2022年12月3日土曜日

マハ・ムリッチュンジャヤ・マントラ:自身を癒し、世界を癒す Vol.2 
The Maha Mrityunjaya Mantra: Heal Yourself, Heal the World

前回からの続きです。

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恐怖を克服する

その昔、死は存在しなかったと言われています。しかし、世界が混雑してきて、命の源が枯渇しそうになりました。そこで、自然のバランスを取り戻し地球の苦しみを解くため、生き物に死をもたらす役目がヤマに与えられました。


死には、その任務を果たすためのしもべが必要となりました。病気や飢餓、事故、老化がその役割を担い、死のメッセンジャーとして働きました。しかし、宇宙の秩序における死の役割を理解せず、全ての生き物は死を恐れました。若くして死んでいくものを見て、ふさわしい時が来る前に命が失われるのではないかと心配しました。その時が来た時には、死への恐れはより大きい苦悩となりました。


この恐怖を克服するため、シヴァ神はマハ・ムリッチュンジャヤ・マントラを人に与えたと言われています。無気力、ストレス、悲しみ、病気の時、死の恐怖が意識に押し入って来る時はいつでも、この素晴らしいマントラを、癒しや生命力の維持、そして避難する場所として利用することができるのです。


マハ・ムリッチュンジャヤ・マントラは、健康や幸福を取り戻し、死と向かい合った時に穏やかさをもたらします。勇気や決意が閉ざされた時、マントラが現れて障害を取り除きます。体と精神の奥深くに到達する癒しの力を呼び覚ますのです。


植物が土から忍耐強く栄養を集めるように、癒しや育みの力は、食べ物や薬、支えとなる感情や勇気を与えてくれる思いを通して、人の体の中へと入ってきます。マハ・ムリッチュンジャヤ・マントラは、こうした力を引き寄せ、その効果を高める精神的な環境を創り出します。このように、このマントラは、回復のプロセスが行われている時はいつでも利用することができます。


このマントラは、薬を服用する時に、その効能を最大にするために体や心の準備として唱えることができます。インドでは、体に聖なる灰をつける際に(薬あるいは精神的な行為として)このマントラが唱えられます。そのように、健康や生命力、育みや死に関連する恐怖から逃れるなどの問題が現れた時はいつでも、マハ・ムリッチュンジャヤ・マントラが、対処法や慰めとして自然に唱えられるのです。


また、治療に関わる職業の人たちにとって、マハ・ムリッチュンジャヤ・マントラを日常的に唱えることでその恩恵を得ることができると言われています。マントラを通して、命が育まれる癒しのチャンネルを開き、尽きることのない源からエネルギーを得ることができるため消耗を防ぐことができるのです。



癒しの力を目覚めさせる


ムリッチュンジャヤとしてのシヴァ神を讃え、マハ・ムリッチュンジャヤ・マントラの実践を讃える物語は多数存在します。その多くは比喩的で、登場人物や筋書きに象徴的な意味があります。それ以外は、主として高揚感を与えるもの、特定の実践について詳細を明らかにさせるものもあります。


このマントラのパワーは、ネトラ・タントラの中でシヴァ自身によって、シヴァと妻パールヴァティの会話として語られてきました。聖典の始まりでパールヴァティは尋ねます。「あなたの目はとても美しい。涙と思いやりで溢れています。どうして、その目から恐ろしい火を放ち死そのものを灰にしてしまうことが可能なのですか?」


シヴァは言います。「ああパールヴァティよ、ヨガで共になりなさい、それによってのみ、私の目に宿る火が不死の万能薬だということを理解できるだろう。私の目の中の光は全てを見通すのだ。あらゆる方向に向かっていて、目覚めていても夢を見ていても眠っていてもそこに存在する。全ての生きるものの命の源なのだ。ヨガの実践によってのに理解することができ、自己努力のない者には決して体験することができない。


「私の目の光は、それぞれの人の輝きと同じだ。それは自明の理である。精神の力の最も崇高な形である。永遠であり、オージャス(物質を命で満たす輝くエネルギー)である。意志の力であり、魂の不屈の意志である。そこに、全知の種が存在し、知る力、行動する力が存在する。私に本来備わったこの力を通して、私は破壊し創造するのだ。


「全宇宙はこのエネルギーで満たされて保たれている。実際、意志、知恵、行動の力は共に私の目にある。それらは不死の源であり、癒しと育みの究極の力である。私の輝かしい生命力の具現である。マントラの科学を知る者は、これを『死の克服』、ムリッチュンジャヤと呼ぶ。それは、あらゆる形の苦痛からの解放を得させてくれる。それは全ての病を破壊するからである。ムリッチュンジャヤ・マントラという形で現れる輝かしい光は、現世の精神的な貧困の焼け付くような熱を冷ましてくれる。それは、純粋で平和で絶えることがない。


「このマントラにより人は、怒りや嫌悪、嫉妬、強欲など全ての敵対するものを克服することができる。それは、長寿と健康、幸福の源である。異なる種類や形状であると仮定すれば、この光の力、ムリッチュンジャヤ・マントラは全宇宙に行き渡る。身体的、精神的、霊的な全ての保護の源である。私の目の神秘、そこに存在する火、そしてその火がどのようにムリッチュンジャヤ・マントラの形で現れるか、それ以上に崇高な神秘は存在しない」


ーネトラ・タントラより抜粋(パンディット・ラジマニ・ティグネイト博士英訳からの和訳)




癒しのマントラの使い方


そうした言葉に刺激されたり、実践の伝統を保存し続けている指導者から指示されたりして、多くの瞑想者がマハ・ムリッチュンジャヤ・マントラを日々のルーティンの一部としてきました。マントラを使うためには、マントラを学んで実践する制限もなければ、マントラに関する神話を信じる必要性もありません。ただ、敬意をもって行えば良いだけです。


まずは、マントラを正しく唱えることを学びます。長く感じるかもしれませんが、32音節しかありませんので、少しの努力で覚えられるでしょう。ゆっくりと繰り返しながら、一句一句の意味を見直すと、覚えやすいかもしれません。


マントラが覚えられたら、日々の瞑想を始めるときに、いつもの実践に対する祈りのひとつとして思い出してみましょう。体と呼吸を穏やかにしてから、3回、11回、21回、あるいは36回唱えます。そして、一行ごとのその音とリズムに心を集中させます。マントラで、意識を胸の中心や眉の間など最も自然だと感じる場所へ向けます。そして、その中心を意識の集中点としましょう。健康の問題のためにマントラを唱える場合は、意識をおへその中心に集中させます。


与えられた回数よりも、もっと繰り返して唱えたくなるかもしれません。そうしたくなるのには、多くの理由があります。不健康な、あるいはエネルギーの低い時期にあるのかもしれません。より深い安心感や自信を求めているのかもしれません。日々の暮らしの出来事にストレスを感じたり疲れているのかもしれません。あなたの死や、あなたが捧げている誰かの死が近づいているのかもしれません。


けれど多くの場合、この実践に惹かれる感情は、健康問題によるのものというよりは、命そのものとの調和の一部になりたいという深い衝動に促されることが多いのです。マントラの育みの性質は、人の心や感情の中で、光や水、土の力が植物の命に対するのと同様に働きます。このマントラは、人生の目的や意味を与えてくれる人格の質を強めてくれます。


マラ(108個のビーズでできた数珠)を使って、回数を把握します。数珠を一周したらマントラ100回繰り返したとします。実践を完了するには、40日間で8000回を繰返します。これは朝に数珠一周、夜に一周すると達成できます。


毎日、始める前に、マハ・ムリッチュンジャヤ・マントラの予言者である聖ヴァシシュタを思い出しましょう。ただ彼の魂を心に向けて、彼に敬意を払います。それから練習を始めましょう。時間が経てば、毎日、数珠を1、2周分唱えることが習慣になるでしょう。




光り輝く生命力


やがて、マハ・ムリッチュンジャヤ・マントラを唱える多くの理由がひとつひとつ現れてくるでしょう。人生を豊かにするためにしろ、死に向かう準備をするためにしろ、このマントラは根本的には自己実現のひとつの方法です。マントラが導く意識は、真の自分に存在する深く果てしない意識に他なりません。


このように、マールカンデーヤの物語は寓話的です。そして、人の命の神殿は人の体である、祈りや崇拝は瞑想によって達成する、不死によって私たちに祝福を与える精神のリンガは背骨の付け根から頭頂へと流れるエネルギーだということを思い出させます。そのエネルギーを目覚めさせることが、マールカンデーヤの信念の証となる行いだったのです。


もう1人の古代の聖人スータの言葉は、私たちに同様の方向性を示し、自分自身の実践を始めるよう促します。その言葉でこの記事を締めくくることにしましょう。




ああ、素晴らしき聖なる儀式を行う賢者たちよ
トリヤンバカほど慈悲深き神は他にない
彼は常に穏やかで喜びに満ちている
誠に、マハ・ムリッチュンジャヤ・マントラとともにそうである
マントラと繋がる者は、どんな苦難があろうとも
まごうことなく執着から解放されんことを
そして瞑想によって無限の者とならんことを

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