2024年3月29日金曜日

アーユルヴェーダ的 春の過ごし方  Vol.1
Ayurveda Tips for Spring


季節の移り変わりに心と体を準備する


冬から春に変わる時期は、ワクワクする祝福の時です。動物も植物も昆虫も冬の眠りから出てきて、成長と可能性の季節へと目覚めます。アーユルヴェーダでは、春への移り変わりの時期は、最適に目覚めた状態で元気に過ごすため心を整理整頓して体を活性化する時期です。


春の性質は、暖かく、潤い、優しく、そして油分に満ちています。暖かさのおかげで、冬に蓄積した雪や氷は溶け始めます。同様に、蓄積された体内のカパ(潤滑や持続のエネルギーの維持に関わる心身の力)もまた液体となって流れ始めます。また、花々が花粉を落として甘い香りを放ち、多くの人が花粉症やアレルギーを起こします。


鼻水、鼻詰まりや喘息、アレルギーがあるなら、また、けだるさや貪欲、執着を感じるなら、おそらくあなたのカパが過剰になっているのでしょう。こうした症状を起こさないためには、カパを減らす養生法をするのが最も良い方法です。伝統的な以下の方法を試して、最高の春を楽しみましょう。




ジュースで活性化する


人参やビーツ、ブロッコリ、パセリ、リンゴ、ザクロ、ベリーなどの新鮮な果物や野菜で作ったジュースを飲んだり、夜に小さじ一杯のトリファラ(アーユルヴェーダの混合ハーブ)を一杯のお白湯で飲んで腸をきれいに保ちましょう。また、3ー10日間のパンチャカルマの浄化を試しても良いでしょう。


浄化と若返りの方法であるパンチャカルマは、季節の移り変わりの体をサポートし免疫を強化すると言われています。




カパを減らす活力を与えてくれるハーブを摂る


ショウガ

抗炎症と抗菌の特性を持つショウガは、消化を助ける完璧なスパイスであり、春の免疫をサポートする抗酸化物質も含まれます。
 

黒胡椒

サンスクリット語でピパリと呼ばれる黒胡椒は、かつては「黒い金」と言われていました。
骨の健康や傷の回復、代謝を助けるマグネシウムを豊富に含んでいます。


トリカトゥ

トリカトゥは、ピッパリ、ショウガ、黒胡椒を混ぜた伝統的なアーユルヴェーダの混合ハーブで、消化の火であるアグニと解毒プロセスを刺激するために使われます。
 

クトゥキ

クトゥキは、肝臓を助けるインドのハーブとして知られています。一般的に消化のために使われますが、肌の艶を良くするなど多くの効果があるとされています。
 

プナルナヴァ

プナルナヴァは「取り戻すもの」という意味で、過剰になったカパを取り除いてバランスをとり、全体的な健康感を促すために使われます。



アクティブに過ごす


夜明け以降に寝続けるのはカパ・ドーシャのバランスを崩すとアーユルヴェーダでは言われています。早起きをして朝の散歩をしたり、太陽礼拝や魚、船、バッタ、ライオン、ラクダ、のポーズや逆立ちなどの活力を与えるアサナで体を元気にしましょう。
 

バスティリカ、カパラバティ、ブラマリなどのプラナヤマを試してみましょう。





2024年3月27日水曜日

足裏の英知:アーユルヴェーダの足マッサージの効能 
Sole Wisdom: The Benefits of Ayurvedic Foot Massage



多くの精神的伝統では心身はつながっていると信じられていますが、足裏もまたつながっていると考えられています。世界中の信者らが彼らの指導者の足に触れたり、洗ったり、キスをして愛や敬意を示します。ヴィシュヌ神の足跡は、アジアの至るところの寺院や聖地で崇拝されています。そして古代エジプトでは、死者の魂を肉体から解放するため、葬儀人がミイラにする時に死者の足裏を取り除いていました。



古代中国やインド、エジプトなどの伝統治療法でもまた、足裏は全身の健康を写す鏡の役割をすると考えられていました。今日では、米国足病学協会がこの知恵を踏襲し以下のように述べています。「関節炎や糖尿病、神経や血流障害などの初期症状は足に表れることがある。したがって足の病は、より深刻な医学的問題の最初の兆候である可能性がある」


扁平足だったり、単に1日の終わりに足裏の痛みや疲れがあったりする時は、5分間の時間を取ってアーユルヴェーダの足マッサージをしてみましょう。ストレスや疲労を緩和するだけでなく、免疫を活性化し、感情のや3つのドーシャのバランスを取ることができます。自分の足裏を意識しながらケアすることで、心身と魂の健康を基礎が作られます。アーユルヴェーダのエキスパートであるヴァンサント・ラド氏のご厚意による転載、シャノン・セクストン氏の Sleep Better Tonight! 6 Bedtime Rituals からの抜粋である以下の手順を参考にしてください。




  • 椅子やベッドに座り、温めたセサミオイルやブラフミオイル、ジャタマンシオイルなどを両手で擦り合わせます。手のひらや指先を交互に使い、2分間、頭皮に小さな円を描くようにマッサージします。それから、両足へと移りましょう。


  • さらにオイルを足して右足を足首から爪先まで、小さな丸い動きでマッサージします。そして、足首から踵へ、そして足裏へ。


  • 手の親指で足の甲のスネの付け根辺りを押します。優しくゆっくりと足の親指の方へ滑らせましょう。


  • スネの付け根まで戻り、手の親指を足の人差し指まで滑らせます。中指、薬指、小指にもこの動きを繰り返しましょう。


  • 右足首を左膝に乗せ、右手を右足の甲に置いて手足の指どうしを組み、足を内側、外側へと丸く動かしましょう。


  • 組んだ指を放し、右手の親指で足裏の内側を足の親指から踵まで押していきます。


  • 手の親指を足裏の外側にも、足の小指から踵まで滑らせます。


  • を作って足裏を小さな円でマッサージします。関節を鳴らす時のように、それぞれの足指をゆっくりと引っ張りましょう。


  • この一連の手順を左足でも繰り返します。



マッサージが終わったら、温めた塩水をバケツに入れて両足を5分間浸し、緩んだストレスや毒素を引き出します。木綿のソックスを履き、枕にタオルを置いて眠りましょう。(朝は、長めのシャワーを浴びます。シャンプーで髪についたオイルを洗い流しましょう)













2024年3月18日月曜日

欲望との和解 
Making Peace with Desire

今回はヨガ哲学です。
ちょっと難しいかもしれませんが、自分とは何者なのか、真の自由についてどう捉えればいいのかの参考になればと思います。





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私は今、郊外の自宅で椅子に座って外の緑の丘を眺めている。そこには、鳥たち、花々、動物たち、樹々、心地よさ、誠実な家族、そして無私の奉仕の素晴らしい機会というような私を満たすものが全てある。ここには幸せに必要なものがいつも揃っている。それでも、このコテージの窓の外に、キャンピングカーが遠くの道を走ってくのが見えた時、心のどこかであのキャンピングカーに乗って虹を追いかけたい、そしていつか夢を叶えたいという落ち着きのない欲望が渦巻く。どこかに素晴らしい場所があるという思いが、どこに行っても追いかけてくるのだ。どこに行ったとしてもそれには辿り着けない、なぜなら「どこか」は絶対に「ここ」にはならないから。それに対して、もし喜びを今ここに、自分の中に見つけることができれば、それをどこにいてもどんな状況でも手にし続けることができる。これこそがキリストが言う「天の王国は内にある」ということなのだ。


欲望の対象は、「ここにある」もの、内側にあるもの、その価値次第だ。チョコレートケーキが食べたいと思っている限り、それはいくらかの喜びを与えてくれる、その欲望がなくなれば、チョコレートケーキに魅力を感じなくなる。目の前のテーブルの上に置くこともできるけれど、私に言わせれば、存在しなくなる。どんな欲望の対象にもその価値を与えるのは、欲望そのものだ。


少年が少女と出会って初めて手を握る時、彼はその興奮が一生続くと思うだろう。一年後にその少女に触れたところで意味はない。魅力が肉体的なものなら、その欲望が色褪せて消えてしまうのに長くはかからない。そこで少年は、他の少女に触れることで幸せが長く続くかもと考える、が、またがっかりするだけ。こういうことは何度も繰り返される。問題は少女のせいでも少年のせいでもない、ただ欲望は通り過ぎるものだからだ。


心というのは、終わりのない欲望だということができるだろう。ひとつ欲望が現れて、それが満たされて消え去ると、次から次から次へと現れてくる。心は欲望を持つものであり、そして欲望は変化するものだ。したがって、欲望を満たすことで永続的な喜びを見つけようというのは失敗に終わる運命にある。


例えば、ヨットが欲しいと思っている限りは、ヨットで航海することで幸せになれると信じている。もちろん、ヨットを所有してカリブ海に航海することでいくらか満足感はあるだろう。しかし、この満足感は欲望を持ち続けている間だけだ。その欲望が薄れ始めると(それは必然なのだが)その満足感もまた小さくなり始める。その欲望がついに消え去ると、満足感があった場所に退屈がおさまることになる。


欲望は何も悪いことではない。家を灯したり人を感電死させたりする電気のように、欲望に善も悪もない。私たちに行動させる最も強い力だ。悲劇が起こるのは、欲望が知性や意識的な意欲に対するものではない時だ。そして、私たちは運転席が空っぽでスピードをあげていくパワフルな車を持っている。あなたの街の全部の車が、運転手がいないままガレージから出てきてあちこち走り回る様子を想像してみてください。どれだけ事故が起こって、どれだけの命や物が失われるでしょう!自分の個人的な欲望に走れば、同じことが国家間や民族間、家族間、そして個々人で起こってしまう。私は欲しいものを追い求め、あなたも同じことをし、そうすれば遅かれ早かれ衝突する。



二元性の牢獄


圧倒的大多数の人間が、お金や所有物、快楽や名声を追い求めながら人生を過ごしている。これらは、泡のように持ち上げようとすると弾けてしまうはかないゴールに過ぎない。例えば、百万ドルを稼ごうとしている人は、その欲望の支配者というよりも被害者である。彼の目は自分の利益だけを見ていて、他者の幸福のことなど気づかない。


芸術もまた限界がある。多くの人に喜びを与えるかもしれないが、芸術家が自己中心的である限り全てを理解することはできない。目や耳といった感覚に制限された彼自身の人格に閉じ込められている。


科学者もまた二元性の牢獄に制限されている。彼らは「ここ」に座って「どこかの」星やバクテリアを研究する。最もパワフルな知能でさえ制限された道具にすぎず、物を分ける役にはたたない。絶えず一部分が働きその他が反応するという生きている全体像を見落としている。


命をひとつの全体として見るためには、個人的な快楽や利益、名声、権力のための欲望全てを削ぎ落とす必要がある。これらが私たちを突き動かしている限り、個人的な条件を通してしか命を見ることができない。命を、そのままではなく、自分の欲望に条件づけてとらえている。私があなたであるときのみ、私があなたを完全に知ることができるし、私が私である限り決して知ることはできない。誰かあるいは何かを完全に知るために、自分の人格だと信じている何かを削ぎ落とさなければならない。自分の人格だと信じているもの、それはサンスクリット語のアハムカラ、自分が世界の他のものとは異なる「私」であるとするものだ。


これは、マハトマ・ガンジーが言うところの彼自身をゼロにまで小さくが最後の目標だということだ。私は、こんな野望を抱く芸術家や科学者を知らない。ガンジーが何年もの霊的な修行を通してやがて自身をゼロにまで小さくできた時、命とは、その最も小さな部分が傷ついたとしてもそれは全体に及ぶ、分けることの出来ないひとつの命であるということを理解した。この命の一体化の認識により彼は暴力を放棄し、非暴力つまりアヒムサこそが地球上の国々や民族、家族を愛や奉仕によって一体にする最大の力であると明らかに示した。


偉大な芸術家の文化的貢献と偉大な神秘家の霊的貢献との極めて重要な相違を私たちは決して忘れてはならない。私にとって20世紀はスペース・エイジではなくガンジー・エイジだ。全ての命はひとつであるという不変の法則によって調和して生きる方法をこの時代に示してくれたのがガンジーだからだ。命のつながりについて絵を描いたり歌を作ったり、はたまた月に旅した訳ではなく(これらは価値のあることではあるが)、私たちの時代の最も恐ろしい問題に非暴力で直面することによってである。


もちろん文明は、芸術家や科学者、非凡な政治家たちのおかげで豊かになってきた。しかし、正しい道へと連れ戻し、自らの生涯を通して、全世界が試行錯誤を繰り返しながら向かう輝くゴールを垣間見させてくれたのは、偉大な神秘家たちである。ガンジーは自身の死ぬべき運命の肉体を脱ぎ捨てたが、彼の不死の魂、つまりアートマンは人々が暴力に背を向ける時はいつも体験することができる。


私のある友人は、瞑想でゾンビーにならないようにと知り合いから注意されたらしい。こんんな話を、意識から「私」という感覚を取り除くと人格を失うかもしれないと恐れる多く人から聞く。私は「人格(personality)という言葉はラテン語の仮面(persona)に関連している」のだよと気づかせる。アレクサンドル・ドュマの小説の中で、ルイ16世の双子の兄弟が鉄仮面を長年着けさせられたためにそれが彼の一部になるという話がある。どんなに試して見ても、仮面を取って彼の本当の顔を見せることができなかった。これは私たち皆と同じである。何年間も(あるいは人生何回分も)、私たちの心は、個人的な快楽や利益、権力、名声に対する欲望を満たすための終わりのない努力を通して、利己的で個人的でいるクセを身につけてきた。この分離の仮面を取払うことができたら、真の人格であるアートマンは美しく叡智と愛に輝くことだろう。


個人的な欲望がなければ、行動する動機などあり得ないではないかと言う人もいる。この問いに対してもまたガンジーの人生が最良の答えだ。彼の人格とゲームを楽しんでいる間、若いガンジーはロンドンで弁護士のディナーを食べ、バイオリンを練習し、ダンスを覚えようとした毎日を過ごして満足していた。その後南アフリカで、そこで酷く搾取されていた何千人ものインド人のために働くため自分の快楽や利益に背を向けた時、ガンジーは夢にも見たことのない深い心の源を見出した。自分の欲望を満たして生きていた間は、愛や叡智、勇気、素晴らしい行動の宝庫には気づかなかった。しかし自分のために生きるという小さな取るに足らない動機を放棄した途端、長く健康的で行動的かつ満たされた人生を過ごすための深い意識レベルにある途切れのない動機を見つけたのだ。




真の操縦者


自分のために生き、個人の功績への欲望に駆られている時は、自分自身が操縦者であり全てを行なっており、ハンドルを握っているのは自分だと信じずにはいられない。その結果、自分の行動の結果に固執し、成功に浮かれ失敗にがっかりすることになる。偉大な博愛家であっても神秘家らが締めそうとしている壮大な真実を垣間見ることもない。真の操縦者はこの小さな個人的な「私」ではなく、アートマン、真の我である。これが理解できていないと、努力が勝利となるか敗北となるかに悩んで消耗するのだ。ガンジーはインドの人々の社会的地位向上のため不断に働いたが、「行動の結果(個人の利益)」を放棄することによって、操縦者あるいは行うものとしての重圧から自由になった。


「あなたには行動する権利がある」とバガヴァド・ギータにある。「しかし行動の結果に対してはない」結果に対する不安、自分の思ったようにならない恐怖、見たところ最善の結果にならない恐怖は、消耗や疲弊をもたらす。行動の結果への欲望を捨て、無我の方法で無我の目的に向かって一所懸命働くことができれば、成功であろうと敗北であろうと最善の状態で働くことだろう。そして、敗北すらもまた機会となる。


行動の結果への執着を捨てることは、幾分か深いレベルの霊的な体験がなくては不可能である。霊的な気づきが深くなればなるほど、自分が行動の媒体であると信じさせる自己意志の制圧から自由になれる。


「自分が操縦者であるという思いからどうすれば自由になれるか?『神の意志が行われ」るためにどうすれば自己意志の自身を空にできる?自分の意思とは何か神の意思とは何かどうすればわかる?自分の自己を空にして、どうすれば聖フランシスコが言った「完全な神の平和の道具」になれるのか?」これらの問いは、誠実に、計画的に、そして持続的な熱意を持って実践すれば瞑想で得ることができる。答えは声や視覚では現れないが、ゆっくりと安定した識別と非執着の成長を通して得られる。古い欲望は私たちを掻き立てる力を失い、目の前にあったベイルが一枚ずつ落ちていき、視野が穏やかで明確になり、以前は自身の小さな部分しかなかった場所に全体を捉えることが可能になるのだ。


私はここに居て喜びはあちらにあると考えるのは、命の自分の一角だけを見ている時だ。一度全体を見れば、サマディと呼ばれる瞑想の境地を知れば、私はそこにもここにも居ることがわかる。私は誰の中にも何の中にも存在し、誰もかも何もかもが私の中にある。もう虹を追いかける必要もないし、人や物を所有する必要に駆られることもない。私は完全である。





 (出典)https://yogainternational.com/article/view/making-peace-with-desire/

2024年3月12日火曜日

心臓の健康へのヨガの5つの効果 
5 Heart-Health Benefits of Yoga

ヨガが高齢者の健康に大きな効果をもたらすことはすでに知られています。
そのひとつは、心臓にとても良いということです。






ヨガが心身に良いのは、柔軟性や体力増強、エネルギーや気分向上などの効果をもたらすからです。また、心臓にも良いというますます多くのエビデンスが出てきています。


何千年も前のインドに起源を持つヨガは、これまで数多くの臨床研究の対象となっており、太陽礼拝やダウンドッグなどに対するエビデンスは強固になってきています。一例を挙げれば、米国心臓学会の2023年アジア会議で発表された研究では、ヨガが心不全患者の循環器機能向上とともに、忍耐力、体力、バランス、そしてQOLを向上させることが認められました。


もし心臓に問題があるのなら、どのレベルのヨガがあなたに適しているのか医師に確認しましょう。もしヨガを始めようと思っている、あるいは健康に不安がある場合は、クラスの前にインストラクターに相談しましょう。インストラクターが、一緒にクラスが受けられるようにコツやバリエーションを教えてくれるはずです。



1. ヨガは体の運動を促す


CDC(米国疾病予防管理センター)によれば、運動不足は、米国の男女No.1の死因である心臓病の原因になります。


しかし、遅すぎることはありません。研究によれば、ヨガをする人はより活動的で健康的な食事をする傾向が高く、それが心臓を守ってくれています。2018年5月「International Journal of Behavioral Nutrition and Physical Activity」で発表された研究では、ヨガを習慣的に実践している若年層はより健康的な食生活を送っており、より中高レベルの運動をより長時間行っているとわかりました。2020年8月の「International Journal of Environmental Research and Public Health」に発表された他の調査では、ストレッチをするエクササイズは、心臓や全身に血液を送り出す動脈硬化を著しく減少させ、中高年層における心機能を向上させることを示しています。


米国心臓協会(AHA)が薦めるのは、総合的な心臓の健康のためには中程度の有酸素運動を少なくとも30分、週に5日以上行うことです。中強程度の筋トレを週に2日以上行うと、より効果が得られるそうです。



2. ヨガがストレス解消に


ストレスがどれほど心臓病に関係しているのかを研究者もはっきりとは確定することはできない一方で、ストレスが心臓病のリスクを上げる習慣や要因を増加させる可能性があります。これには、喫煙や運動不足、過食、高血圧などが含まれます。


ヨガの実践者には、精神衛生の向上、リラックス感の増加、気分の向上などがみられると研究で示されています。心身の実践は、落ち着こうとする神経である副交感神経を調整するのに役立ちます。2020年8月「Stress & Health」で発表された研究では、呼吸法や瞑想をするヨガクラスの参加者のストレス受容減少とマインドフルネスの高まりが示されました。


「ほとんどのストレス解消テクニックでは、呼吸に意識を向けます」ミシガン州ビンガムファームスの「Kahn Center for Cardiac Longevity」の循環器医師ジョエル・カーン博士はそういいます。「全てのヨガで不可欠なもののひとつは、呼吸への気づきとよりマインドフルであることです。つまり、外から見てわかる、あるいはわからないストレス解消の意識付けが、ほとんど全てのヨガクラスに内在しているのです」



3. ヨガが高血圧リスクを下げる可能性も


2021年9月の「Scientific World Journal」で発表の系統的な再調査では、ヨガで高血圧をコントロールできる可能性を示しました。


瞑想や呼吸、ヨガの練習が、高血圧前症の患者における拡張期・収縮期血圧(血圧の最高と最低の値)を下げるとされる数多くの研究を再調査しました。再調査では、体系化されたヨガポーズや呼吸法の「服用量」は確認できなかったものの、高血圧や心臓病を起こす可能性をヨガが減らすことができると研究者らは結論づけました。


「ヨガの生理学的な効果は、神経系の福交換神経を高めることだということはわかっています」コロンビア州のミズーリ医科大学の産科医であり、ヨガの血圧に対する効果の研究を行っているシャミタ・ミスラ医師は述べています。「心拍を下げ、心臓の働きを抑えます。心拍が少なくなればなるほど、そのひとつひとつはより強くなります」



4. ヨガは不整脈を落ち着かせる可能性も


心房性細動は、早かったり不規則に打つ異常な心拍リズムのことで、心不全やその他合併症の原因となります。2022年の「European Society of Cardiology Congress」で発表された研究では、ヨガが心房性細動患者の症状を抑える可能性を示唆しました。研究は、2012年から2017年、538人に対して実施されました。被験者らは、12週間ヨガをしないで、その後16週間毎日、ポーズや呼吸を含めたヨガのセッションに30分参加しました。その16週間の間は、被験者たちの発作の回数が減少しました。


「心房性細動患者の治療の中で、発作回数を減らすのにヨガが役立つ可能性があるかもしれない」ニューヨークのブロンクスにある「Cardiac Wellness Program at Montefiore Medical Center」の創設者であり管理者のロバート・オストフェルド博士はそう述べています。



5. ヨガは共同体意識を促す


心不全など深刻な心臓疾患を経験した患者の多くは、社会からの孤立感を感じたり、うつ状態になったりすることがあります。「外出するのが安全ではない、外出するほど元気でないと感じるのです」オストフェルド博士は言います。「初めて自らの死に向き合っているからでしょう。あるいは、今まで可能だったこと全てができるわけではないという事実に直面したからかもしれません」


ヨガがそれに役立つかもしれないというエビデンスがあります。米国医学協会の機関誌に発表された研究では、メイン州の農村で、循環器リスク要因と行動変化を対象とした共同体プログラムに参加することが、死亡率や入院率の低下と関係があることがわかりました。


ヨガは共同体意識をもたらすことができ、それが鬱や孤独感を和らげます。「ヨガクラスでは、安全な環境の中で、他の人と一緒に流れるように動いて繋がることができます」カーン博士は述べてます。「社会的交流の効果を数値化することは困難ですが、もし健康問題のある人たちが自宅にいるような心地よい環境にいられれば、人はより健康的な選択ができるようになると考えています」


ヨガはまた、特に認知行動療法など通常の治療と組み合わせると鬱症状を緩和することができると、2019年5月に「American Family Physician」に掲載された研究が示しています。また2023年9月に「International Journal of Old People Nursing」で発表された再調査では、60才以上の成人で、鬱や不安症のレベルがヨガで向上することがわかりました。




自分に合ったヨガクラスを選ぶ方法


ヨガクラスを試したくなりましたか?ヨガには多くのスタイルがありますが、ひとつだけにこだわる必要はありません。また、難しい1時間のクラスに飛び込んでもすぐに効果があるというわけでもない、とミスラ博士は言います。
「そんなに長い時間は必要ありません。私の研究では、ただヨガの呼吸を15分行っただけで結果がみられたからです。しかし、有益な結果を得るために何分間のヨガが必要なのかというような情報はありません」


  • ハタヨガは、西洋社会で通常行われているヨガの流派で、身体的なポーズの練習のことを示します。ヴィンヤサ、アイアンガー、アシュタンガなどのヨガがありますが、これらすべてはハタヨガに分類されます。どんな運動でもm始める前に医師に確認しておきましょう。

  • ヴィンヤサ・ヨガは「フローヨガ」とも呼ばれ、呼吸と動きの組み合わせが中心となります。クラスは、パワーヨガやアシュタンガなどペースが速く強度の高いものから、スロー・フローやアライメントを重視したクラスなど健康状態や身体的な制限がある人やビギナーに適したより穏やかなものまであります。

  • ホットヨガは熱した室内で行われます。今は様々なタイプのホットヨガがありますが、最も人気があり最も熱いのがビクラムヨガで、40°Cにまで熱した室内で26のポーズと2つの呼吸法を行います。心臓に何か問題がある人や極度の暑さに敏感な人などは体調を悪化させる恐れがあるので、オストフェルド医師によれば、このヨガは避ける方が良いでしょう。

  • アイアンガーヨガは異なるポーズを通して体のアライメントに注目するタイプのヨガです。他のスタイルのヨガとは異なり、個々人のスキルレベルや体のタイプに適合するよう、椅子やブロック、ベルトなどのプロップスを使います。

  • 「トグロを巻いた蛇」という意味のクンダリニヨガは、呼吸法、チャンティング、音楽、瞑想、そして動きを組み合わせたものです。その目的は「蛇を解」き、背骨の基底部から頭頂までのエネルギーを解いて7つのチャクラ(体内のエネルギーがある場所)を目覚めさせることです。よりスピリチュアルなヨガであるクンダリニは、ストレスや不安を解消するのによい選択となるでしょう。

  • よりゆっくりとしたスタイルの陰ヨガは、同じポーズを5分以上保つので、ビギナーが始めるには難しいかもしれません。またこのスタイルは瞑想的な性格を持っているので、クンダリニヨガよりは少し身体を動かしたいけれどヴィンヤサヨガほど動かないクラスを探している人にはぴったりかもしれません。

  • ゆっくりと穏やかなリストラティブヨガは、呼吸に集中できるような長く保つストレッチで全身を開くことに重点を置いています。様々なポーズで全身をサポートするため、ブロックや枕、クッションなどプロップスが使われます。この安らぎを与えてくれるヨガは、痛みを緩和し精神的な幸福感を高めるのに良い方法です。