2025年4月1日火曜日

ヨガが認知症患者にできること Vol.2
How Yoga Can Help People With Dementia

前回の続きです。

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認知症患者のためのヨガ


認知機能に障害のある65以上の方と向き合うなら、このクラス形式を試してみてください。以下の練習は提案に過ぎませんので、あなたの経験や心地よさのレベルに合わせてください。これらの練習で、突発的で強い感情の爆発や夜間の興奮状態、脅迫的行動など、この病気で最悪の症状を緩和できることもあります。また、早期段階でまだ独立して暮らせる人、または24時間の介護が必要な人どちらにも合うよう提案しています。



はじめに、念頭におくべきヒント:

1. 生徒がまだできることは何かを理解すること、どれくらいの体力があるか調べておく

2. 喜びや記憶を刺激するような音楽を選ぶ(可能なら、若い頃によく聞いていた音楽を調べておく)

3. 笑顔で、目を見て、はっきりとゆっくり話す

4. いつも生徒の名前で呼び、自己紹介を忘れないこと(時には何度も何度も)

5. 感覚的な刺激、感覚的な瞑想をする。音や香り、味、視覚や触覚などの物をを使ったり、比喩的描写を通して、注意や意識を五感全てに導く。


6. 安全な環境を作る。目を閉じるのを不快に感じる人もいます。かわりに視線を落とすか鼻先を見るよう促しましょう。また目を閉じている時や了解を得ていない時は、生徒に触れないように気をつけましょう。


7. 全ての人が機能レベルの限界に達せるよう集中します。認知症のどの段階にあるのかを考えて、彼らがいる場所に会いにいき、うまくいくような機会を提案しましょう。例えば、ナディ・ショーダナ(片鼻の呼吸)ができなければ、チャンドラ・ベーダナ(左鼻の呼吸)ができるかもしれません。柔軟に考えて、たくさんの選択肢を与えましょう。




おすすめの練習法


アサナ


目的: 柔軟性、筋力、バランスを維持、向上

効果: 転倒や怪我の防止に役立つ

ヒント: てのひらやお腹、胸などアンカーポイントに意識を向けて、体への気づきを高める。それが難しければ、音や画像などに注意を向けるようにしてもいい。


練習案:

1.センタリング:クラスの始めに、目を閉じるか鼻先を見下ろすか提案しましょう。心地よい目標を掲げるか、愛する誰かに練習を捧げるよう導きます。

2. 可動域のエクササイズ:関節のウォームアップと全方向への背骨の動き。呼吸に合わせて簡単な動きに集中する

3. ツイスト:肩越しに見るなど優しいツイストを促す。この練習で瞑想神経が整い、副交感神経反応が強化されます。

4. バランス: 壁や椅子に手を置きながら片足を持ち上げるなど、簡単なバランスポーズを行う。できることから始めて、そこから展開していく。

5. 左右脳間のコミュニケーションを刺激するため左右交差した動きを促す:反対の手で反対側の肩を叩く、片手ずつ風船を叩くなど。陽気で楽しく行う。


6. 前屈で締めくくる:パスチモッターナサナ(座位の前屈)など、やさしい前屈で神経を鎮めてクラスを終わります。個人の能力に合わせる。例えば車椅子の人なら両手をテーブルに乗せる。転倒の危険があるなら同じくテーブルの前に座って前屈するなど。



プラナヤマ


目的: 副交感神経反応を活性化する

効果: 神経バランスを整えることで睡眠を向上、気分を調整する

ヒント: わかりにくい呼吸法よりもポーズのほうが全てのレベルの人に合わせるのが簡単だと思います。そのため、プラナヤマの練習は認知症のステージを考慮することが大切です。


練習案:

初期段階・中段階:ブラマリ呼吸( マルハナバチ呼吸)と長い呼気(吸気の2倍程度の長さ)が副交感神経調整に役立ちます。

末期段階: ため息を吐くように促す。ため息は横隔神経を活性化させ、それが体をリラックスさせるのに役立ち、過覚醒を緩和する効果が持続します。




瞑想


目的: 心を鎮ませ集中させる。

効果: 落ち着き、集中、精神の明晰さを促すことができる

ヒント: 生徒の生活や興味をよく知れば知るほど、より効果的な瞑想のガイドができます。彼らについてできる限りを理解して、それをクラスに取り入れましょう。


練習案:

リラックスした心地よい姿勢になるよう促しましょう。横たわってもいいし、椅子に背を伸ばして座り両足を床につけてもいいでしょう。簡単なボディスキャンや呼吸に気づく練習から始めます。彼らにとってイメージを誘導することが役に立ち、好きな場所の思い出を思い出せるよう導きましょう。
  

私は時々、この誘導する練習を昔の生徒さんと一緒にしたことを、思い出します。トムという素晴らしい男性で、彼はアルツハイマー病の末期でした。トムは長期介護施設におられ、全てのスタッフからとても愛されていました。死の過程にあり、強い苦痛を感じておられました。毎日の同じ時間帯になると、彼はどんどん混乱していき大きな声で助けを求めました。彼の家族から彼が熱心な船乗りだったと聞いていた私は、彼のそばに座って海の話をし、目を閉じて波の音、帆船やカモメのイメージ、温かい海風を思い出してもらいました。彼がすぐに落ち着いて休めるよう、彼に合った簡単なヨガニードラを作りました。イメージや体の感覚への集中、そして柔らかく優しい存在の力は、共有できる贈り物でした。




チャンティング


目的: 生徒たちを内なる先生と触れ合わせる

効果: 落ち着かせる効果。他の人と一緒にチャンティングすることで一体感を作る

ヒント: マントラの選択には、参加者の文化的背景や人生経験を考慮する

練習: マントラの反復

早期・中期:アルツハイマー病研究および防止財団によるキルタン・クリヤ
末期: 生徒に聞こえるよう大きな声で繰り返す。「ソーハム(私は...である)」のマントラや「私は愛」など肯定の言葉をひとつだけ繰り返す。



リラクゼーション(ガイド付きリラクゼーションやヨガ・ニードラなど)


目的: 喜びや至福の状態へ導く

効果:  神経系のバランス調整を促うことにより、人生の困難への反応を穏やかにしたり肯定的な感情を養うのに役立つ

ヒント: 指導する環境を考慮すること。例えば、高齢者介護の場では、騒々しい傾向があることと音のレベルをコントロールすることが難しいことを知っておく。また、補聴器は背景音を強調する可能性もあります。意識を内に向けてひとつの音に集中するよう促しましょう。重みのあるブランケットなどの補助具が、生徒の体を落ち着かせたり、感じるかもしれない不安を鎮めるのに役立つかも知れません。また、暗い灯りがリラクゼーションの助けになることもあります。


練習: ヨガ・ニードラ修正版

生徒たちが理解できるよう、安定した声でゆっくり話しましょう。もし理解できていなくても、優しい声がリラクゼーションの助けになります。




最後に


認知症の人たちのため、生活の質を最適化し意味のある体験を提供するような方法を見つけることが非常に重要です。ヨガは、喜びの瞬間や達成感、一貫性、安心、そして休養を与えることでこれを促進することができます。信頼と快適性のある安全な環境で、遊びの機会を与え、ストレスを削減することができます。最も大切なのは、ヨガによって、自分の変わらない部分である奥深くにある自分自身を、みんなが見つけられることです。それをもって、私の好きな「メモリーブリッジ」のドキュメンタリーの一節で締めくくりたいと思います。


”認知症に苦しむ人たちは、今もここに手が届く場所にいて、アルツハイマー病や認知症の破壊力の向こう側、記憶の奥底にいます。私たちは、聞くために学び、学ぶために耳を傾けています。彼らはまだ愛することができ、愛されることができるのです”



(出典)https://yogainternational.com/article/view/how-yoga-can-help-people-with-dementia/

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