第5の体
圧倒的多数の人では、第5鞘がほとんど成熟していません。この鞘はアーナンダマヤ・コーシャといい、霊的な至福である「アーナンダ」として体験される最も微細な部分です。一般的に、聖者や賢者、真の神秘家だけが日々の生きた一部としてアナンダを体験するために心の鍛錬をしているものであり、このレベルの意識が自身の中にあることすら気づけない人が多いのです。
アーナンダマヤ・コーシャは、普通の意識とより高みにある自分自身との間にある最も薄い最後のヴェールであるため、ヨガにおいては極めて重要です。臨死体験をした人の多くは、明るく白い光が放たれて、知性や無条件の愛に包まれた体験をしたと証言しています。これがアナンダマヤ・コーシャの体験です。聖者や神秘家は心を清めることで、死の一瞬だけでなく人生を通してこれを体験するようになるのです。
タントラの伝統では多くの場合、精神は常に聖なる意識に身を沈めている超越的な神シヴァ神を象徴としています。物質やエネルギーは至高の女神シャクティと呼ばれ、この世界全てはこの女神の聖なる体です。シヴァとシャクティは言葉にできないほどの強く愛し合っていると言われています。この最高の愛は、アーナンダマヤ・コーシャで体験され、そこでは精神と物質は情熱的に結びついています。
私たちはこの至福の鞘を三つの実践によって覚醒させることができます。一つめは無私の奉仕、セヴァです。これによって他者と自身の内なる結びつきに心を開きます。二つめは神への献身、バクティ・ヨガです。これによってすべてに宿る聖なる存在と内なる結びつきに心を開きます。三つめはサマディです。非常に集中した瞑想で、自身の聖なる存在へ心を開きます。
輝く健康
あなたは多次元の生き物です。あなたの意識は、多くのさまざまなレベルに現れます。ヨガは、あなた自身へと導き、あなたという存在のすべてのレベルにおいて完全に優美に生きられるよう訓練してくれます。肉体の強化し調子を整えるハタポーズから生命力のバランスをとって活性化する呼吸法に至るまで、心をクリアに鎮める瞑想の実践から知恵と調和の内なる世界を開く自身の探求と無我の愛に至るまで、ヨガは人格の全ての部分を養い統合する総合的なシステムなのです。5つの体と内なる真我(その意識は全てを照らします)を知ることにより、健康と賢明な人生の満足感を体験できるのです。
5つの鞘を体験する
5つの鞘は空想的な概念ではありません。実際に体験できるあなたの存在の実在する部分です。以下の8段階の実践で、あなたの人格の内なる側面をより掴めるようになるでしょう。
心地よく座って、頭や首、胴体を直線上に置きましょう。無理をしないでまっすぐに座ります。気を配りつつ、もリラックスしていると感じるはずです。
両目を閉じて、視覚と周りの音から意識を離していきます。意識の全てをあなたの体に集中しましょう。気づきを頭、肩、胸、腰、背中、お腹、腕、脚へと向けます。これがあなたのアンナマヤ・コーシャです。
意識を鼻腔の間の一点に集中し、呼吸していることを感じます。徐々に呼吸がゆっくりと、スムーズにそして静かになります。体の中に脈うつエネルギーに意識を向けましょう。そのエネルギーのおかげで、心臓が脈打ち、肺が膨らんだり萎んだりし、血液が血管の中を流れ、お腹がグゥグゥと鳴ります。この動き(肉体そのものではなく)を統合している力がプラナマヤ・コーシャです。
意識を頭に移します。感覚のインプットと動作のアウトプットを調整している意識の部分に注意を向けましょう。この部分が、鼻が痒いと気づき、手に鼻を掻くよう命令する部分です。ここで、同じ姿勢で長い間座り続けたため不快だと、脚を動かしたいと気づきます。絶え間ななく心の中に湧き起こる反射的な心のおしゃべりが作られるところです。これがマノマヤ・コーシャです。
意識を、頭の中の高いところへと引き上げましょう。意識のこの部分が、意志を持ってこの練習をすると決めて、今も終わりまでじっと座っているよう命令しています。ここが自己認識を広げる価値を認識し、ベッドの中で微睡むほうが気持ちがいいとしても、朝早く起きてハタポーズや瞑想をするように言うのです。これがヴィジュナーナマヤ・コーシャです。
意識を胸の中心へと向けます。深くリラックスして、スムーズで均等な呼吸を続けます。それでは、必要なだけ時間をとって、深い静けさの中へと落ち着いていきましょう。その心の平穏に深く沈んだ状態が、純粋な幸福感です。これは感情的な幸福感ではありません。この状態を離れても、大きな喜びや感謝という感覚として内から流れ出してくるものです。完全な満足感、完全な調和、そして普遍の穏やかさの場所です。欠陥、恐れ、欲望の感覚はありません。これがアーナンダマヤ・コーシャです。
それでは、自身の意識へただ気づいてみます。この体験をした純粋な意識が、この体験を超えて存在します。それがあなたの本当の真我で、あなたの不死の存在です。そこに意識をおいたままできるだけ長く自分自身の中で安らぎを感じましょう。
意識を呼吸に戻します。ゆっくりとスムーズにそして均等に呼吸します。目を開けて。リラックスしてこの体験に浸る時間をかけてから立ち上がりましょう。
死から生へ、そしてその向こうへ
ヨガの書物の多くで、この5つの鞘が3つに分類されているのを見つけるかもしれません。肉体と生命力はシュトゥラ・シャリラ「粗大体」と呼ばれます。精神と知性はシュクシュマ・シャリラ「微細体、霊体」と呼ばれます。歓喜鞘はカラナ・シャリラ「因果体」と言います。これらはさまざまな霊的な伝統のなかで認識されています。1世紀にデルフィ神殿で最高神官を務めたギリシャのプルタルコスは、それらをそれぞれソーマ、プシュケー、ヌースと呼んでいました。