ずっと長くヨガを実践している人も、ヨガを始めたばかりの人も、「クンダリニ」という言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか?クンダリニといえば大抵は、呼吸法やチャンティング、同じ動きを繰り返す、そして最も特徴的である白い装束を着て行う現代のクンダリニ・ヨガを思い浮かべるでしょう。しかし、ヨガにおけるクンダリニの概念は、いわゆるクンダリニ・ヨガのスタイルのはるか昔から存在しています。
以下の記事では、クンダリニの歴史やそれが何なのか、そのユニークな質や効果、また現代のクンダリニ・ヨガとクンダリニ・シャクティの違いを探りましょう。クンダリニに関しては、さまざまな考え方や観点があり、ここに書かれた情報は、クンダリニに関してほんの表面に触れているに過ぎないということを念頭に置いておくようにしてください。
クンダリニの歴史
クンダリニが初めて言及されたのは、紀元前1000ー500年のウパニシャッドの中と言われており、身体的なアサナが書かれたハタヨガ・プラディピカのずっと前です。クンダリニ・エネルギーの概念は、ヴェーダやタントラ、ヒンズーのシステムにまでわたり、しばしば聖なる無限の力という意味のクンダリニ・シャクティと言われます。ヒンズー教ではクンダリニは女神とされ、その力は、背骨の根本にあるムーラダーラ・チャクラでとぐろを巻いて眠っているとされます。クンダリニはまた、15世紀にサンスクリット語で書かれたハタヨガ・プラディピカで、全てのヨガの目標となる最も重要なものとされています。
『扉が鍵によって開くが如く、ヨギは解脱への扉をクンダリニによって開く』
(第3章105節)
現代のヨガが発展しても、クンダリニの概念はヨガの多くの流派で中心的なテーマとなり続け、1968年には、シーク教の伝道師であるヨギ・バージャンによって「クンダリニ・ヨガ」と名付けられ、ヨガのスタイルのひとつとして広まるまでとなりました。
クンダリニは、内に秘めた見えない力を表している最も需要で力強いエネルギーだと言われ、精神の限界を超えたところに存在する知られざる偉大な領域のことを示します。「クンダル」とは「とぐろを巻いた」、「イニ」は「力」の意味であるので、つまりクンダリニとは「背骨の根本でとぐろを巻く眠れるエネルギー」という意味になります。クンダリニ・シャクティは、私たちひとりひとりが内に持っている全ての意識のエネルギーそのものとして見ることができます。多くの場合、3.5周巻いた蛇として描かれるこのパワフルなエネルギーは、マントラやムードラ、アサナ、プラナヤマなど肉体的、精神的なヨガの実践によって目覚めさせることができます。クンダリニ・シャクティが目覚めると、エネルギー体のチャクラ(エネルギーの渦)を通して上って精神の目覚めに至り、選択や気づき、豊な人生を生きるより大きな機会として現れます。
クンダリニのもつ5つの質
クンダリニ・シャクティに触れ始めると、より無限のエネルギー源へと近づきます。これによって、見えない力の完全性や広大さなど特別な性質を体現するのです。その性質とは以下の通りです。
1.ギヤナ・シャクティ:無限の知識と洞察
これを体現すると、困難への解決策がより多く得られ、楽に生きられる。
2.イッチャ・シャクティ:意志と決意
これを体現すると、物事を最後まで見通す意志が持てる。
3.アーナンダ・シャクティ:自己実現と真の喜び
これを体現すると、より多くの喜びや満足感が日々の生活にもたらされる。
3.アーナンダ・シャクティ:自己実現と真の喜び
これを体現すると、より多くの喜びや満足感が日々の生活にもたらされる。
4.チット・シャクティ:全体性への気づき
これを体現すると、より広い洞察と自己認識を得られる。
5.クリヤ・シャクティ:自発的な正しい行動
これを体現すると、正しい時に正しい行いをすることで、
自然に欠陥なく流れるための行動が可能になる。
自然に欠陥なく流れるための行動が可能になる。
クンダリニに重点を置いたヨガを実践することで、より多くの可能性やより大きな潜在的な力、そしてより多くの能力を包括した人生への扉を開くことができます。ハタヨガ・プラディピカには、幸せになるための可能性を大きくする、そして人生の真の目的により気づくためにクンダリニ・シャクティを目覚めさせることがすべてのヨガのゴールであると書かれています。
以下は、内なるクンダリニ・シャクティに近づくためのいくつかの実践法です。
クンダリニを目覚めさせる4つのヒント
- 力強いハタヨガで、腹部にあり火(アグニ)をおこしましょう。おへその中心は下位のチャクラを司るので、ここから始めてクンダリニが上昇する流れを妨げるすべての障害を取り除きます。
- 片鼻の呼吸などプラナヤマの実践を通して、プラナへの感覚を養い中心にあるエネルギー経路(シュシュムナ・ナディ)を浄化しましょう。
- 忘我、謙遜、感謝などバクティ、つまり祈りの要素を練習に取り入れましょう。日記を書いたり、ただ落ち着いて自分が大きな存在の一部であることを思い出す時間を毎日取りましょう。
- 瞑想や自問を通して精神の明晰さや気づきを養いましょう。
クンダリニの覚醒について覚えておくべきことは、クンダリニ・シャクティを目覚めさせるために特別にクンダリニ・ヨガを練習する必要はないということです。どんなヨガを選んだとしても、クンダリニのエネルギーの目覚めを促すヨガには様々な形があります。
クンダリニ・シャクティとクンダリニ・ヨガ
クンダリニ・シャクティがヨガ哲学に組み込まれた概念であるとともに、クンダリニ・ヨガは大変人気のある練習法ですが、この二つを区別し大きく異なる点を理解することは重要です。
クンダリニ・シャクティは、私たちがそれぞれ内に持つ意識の本質であり、より高度な気づきの入り口である一方で、クンダリニ・ヨガは、そのエネルギーを覚醒させる様々なテクニックを用いた組織だった実践法です。指導者から指導者へと伝えられてきたシーケンスやクリヤを使います。クンダリニ・シャクティは、クンダリニ・ヨガの上にある傘のようなものだと見ると良いでしょう。伝統的ハタヨガとその主題を共有してはいますが、自身の科学やテクニックに従っています。サンスクリット語を用いた伝統的なヨガとは異なり、現代のクンダリニ・ヨガのマントラはグルムキ(シーク教の聖典にある言葉)で唱えられます。クンダリニ・ヨガは独特の体験と豊かな教養をもたらし、現代の西洋社会でとても人気のあるヨガスタイルのひとつとなっています。
結論
この記事でお伝えした内容は、その奥深く豊かな歴史とヨガの実践と哲学全体に対するクンダリニ・シャクティの重要性についてのほんの一部にすぎません。心に留めていただきたいのは、習慣的なアサナや瞑想、プラナヤマ、そして自問が、自身の幸福感や気づき、人生の充実感を高める最も有効なツールのひとつとなり得るということです。つまり、クンダリニの覚醒のために試みていることや他の精神的実践などは、過去の聖者らが昔々に共有してくれたものと等しいのです。この地球、この宇宙、そして皆それぞれとの命の調和を真に理解することです。クンダリニを目覚めさせるということは、自身と生きとし生けるもの全てへの無償の愛を目覚めさせるということなのです。