2024年7月26日金曜日

熱さをしのぐ呼吸:シタリとシトカリ 
Beat the Heat: Sitali and Sitkari


夏の暑さにイライラしていませんか?怒りに顔が赤くなったり、ホットフラッシュに悩まれていませんか?昔々のヨギは、コップ1杯の水を飲む間に体を落ち着かせることができる、涼しくするプラナヤマ(調気法)を見つけました。


ヒマラヤの山奥で古代の聖人たちは、体や呼吸、精神を制御しようという壮大な試みのため、周りの世界を観察して模倣しました。鳥の曲がったクチバシ、新芽が伸びる様子、コブラのシューっという声に気づき、こうした形状と音を真似てシタリという実践(涼しくなる呼吸)を行いました。このプラナヤマでは、吸気は丸めた舌を通って湿り気を帯び(鳥のクチバシと新芽)、水分で飽和した空気を「飲む」ことになります。


この実践は、呼吸への気づきを確立する以外にも空腹感や喉の渇きを落ち着かせ、一人で過ごす時間への愛を養うと言われています。また、シタリは体を冷やすとともに水分を与え、そしてそれはアーユルヴェーダ的に言えば夏によくみられるピッタバランスの崩れを落ちつかせます。さらに、この呼吸法は、疲労感、口臭、熱、高血圧を軽減します。







シタリの実践法


  • 頭と首、背骨をまっすぐにして心地よい姿勢で座ります。

  • 目を閉じて数分間、腹式で呼吸してから、口を開けて口元を「O」の形にします。

  • 舌を縦に丸めて口から突き出します(約2cmほど)。

  • ストローで飲む時のように、舌から口の中へと深く息を吸います。

  • お腹と胸の下が膨らむと同時に、呼吸の涼やかな感覚に注意を向けます。

  • 舌を引き込んで口を閉じ、鼻腔から息を吐き切りましょう。

  • シタリを2、3分間続けたら、腹式呼吸に戻ってまた数分、そしてまたシタリを2、3分間長く繰り返します。そうやって徐々に10分間まで延ばしていきましょう。



舌を丸められない?シトカリを試しましょう


  • 目を閉じて心地よく座ります。

  • 上下の歯を優しくくっつけて、心地よい範囲で唇を開き、歯が空気に触れるようにします。

  • 歯の隙間から息をゆっくりと吸い込み、呼吸のシューっという音に意識を向けます。

  • 口を閉じて息を鼻からゆっくりと吐きましょう。

  • 20回まで繰り返します。この実践をシトカリと呼びます。ハタヨガ・プラディピカによれば、シトカリには冷やす効果に加えて内分泌系のバランスを取り活力を高めます。



シタリとシトカリの注意点


シタリやシトカリは体温を下げるため、暑い季節や力強いアサナの後、または熱をつくるプラナヤマ(バストリカなど)の後に行うのが最適です。


ヴァータやカパの体質の人にとっては、冬季のシタリやシトカリは適切ではないかもしれません。また、いつ練習するかにかかわらず、体温に近い温度の空気を吸い込むようにしましょう。息が鼻腔で温められないため、冷たい空気は肺を害する可能性があるからです。






2024年7月23日火曜日

夏のピッタのバランスをとる方法 
How to Balance Pitta in the Summer






何千年も前のインドでは、熱い夏の夜の満月の下で、アーユルヴェーダの癒者は青と白の蓮から露を集めて薬用のために保存していました。聖典によれば、その貴重な露の一粒を舌にのせると、全身が冷やされると言われています。この「月の汗」は、外が暑い時期に体が暑くなりすぎる原因となる代謝をコントロールする微細なエネルギーであるピッタ・ドーシャを鎮静します。



脱水している、汗をかいている、あるいはイライラしていると感じたら、おそらくピッタが過剰になっています。その他の眼に見える兆候には、皮膚の炎症、胃酸過多、体のほてり、目の充血、激昂しやすいなどがあります。


しかし、ピッタのバランスが良い時は元気でいられます。類を見ないようなエネルギーややる気に溢れ、精神は明晰に、喜びや生命力、体力を感じられます。ここでは、夏の暑さの中でピッタのバランスをとるヒントをお伝えしましょう。



正反対の原理


アーユルヴェーダの知恵は「似たものは似たものを増やす」という考え方に基づいています。例えば、外が32℃の時に、気性が激しく怒りっぽいビジネスマンが熱いスパイシーなものを食べたら、ただもっと熱くなってよりイライラすることでしょう。そこでアーユルヴェーダでは崩れたバランスを正反対のもので治療するのです。おそらく癒者は、彼の過剰な火を鎮静するためにキュウリのように冷やす食べ物を勧め、水泳に行ったり、「立ち止まって薔薇の香を楽しむ」時間を取るように言うでしょう。この原理はとても単純なため見過ごされがちなのですが、いったん日常生活に取り入れてみれば心身のバランスをすぐに取り戻せることに驚くことでしょう。



何を(いつ)食べるかに注意する


🟠太陽が熱くなる前に朝食と昼食を取る


私たちの消化の火であるアグニは夏に弱くなるため、涼しい季節よりも食欲が弱まります。実際、最も弱るのは日中の一番熱い時間帯です。朝食や昼食を午前11時前に、そして日が沈み始める時に軽い夕食をとるようにしましょう。


🟠この夏は水分をたっぷりと


毎日、コップに4-6杯の水、新鮮なココナツウォーターやスイカジュースなどの冷やす飲み物を飲みましょう。キュウリミルクを、皮を剥いたキュウリ1/2カップと牛乳1カップ、砂糖ひとつまみを混ぜ合わせて作り、薔薇の花びらを添えましょう。または、電解水を作りましょう。ライムジュースと砂糖を小さじ1杯ずつ、岩塩をひとつまみをの冷たい水カップ1杯に加えます。


🟠夏の間は熱く、辛い、塩っぱい食べ物を避ける


これらはピッタ・ドーシャを増やします。強いお酒、赤ワイン、赤みの肉もまた、夏には熱を高め過ぎになります。


🟠その代わりに、甘く、苦く、渋いものを食べる


これらの味覚はピッタを鎮めます。夏に良い食べ物は、牛乳やヨーグルト、ギー、キュウリ、りんご、梨、メロン、スイカ、フレッシュのコリアンダー、アスパラガス、アーティチョーク、ブロッコリ、バスマティ・ライスなどです。朝食には、小麦を牛乳で炊いたクリームにカルダモンと砂糖を少し足して食べてみましょう。昼食や夕食には、1日に必要な葉野菜をとります。オリーブオイルやサザンアイランド・ドレッシングでフレッシュなサラダを食べるのが理想です。デザート?タピオカ・プディングや小さじ半分の砂糖を加えた甘いヨーグルト1カップが良いでしょう。



太陽と月


適度な日光は健康や幸福のために不可欠ですが、月光も同様です。その効果を最大限にするヒントをご紹介しましょう。


🟠午前10時から午後3時の直射日光を避ける


日中の暑い時間を戸外で過ごすなら、皮膚が呼吸できるように緩く心地の良い綿や絹の服を着ましょう。白や青、緑、灰色など日光を反射する色を着て、サンダウウッドのビーズや翡翠、真珠、アメジストやムーンストーン、マラカイト、銀など冷やすジュエリーを身につけましょう。そして、広いツバのある帽子で頭部を守りましょう。


🟠熱の中で運動をしない


夏は、水泳やスキューバダイビング、ウォーター・ポロなどウォータースポーツが理想的です。しかし、運動は早朝や夕方遅くに留めておきましょう。


🟠日焼けをしずませる


サンダルウッドとターメリック同量の粉を少しの冷水で混ぜて、そのペーストを日焼け部分に塗ります。または、アロエヴェラのジェルやココナッツオイルを肌に擦り込ませましょう。


🟠月光浴をする


夜、ビーチや涼しい草地を散歩します。白い服を着て白い花を髪につけると、ピッタ・ドーシャを鎮める月の涼やかな光線を取り込むことができます。




夏のヨガ・アサナ


冷やす効果のあるポーズには、魚、ラクダ、船、コブラ、牛、ツリーポーズなどがあります。シタリ・プラナヤマを実践しましょう。また、瞑想も忘れないで行いましょう。心や感情の熱を落ち着かせられます。





(出典)https://yogainternational.com/article/view/how-to-balance-pitta-in-the-summer/



2024年7月1日月曜日

マルハナバチの呼吸の練習 5つの方法 
5 Ways to Practice Bhramari


「息を吐きながら、雌ミツバチの音をだしましょう」バンガロール郊外にあるスワミ・ヴィヴェーカーナンダのアシュラムでのクラスに参加していた時、サリーに身を包んだインストラクターが優しく穏やかに言いました。同じ年の後半、ロッキー山脈の会議でもまたハチの羽音のプラナヤマをロッド・ストライカーと共に行う機会がありました。標高が高かったせいなのか、それともその日のストライカーの教え方が良かったのか、その日はこの古代のブラマリの練習はどういうわけか私の身に染み込んできました。穏やかさと明瞭さを感じ、クラスが終わっても長い間私の中でその音が共鳴し続けました。そうして毎日練習するようになり、今では数年になります。ブラマリによって音波の物理的な振動に敏感になり、全く思いがけないことに、それまであまりやろうとしなかったチャンティングをやりたいと思うようになったのです。



ブラマリの効果


ブラマリは安全で容易に習得できる実践で、とてつもない癒しの可能性を持っています。他のプラナヤマと同様、その力は自律神経(ANS)に対するいくらかの効果にあります。吸気よりも呼気を長くすることで、自律神経の鎮静の副交感神経が活性化されます。心配や不安(ラジャが強い)に伴う鬱に悩まされる人にとって、この実践は数呼吸のうちに心を落ち着かせ始めることができます。ブラマリの絶え間ないぶうんという音は、感情的な苦痛を増加させる頭の中の終わりのないループを消し去ってくれ、瞑想するには心が『忙しすぎる」人にとって有益な出発点となります。




始めましょう


床や椅子の上で心地よい姿勢で座ります。床に座る場合は、太腿が降りて腰椎が自然な曲線を保つのに必要な支えを骨盤の下におきます。椅子の方が良ければ、太腿が下向きになって両足が平らに床に付くよう、少し前に移動して座面の端に座りましょう。(足が床に付かなければ、2つのヨガブロックの上に載せます)


常に力とくつろぎとのバランスを取ります。穏やかな音量で羽音を出しますが、無理に出そうとはしません。顔の筋肉を緩め、上下の唇は軽く触れた状態で、顎の力を抜き、上下の歯は少し離しておきます。羽音の音を心地よい範囲で長く吐いて、息を切らさないようスムーズに息を吸います。不安を感じ始めたら、無理をせず普通の呼吸に戻りましょう。





基本のブラマリ


心地良く座りそっと目を閉じます。1、2回呼吸をして落ち着き、心の状態に気づきます。準備ができたら息を吸って、それから息を吐き切って喉から中低音でハミング音を出します。音の波が舌や歯、鼻腔を優しく振動するのに気づきます。音が頭全体に振動しているのをイメージしましょう(実際に振動しています)。この練習を6回繰り返してから、目を閉じたまま、普通の呼吸に戻りましょう。何か変化があったかに注意をむけます。




無音のブラマリ


もう一度、1、2回呼吸におちついて準備します。基本のブラマリを6回行います。6回終わったら、無音のブラマリにうつります。吐く息ごとに羽音を出していることをイメージします。6回行いましょう。顔や鼻腔に振動の感覚が感じられるかに注意を向けます。




シャンムキ・ムードラのブラマリ(バリエーション




ブラマリの効果を強める方法のひとつは、シャンムキ・ムードラです。ブラマリは、プラティヤハラを促し五感を内に向かわせるので、外的な五感へのインプットを指でいくらか遮断することでその効果を高めることができます。まずは簡単なバージョンを試しましょう。親指で耳珠(耳の入口の軟骨の出っ張り)を押し、外耳道を閉じます。中低音のブラマリを6回繰り返しましょう。終わったら、手を下ろして普通の呼吸をします。




シャンムキ・ムードラのブラマリ(伝統的)





背筋を伸ばして座り、両手を顔に、親指は耳珠、人差し指は目頭に軽く触れ、中指は鼻の横、薬指は唇の上方、そして小指はその下におきます。眼球にはほとんど圧力がかからないように気をつけましょう。中低音のブラマリをさらに6回行い、両手を下ろして効果に意識を向けます。もし不安や鬱、閉所恐怖症などがあれば、シャンムキ・ムードラでくつろぐことはできないでしょうから、やらない方が良いでしょう。





高音のブラマリ


音を出している時は、感じようと感じまいと、頭のてっぺんからつま先まで文字通り振動しています。異なる高さの音は異なる周波数で振動しています。ベースの音や低い音はゆっくりと振動し、高い音は1秒に何千回という速さで振動します。


リラックスして座る姿勢に戻ったら、目を閉じて数回普通に呼吸をします。次に、シャンムキ・ムードラをして、あるいはせずに高音のブラマリを6回行いましょう。どこに振動を感じるかに意識を向けます。おそらく、低音と比べて頭の高い位置に振動を感じるでしょう。高音のほうがより刺激を感じるでしょうか?さまざまな音程、音量の音を試して結果を比べてみましょう。







ブラマリの処方


ブラマリの治療に応用できる可能性を科学的に研究したものはとても少ないのですが、ヨガの伝統は、うまく選んだ音には力強く健康によい効果があることを教えてくれます。ブラマリの音波が甲状腺に直接的な効果はないとわかったとしても、その効果はより調和のとれた神経系、穏やかな心、気づきの高まりなどが含まれることでしょう。このように、今ブラマリを終えたばかりの状態で、また背筋をのばして座りオームなどよく知ったチャントを数回唱えてみて全く新しい様子で聞こえてくるかどうかを見てみましょう。


音が共鳴する場所と同様に、異なる音程や音量のエネルギー的効果もまた、特定の状況で最もどのブラマリに最も効果があるのかを示唆してくれることでしょう。
  • 不眠:静かで低い音を、シャンムキ・ムードラをしながら行うと神経や心を落ち着かせることが可能かもしれません。
  • 副鼻腔感染や鼻詰まり:より強力な中高音程の音が通路を開くのにより良い選択かもしれません。
  • 甲状腺の問題:中音程でジャランダーラ・ムードラ(顎で閉める)を使いながら喉に音波を送る。
  • ストレス:無音バージョンを試しましょう。仕事中や外出中などで周囲の誰もがもあなたが何をしているのかに気づきません。