2025年7月14日月曜日

高齢者のためのヨガ:ヨガで転倒リスクが減少 
Yoga for Seniors: How Practice Can Reduce the Risk of Falling

今回は、医師でありヨガティーチャーである著者が指導者に向けて書いた記事です。
いくつかの研究結果についても書かれていますので、指導者でなくても、こんな効果があるんだ!ヨガって役立つんだ!という風に感じていただければ嬉しいです。

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「外傷病室1に患者、外傷病室1に患者、急行せよ!」私の仕事ではこんな緊急の知らせがいつでも起こります。


救急医として対応する患者は様々ですが、高齢の患者でとても多いのが転倒で怪我をしてくる人です。65歳を過ぎた3分の1以上の人が一年に一回以上転倒しています。


転倒は、筋力や姿勢への意識の低下、薬の副作用、認知力低下、鬱など様々なリスク要因よって起こります。


こうした患者らは、腰や長骨の骨折、脳の負傷による急激な精神状態の変化、皮膚の裂傷、その他命を脅かす怪我などをしてやってきます。


こうした転倒は多くの場合、患者らの体力や体の安定性、可動性、そして全体的な健康状態を維持するための基本的な介入がいくつかあれば防止できたであろうものです。


悲しいことに、骨折や頭の出血は転倒後にしばしば起こる症状の単なる始まりに過ぎません。転倒の結果、体の固定やストレス、転倒による心理的影響などが多くの場合、高齢者に数多くの問題をもたらすことになります。肺炎や創傷感染などの二次感染で治癒が遅れ、脳損傷や身体障害は患者の自立性の多くを失うことにつながります。この全体的な機能低下によって、何度も転倒を繰り返し、続く怪我、生活の質の低下、そして時には死をもたらすこともあります。


私たちはヨガの専門家として、あまりにもよく起こる高齢者の転倒の根本原因のいくつかに取り組むという類稀なポジションにあります。体力やバランスのトレーニングの効果は、もちろん、医学文献の中でも頻繁に言及されています。ヨガに特有の呼吸法やリラクゼーションにこうしたトレーニングを加えれば、身体的強さや安定性、また健康で幸福であるという感覚を与え、生活の質を高める方法を提供することが可能です。
  

特定の症状のある患者を治療する時、同職者たちが見つけた同様の患者に効果的な治療法を知るために最新の医学論文を調べることがしばしば役立っています。論文を吟味することは良いことだと考えてはいますが、研究によって効力や妥当性がとても様々で、医学論文を注意深く読むことに慣れていなければ、お粗末な研究方法で導かれた見せかけの「良い」結果に簡単に迷わされてしまうことになります。医師もヨガの指導者も、患者の治療プランを決める前に医療専門家が信頼する同様のエビデンスを利用して欲しいと思っています。


 

高齢者のためのヨガの効果


高齢者の転倒の防止法についての研究はかなり多く存在します。特にヨガを対象にした研究は比較的数が少なく、ざっと見たところ現段階では研究対象の人数がとても少ないという批判が大きいことがわかりました。それでも、高齢者にヨガを勧めるには、下記の論文がやくだつのではないかと思います。少なくとも、提供しているのはただのヨガクラス以上のものだということに気づいてください。実際に、次の転倒を防止する仲間に加わっているかもしれないのですから!


2013年の Journal of Gerontology (老人病学ジャーナル)掲載の Tiedemann らによる論文では、それまでヨガや太極拳をしたことのない平均年齢68歳「地域在住者(老人ホームなど施設に住んでいない人)」54人に任意のコントロールテストを行いました。対象者は、ポーズを説明した小冊子を受け取ったグループと、12週間週2回ヨガクラスに出席したグループとに分けられました。コントロールグループには教育用小冊子が配布されましたがクラスには参加しませんでした。12週間後の介入グループは、座位から立位への移動時に敏捷性がより上がり、片足のバランスがより良くなり、歩行もより速くより自信に満ちて歩けるようになりました。中心とされたヨガポーズは、タダアサナ(山のポーズ)、ヴィラバドラアサナ(戦士のポーズ)I、ヴィラバドラアサナ(戦士のポーズ)II、ヴィラバドラアサナ(戦士のポーズ)III、アルダチャンドラサナ(半月)、ヴルクシャサナ(木のポーズ)、アドムカシュヴァナサナ(下向きの犬のポーズ)、シャヴァサナ(尸のポーズ)です。


計画においてはややロバストではないものの同様の結果が出た研究は、2014年に Journal of Alternative and Complementary Medicine で発表されたケリー氏らによるもので、平均年齢72歳の地域在住者という同様の被験者の、週2回ハタヨガに参加させ12週間後の効果を分析しました。この研究は任意抽出でななく(従って前記のものよりはロバストではない)被験者グループの『ビフォアフター」効果を観察した事前事後テストスタイルの研究でした。ヨガポーズは、ウォームアップの肩回し、かかと上げ、そしてバッダコナサナ(合蹠のポーズ)です。結果は同様で、可動性、姿勢のコントロール、歩行速度が向上したと述べられています。


他のメタ分析(共通の結果を調べるために一連の同様の研究を評価するという研究)では、高齢者において特にヨガが他の身体活動関連の介入方法に比べ優れているという、より控えめな証拠を示しています。パテル氏らのメタ分析では、1950年から2010年までの研究を調べ、様々な状況における高齢者を対象した関連研究を18見つけ出しました。このメタ分析では、被験者の健康感、有酸素的な健康、体力などがヨガで向上したことが示唆されています。
 

ヨガの指導者の行動がこうした人々の転倒防止に役立っているのかを証明する完璧な研究はないと理解した上で、ヨガが高齢者の体力や安定性、調整力、そして幸福感を達成する助けとなるのではないかという論理的証拠がますます増えてきていると考えています。今まで聞いたことのあるどんな薬よりもいいと思っていますし、間違いなく、防止可能な転倒から起こる怪我や身体障害や死よりは良いと思っています。


この年齢層を対象にし続けて欲しいですし、高齢者に参加可能なヨガクラスを提供することで、高齢者の健康や幸福を向上させられることはとても重要な貢献であると気づいていて欲しいのです。最も意味のある変化をもたらすものは、新しい薬や即効性のある治療法ではなく、小さくても毎日の目的を持った誠意ある行動だと。これがヨガだと。



幸運を。ナマステ、美しきヨギたちよ!

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