今回は、女性が必ず通る更年期に関連する症状とその対処法などについてです。
ーーーーーーーーーーーーーー
48歳のアリソンにひどいホットフラッシュが起こり始めた頃、それはたいてい夜に起こりあまり眠れませんでした。彼女の閉経周辺期の症状というのは、概して、「我慢できない」以上のものでした。そして生理周期は全く手に負えなくなったのです。「突然、出血量がものすごく増えて、以前の2倍ほど長く続きました。生理期間がいつまでも終わらないのです」かかりつけの婦人科医師は、アリソンにホルモン補充療法、つまり更年期症状を抑えるための処方薬を薦めました。「症状が本当に酷いのなら考えてみてと言われましたが、とにかく乗り切るために何でも試そうという感じでした」とアリソンは言います。
彼女には、ホルモン補充療法をやめたい思う正当な理由もありました。その治療法は、人工的にエストロゲンとプロゲステロンのレベルを上げるもので、近年では問題とされてきています。多くの研究によって関係付けられているのは、乳癌や心臓疾患、卒中など命に関わる症状のリスクが上がることです。
アリソンの生理周期が不定期になってすぐ、いつも通っているヨガスタジオで、生理周期に関連する肉体的な不快に対処するのに役立つよう作られたアイアンガーのアサナ・シーケンスを習いました。ポーズの多くはリストラティブなもので、スプタ・ヴィラサナ(横たわった英雄のポーズ)、スプタ・バッダコナサナ(横たわった合蹠ポーズ)、ジャヌシルシャアサナ(頭を膝につけるポーズ)など頭をサポートして行うものでした。次の生理が始まって、アリソンは毎日そのシーケンスを練習していたら、経血量が普通に戻ったことに気づきました。その結果に勇気づけられ、ホルモン補充療法をしなくても症状をコントロールできるのではと考え始めました。彼女が探していた緩和法は、多分、ヨガなのだと彼女は思ったのです。そして、その直感が正しかったことが証明されました。多くの女性が、ヨガによって、ホットフラッシュなどの更年期の不快な症状を緩和されることに気づいています。
ホルモンバランスのためのヨガ
更年期そのものは、単に月経が止まる時期であり、一般的には数年間続きます。この段階を閉経周辺期といい、おおむね45ー55歳の女性に起こります。閉経周辺期には、エストロゲンとプロゲステロンのレベルの変動により、さまざまな不快な症状を引き起こすことがあります。その中でも多くみられるのがホットフラッシュ、不安やイライラ、不眠、疲労感、鬱症状、気分変動、記憶力低下、そして生理不順です。
これら全てを経験する女性は少ないですが、約55ー65%がいくつかの軽い症状を経験していると、カリフォルニア州トーランスにあるハーバーUCLA研究教育研究所のローワン・クレボースキー博士は言います。約25%がほとんど日常生活に支障がないと報告している一方で、約10-20%が深刻で、しばしば体が衰弱するほどの症状に悩まされています。
ホルモンの変動は、概して女性の生物学的な次段階への途中で起こります。思春期のニキビや気分変動、妊娠期のつわり、そして出産後の鬱などさまざまな不快が現れます。「更年期も例外ではありません」と、『A Woman’s Best Medicine for Menopause(更年期女性の最良の薬)』の著者であるナンシー・ロンスドルフ医師は言います。
閉経周辺期が始まるまで、女性の毎月の月経周期を働かせているのは、食欲や体温など多くの身体機能を調整している脳の基部にある視床下部です。視床下部は脳下垂体に重要な生殖ホルモンを分泌させる信号を送り、こうしたホルモンは次に卵巣のエストロゲンやプロゲステロンの分泌を刺激します。閉経周辺期には、卵巣と脳下垂体がいわば綱引きをします。卵巣がホルモン分泌を減らす一方で、ホルモンレベル低下を感知した脳下垂体は卵巣を刺激し続けます。この慌ただしい格闘によって不安定なホルモン変動が起こります。過剰なエストロゲンが体のエンジンの回転速度を上げたと思えば、プロゲステロンが急激に分泌されて体のスピードを落とすのです。
「ホルモンはとても強力です。体のまさに全ての組織に影響を与えます」ロンスドルフ氏は言います。「ですから、体がこうしたホルモン変化を調整しようとすれば、さまざまな状態が起こり得るのは無理もありません。例えば、不安定なホルモン・パターンに脳が影響を受ければ、睡眠や気分、記憶力など全てが影響を受けますし、不定期なホルモン・パターンで子宮が刺激されれば不正出血が起こる、などです」
一般的に女性がこのホルモン変動を始めて体験するのは、生理が止まる約6年前です。こうした症状は大抵の場合、生理が止まってホルモンレベルが徐々に安定する一年以上後まで続きます。更年期の後の卵巣は、女性ホルモンをあまり作らなくなります。けれど、体はまだ骨の健康を保ち、膣の乾燥などの症状を抑えるため、いくらかのエストロゲンを必要としています。腎臓の上にある副腎は、脂肪細胞をエストロゲンに変換する男性ホルモンを分泌してますが、その分泌が減ることでこうした変化の中で重要な要素となっています。それでも、体はホルモンレベルがかなり下がった新しい状態に適応していく必要があります。
こうした自然な生理学的変化や大混乱で多くの女性が悩まされていることを受けて、1960年台、研究者らによって、よく見られる更年期障害の治療法が探し始められました。最終的に勧められた治療がホルモン補充療法でした。その論拠は、ホルモンを体に戻せば、エストロゲン減少からくる諸々の問題は単純に消え去るというものでした。科学者らは、以前と同じレベルのホルモンを維持すれば治療できると信じていたのです。
ホルモン治療法は、更年期の症状を管理する簡単な解決法でした。けれど、いくつかの大掛かりな研究が、ホルモン補充療法によって女性が深刻な健康リスクに晒されることを示してから、より自然な治療法を多くの女性らが探し始めました。ヨガに解決法を求めた人々は、アサナが直接的にエストロゲン生成に影響を与えることはないけれど、不快な症状をコントロールするのに役立つポーズがあることに気づいたのです。特にリストラティブなポーズは、神経をリラックスさせ、内分泌系(特に視床下部、脳下垂体、甲状腺、副甲状腺)の機能を向上させ、ホルモン変動へ適応するのに役立ちます。
更年期障害を緩和する
ヨガインストラクターのパトリシア・ウォールデン(57)は、ヨガがどのように更年期障害を緩和できるかを直に理解しています。多くの女性たちと同様、彼女の症状も雨のように現れました。最初は小雨のように、そして本格的な嵐となりました。最初にホットフラッシュが来て、次の年には、絶え間ない疲労感と不眠に悩まされました。しばしば夜中に目覚め、そのまま3時間起きたままということもありました。
症状が重くなった時、ヨガの練習方法を変える必要があると彼女は気づきました。彼女の毎日の練習は力強いものでしたが、サポートのない逆転ポーズや、激しいポーズ、後屈などが時に症状を悪化させることがわかったのです。そんな時は、サポートのあるリストラティブなポーズで神経を落ち着かせることにしました。逆転ポーズも続けましたが、ホットフラッシュをより引き起こしてしまうサポートのないシルシャアサナ(頭立ち)の代わりに、ボルスターを使ったセツ・バンダ・サルヴァンガサナ(橋のポーズ)や椅子を使ったサーランバ・サルヴァンガサナ(肩立ち)を行いました。そのように変えることで、体の熱を上げたり辛い症状なしに、不安やイライラを緩和するという逆転ポーズの効果を得ることができました。
症状が消えていくにつれ、ヨガが、ホルモン変動に伴う症状を緩和する強力なツールになりえるという確信を深めていきました。そして同様の症状を体験している他の女性と繋がり、更年期障害のある女性のためのヨガを考案し始めました。「以前から女性の健康問題に興味があったのです」ウォールデンは、リンダ・スパローの 『The Woman's Book of Yoga and Health: A Lifelong Guide to Wellness(女性のヨガと健康:生涯健康でいるために)』 の共同著者でもあります。「でも、自分が更年期を経験した後は、もっとずっと理解できるようになりました」
日常的なヨガの練習には、女性の更年期をがらりと変える力があります。そして、更年期の前にしっかりとした練習をすれば、その移行期が楽になると、『Yoga and the Wisdom of Menopause(ヨガと更年期の智慧)』 の著者であるスーザ・フランチーナは言います。「更年期の前にヨガを練習していれば、特に更年期障害に効果的なポーズの全てに既に慣れ親しんでいるので、長年の友人のようにポーズを行うことができます。リストラティブなポーズに慣れ親しんでいるなら、最高の更年期障害の緩和が意のままに使えるのです」
------------------------
0 件のコメント:
コメントを投稿