神経システムについて、その素晴らしさ、そしてどのようにヨガがよい影響を与えるのかについて耳にしたことがあるかもしれません。神経システムを落ち着かせ穏やかに調整するのに役立つヨガの特別なテクニックについて聞いたこともあるかもしれません。もしかすると、神経システムの詳細についても聞いたことがあるかもしれません。
しかし、この複雑なシステムとそれがもたらすことについて本当に理解しているでしょうか?実際のところ、神経科学者でさえ神経システムを完全には理解できてはいない一方で、基本的な局面についてわかっているところもあり、ヨガが、それを調整するのに役立つというエビデンスも増えてきています。
神経システムとは?
人間の神経システムは、並外れて複雑で、その大部分は未知の部分ですが、運動を起こすため電気的・化学的エネルギーを発し、脅威を察知し、消化を行い、心拍を調整し、呼吸を行い、思考する、など多くのことに関わっています。
神経システムは大きくふたつの分けられますが、多くの人が考えているのとは異なり、交感神経と副交感神経ではありません。 そうではなく、中枢神経系と末梢神経系です。
中枢神経系は脳と脊椎を含みます。末梢神経系は、中枢神経系意外の神経組織であり、神経繊維や神経節(ニューロン細胞の塊)を含みます。
末梢神経系はさらに、自律神経系(呼吸などの不随意機能をコントロールします)と、体神経系(歩くなどの随意機能をコントロール)に分けられます。
末梢神経系はさらに、自律神経系(呼吸などの不随意機能をコントロールします)と、体神経系(歩くなどの随意機能をコントロール)に分けられます。
自律神経系とは?
不随意機能の中枢として、自律神経系はさらに、交感神経(「逃走闘争」部分)と副交感神経(「休息消化」部分)、そして腸神経系(内臓部分)に分けられます。
ヨガは全ての神経系に影響を与える可能性がありますが、ヨガの指導者や実践者はまず交感神経と副交感神経に注意を向けがちなのは、それらが実践によってより直接影響力のある部分だからです。
副交感神経とは?
交感神経系は、多くの場合「逃走闘争」反応に関連付けられます。これの部分は、体が危険の可能性に警戒する役割を持っています。
私たちが危険を察知すると、心拍が上がり、瞳孔が開き、呼吸数が上がって、新鮮な酸素の多い血液を脳に送ります。私たちの体はまた、呼吸や心拍、感情など全てを調整する神経伝達物質やエピネフリン、ノルエピネフリンなどのホルモンを送り出します。消化器官は、ほとんど働きをやめ、大切な酸素が豊富な血液を骨格筋に送ります。こうした様々なことが、ほとんど一瞬で起こります。こうした変化が、究極的には脅威と闘うかその場から逃げる準備をするのです。これが、交感神経反応が自動車のアクセルペダルと類似している理由です。アクセルをいっぱいまで踏み込むと、全力で前へ走り出すのです。
しかし、私たちの体はとても賢く、交感神経系も生活スタイルの変化に飲み込まれたりはしません。例えば、体は生死を分ける脅威へのストレスと大切な会議のストレスをうまく区別しません。つまり、うるさい上司という脅威を、私たちの体はライオンに襲われる脅威と同じように受け止めるのです。
さらに、こういったストレスは慢性化します。毎晩、帰宅した後にもしょっちゅう送られてくる仕事のメールで、交感神経状態のままになり、慢性的に心身にストレスを受け続け、やがてはストレスに関連した病気だらけになってしまうのです。さらに、慢性ストレスによって内分泌系に刺激ホルモンをもっと作るよう信号を送り、体内のストレス反応の周期が継続されていくことになります。
しかし、ヨガの世界での悪い評判にもかかわらず、交感神経系は、実は私たちが完全であるために不可欠な部分です。危険と直面した時に安全を確保するためだけではなく、体全体のバランスをとるという複雑な基盤の重要な一部なのです。
実際、ヨガの練習の時は、交感神経系が活性化しています。より動的でより速いペースのフローやより長いホールド(より困難な)は、交感神経反応を刺激します。チャトランガへジャンプバックする時、心拍数が上がります。逆立ちのポーズで止まると、血液を骨格筋へと流す準備をします。ウォリアー3でバランスを取ると、神経伝達物質が多量に分泌され、活力を与えるホルモンが血管の中を流れます。この神経系の活性化はまた、ランニングなどの激しい運動をする時にも起こります。
つまり、交感神経系を刺激することは、実際は、全く健康的で普通のことなのです。
副交感神経系とは?
副交感神経系は、多くの場合、「休息と消化」反応と言われます。自律神経のこの部分は、交感神経反応を抑制します。
「ブレーキ」と呼ばれることの多い副交感神経系は、心拍数を下げ、消化を刺激し、呼吸速度を下げ、血流を四肢から生命維持に必要な内臓へと戻し、アセチルコリンなどの穏やかにする神経伝達物質を分泌させます。
「ブレーキ」と呼ばれることの多い副交感神経系は、心拍数を下げ、消化を刺激し、呼吸速度を下げ、血流を四肢から生命維持に必要な内臓へと戻し、アセチルコリンなどの穏やかにする神経伝達物質を分泌させます。
この神経系はまた、ヨガの実践では崇められており、過剰にストレスを受けた体や心をリラックスするのに役立つためです。リストラティブヨガなどの実践を、特にリラックスのために、より穏やかな状態になるように行います。
しかし、この神経系がヨガの世界では一般的によいものだと見えると言って、常に副交感神経系を活性化させる必要があるというわけではありません。交感神経と副交感神経の両方の間を、ごく自然に揺れ動くことができるのが健康です。そして、この揺れ動きを心拍数の変化で計測することが可能です。
心拍数の変異性
健康な人が息を吸うと、自然に、交感神経系が刺激されて心拍数がやや上がります。息を吐くと、副交感神経系が刺激されて心拍数はやや下がります。この心拍数の変異性は、全体的な健康の目印となります。一般的に、交感神経系と副交感神経系の間を素早く簡単に変動できる方が、全体的に、より健康的な神経系であると考えられます。
慢性的にストレス反応から「抜け出せない」人は、心拍数変異性に乏しいため、心拍数はおそらく慢性的に高いままでしょう。反対に、自律神経の健康的なバランスを保っている人は、心拍数変異性が高いため、ストレスの多い状況の後でもすぐに下げる調整が行えます。
ストレスにすぐに反応することが大切です。しかし、ストレスが過ぎたら容易に落ち着けることも大切なのです。ここで、ヨガの出番です。
ヨガが自律神経系に与える影響とは?
ヨガを通して自律神経系に影響を与える方法はたくさんあります。以下は、ヨガが自律神経系の異なった部分を刺激するのに役立つ方法のうちのいくつかにすぎません。
ダイナミックなヨガ
アシュタンガやパワーヨガ、ヴィンヤサなどのダイナミックなスタイルのヨガやエクササイズは、すでに言った通り、交感神経系を刺激できます。 これは激しい動きへの健康的で普通の反応であり、免疫の強化、呼吸機能の改善、循環器の健康増強などに役立ちます。
リストラティブ・ヨガには反対の効果があります。その名の通り、リストラティブ・ヨガは、心身ともにとても穏やかでリラックスさせるものです。いわゆるリラクゼーション反応を刺激し、神経を副交感神経モードに移し、穏やかさや安心感、心地よさ、健康的な消化などを促進します。
リストラティブ・ヨガ
リストラティブ・ヨガには反対の効果があります。その名の通り、リストラティブ・ヨガは、心身ともにとても穏やかでリラックスさせるものです。いわゆるリラクゼーション反応を刺激し、神経を副交感神経モードに移し、穏やかさや安心感、心地よさ、健康的な消化などを促進します。
プラナヤマ
プラナヤマは、自律神経系に作用する実に早く効果的な方法です。実際、上記のように、毎回呼吸をするたびに自律神経に影響(心拍数変異)を与えています。
迷走神経の一部が、喉頭や呼吸横隔膜を通っているため、呼吸はまた瞑想神経緊張にも影響を与えます。瞑想神経の活動量が迷走神経緊張です。迷走神経には多くの副交感神経繊維があ流ため、迷走神経が受ける刺激が強いほど副交感神経系が活性化されます。
呼気を長くするなどの特定の呼吸法は、特に副交感神経系と関係が深く、体を「休息と消化」反応へと移すことができます。反対に、吸気を強めると反対の効果があります。
シャヴァサナ
シャヴァサナで練習を終えるのもまた、自律神経系に影響を与えます。このポーズは落ち着きや内省を促すため、心拍数や呼吸速度などをゆっくりにし、特に刺激のある動的な練習の後には効果的です。その簡単な外見にもかかわらず、副交感反応を開始し神経系を鎮めるために大変効果的な実践法です。
瞑想
瞑想は、鎮静効果のあるもうひとつの実践法です。心身が平穏な時、私たちは慢性的に抱えている緊張を手放し始め、副交感神経系を刺激します。
ヨガの練習と総合的な健康の鍵はバランス
私たちにの体内の全ては、常に、総合的なホメオスタシスのために適合と調和を得ようと働いています。
ストレスの多い世界に生きる私たちは、副交感神経系を刺激するような練習から効能を得ることができます。しかし、それは交感神経系を全く無視していいというわけではありません。忘れないでください、本当の健康の指標は、どちらの神経系が活性化しているかではなく、どれほど効率的、効果的に素早くそれぞれの間を移り変わることができるかです。
結局のところ、生きている中で前進するには、アクセルとブレーキの両方が必要なのです。全速力で壁にぶつからないよう、適切な道具を適切なタイミングで使うことがでければいけません。そして幸いなことに、その道を進むために役立つヨガが、私たちにはあるのです。
(出典)https://yogainternational.com/article/view/how-yoga-affects-our-nervous-system
(出典)https://yogainternational.com/article/view/how-yoga-affects-our-nervous-system