注: 以下はヨガ実践者や指導者のための一般的な助言を与えることを目的としています。医療従事者による個人への助言の代替ではなく、ヨガの指導者はその範囲にとどまるべきです。つまり、生徒に対して診断や治療、医学的な助言をしようとはしないでください。
65歳以上の認知症患者は、米国だけで数えても約570万人います。現在この病気を治す方法は無いため、治療のほとんどは症状を管理することが中心となっています。しかし補完治療として、認知症患者のためにヨガを取り入れることは有意義である可能性があります。生活の質を改善する可能性、また認知機能を維持させる可能性をがあります。
ヨガがどのように役立つかを探る前に、この病気そのものを詳しく見ていきましょう。
ヨガがどのように役立つかを探る前に、この病気そのものを詳しく見ていきましょう。
認知症とは?
認知症とは、人によってかなり異なるさまざまは症状を持つ認知機能の障害であると広範囲で分類されています。最もよく見られる症状には、物忘れ、思考コミュニケーションが困難になる、視覚や空間的な能力が損なわれる、運動機能が損なわれる、論理的思考が難しくなるなどがあります。
認知症は認知機能に影響するだけでなく、心理的な幸福感にも影響すると理解することが重要です。鬱や不安症、動揺、妄想などを引き起こすおそれがあり、全体的な機能が低下します、認知症は徐々に進行し、回復はしません。
認知症の原因
認知症の原因には、パーキンソン病(運動障害を起こす神経疾患)などの前頭葉の障害、アルツハイマー病、または血管性認知翔による血流や酸素供給の不具合があります。最も多い原因がアルツハイマー病で、2番目に多いのは血管性認知症だと広く考えられています。
そして、認知症は65歳以上にとても多いのですが、老化の典型ではないと知っておくことが大切です。
かつて医療関係者や科学者たちは、脳には変化がなく有限だと信じていました。ローカライゼーション(特定の機能に特化した特定の脳の部分があるという考え)は不変であり、脳が成熟するとそこからはただ機能が落ちるだけだと考えられていたのです。しかし、老化とともに認知機能が変化すると、私たちは情報をよりゆっくりと処理し、タスク間を行き来することが困難となり、評価したり判断をする能力が弱くなる可能性があります。今では、老化そのものが物忘れや認知機能の変化につながるのではないと理解されていますローカライゼーションは不変ではないのです。脳の各部分は特別ではありますが、訓練と注意力を通して損なわれた箇所を補うことができます。短く言えば、脳は、以前に想像していたよりももっと適応力があり、柔軟、統合的で、どのように脳が老化していくかに私たちは影響を与えることができるのです。
実際、2019年のアルツハイマー病協会国際会議で発表された研究によれば、アルコールや喫煙を止めること、バランスのよい食生活、定期的な運動、認知機能を刺激する活動などさまざまなライフスタイルの選択をとることが、認知機能の衰えや認知症リスクを、60%まで下げる可能性があるのです。とても勇気付けられる結果だと思いませんか?
ヨガがどのように役立つか
高齢者のヨガの効果に対する単純盲比較試験で研究者らが見出したのは、ヨガを練習したグループには「言語的・視覚的記憶の短長期記憶、注意・作業記憶、発話流暢性、実行機能、処理速度に著しい改善が見られ」ました。被験者らは一緒に毎日ヨガを1ヶ月間練習し、週に一回3ヶ月、そして自身で6ヶ月間(毎日するよう勧められた)練習しました。
この研究は、高齢者介護の場でのヨガの効果を見るために設計された数少ない試験の一つです。しかし、呼吸法や瞑想が脳や神経システム機能にどのような効果があるのかについての研究はとてもたくさんあります。そしてヨガセラピストとしての私の経験から、ヨガは認知症患者の気分や認知機能、記憶力など全面的に著しい向上を与えると認識しています。例えば、アルツハイマー病のクライアントの時は、彼らの好きな歌を覚えるようにしています。彼らが動揺したり集中できないときに、そうした歌を歌うのです。そうしたらいつも、私と一緒に歌い出すのです。完全に気分が変わって、今に集中できるようになります。吸う息の倍の長さで吐くヨガの呼吸のように、歌うことは長く息を吐くことになり、体の弛緩反応を刺激します。
また、ヨガは今に集中することを教えてくれます。認知症による記憶障害があると、人生はその瞬間が全てになります。
そのほか、認知症患者がヨガを練習することで得られる可能性のある効果は以下の通りです。
• 血流、呼吸、可動域が改善され、転倒防止や運動機能維持に役立つ
• 体への意識が高まる。内受容感覚(体内で発生する信号への意識)、固有受容感覚(空間内の体への意識)、運動感覚(動きへの意識)の向上
• 迷走神経状態の改善が、ストレスに反応した後の副交感神経(「休憩して消化する」神経系)を活性化させる
• 注意のネットワーク機能が向上し、キビキビと油断なく、感覚のインプットに優先順位をつけ、実行調整(葛藤をうまく処理し、目的に向けた行動を実行する能力)を行うのに役立つ
• 痛みに対処する能力が向上
• 体力や維持している能力への集中力が上がる
• 幸福感があがる
• 自己統制、感情制御が向上
• ストレス反応の低下に関係する扁桃の反応性を下げる
• 脳機能の向上に関係する脳梁(情報が行き交う左右の脳を繋ぐ神経束)を通る左右脳間コミュニケーションの向上
• 細胞の老化を遅らせる若返り酵素テロメラーゼの増加
• 慢性ストレスの影響を取り消す能力
• 血流、呼吸、可動域が改善され、転倒防止や運動機能維持に役立つ
• 体への意識が高まる。内受容感覚(体内で発生する信号への意識)、固有受容感覚(空間内の体への意識)、運動感覚(動きへの意識)の向上
• 迷走神経状態の改善が、ストレスに反応した後の副交感神経(「休憩して消化する」神経系)を活性化させる
• 注意のネットワーク機能が向上し、キビキビと油断なく、感覚のインプットに優先順位をつけ、実行調整(葛藤をうまく処理し、目的に向けた行動を実行する能力)を行うのに役立つ
• 痛みに対処する能力が向上
• 体力や維持している能力への集中力が上がる
• 幸福感があがる
• 自己統制、感情制御が向上
• ストレス反応の低下に関係する扁桃の反応性を下げる
• 脳機能の向上に関係する脳梁(情報が行き交う左右の脳を繋ぐ神経束)を通る左右脳間コミュニケーションの向上
• 細胞の老化を遅らせる若返り酵素テロメラーゼの増加
• 慢性ストレスの影響を取り消す能力
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次回に続きます。