このところずっと怠く眠く感じて少し憂鬱なのですが、なぜだかわかりません。どこが悪いのでしょうか?
アーユルヴェーダによれば、倦怠感や眠気、憂鬱はアグニが低いことの表れです。アグニとはサンスクリット語の「火」という意味の言葉です。一般的には、太陽神経叢つまりみぞおちにある消化力を表します。アグニの仕事は、消化を助け、食べ物の栄養を吸収し、皮膚や肝臓、腎臓などの浄化の臓器が老廃物を体外に排出するのを助けます。しかし、アグニはそれだけではありません。私は、小さなだるまストーブに例えるのが好きです。私たちの住処(体)の中心です。消化は、免疫や活力、精神の明晰さなどと同じく、それに依存しているのです。
アグニが強い時は、健康的な食欲や、寒い天候への強い耐性、豊かなエネルギー、風邪やインフルエンザや他の病気に対する抵抗力を持つことができます。しかしアグニが弱いと、膨満感や消化不良、便秘や下痢、内臓の冷え、免疫低下、疲労感や全身の活力低下などが起こります。また、アグニが低い時には、食べ物を効率的に代謝することができず、消化不良からアーマ(未消化の残余物、あるいは毒素)が作られてしまいます。アーユルヴェーダの視点では、これが問題のもとになると考えられています。
体をデトックスして活性化させるにはどうすればいいの?
アグニを強化には4つの簡単な方法があります。有酸素運動、アグニを対象としたハタヨガの練習、健康的な食事、そして解毒のハーブです。
➢ ヨガと有酸素運動
理想的には、毎日運動する方が良いでしょう。けれど、30分間の運動を週に5、6回以上行うことがおすすめです。水泳や自転車、ダンスなど、心拍が上がるような、楽しめるものを選びましょう。また、アグニ・サラ(腹部の締め付けや引き上げ)、捻りのポーズ、前屈後屈、脚上げ、腹筋運動など太陽神経叢や消化の火を強化するハタヨガをしましょう。しかし、ハタヨガの練習を、毎日の義務のひとつにしてしまわないようにしましょう。ハタヨガは、呼吸と共に動くものであり、今に存在して身を委ねるものです。精神的な修養の準備であるべきで、他のエクササイズとは異なります。
自分の能力や使える時間の量に合わせて、持続可能な運動のスケジュールを立てましょう。例えば、私は平日の朝は10ー15分間のヨガをして、昼食時に45分間散歩、そして就寝前に落ち着いて瞑想できるようなヨガを少し行います。あなたには、あなた自身に合った練習法が必要となるでしょう。
三つ目に、全粒の穀物や果物、豆類、または少量のオリーブ油やバター、ギー(精製バター)で調理した野菜(生野菜は消化しにくい)などの、新鮮で栄養のあるものを食べましょう。消化の火を燃やすため、食事の時にジンジャーティーを啜ったり、生姜やニンニク、シナモン、クローブ、バジル、オレガノ、胡椒、唐辛子など温める辛味のハーブで味付けをしましょう。
目的は、気分が良くなるような食べ方をする事です。ですから、食べる時に食べ物があなたにどんな影響を与えているかに気づきましょう。満足して元気になりますか?それとも疲れた感じがしますか?
もし怠さを感じたら、消化の火の能力を超えないように食事を少なくしてみましょう。ため息をつきながら「ああ疲れた、ひと眠りしなくちゃ!」と言ってしまうような食事はやめましょう。
思い出してみてください、アグニは火です。火に薪をくべすぎたり、大きな重く湿った薪を入れれば、火はくすぶって消えてしまうかもしれません。同様に、食べすぎたり、間違った食べ方をすれば消化の火はくすぶってしまいます。グルテンのある穀物(小麦など)、肉、乳製品、脂っこいものには、強い消化の火が必要です。こうした食べ物はとても栄養があるかもしれませんが、アグニが弱い時はすぐにアーマを作り出します。アーマはクリームチーズのような質を持っています。重く、濃厚で、粘性があります。アーマは体の弱い部分に蓄積されますが、それは人によって異なります。例えば、膝関節に溜まる(こわばりとなります)人もいれば、心臓まわりの血管を詰まらせる(心臓病になります)人もいます。簡単に言えば、どこであれアーマがあれば、すぐに病気や不健康な状態になるのです。
これを予防するには、2、3週間、小麦や乳製品を減らし(あるいは完全に避ける)、脂っこいものや揚げ物を止め、代わりにキノアや黍などの軽い穀物を食べましょう。そして、1、2週間、どう感じるかを観察します。私の患者の多くは、より軽く、明晰で精力的になったと言っています。彼らのアグニの負担が減って、より明るく燃えるようになったからです。
➢ 解毒のハーブ
最後のヒントは、腸を浄化する事ですが、これはちょっとした食事の変更や解毒のハーブの助けがあれば簡単に行えます。もし、定期的なお通じがない、あるいはあまり質の良くないものをたくさん食べているとしたら、その結果生じたアーマが腸の壁にくっついているかもしれません。これが栄養の吸収を妨げ、老廃物の排泄をも妨げます。この状態が自家中毒と呼ばれる健康状態を起こす事もあります。つまり、腸に溜まった毒素が体内組織に溶け出し始めている状態です。これが、頭痛や疲労感、ニキビや蕁麻疹、吹き出物といった発疹など不快な副作用の原因となります。
毎日のお通じのため、より多くの食物繊維と水を取り入れましょう。サイリウムというハーブ(水溶性で小さなタワシのように働く)をお勧めします。腸壁に溜まったアーマを取り除くのに役立ちます。トリファラというアーユルヴェーダのハーブ・ミックスも良いでしょう。トリファラを便秘薬と考える人もいますが、実際には腸の強壮剤です。腸壁を整え、腸の働きを最適な状態にします。便秘や下痢なら、トリファラで排泄器官を正常に戻すことができます。アーユルヴェーダの文献では、トリファラのことを「アーマを取り除くコテ」と表現しています。腸から毒素を引き出して体の外へ流し出す助けとなります。
こうしたハーブは誰でも摂ることができます。複数を同時に摂取するように、患者さんに指示することもあります。春や秋の健康維持のため、6-8週間、夜にトリファラを朝にサイリウムを、などです。
朝のサイリウムは、ティースプーンに一杯だけ(もっと多く摂る指示が瓶に書いてあったとしても)使います。2カップ以上の水やジュースに混ぜてすぐに(どろっとする前に)飲みます。サイリウムの殻は、その重さの100倍の水を吸収します。ですから、たくさん水を一緒に飲むことが重要となります。そうでないと、特に便秘気味の人は、繊維が体の水を吸い取ってしまうでしょう。ティースプーン一杯のサイリウムで、快適だけれどあまり効果がない時は、量を倍にしてみましょう。けれど、お腹が張ったり便秘になったら、分量を減らすかもっと水の量を増やしましょう。(注意:サイリウムと一緒に薬やビタミン剤を飲まないでください。繊維で包まれてしまうと吸収されなくなります)
夜のハーブとしては、ティースプーン一杯のトリファラの粉を、カップ一杯の沸騰したお湯に溶かして6ー8時間以上置きます。正確に時間を測るため、正午、あるいは朝出かける前に準備しましょう。このお茶を、固形物をカップの底に沈めたまま、就寝時に空腹状態で飲みます。アーユルヴェーダの理想では、ハーブは味わわなければなりません。味にもかすかな薬効があるからです。けれど、トリファラの味が好きではないなら、かわりにカプセルやタブレットを、パッケージの指示通りに飲んでもいいでしょう(通常、1日2回2錠、空腹時にお白湯で飲みます)。
もし、体内に多くのアーマがある場合は、発疹や頭痛、お通じなどトリファラの解毒反応が起こるかもしれません。その場合は、量を半分に減らします。でも心配しないでください。解毒反応は悪い兆候ではありません。体が蓄積したアーマを取り除くのを助けているのです。穏やかに少しずつ解毒するのが良いでしょう。
では、最初の質問の答えです。
体内のアーマを浄化し、エクササイズやハタヨガ、食事やハーブで代謝を活性化させることで、アグニを強化し、より明晰で活発、生命力に溢れていると感じられるでしょう。