2025年7月27日日曜日

5元素をコブラのポーズで 
Align With the Five Elements in Cobra Pose


この記事は、トッド・ノリアン氏が築いたアシャヤ・ヨガの視点から見たコブラのポーズです。アシャヤ・ヨガは、実践者の身体の力を目覚めさせるよう、タントラの哲学と瞑想法をアライメントを重視した治癒的ヨガのテクニックに融合させたものです。




多くの偉大なるヨギたちは、悟りとは子どもの目で、全てをまるで初めて見たかのように、見る能力だと述べています。非二元性であるシャイヴァ・シャクタ・タントラの伝統では、アドブータ(「驚き」という意味)は9つのラサ(味、あるいは生命の本質)のひとつとみなされています。ラサは人間の感情をすべて包含していると言われています。
 

驚きを体験する時、心は開いて空のように広大に広がります。晴れた夜空の星々を見上げること以上に私をアドブータの状態にするものはありません。おそらく多くの人が同じことを体験しているでしょうが、それはなぜでしょうか?そのひとつは、星々が美しいからです。そして、この宇宙に存在する全ての起源は星々だからです。元素周期表にある92元素全ては星々で作られています。星が死ぬ時、内側へと崩壊し極限まで熱くなり加圧され、そして爆発して超新星となり、そこでより重い元素が作られます。その後、これらは宇宙へと飛び出して他の元素と結合し、惑星や星雲、様々な星を形作るのです。このように私たちの太陽系と私たちは作られました。地球上で生命に適した条件が整った時、私たちは単細胞となり、やがて水中から歩き出して今日の私たちへと進化しました。まさに「驚き」に満ちた歴史だと思いませんか?


ヨガ哲学によれば私たちは、パンチャ・マハブータスと呼ばれる地、水、火、風、空という偉大なる5つの元素からできています。これらの元素のバランスが内面で整った時、優れた生き方ができると言われています。バランスが崩れると、「収縮している(過度の地)」、「溺れて」感情的に疲れ切っている(過度の水)と感じたり、やる気がない(火の不足)、不安で怯えている(過度の風)、落ち着かない(過度の空)と感じたりします。


タントラヨガは、私たちとは時間と空間に凝縮された宇宙だといいます。それを知るための神の願望そのものの結晶です。命は偉大な意味を持っています。5元素を知ることは私たち地震を知ることです。



アシャヤ・ヨガとは


アシャヤ・ヨガの4つの基本要素は、全てのポーズや動きでのアライメントの設計図を示すためのものです。5元素とは、エネルギー的、質的に以下のように対応しています。


1. 開く — 空

2. 引き寄せる — 地

3. 整える — 水と火

4. 広げる — 風



アサナの練習に5元素を当てはめようとしたことはありますか?ありませんか?では、コブラのポーズの練習に当てはめてみましょう。それぞれの元素が体の動きに対応していて、最適なアライメントをサポートしてくれるでしょう。


• 第1の要素は、肋骨の横を伸ばし、肌を和らげ、胸の後ろの肩甲骨の間を解放することです。


• 身体の動きの第2の要素は、骨に向かって筋肉を引き寄せ、正中線へと引き込み、周囲から中心へと引くことです。


• 第3要素の身体の動きは、相補的な2つの対照運動です。その目標は、対照的な2つのエネルギーのバランスが取れている中心を見つけることです。これによって、最適なアライメントを見つけることができます。


• 第4要素の身体の動きは、中心軸から外へ広げ、体の中心から全方向へと放射状に広げ、エネルギーを中心から周辺へと動かすことです。まずポーズの基礎へと下ろしてから、空に向けて中心を持ち上げます。


要素の概念を説明したところで、以下の練習で直接探ってみましょう。ブジャンガアサナ(コブラのポーズ)のすべての側面に密接に関連しています。




ブジャンガアサナ:コブラのポーズ

ウォームアップ:キャット&カウ


1. 四つ這いになります(硬い床の上では膝にパッドを当てましょう)。両膝は股関節の下に置きます。両手は肩の下で、手首のシワがマットの前端と並行になるよう、手指は太陽光線のように均等に開き、手首の中心は肩の外側と直線上に置きます。


2. 少し時間をとって体を感じます。呼吸を深くして、胸の中心を和らげます。(この姿勢で胸の中心を和らげるとは、肩甲骨の間にある筋肉を和らげることです。背中で最も硬いのは、概して胸椎の真ん中周りの筋肉である胸の裏側です)4箇所の土台、つまり両手と両膝にバランスよく均等に体重をかけましょう。


3. 息を吸い込みながら、坐骨を上に持ち上げて、背中を反らして見上げます。


4. 息を吐き出しながら、尾骨を引き下げて、腹部を背骨に引き込み、胸の中心の方を見ます。


5. 数回繰り返します。動きと呼吸を合わせましょう。滑らかに均等に動きます。このフローを味わいしょう。



空を開く:驚きを感じる


1. 四つ這いからうつ伏せになり、両手は肩の下、額は床に下ろしましょう。右足をできるだけ遠くに伸ばします。そして左足も後ろへ伸ばします。呼吸を感じながらリラックして、肌を和らげましょう(つまり、皮膚が筋肉の上にふわりと掛かるように筋肉をリラックスさせる)。肌のすぐ下にある捉えにくいストレスを解放して、最も大きな臓器である肌への気づきを広げます。生命の神秘を思い起こしてみましょう。


2. 腰から腋の下へと肋骨の脇を伸ばします。プラナ体(5つのコーシャと呼ばれる鞘のうちのひとつ、エネルギー体)をふくらませるのをイメージして、息を胸の裏側とウエストラインに吸い入れます。宇宙全体があなたという形であなたの中にあることを思い出してください。驚きを持って、あなたの存在の果てしない広がりに心を開きましょう。



地を引き寄せる: 安全で安心で安定


1. 息を吸い込んで、脚の筋肉を骨に向かって引き寄せて優しく収縮させます。最愛の人がしっかりと素敵に抱き寄せてくれる時のように、筋肉で骨の周り360度を包みます。筋肉が引き寄せられると、関節の周りが支えられ安定します。これが脳に安全だと信号を送り、脳が反応して、リラックスしくつろげる能力である副交感神経脳が活性になります。逆説的に言えば、アシャヤ・ヨガではリラックスするために引き寄せるのです。


2. すねと踵をぴったりと付けて、つま先が鎌足にならないようまっすぐ後ろに向けます。踵どうしをより近づけて脛に力を入れることで、腰が守られ、コブラのような後屈で椎間板にかかる圧力を和らげてくれます。


3. 正中線(両脚の間から背骨を通って走るエネルギーの線)へと引き込みます。
 

4. 足の指からふくらはぎ、腿に沿って、骨盤の中心へとエネルギーを引き上げます(周辺から中心へ)。すべてのポーズは、地球と同様に、周辺から中心へとエネルギーを引く重力の中心があります。コブラのポーズでは、その核となるのが骨盤です。


5. 徐々に手の指で地面を掴みます。すべての指の腹と付け根で押し下げ、両手でアイソメトリックに(動かさないで)後方へ引きます。両脇を同じ長さで伸ばしたまま、両手でアイソメトリックに引きましょう。



水と火を整える:流れるように燃える


1. 両脚を正中線に引き寄せ続け、腿を内側に(空に向かって内腿を持ち上げながら)回転します。腿を床から離して内に回す際、腰が反ります。鼠蹊部の前部分が凹み、腰が「波型」にアーチができて大腿骨頭が骨盤のソケットに引き戻る様子に注目しましょう。これが水の元素で、ヨガの伝統によれば骨盤に存在します(シュワディシュタナ・チャクラに関連しています)。


2. 腿を後方に引いたまま、尾骨をすくい下げます(この二つの対照的な動きを作ります)。「すくう」とは、しまい込むような動作ですが、力は抜きます。この臀筋の優しい収縮によって、腰のカーブが伸びます。すくうと、下腹部が背骨向かって引かれる様子に注目します。これが火の元素で、揺るぎない献身と考えられており、ヨギとして自分の心に従い、変化の火の中を歩むのに必要となります。この動きで体幹に引き込まれ、力と熱という形のさらなる支えを加えてくれます。
 

この2つの動きが整うと、骨盤が最適な位置に置かれ、腰と仙腸関節の圧迫が解放されます。



広げる:体を伸ばし、より高みを目指す


1. 骨盤の動き全てを保ちながら、骨盤の中心から両足に向けて体を伸ばします。そして、骨盤の中心から上半身へと伸ばします。両手で後方へアイソメトリックに押しつつ肋骨の脇を長く保ちながら、息を吸い込んで頭、肩、胸を床から持ち上げます。前へと広げながら、背骨に沿って体を伸びましょう。高さよりも長さが重要です。というのも長さが背骨の椎骨の間にあるスペースを作るからです。これは風の元素で、広げて伸ばします。エッセンシャルオイルのディフューザーからの香りのように、風の元素は均衡する点を探し、空間全体に均等に広がるのです。


2. 腕の骨頭(肩の最上部)を後方へ下げて、肩甲骨を肋骨の背中側へと引き込みます。肩甲骨の下端を胸の裏の方へ丸めて、さらに胸を持ち上げます。前腕を内側へ、上腕を外側へ回転しましょう。次にその姿勢を保ったまま、胸の中心から外側の全ての方向に少し広げます。肩甲骨をひとつにまとめたまま、肋骨の背中側へと引き込み続けましょう。


3. 背骨全体を首や頭まで長く保ち続けます。首元の横側を後ろへ下げて、頭が後ろへ引枯れている感覚が首の横側から始まっているのを感じましょう。そして口蓋も下げます。口内の上側の4分の1が丸い円盤だとイメージします。その部分を後方へ動かせる、あるいは口の天井が後ろに引いて開けられる引き出しだと想像します。口蓋が後ろへいくと頭も後ろへと動き、頸椎に曲線ができます。それによってスペースが広がって神経の圧迫が解放されるため、椎間板のためになります。口蓋を後方へ、後頭部を持ち上げます。そこから持ちあげることで、首のカーブがながくなり、頸椎の椎間板のスペースがより広がります。背骨の自然な形状に従って、首と頭を上に伸ばしましょう。


4. 息を吐き出しながら、ポーズを終えて床に下ります。






少し時間をとって、コブラの体験を思い出しましょう。より不思議に満ちていることを感じているかに注目します。より広がって整ったと感じる体の部分すべてを観察します。練習前に感じていたかもしれないあらゆる不快感が小さくなっているか、あるいは完全に消えているかにも気づきましょう。


ポーズの中で5元素を体感し均衡がとれた時、空のような広がりを感じ、体の緊張が解かれ始め(地)、閉じ込められた感情が流れ始め(水)、エネルギーは輝き(火)、そしてその前にあった制限を超えて広がり手を伸ばす(風)力が大きくなるのを感じるでしょう。


シャイヴァ・シャクタ・タントラ哲学では、私たちの本質は至福であり喜びです。5元素に寄り添うことができれば、私たちはこの喜びを認識し感じている心に戻れます。最も深い命の不思議を垣間見ることができます。それこそが私たちの中に存在する宇宙すべてなのです。





(出典)https://yogainternational.com/article/view/align-with-the-five-elements-in-cobra-pose/

2025年7月14日月曜日

高齢者のためのヨガ:ヨガで転倒リスクが減少 
Yoga for Seniors: How Practice Can Reduce the Risk of Falling

今回は、医師でありヨガティーチャーである著者が指導者に向けて書いた記事です。
いくつかの研究結果についても書かれていますので、指導者でなくても、こんな効果があるんだ!ヨガって役立つんだ!という風に感じていただければ嬉しいです。

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「外傷病室1に患者、外傷病室1に患者、急行せよ!」私の仕事ではこんな緊急の知らせがいつでも起こります。


救急医として対応する患者は様々ですが、高齢の患者でとても多いのが転倒で怪我をしてくる人です。65歳を過ぎた3分の1以上の人が一年に一回以上転倒しています。


転倒は、筋力や姿勢への意識の低下、薬の副作用、認知力低下、鬱など様々なリスク要因よって起こります。


こうした患者らは、腰や長骨の骨折、脳の負傷による急激な精神状態の変化、皮膚の裂傷、その他命を脅かす怪我などをしてやってきます。


こうした転倒は多くの場合、患者らの体力や体の安定性、可動性、そして全体的な健康状態を維持するための基本的な介入がいくつかあれば防止できたであろうものです。


悲しいことに、骨折や頭の出血は転倒後にしばしば起こる症状の単なる始まりに過ぎません。転倒の結果、体の固定やストレス、転倒による心理的影響などが多くの場合、高齢者に数多くの問題をもたらすことになります。肺炎や創傷感染などの二次感染で治癒が遅れ、脳損傷や身体障害は患者の自立性の多くを失うことにつながります。この全体的な機能低下によって、何度も転倒を繰り返し、続く怪我、生活の質の低下、そして時には死をもたらすこともあります。


私たちはヨガの専門家として、あまりにもよく起こる高齢者の転倒の根本原因のいくつかに取り組むという類稀なポジションにあります。体力やバランスのトレーニングの効果は、もちろん、医学文献の中でも頻繁に言及されています。ヨガに特有の呼吸法やリラクゼーションにこうしたトレーニングを加えれば、身体的強さや安定性、また健康で幸福であるという感覚を与え、生活の質を高める方法を提供することが可能です。
  

特定の症状のある患者を治療する時、同職者たちが見つけた同様の患者に効果的な治療法を知るために最新の医学論文を調べることがしばしば役立っています。論文を吟味することは良いことだと考えてはいますが、研究によって効力や妥当性がとても様々で、医学論文を注意深く読むことに慣れていなければ、お粗末な研究方法で導かれた見せかけの「良い」結果に簡単に迷わされてしまうことになります。医師もヨガの指導者も、患者の治療プランを決める前に医療専門家が信頼する同様のエビデンスを利用して欲しいと思っています。


 

高齢者のためのヨガの効果


高齢者の転倒の防止法についての研究はかなり多く存在します。特にヨガを対象にした研究は比較的数が少なく、ざっと見たところ現段階では研究対象の人数がとても少ないという批判が大きいことがわかりました。それでも、高齢者にヨガを勧めるには、下記の論文がやくだつのではないかと思います。少なくとも、提供しているのはただのヨガクラス以上のものだということに気づいてください。実際に、次の転倒を防止する仲間に加わっているかもしれないのですから!


2013年の Journal of Gerontology (老人病学ジャーナル)掲載の Tiedemann らによる論文では、それまでヨガや太極拳をしたことのない平均年齢68歳「地域在住者(老人ホームなど施設に住んでいない人)」54人に任意のコントロールテストを行いました。対象者は、ポーズを説明した小冊子を受け取ったグループと、12週間週2回ヨガクラスに出席したグループとに分けられました。コントロールグループには教育用小冊子が配布されましたがクラスには参加しませんでした。12週間後の介入グループは、座位から立位への移動時に敏捷性がより上がり、片足のバランスがより良くなり、歩行もより速くより自信に満ちて歩けるようになりました。中心とされたヨガポーズは、タダアサナ(山のポーズ)、ヴィラバドラアサナ(戦士のポーズ)I、ヴィラバドラアサナ(戦士のポーズ)II、ヴィラバドラアサナ(戦士のポーズ)III、アルダチャンドラサナ(半月)、ヴルクシャサナ(木のポーズ)、アドムカシュヴァナサナ(下向きの犬のポーズ)、シャヴァサナ(尸のポーズ)です。


計画においてはややロバストではないものの同様の結果が出た研究は、2014年に Journal of Alternative and Complementary Medicine で発表されたケリー氏らによるもので、平均年齢72歳の地域在住者という同様の被験者の、週2回ハタヨガに参加させ12週間後の効果を分析しました。この研究は任意抽出でななく(従って前記のものよりはロバストではない)被験者グループの『ビフォアフター」効果を観察した事前事後テストスタイルの研究でした。ヨガポーズは、ウォームアップの肩回し、かかと上げ、そしてバッダコナサナ(合蹠のポーズ)です。結果は同様で、可動性、姿勢のコントロール、歩行速度が向上したと述べられています。


他のメタ分析(共通の結果を調べるために一連の同様の研究を評価するという研究)では、高齢者において特にヨガが他の身体活動関連の介入方法に比べ優れているという、より控えめな証拠を示しています。パテル氏らのメタ分析では、1950年から2010年までの研究を調べ、様々な状況における高齢者を対象した関連研究を18見つけ出しました。このメタ分析では、被験者の健康感、有酸素的な健康、体力などがヨガで向上したことが示唆されています。
 

ヨガの指導者の行動がこうした人々の転倒防止に役立っているのかを証明する完璧な研究はないと理解した上で、ヨガが高齢者の体力や安定性、調整力、そして幸福感を達成する助けとなるのではないかという論理的証拠がますます増えてきていると考えています。今まで聞いたことのあるどんな薬よりもいいと思っていますし、間違いなく、防止可能な転倒から起こる怪我や身体障害や死よりは良いと思っています。


この年齢層を対象にし続けて欲しいですし、高齢者に参加可能なヨガクラスを提供することで、高齢者の健康や幸福を向上させられることはとても重要な貢献であると気づいていて欲しいのです。最も意味のある変化をもたらすものは、新しい薬や即効性のある治療法ではなく、小さくても毎日の目的を持った誠意ある行動だと。これがヨガだと。



幸運を。ナマステ、美しきヨギたちよ!

2025年7月7日月曜日

腱膜瘤の予防・痛みを緩和する9つのポーズ Vol.2 
9 Poses to Prevent Bunions & Relieve Bunion Pain

前回の続きです。

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手術は必要?


特に前回やったような親指エクササイズをしている間、親指を持ち上げて伸ばす時にどんなふうに動くかを観察しましょう。左右の親指を持ち上げた時、おそらくそれぞれが反対の方向に向いているでしょう。親指を前に伸ばして下ろすと、母指内転筋が活性化してもっと並行になるはずです。左右の親指がどうしても離れる場合は、ゴムバンドで繋ぎ合わせて、持ち上げて伸ばします。腱膜瘤が痛まないよう親指の付け根の間に何か挟むと良いでしょう。


腱膜瘤が進行し、足指の屈筋と伸展筋がもはや交差するほど脇に引っ張られている場合は、エクササイズでゴムバンドを使っても、親指の反りが直せないこともあります。その結果、親指を持ち上げた時、こうした筋肉は弓矢を引くようにより横の方へとただ引かれるだけであまり効果がありません。その場合、特に足の筋肉を効果的にストレッチしたり働かせようとすると痛みが強くなる時は、手術が必要なのかもしれません。




立位ポーズを再認識する


足指エクササイズは、ハタヨガの立位ポーズの練習では特に効果的で重要です。ヴィラバドラサナ(戦士のポーズ)1、2やパールシュヴァコナサナ(体側を伸ばすポーズ)など前足の膝を曲げて足首をまっすぐにするアサナでは、効果的な動きをするとてもよい機会となります。





戦士のポーズのように前脚の膝を曲げた立位ポーズでは、前脚のすねを垂直に保ち(膝関節がかかとを通り越えない)、重心をかかとの中心に置いて、足の親指と小指をむかって伸ばしながら、引き上げて広げる練習をします。


これによって、足の内外の端でアーチが強化されて、足指が整います。膝をゆっくりと曲げたり伸ばしたりしながらこれを練習していると、足のこの動きによって膝が正しい軌道を通り、特に小指側に維持していると股関節の緊張が解放されるでしょう。


トリコナサナ(三角形のポーズ)やパールシュヴォッタナサナ(三角前屈)の前足など足首を伸展した立位ポーズでもまた、足指の付け根を地面に着けたまま親指に向かってより強く伸ばす必要があるため、親指を伸ばして床につけることが試されます。このポーズは、腱膜瘤への圧迫がかなり少なくなるので痛みが小さく、膝を曲げたポーズよりもかなり快適でしょう。そして、膝関節をロック(過伸展)しない限り、力強い動きが膝関節や足の親指の筋肉にも大きな効果があります。膝は小さな「マイクロベンド」を保ちながら、足を働かせましょう。





アルダ・チャンドラサナ(半月のポーズ)など片足でバランスを取るポーズは、最も難しいポーズです。腱膜瘤のある人にとって特別に難しいのは、膝をロックすることと土踏まずが潰れている傾向があるためです。腱膜瘤によって足の骨が安定しないため、足はとても不安定でぐらつき、ポーズを安定させようと膝をロックしてしまうことが多く必要な足の働きを妨げます。この癖に負けずに、膝関節を少しだけ曲げて、かかとに体重を移すために足指を持ち上げ続けるよう練習しましょう。これが土踏まずのアーチを強化して膝のロックを防ぎ、バランスを取るためにできるだけ足指を広げることにつながります。足の親指と小指を伸ばすエクササイズは特に難しいですが効果的です。片足でバランスを取る時、足をどう使うかが膝の健康にとても深く関わっているということに気づくでしょう。



ヨガポーズでの足の働かせ方


アドムカ・シュヴァアサナ(下向きの犬のポーズ)では、足指を指先に向かって伸ばしながらアーチを強く引き上げなければなりません。いつもの通り、膝がロックしないよう小さく曲げ続け、地面からかかとを浮かせておきます。これによって、ふくらはぎやハムストリングスをストレッチしたまま、足を強化することができます。





ウルドヴァムカ・シュヴァナアサナ(上向きの犬のポーズ)やブジャンガサナ(コブラのポーズ)などでは、特に足の親指に沿って後方へ伸ばし(鎌足にならないで、足の内側ラインを並行に)、床に向かって小指を下ろしをおろすことで、足首の前がストレッチされ足指の伸展筋が強化されます。足指の爪全てを(特に親指と小指)まっすぐそして軽く床に押し下げ足を側からせましょう。


セツバンダアサナ(橋のポーズ)は、腿と足を並行に保ったまま土踏まずを強く働かせるポーズです。ここに書かれた通り足を働かせた場合、ときおり生徒に指示されるように足を内側に回転させる必要はありません。土踏まずと足指を働かせながら足の内側を地面にしっかりつけていれば、足が外側に離れていくことはないからです。


最後に忘れてはいけないのは、座位の前屈が、腱膜瘤に体重がかかることで感じる痛みなしに足を働かせるよい機会であることです。ヨガブロックを足の裏につけてブロックのまわりにストラップをかけ、床に立っているように足が動かせるようにします。足指の付け根(特に親指)をブロックに押し付け、足指を働かせている間もブロックを並行に保ちます。









最後に、ハタヨガの基本的なポーズは、痛い腱膜瘤の進行を効果的に予防したり、遅くしたり、止めたりすることのできる、足の完全なワークアウトの機会を与えてくれます。それにはちょっとした努力や気づきが必要ですが、腱膜瘤の兆候が(まだ)現れていなくても、その練習には効果があります。ちょっとしたウォームアップと土踏まずと愛指のワークアウトによって、ヨガは足の健康と幸せを与えてくれるのです。







(出典)https://yogainternational.com/article/view/9-poses-to-prevent-bunions-relieve-bunion-pain/



2025年7月4日金曜日

腱膜瘤の予防・痛みを緩和する9つのポーズ Vol.1 
9 Poses to Prevent Bunions & Relieve Bunion Pain


腱膜瘤はよくみられる足の症状で、放置すると変形して痛みが生じることもあります。医療科学では、腱膜瘤を進行性の病気だと見做し、主な原因は遺伝にあるとしています。しかし、より大きな視点から見れば、窮屈な靴であったり、ストレッチやマッサージの不足、あるいは足を正しく使えていないことが原因です。幸いなことに、足のウォームアップやエクササイズ、適したヨガポーズなどにより、遺伝的要素で起こる腱膜瘤の進行を遅らせたり、放置したり合わない靴による腱膜瘤の形成を止めたり、その痛みの緩和を助けることは可能です。腱膜瘤が無い場合であっても、こうしのエクササイズにより痛みや疲労を減少させ、足を強く健康的に保つことができます。



腱膜瘤は どのように形成されるか


腱膜瘤(突き出た骨質のこぶ)の原因の多くは、母指球にある骨がジグザグになることです。親指が他の指の方向へ曲がる一方で、中足骨(足首と足指をつなぐ骨)が外へ向いて不快感が起こったり、中足骨頭が石灰化することもあります。これは多くの場合、足の土踏まずの崩れとともに起こります。それぞれの問題が他の問題をより増幅させます。土踏まずの崩れは腱膜瘤の形成を早めますし、腱膜瘤そのものも土踏まずを潰して中足骨をより変形させます。腱膜瘤は、歩くことでかかる圧迫による痛みや炎症を起こしたりと、より深刻な問題となりえます。


骨の形や足をひとつにまとめている靭帯の強さを決めるのは遺伝子であるため、原因のひとつは遺伝です。足の親指の中足骨頭が異常に丸まっていたり出っ張っていると、指がより内側に向きやすくなります。中足骨の反対側にはくさび状骨があり、中足骨が外側へ動く原因になるような形で付いていることもあります。


腱膜瘤が原因で、バランスポーズで足が不安定になったりぐらぐらしたりします。多くの場合、ポーズを安定させるために膝がロックされ、足の働きを阻害します。


しかし、遺伝だけが原因ではありません。きつい靴をはくと、足を外に回転させて歩く癖と相まって、親指の中足骨に圧迫がかかり土踏まずの靭帯が弱まる一方で、歩くたびに横へ押しやられた親指自体が内に向きます。その結果、足裏の内転筋(特に母指内転筋)が硬くなって親指が他の指の方へ引かれ、指がひとつにぶつかり合ってしまいます。引く力に抵抗して親指がまっすぐになるよう作られた母趾外転筋は弱くなって過伸展し、腱膜瘤がほとんど抑制されることなく進行していきます。


このように腱膜瘤(そして腱膜瘤形成を促す筋肉のアンバランス)で、親指が歪み足の構造が弱まって私たちを悩ませることになります。足の親指の力を支える役目を果たしている筋肉に注目し、親指をもとの場所に戻す方法を見ていきましょう。



土踏まずを働かせる


長母趾伸筋        前脛骨筋



前脛骨筋は、足の親指から土踏まずの前部分を通っています。この筋肉に運動をさせる方法のひとつは、足指をギュッと丸めて足でナプキンを摘み上げることです。ナプキンを持ち上げるために足首が屈曲し足が反転(横に返る)するとともに、親指の付け根にある筋肉が働くのを感じるでしょう。それが、前脛骨筋です。


また、親指の付け根を床につけたまま母指球の後ろから土踏まずを意図的に引き上げ、親指を持ち上げることで、前脛骨筋を働かせることができます。


土踏まずの引き上げは、足を反転させずに母趾急を床につけたまま、前脛骨筋からもたらされます。親指をもとに戻す筋肉を強化するためには、この筋肉を働かせたまま、母趾球を下ろしつづける必要があります。これをやり遂げるには、以下のエクササイズが役立つでしょう。



フットマッサージで自分にご褒美を


足裏の硬さは、腱膜瘤形成の一因であり足指がつる原因です。このようにくっついたままでは、土踏まずを強化したり足指を働かせたりするのは、不可能ではないにしても困難です。ですから、まずは内転筋を解くフット・マッサージから始めるべきです。







これらの筋肉を解くには、足指の付け根を手の親指を使ったり、テニスボールやゴルフボールを転がしましょう。足親指の付け根から始め、土踏まずの内側までマッサージします。足の小指側に沿って、そして足裏で硬さを感じる場所を全てマッサージしましょう。


次に、足指の可動性を取り戻すため、指の間にスペースを作る必要があります。足裏を手のひらで覆って、手の指を足指の間にできるだけ差し込んで、「ヨガの握手」で前後に動かし足指を緩めます。




これに慣れたら、上向きの握手(足指と手指を足裏から上向きに組ませる)と下向きの握手(足指と手指を足裏から下向きに組ませる)を交互に行なって、ストレッチの効果を高めましょう。


ウォームアップが終わったら、足指一本ずつ掴みかかとから優しく引き離します。足指をポキポキ言わせることが目的ではありませんが、ポキポキ音は解放されたことを示します。




鍵となる筋肉の強化


次に、床か椅子の上に両足を並行に膝を曲げて座ります。足指の付け根と内かかとを地面に付けたまま、すべての足指を持ち上げます。親指の付け根からだけでなく、かかとの前にある足裏の中心からも土踏まずがどの程度持ち上げられるかを見てみましょう。


もちろん、ただ足指を持ち上げること自体が大変だと気づくかもしれません。筋膜の覆いは、足首の前からすねの前へと上へ延びていて、足指をすねの方へ伸展する筋肉のための滑車のように働きます。足首が硬いと、筋膜がこうした伸展筋の動きを制限し、足指を持ち上げることを難しくしています。ヴァジュラサナ(稲妻のポーズ・正座)やヴィラーサナ(英雄のポーズ・くずした正座)などで、足首の前にあるこの筋膜をストレッチすることができ、伸展筋が解放され足指の可動性を取り戻すことができます。



足指が動くようになったら、こちらを試しましょう。全ての足指を持ち上げてから、小指を挙げたまま親指だけ伸ばして床に下ろします。この動きが最初のトレーニングとなり、腱膜瘤に対抗する鍵となります。そのためには・・・

  • 土踏まずを持ち上げ続けましょう。足の内側にある筋肉群を強化するのに必要な抵抗が得られます。親指の付け根と内かかとを床に下ろして土踏まずを強く保ち、足がめくれないようにしましょう。

  • 親指を前に伸ばしてボタンを押し下げるかのように、親指を伸ばしましょう。これは、つま先を丸めてただ床を押すのとは全く違います。何度か親指を持ち上げたり伸ばしたりすると、内かかとから土踏まずを通って親指に繋がる筋肉(母趾外転筋)が疲れ始めるのを感じるでしょう。そこが、対象となる筋肉です。




足全体を強化するためには、全ての足指を挙げてから、小指だけを伸ばして床に下ろします。


これによって、小指からすねの外そして腿の外側に沿って走る筋肉群に効き、足の小指側のアライメントを強化し、健康的な土踏まずを築き安定させることができます。小指側の足や足首が弱く硬いと、多くの場合、膝の過伸展、足の回内、土踏まずの崩れを伴います。足首やすねの外側をこうして強化することで、特に扁平足の人は、膝のために役立ちます。


最後のエクササイズとして、足指の中3本を持ち上げて広げ、親指と小指のみを伸ばして床に下ろします。




これによって、足の前にある横向きのアーチが作られ、また足の内外端が強く働き、内側と外側のアーチのバランスが取れて力強くなります。


この最後のエクササイズは、足の四隅(親指の付け根、小指の付け根、内かかと、外かかと)がしっかり元の位置に戻っていくように感じるかもしれません。かかとの骨と足指が四隅で正しく並んでいると、まるで四輪が正しく並んだ自動車を運転するように、歩くなど全身する動きにおいて足は正しく機能するのです。


こうした足指エクササイズは、ヨガポーズの多くに取り入れることができ、全身のアライメントをより良くし、足のアーチの弾性と土台の強さの両方を高めることができ、また膝や股関節にもさらに効果をもたらします。腱膜瘤のある人は、こうしたエクササイズによって進行を遅らせたり、止めることも可能です。腱膜瘤がなくても、これらの動きによって、足から膝、股関節へと全てをしっかりと使うことができ、関節の健康を高めることができます。


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