2025年3月26日水曜日

ヨガが認知症患者にできること Vol.1
How Yoga Can Help People With Dementia


注: 以下はヨガ実践者や指導者のための一般的な助言を与えることを目的としています。医療従事者による個人への助言の代替ではなく、ヨガの指導者はその範囲にとどまるべきです。つまり、生徒に対して診断や治療、医学的な助言をしようとはしないでください。




65歳以上の認知症患者は、米国だけで数えても約570万人います。現在この病気を治す方法は無いため、治療のほとんどは症状を管理することが中心となっています。しかし補完治療として、認知症患者のためにヨガを取り入れることは有意義である可能性があります。生活の質を改善する可能性、また認知機能を維持させる可能性をがあります。


ヨガがどのように役立つかを探る前に、この病気そのものを詳しく見ていきましょう。


認知症とは?


認知症とは、人によってかなり異なるさまざまは症状を持つ認知機能の障害であると広範囲で分類されています。最もよく見られる症状には、物忘れ、思考コミュニケーションが困難になる、視覚や空間的な能力が損なわれる、運動機能が損なわれる、論理的思考が難しくなるなどがあります。


認知症は認知機能に影響するだけでなく、心理的な幸福感にも影響すると理解することが重要です。鬱や不安症、動揺、妄想などを引き起こすおそれがあり、全体的な機能が低下します、認知症は徐々に進行し、回復はしません。



認知症の原因


認知症の原因には、パーキンソン病(運動障害を起こす神経疾患)などの前頭葉の障害、アルツハイマー病、または血管性認知翔による血流や酸素供給の不具合があります。最も多い原因がアルツハイマー病で、2番目に多いのは血管性認知症だと広く考えられています。


そして、認知症は65歳以上にとても多いのですが、老化の典型ではないと知っておくことが大切です。

 
かつて医療関係者や科学者たちは、脳には変化がなく有限だと信じていました。ローカライゼーション(特定の機能に特化した特定の脳の部分があるという考え)は不変であり、脳が成熟するとそこからはただ機能が落ちるだけだと考えられていたのです。しかし、老化とともに認知機能が変化すると、私たちは情報をよりゆっくりと処理し、タスク間を行き来することが困難となり、評価したり判断をする能力が弱くなる可能性があります。今では、老化そのものが物忘れや認知機能の変化につながるのではないと理解されていますローカライゼーションは不変ではないのです。脳の各部分は特別ではありますが、訓練と注意力を通して損なわれた箇所を補うことができます。短く言えば、脳は、以前に想像していたよりももっと適応力があり、柔軟、統合的で、どのように脳が老化していくかに私たちは影響を与えることができるのです。
 

実際、2019年のアルツハイマー病協会国際会議で発表された研究によれば、アルコールや喫煙を止めること、バランスのよい食生活、定期的な運動、認知機能を刺激する活動などさまざまなライフスタイルの選択をとることが、認知機能の衰えや認知症リスクを、60%まで下げる可能性があるのです。とても勇気付けられる結果だと思いませんか?



ヨガがどのように役立つか


高齢者のヨガの効果に対する単純盲比較試験で研究者らが見出したのは、ヨガを練習したグループには「言語的・視覚的記憶の短長期記憶、注意・作業記憶、発話流暢性、実行機能、処理速度に著しい改善が見られ」ました。被験者らは一緒に毎日ヨガを1ヶ月間練習し、週に一回3ヶ月、そして自身で6ヶ月間(毎日するよう勧められた)練習しました。


この研究は、高齢者介護の場でのヨガの効果を見るために設計された数少ない試験の一つです。しかし、呼吸法や瞑想が脳や神経システム機能にどのような効果があるのかについての研究はとてもたくさんあります。そしてヨガセラピストとしての私の経験から、ヨガは認知症患者の気分や認知機能、記憶力など全面的に著しい向上を与えると認識しています。例えば、アルツハイマー病のクライアントの時は、彼らの好きな歌を覚えるようにしています。彼らが動揺したり集中できないときに、そうした歌を歌うのです。そうしたらいつも、私と一緒に歌い出すのです。完全に気分が変わって、今に集中できるようになります。吸う息の倍の長さで吐くヨガの呼吸のように、歌うことは長く息を吐くことになり、体の弛緩反応を刺激します。


また、ヨガは今に集中することを教えてくれます。認知症による記憶障害があると、人生はその瞬間が全てになります。  


そのほか、認知症患者がヨガを練習することで得られる可能性のある効果は以下の通りです。

• 血流、呼吸、可動域が改善され、転倒防止や運動機能維持に役立つ

• 体への意識が高まる。内受容感覚(体内で発生する信号への意識)、固有受容感覚(空間内の体への意識)、運動感覚(動きへの意識)の向上

• 迷走神経状態の改善が、ストレスに反応した後の副交感神経(「休憩して消化する」神経系)を活性化させる

• 注意のネットワーク機能が向上し、キビキビと油断なく、感覚のインプットに優先順位をつけ、実行調整(葛藤をうまく処理し、目的に向けた行動を実行する能力)を行うのに役立つ

• 痛みに対処する能力が向上

• 体力や維持している能力への集中力が上がる

• 幸福感があがる

• 自己統制、感情制御が向上

• ストレス反応の低下に関係する扁桃の反応性を下げる

• 脳機能の向上に関係する脳梁(情報が行き交う左右の脳を繋ぐ神経束)を通る左右脳間コミュニケーションの向上

• 細胞の老化を遅らせる若返り酵素テロメラーゼの増加

• 慢性ストレスの影響を取り消す能力




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次回に続きます。






2025年3月10日月曜日

ヨガはがん治療をサポートする
だが、この「すべき・してはいけないこと」は心に留めておくこと
Yoga Can Support Cancer Care But Keep These Do’s and Don’ts In Mind

今回は、インドのCNN系メディアNews18からの記事です。

私がトレーニングを受けたシンガポールのドクターのもとにも
がんで苦しむ患者さんが来られていました。
残念ながら、数年後に旅立ってしまわれましたが
ヨガセラピーで痛みや苦しさ、死の恐怖を緩和できていたならいいなと今でも思います。
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サミーナががんと診断された時、彼女は冷静に受け止め、落ち着いて自分に必要なことにとりかかりった。腫瘍を取り除く手術を受け、免疫療法と経口化学療法を行なった。がんの代替医療の役割について聞いたことがあったので、手助けしてくれそうなヨガの指導者に連絡を取った。


ヨガを練習して数日のうちにサミーナの疲労は酷くなり、動悸やめまい、ホットフラッシュ、息切れをするようになった。調べてみると、そのヨガ指導者は動きが多く刺激の強いスリヤ・ナマスカラを彼女に練習させていることがわかった。


もう一人の元がん患者であるクシュブーの場合はこうだ。がんだと確証を得た時、化学療法や他の医療行為を拒否し、彼女は様々な代替医療を探し始めた。食療法、ホメオパシー、マントラ治療法、アーユルヴェーダ、自然療法、瞑想、そしてヨガの呼吸法だ。しかし、2年も経つと彼女の数値は急激に高まってついには入院しなければならなくなり、ICUで命からがら数週間を過ごすことになる。そうして入院中からその後10年にわたって標準的な医療と化学療法を受けることになり、がんを克服した。


二人とも間違っていたのである。一人は間違ったヨガ指導者を選んでしまった。もう一人はヨガや代替療法が「包括的に」体を元に戻してくれるから従来の治療は必要ないと考えてしまったのである。



ヨガは役にたつが、どのようにかが大切


ヨガはがんのための効果的な支持的療法として証明されていると、エビデンスに基づいた研究で示されてきている。正しくーつまり習慣的に、正しく理解したうえで、長期間ー行えば、炎症を抑え、免疫を高め、がんの進行につながる悪い行動さえも変える可能性を持っている。


しかし、がん治療にヨガを利用する時には、理解しなければならないことがある。がん治療は倦怠感、筋肉の弱体化、めまいや末梢神経の障害などを引き起こし、その結果、いくつかの動きは安全ではなくなる。また、転移や骨粗鬆症、疼痛などがある場合があり、ヨガポーズはそれを悪化させる恐れもある。従来の治療とヨガセラピーどちらも行う医師や専門家らが、最近の学会でこの重要な問題に対する彼らの経験を共有した。


以下は、彼らの意見と実用的なガイダンスである。



医師の意見


ムンバイにあるタタ・メモリアル・センターのディレクター、パンカジュ・チャトゥルヴェディ氏はこう述べる。「治療の養生の後、正しい段階の正しいヨガに導いてもらうため、医師に相談してください。YouTube やインスタグラムのビデオをみながらの練習はやめてください。また、ヨガは我々が行なっている今の治療の代わりには絶対にならないこと、だからこそ練習は治療と並行して行うのだということを忘れないでください。そして処方や指示は医師から受けてください」


米国ヒューストンの MD・アンダーセンがんセンターの統合医療プログラム・ディレクターのロレンツォ・コーエン氏はこう付け加える。「がんケアにおいて、病院側が他の治療と同様にヨガセラピーを提供する必要があります。しかし、私が特別に『ヨガセラピー』という言葉を使う理由は、医療の現場では単なるヨガの指導者やヨガの訓練を受けた者ではなく、その疾病や健康状態における専門知識を持つ者である必要があるからです」


CCRYN(インド・ヨガ自然療法研究中央委員会)の Ayush 省ディレクターであるラガヴェンドラ・ラオ博士は「私の肺に転移した肺がん患者は、彼女自身ヨガティーチャーでもありますが、ヨガの練習中のハイパーベンチレーションで倒れました。彼女は気胸になっていたのです。ですから、乳がんの転移が肺に到達している場合、ハイパーベンチレーションはしないようにしてください」


AIIMS (全インド医学研究所)の長であり、シュリシュリ先端研究所の顧問である有名な腫瘍学者のヴィノッド・コチュピライ博士はこう付け加えている。「そうです。私たちの(ヨガ関連の)研究では、肺領域への放射線治療を受けているなど特定の患者を除外しています。または、脳に転移がある患者にもこうした練習は勧めていません」


SRHU(スワミ・ラーマ・ヒマラヤン大学)がん研究所のディレクターである腫瘍外科医のシュニル・サイニ博士によれば、「ヨガは素晴らしい支持療法ですが、患者はそれぞれ異なるため治療にあたる医師らと相談するべきです。また、患者は病気の各ステージで異なりますし、治療のタイミングも異なります。全てのがんもまた異なります。例えば、乳がんの骨転移では、骨折の危険や痛みが増す危険もあります。急性の状態では、具合がとても悪い時にはただリラックスさせる練習法の方が良いでしょう。回復が必要な時は、身体的な側面も追加することもできるでしょう。ですので、治療チームと緊密に取り組む必要があるのです」





がんの治療としてのヨガ:すべきこととしてはいけないこと



• ヨガを始める前に、一次医療の医師や治療チームに相談すること

• がんを専門とするヨガセラピストの元で練習する。個人に合わせた指導を得ること

• 激しいポーズをしない。やさしくレストラティブなヨガをすること

• 自身が心地よく感じられる補助具を使う。薄いクッションや折り畳んだシーツ、椅子など

• 後屈、逆転など体を大きくねじるポーズをしない。その強度から太陽礼拝は推奨しない。速いペースで動かない。

• 各ポーズ、一回ごとに十分な休憩をとる。

• 全体を通して瞑想や深いリラクゼーション、深呼吸などは取り入れることが可能

• 息を止めたり、力強い呼吸はしない。ゆっくりとコントロールした呼吸に集中する。

• 患者がかなり弱るため、放射線治療や化学治療のあとは一週間あけること。化学療法後は血液の値が下がるので、7、8日間待って値が戻った時にのみ特別なテクニックで練習する。外科手術の場合、身体的なエクササイズは1ヶ月後から始める。

• 患者が自身の能力を理解していることが必要。心地よさが感じられる範囲を超えて体をストレッチしない。

• 感染などのリスクがあるため、大勢いる場所を避けグループでは行わない。

• 高温での練習をしない。また、体内の熱が上がりそうな練習は避けること。

• 水分補給をすること。空腹の状態では行わない、が、食事の後は2時間あけること。








(出典) https://www.news18.com/lifestyle/yogmantra-yoga-can-support-cancer-care-but-keep-these-dos-and-donts-in-mind-9228198.html