2023年7月6日木曜日

ヨガニードラと5つのコーシャ
Yoga Nidra and the Five Koshas


ヨギの眠りと言われるヨガニードラの瞑想は、コーシャという5つの大きな部分に基づいていていることが、ヨガの経典で述べられています。これらの層は「鞘」とも呼ばれ、肉体、エネルギー、精神・感情、より高度な知性、そして至福のかたまりがあります。ヨガニードラの聖典にあるように、各層はそれぞれに重要であり、瞑想中の実践者がその場に落ち着いて気が乱れないように働きます。


では、想像してみましょう。今、大好きなセレブに会うために、4人の友達と行列に並んでいます。そのセレブに挨拶してもらった友人Aは嬉しそうに興奮し、会えたことに満足しました。次に友人Bがセレブと会うと、興奮のためにすぐに座り込んで休まなければなりませんでしたが、その後はやはり満足しました。そして他の2人の友達もまたセレブに会って挨拶し満足感を得たあと、心を整理するために立ち去りました。けれど、セレブはあなたに会う前に立ち去らなけれななりませんでした。この出来事であなたは、気を揉んでがっかりしました。もしセレブが5人全員と時間を過ごせたら、あなたも満足してこの体験を分かち合いながらおしゃべりできたことでしょう。けれど、あなただけが会えなくて、もやもやして何かが間違っていると感じるでしょう。


これと同じことがコーシャにもいえます。もし、あるコーシャが見過ごされたり満足できなければ、そこに調和はありません。ですから、私はヨガニードラの指導者として、ヨガニードラから目覚める時にまとまったひとつの自分自身を感じられるように、各層を味わえるよう気を配ります。


では5つのコーシャを知り、ヨガニードラにどう関連するかを探りましょう。



1. 肉体の層


第一の層は、おそらく最も認知しやすい肉体的な層、アンナマヤ・コーシャです。文字通りに言えば「食物鞘」であるアンナマヤ・コーシャには、すべての筋肉、骨、腱、靭帯が含まれます。このコーシャは直接体験することができます。あなたの体ですから、あなたが見て感じることができます。


ヨガニードラの練習において、この層へはボディスキャンのように肉体的な体験とともに注意を向けます。「頭をリラックスさせて、腕、脚、上半身、下半身を緩めましょう」などのインストラクションを聞いたことがあるでしょう。体は直接話しかけられますし、観察できます。次の層へと移るに従って、ある意味では肉体への直接的な気づきが消えていきます。



2. エネルギーの層


第二の層はプラナマヤ・コーシャ、エネルギー体です。この層は知覚できますが、アンナマヤ・コーシャよりもかなり微細です。ヨガ哲学では、私たちのエネルギーであるプラナはナディと呼ばれる内部のエネルギー経路に沿って、呼吸とともに動きます。プラナは「呼吸」と訳される場合もありますが、呼吸そのものではありません。呼吸とともに働きますが、呼吸よりも微細です。


ヨガニードラでは、呼吸を観察することでプラナマヤ・コーシャと繋がります。息を吸ったり吐いたりするのをただ観察するように言われるかもしれませんし、指を使わないナディショーダナのような呼吸の練習をするかもしれません。「息を右の鼻から吸い込んで、少し止めます。左の鼻から吐き出して、止めます。左の鼻から吸い込んで、止まります。右の鼻から吸い込みましょう」などなど。呼吸に集中することで、体内のエネルギーの制限を緩めることが目的です。そしてこの層は、肉体の層と同様に消え去っていきます。



3. 精神・感情の層


第3の鞘はマノマヤ・コーシャ、精神の体です。これは、最も魅力的な層で感情のある場所だと言われています。怒りや恐怖に我を忘れたと感じる時(または上記の友達Bのようにスターに夢中な時)、私たちはこのコーシャにいます。マノマヤ・コーシャは、全ての状況における直感的な心の状態と関連していて、意識的にも無意識的にも自分自身や他者との関わり方をあらわにします。この層を押し殺し無視してなんとかしようとしても、感情は表層に(あるいはそれ以上に)突然湧き上がって、そんな感情や体の反応を抑えられない「限界点」に達してしまうこともあります。ですからこの層は、感情に操られることなく感情を体験できるヨガニードラで働きかけることができるのです。


ヨガニードラでは、全身の重さ軽さの感覚に気づいてください、心の中を感じとって、あるいはリラックスした時(またはそうでない時)のことを思い出してくださいと促されるかもしれません。この体験のすごいところは、マノマヤ・コーシャはまさに別の層だと感じられること、そして不安や幸福感や怒りはあなた自身ではないこと、ただ反応や内側で起こった感情にすぎないと気づくことです。


一度この層に触れられれば、この層もまた背後へと隠れていきます。



4. より高度な知性の層


この層はヴィジュナーナマヤ・コーシャ「理知体」で、より直感的なマノマヤ・コーシャよりも知的です。時々、思いがけなく洞察に富んだことが口から出てきて、「どこから出てきたの?」と自問することがあります。それがヴィジュナーナマヤ・コーシャの現れです。その他の例は、本能的な反応です。例えば、左右を見て確かめて何もなかったのに、毎日渡っている道を渡らなかったのがなぜだかわからない時などです。あなたの中の何かがその日は渡らないでと言ったのです。そしてその直後に急に車が飛び出てきたというような。違う道を選んだことで命が助かったのかもしれません。これは、ヴィジュナーナマヤ・コーシャが働いている時です。


ヨガニードラでは多くの場合、何かを想像するか、物語を使ってヴィジュナーナマヤ・コーシャに働きかけます。それはあなたを観察しているあなたです。よくわかりませんよね?高度な存在から見れば、あなたと私がいる場所に違いはなく分かれてもいません。熱帯雨林を歩いている自分を見ているとしましょう。深緑の葉を見ていると、明るいピンク色の花がどんどん大きく育って黄色い中心があなたの全身に光を投げかけます。聞くこと、見ること、感じることは深い内部から現れます。そしてこの層もまた背後へと落ちていきます。



5. 至福の層


第五の鞘はアーナンダマヤ・コーシャ「歓喜体」で、至福へと完全に浸った状態と表現できます。これは5つのコーシャで最も微細で、そこではあなたと神聖なものとの間にはほんの僅かな差があるだけです。


ヨガニードラでは、他の層のすべての練習においてこの層が存在しており、また旅の終わりの短い静寂や瞑想から出る前にも存在します。私は多くの場合、ここで1-5分間の静寂の時間をとります。そこには、主に実践の中でしっかりと受け止められている自分自身をただ感じるなど、探求するべきものが多く存在するからです。


ヨギの眠りから覚める時には多くの場合、体と呼吸、心との一体感を感じます。完全であること、そして穏やかな気持ち、完全な静けさのなかの心地よさなどを感じるのです。こんな感覚が持てれば、それはすべての層に働きかけられた証拠です。セレブがみんなを満足させようと会って挨拶し、みんなが穏やで落ち着いた状態で去っていったのです。


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