優勢な人は、自分本位で野心的、意欲的、
誇りや競争心が高い、また他人をコントロールする傾向があります。力や名声、地位を好み、完璧主義です。彼らは勤勉ですが方向性を欠いています。落ち着かず、活動的で動きを止めません。感情的には、彼らは怒り、嫉妬し、野心を持っていますが、成功しても喜びがもたらされることはありません。精神的な意識に誠実ではないのです。かれらの活動は自己中心的でわがままです。


タマスには、暗い、不活性、重いなどの特徴があり物質主義な考え方を持ちます。タマスな性質が優勢の人は、他の人に比べてあまり知的ではありません。鬱や怠惰の傾向がありよく眠ります。頭を使う仕事ですぐに疲れます。あまり責任のない仕事を好み、食べて飲み寝てセックスをすることを好みます。貪欲で独占欲が強く、執着し怒りっぽい、そして他人のことは考えません。彼らは瞑想に集中することは苦手です。




ドーシャの働き


精神的な性質に加えて、ヴァータ、ピッタ、カパという生物学的な気質(ドーシャ)が3つあります。体内の心理学的、精神病理学的な変化の全てを司り、全ての臓器や細胞組織に存在します。「空」と「気」が組み合わさってヴァータとなり、火と水がピッタとなり、水と地がカパとなります。


ヴァータとピッタとカパは誰にでも存在しますが、個々人によって異なる組み合わせになっています。例えば、基本的には体質は7つあります。ヴァータ、ピッタ、カパが優勢なモノタイプ、ヴァータとピッタ、ピッタとカパ、カパとヴァータが優勢なデュアルタイプ、そしてヴァータ、ピッタ、カパが同じ比率になる均等タイプがあります。ドーシャのバランスはまた、個人の体質におけるサットヴァ、ラジャス、タマスによっても影響を受けます。


ヴァータは軽く、動きがあり活動的、鮮明で収斂、分散します。そうした性質によって、ヴァータの人の髪や肌、腸は乾燥していて、便秘しやすい傾向にあります。ヴァータの軽い性質により、体重が軽く痩せていたり体重不足することがあります。冷たい性質が、手足の冷たさや血流の悪さとして現れます。ヴァータはよく動くので、ヴァータタイプはとても活動的です。


ピッタは熱く鋭く、軽く、流動的で酸味があってオイリー、広がる性質を持ち、ピッタが過剰になるとそれらが現れてきます。ピッタは熱いので、ピッタの人は食欲が強く温かい肌をしています。またピッタは鋭く、ピッタの人は尖った鼻、歯、目、心を持っています。鋭い言葉を使います。記憶力が良いです。オイリーな性質のため、柔らかで温かくオイリーな肌、ストレイトでオイリーな髪を持ち、オイリーで水分の多い便をします。ピッタは軽いため、ピッタの人は中肉中背で明るい光を嫌います。


カパは重く、遅い、冷たい、オイリー、水分が多い、密集、厚い、安定して濁っています。こうしたドーシャの優位性を持った人は、重い骨、筋肉や脂肪を持ち、体重が増える傾向があります。代謝や消化が遅く、冷たく湿った肌をして、太くウェーブのかかった髪をし、大きく美しい目をしています。遅い性質のため、カパの人はゆっくりと歩き話します。ジョギングやジャンプは好まいのですが、座って何もしないことが好きです。


個人の体質(プラクリティ)は、受胎時のヴァータやピッタ、カパの異なる組み合わせによって決まります。人は全て唯一の存在です。男性の種(精子)と女性の卵(卵子)が両親の体質を伝えますが、精子の受精時における優勢因子が、卵子の劣性を中立させたり同様の性質を促進したりします。例えば、強いヴァータ性質を持った精子は、卵子のカパの特徴をいくらか抑制します。乾燥して軽く、粗い動的な質のヴァータが、オイリーで重く、滑らかで安定したカパの性質を抑えるのです。ヴァータとカパはどちらも冷たいので、この性質は胎児の中で促進され、子どもは寒さに敏感になります。この場合の子供は、ヴァータ・カパの体質を受け継ぎます。一方で、精子も卵子も共にヴァータの場合、その子孫はヴァータ体質を受け継ぎます。



バランスが崩れること


アーユルヴェーダにおける健康とは、体と心と意識とのバランス、そしてヴァータ、ピッタ、カパという内的なバランスが取れている状態です。体そのものは3つの質(ドーシャ)、7つの組織であるダートゥ(血漿、血液、筋肉、脂肪、骨、神経、生殖器)、3つの老廃物であるマーラ(便、尿、汗)、そして火または代謝のエネルギーであるアグニから成っています。病気とはこれらのどれかのバランスが崩れている状態のことです。言い換えれば、病気の根本原因はドーシャ(ヴァータ、ピッタ、 カパ)の悪化であり、さまざまな要因で起こります。そして一度悪化すると、そのドーシャがそれぞれの場所で蓄積し始めます。ヴァータは結腸で、ピッタは大小腸で、カパは胃です。その誘因が続けば、蓄積されたドーシャが元の場所から溢れ出して全身に広がり、すでに弱った組織に入り込んでそこに病変を作り出します。ついには、影響を受けた臓器、あるいは全身に病変が現れるのです。


アーユルヴェーダでは、遺伝的、先天的、内的、外的、季節的、習慣的、超自然の要因が7つの病気の主な原因とされます。また病気は、五感(聴覚、触覚、視覚、味覚、嗅覚)の使い方が間違っている、使いすぎている、使わなすぎていることからも起こり得ます。病気そのものは、関係するドーシャの数、影響している特定の組織、、悪化したドーシャの組み合わせ、その病気は一次的なのか二次的なのか、悪化の強さ、そして病気が現れたてからの期間などによって特徴を述べることができます。


知られている遺伝病は多く存在し、特定の問題や実際の異常への傾向や性質などがあります。先天的な原因には、母親の生活スタイル、食事、習慣、活動、感情、人間関係など胎児に影響を与えます。潰瘍や肝臓の損傷などの内的な状態は、味覚の使いすぎ(例えば過度に辛い食べ物)が原因となることもあります。ドーシャに影響する外的なトラウマは、交通事故や銃創など暴力的行為です。


病気の季節的要因は、大抵はあまり直接的ではありません。例えば、夏は明るく軽く、熱い、つまりピッタの季節です。秋は冷たく風が吹き乾燥していて、ヴァータの季節です。冬は冷たく風が吹いて湿っているのでカパの季節です。早春は涼しく湿っていてカパ、そして晩春はピッタです。個人の体質がどうであれ、それぞれ関係するドーシャが対応する季節で悪化するでしょう。例えば、ヴァータの人は秋に便秘や坐骨神経痛、関節痛、リューマチする傾向があります。ピッタの人は、夏に蕁麻疹や吹き出物、ニキビ、胆汁異常、下痢、結膜炎などを起こすかもしれません。カパの人は、春に風邪や咳、便秘、くしゃみ、カパ性の鼻腔炎を起こします。


過食、不適切な食生活、喫煙など生来の傾向もまた問題にあり得ます。超自然の原因としては、日焼け、避雷、惑星の動きなどがあります。また、バランスの崩れた感情、深く根差した消えない怒り、恐怖、不安、悲嘆、悲哀などもまたドーシャに影響を与え病気の原因となります。



病を診断する


病気の経過診断の数多くのテクニックには、脈や舌を読む、尿を確認するなどの技術があります。脈には主に3つのタイプがあり(ヴァータ、ピッタ、カパ)、それぞれが異なる12箇所の橈骨動脈拍動でみられるはっきりとした特徴を持っています。もちろん、左右で6箇所ずつで、3つは表面で3つは深部です。これらの脈と内臓には関連性があり、指で各内臓の強さ、活力、生理学的状態などを知ることができます。


舌診断はまた、伝統的なアーユルヴェーダの技術です。この技術は、内臓の機能状態を明らかにする特徴的なパターンを基本としています。舌は内臓を写す鏡で多くの病気の状態を反映しているので、舌の表面を単に観察するだけでそれがわかります。こうしたパターンの中には伴う図形として見られます。


舌の特定の部分における変色や過敏は、その部分に対応する臓器の不具合を示します。白っぽい舌はカパの乱れと粘膜の蓄積を示します。赤い、あるいは黄緑の舌はピッタの乱れ、そして黒いから茶色の変色はヴァータの乱れを示します。乾燥した舌は血漿(ラサ・ダートゥ)が減少している兆候を示しており、青白い舌は赤血球(ラクタ・ダートゥ)の減少を示しています。


またアーユルヴェーダの医師は、体内ドーシャのバランスの乱れを理解するため尿検査をします。血液(ラクタ)やリンパ(ラサ)などの体液は、老廃物(マラス)を生み出した組織から運びだす役割をします。排尿システムは、水分(クレダ)、塩分(クシャール)、窒素性物質(ダートゥ・マラス)を体から取り除きます。また体液の水分(アパ・ダートゥ)や電解質の正常濃度を維持し、量を調整するのにも役立ちます。このように、尿はヴァータとピッタ、カパのバランスを維持する一役を担っています。


尿検査のためには、清潔な容器に早朝の尿を排尿途中で取ります。色を観察しましょう。もし黒っぽい茶色ならヴァータの異常を示しています。暗い黄色ならばピッタの異常です。尿が出ない、あるいは体があまり水分を取り込まない時にも、尿は暗い黄色になります。尿に濁りがあるなら、カパの異常があります。赤い尿は血液(ラクタ)の異常を示します。


正常な尿は典型的な尿の匂いがします。悪い匂いは、体内の毒素(アーマ・ドーシャ)を示しています。酸性の尿は、焼け付くような感覚があり、過剰なピッタを示します。尿の甘い匂いは糖尿病の状態を示しており、排尿中に皮膚の表面に鳥肌が出ることもあります。尿の結砂は、尿管の結石を示します。


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次回に続きます。