「息を吐きながら、雌ミツバチの音をだしましょう」バンガロール郊外にあるスワミ・ヴィヴェーカーナンダのアシュラムでのクラスに参加していた時、サリーに身を包んだインストラクターが優しく穏やかに言いました。同じ年の後半、ロッキー山脈の会議でもまたハチの羽音のプラナヤマをロッド・ストライカーと共に行う機会がありました。標高が高かったせいなのか、それともその日のストライカーの教え方が良かったのか、その日はこの古代のブラマリの練習はどういうわけか私の身に染み込んできました。穏やかさと明瞭さを感じ、クラスが終わっても長い間私の中でその音が共鳴し続けました。そうして毎日練習するようになり、今では数年になります。ブラマリによって音波の物理的な振動に敏感になり、全く思いがけないことに、それまであまりやろうとしなかったチャンティングをやりたいと思うようになったのです。
ブラマリは安全で容易に習得できる実践で、とてつもない癒しの可能性を持っています。他のプラナヤマと同様、その力は自律神経(ANS)に対するいくらかの効果にあります。吸気よりも呼気を長くすることで、自律神経の鎮静の副交感神経が活性化されます。心配や不安(ラジャが強い)に伴う鬱に悩まされる人にとって、この実践は数呼吸のうちに心を落ち着かせ始めることができます。ブラマリの絶え間ないぶうんという音は、感情的な苦痛を増加させる頭の中の終わりのないループを消し去ってくれ、瞑想するには心が『忙しすぎる」人にとって有益な出発点となります。
始めましょう
床や椅子の上で心地よい姿勢で座ります。床に座る場合は、太腿が降りて腰椎が自然な曲線を保つのに必要な支えを骨盤の下におきます。椅子の方が良ければ、太腿が下向きになって両足が平らに床に付くよう、少し前に移動して座面の端に座りましょう。(足が床に付かなければ、2つのヨガブロックの上に載せます)
常に力とくつろぎとのバランスを取ります。穏やかな音量で羽音を出しますが、無理に出そうとはしません。顔の筋肉を緩め、上下の唇は軽く触れた状態で、顎の力を抜き、上下の歯は少し離しておきます。羽音の音を心地よい範囲で長く吐いて、息を切らさないようスムーズに息を吸います。不安を感じ始めたら、無理をせず普通の呼吸に戻りましょう。
基本のブラマリ
心地良く座りそっと目を閉じます。1、2回呼吸をして落ち着き、心の状態に気づきます。準備ができたら息を吸って、それから息を吐き切って喉から中低音でハミング音を出します。音の波が舌や歯、鼻腔を優しく振動するのに気づきます。音が頭全体に振動しているのをイメージしましょう(実際に振動しています)。この練習を6回繰り返してから、目を閉じたまま、普通の呼吸に戻りましょう。何か変化があったかに注意をむけます。
もう一度、1、2回呼吸におちついて準備します。基本のブラマリを6回行います。6回終わったら、無音のブラマリにうつります。吐く息ごとに羽音を出していることをイメージします。6回行いましょう。顔や鼻腔に振動の感覚が感じられるかに注意を向けます。
シャンムキ・ムードラのブラマリ(バリエーション
ブラマリの効果を強める方法のひとつは、シャンムキ・ムードラです。ブラマリは、プラティヤハラを促し五感を内に向かわせるので、外的な五感へのインプットを指でいくらか遮断することでその効果を高めることができます。まずは簡単なバージョンを試しましょう。親指で耳珠(耳の入口の軟骨の出っ張り)を押し、外耳道を閉じます。中低音のブラマリを6回繰り返しましょう。終わったら、手を下ろして普通の呼吸をします。
背筋を伸ばして座り、両手を顔に、親指は耳珠、人差し指は目頭に軽く触れ、中指は鼻の横、薬指は唇の上方、そして小指はその下におきます。眼球にはほとんど圧力がかからないように気をつけましょう。中低音のブラマリをさらに6回行い、両手を下ろして効果に意識を向けます。もし不安や鬱、閉所恐怖症などがあれば、シャンムキ・ムードラでくつろぐことはできないでしょうから、やらない方が良いでしょう。
高音のブラマリ
音を出している時は、感じようと感じまいと、頭のてっぺんからつま先まで文字通り振動しています。異なる高さの音は異なる周波数で振動しています。ベースの音や低い音はゆっくりと振動し、高い音は1秒に何千回という速さで振動します。
リラックスして座る姿勢に戻ったら、目を閉じて数回普通に呼吸をします。次に、シャンムキ・ムードラをして、あるいはせずに高音のブラマリを6回行いましょう。どこに振動を感じるかに意識を向けます。おそらく、低音と比べて頭の高い位置に振動を感じるでしょう。高音のほうがより刺激を感じるでしょうか?さまざまな音程、音量の音を試して結果を比べてみましょう。
ブラマリの処方
ブラマリの治療に応用できる可能性を科学的に研究したものはとても少ないのですが、ヨガの伝統は、うまく選んだ音には力強く健康によい効果があることを教えてくれます。ブラマリの音波が甲状腺に直接的な効果はないとわかったとしても、その効果はより調和のとれた神経系、穏やかな心、気づきの高まりなどが含まれることでしょう。このように、今ブラマリを終えたばかりの状態で、また背筋をのばして座りオームなどよく知ったチャントを数回唱えてみて全く新しい様子で聞こえてくるかどうかを見てみましょう。
音が共鳴する場所と同様に、異なる音程や音量のエネルギー的効果もまた、特定の状況で最もどのブラマリに最も効果があるのかを示唆してくれることでしょう。
- 不眠:静かで低い音を、シャンムキ・ムードラをしながら行うと神経や心を落ち着かせることが可能かもしれません。
- 副鼻腔感染や鼻詰まり:より強力な中高音程の音が通路を開くのにより良い選択かもしれません。
- 甲状腺の問題:中音程でジャランダーラ・ムードラ(顎で閉める)を使いながら喉に音波を送る。
- ストレス:無音バージョンを試しましょう。仕事中や外出中などで周囲の誰もがもあなたが何をしているのかに気づきません。