2017年10月24日火曜日

蓮華座:病気をやっつけるのか膝をやっつけるのか? 
Lotus Pose: Destroyer of Disease, or Destroyer of Knees?

陰ヨガのトレーニングの際、人の骨格とできるポーズの範囲を教わったことがあります。私はもう何年もヨガを練習してきて教えてもいますが、実は未だに蓮華座は苦手ですし脚を左右に開くことも苦手です。でも、前屈や内に向かうポーズにはあまり苦労したことがないのです。
そう、人はそれぞれ違うものです。できないポーズがあってもそれを受け止める心の強さを養うのもヨガの練習なのですね。
今回は骨格の視点から見た蓮華座(ロータス・ポーズ)についてです。
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ハタヨガ・プラディピカには大胆にも「パドマサナ(蓮華座)が全ての病を駆逐し…真の賢者のみがマスターできる!」と書かれています。

全てのスピリチュアルや宗教の書物と同じく、この著者には「広告に偽りなし」の法に対処する必要はありません。多くの人にとって、蓮華座はリスクが高く効果が薄いポーズで、もし股関節が堅ければ膝にストレスがかかります。しかし、正しい両親(つまり正しい遺伝子)を選ぶ程の賢者にとっては、蓮華座で座ることは朝飯前でいつだってできるのです、ヨガを始めたばかりであっても。

では、そういう人たちは私たちとどのように違うのでしょう?何が彼らを「賢者」にしているのでしょうか?



蓮華座を行うことがあなたにとって賢いことなのかどうかは、結局はあなたの骨格によります。おそらく、内転筋や内旋筋、関節包靭帯などのいくらかの張力抵抗に対処していく必要はあるでしょう。しかしこれらを終えた後、このポーズで長く安全に座り続けられるかどうかは(或は膝を痛めてしまうかどうか)、あなたの股関節を作っている二つの骨、大腿骨と骨盤の形状にかかっているのです。

簡単に蓮華座を行えるか、もしくは決してできないかに影響する要素は多くあります。大腿骨頭の長さ、大腿骨の上部と接する腸骨のカップ状のくぼみ(寛骨臼)の深さ、その窩部に沿った軟骨の厚さ(関節唇)、そして関節包靭帯と内旋筋の柔軟性などです。

あなたにとって、なぜ蓮華座が決して良いことではないのか、または最も簡単なポーズになりうるのかを見るため、二つの要素について見ていきましょう。これらの要素は、寛骨臼と大腿骨頭です。では図1を見てください。

注意:ここで解剖図を見る際、全ての骨が図のようであるかに思いがちですがそうではありません。解剖図は、何十もの、或は何百もの体の合成です。人間の自然な違いの平均であり、私たちの骨の見方を誤らないようにしてください。



図1:骨盤と大腿骨の斜視図


図2は実際の骨盤の写真です。二つの違いがわかりますか?寛骨臼を探してみてください!上の骨盤では、寛骨臼がすぐ分かりますが、下の骨盤ではどこなのでしょう?寛骨臼の角度は様々ですが、それはつまりソケットの体側に平行なラインに対する角度になります。かなり前傾したソケットの人もいれば(上の骨盤のように前向き)、あまり前傾していない人もいます(下の骨盤のように横向き)。上から見るともっとわかりやすいでしょう。写真ではわかりづらいので図3を見てみましょう。



図2:(a)、(b)の骨盤を比較。
違いを考慮しどちらが外旋しやすくどちらが内旋しやすいか考えてみましょう



体の中心 ← → 体の外側
図3:上から見た様々な角度の寛骨臼。
(a)は表1にある最も小さい角度のもの、(b)は最大、(c)平均的と言われるもの




人それぞれが異なりあなたは平均ではありません。(ある有名な医師の言葉を借りれば「生きている人は皆、あなた以上にあなた人はいない!」)表1には3つの寛骨臼グループのデータがありますが、5つの研究の要約です。

重要なのは平均ではなく、各研究でわかった値の範囲です。これら範囲は「正常」で、95%の人がこの範囲に入ります。

11度というのは、寛骨臼がかなり横に向いていることを示し、図2の下の骨盤のようなものです。33度はかなり前向きで、上の骨盤の左側のもののようなものです。(図2のaでは、左のソケットが右のものよりも大きいことに気づいていましたか?私たちは左右対称ではありません。ですから片方がもう一方よりも前向きである可能性もあります。これはつまりそっちの方が外旋しやすいということになります。指導者にとっては、こっちが半蓮華座をデモするのに「いい方」となります)



男性       女性        平均
表1:5研究で見られた寛骨臼の範囲


あなたの角度が、骨盤によってどれくらい内旋・外旋できるかを決定しているのです。しかしこれだけが、あなたが蓮華座をすることができるかを決定している解剖学的要素ではありません。大腿骨の角度もあります。



図4:大腿骨の角度を比較。左の大腿骨の後傾は-4度で外旋が比較的容易。右は前傾が47度で内旋が比較的容易。


図4には二つの大腿骨があります。違いがわかりますか?最大の違いは、その捻れ具合です。体のどの長い骨にも曲りやねじれがあります。大腿骨の長さに沿った捻れは大腿骨頭と臼の角度として表れます。左の骨の骨頭がやや下向きの平行(後傾)であるのに対し、右は著しくに回転しています(前傾)。これが寛骨臼に収まる際の骨頭の方向に影響するのです。どちらの場合も、大腿骨の下端(膝関節の一部となります)がまっすぐ上に向きます。

これらの大腿骨の体を想像してみましょう。どちらの場合も膝はまっすぐ上を向くので、寛骨臼に入った骨頭の角度は、右の骨ではもっと後ろになり、左のものではもっと横向きになります。骨盤と同じく、大腿骨の場合でも骨盤によりスペースがある方が外旋しやすくなるのです。

年齢           大腿骨頭前傾 
表2:年齢による大腿骨前傾値の変化


表2が示すように、大腿骨のねじれは年齢とともに変化します。成人の平均は約15度で、正常な範囲は3度から27度です。これには95%の人が含まれますが、生徒20人中一人が正常ではないというわけではありません(あなたがその生徒かもしれません!)。図4の大腿骨は、約-4度(負値ですよ!)と47度で正常ではないでしょう。もちろん、正常範囲でない骨を持つことが悪いというわけではありません、ただ個性的だというだけです!



蓮華座における寛骨臼と大腿骨の違い


図5:蓮華座では、寛骨臼での外旋、屈曲、そしてやや外転が必要です。


蓮華座では、大腿骨の3つの動きが寛骨臼で必要となります。屈曲、外旋、そして(ほとんどの人にとって)やや外転が必要です。これは図5で見ることができます。ほとんどの人は蓮華座で座る際に必要な90度の角度で股関節屈曲することができますが、これは椅子に座る時と同じ動きです。そしてほとんどの人が両脚を外転できます。重大な制限は、どれくらい外旋できるかです。外旋は、関節周りの筋肉や靭帯など軟組織の緊張によって制限されます。しかし、それらを効果的に緩めるよう対処したのち、最後に外旋を妨げるのは圧迫です。大腿骨頭が寛骨臼の端に当たるのです。どれほどヨガをしたところでこれは変わりません。


最良のケースと最悪のケース

寛骨臼の角度が大きければ、大腿骨が外旋するスペースが狭くなりますが内旋のスペースは大きくなります。大腿骨の角度が大きければ、ここでもまた外旋するスペースが狭くなりますが内旋のスペースは大きくなります。これが図6でわかります。左の人はどこから見ても外旋しにくい骨を持っています。どれだけ長く練習しても蓮華座ができることはありません。しかし素晴らしいイーグルポーズをすることができるでしょう!イーグル・ポーズで簡単に脚をかけられるのは彼が内旋のための大きなスペースを持っているからです。


図6:左図は外旋の最悪のケースです(大腿骨前傾が27度、寛骨臼前傾が33度)。
右図は最良のケースです(大腿骨前傾が3度、寛骨臼前傾が10度)。


寛骨臼の角度が小さいと大腿骨が外旋するスペースが大きくなりますが、内旋するスペースは小さくなります。大腿骨の角度が小さいと、ここでもまた外旋するスペースが大きくなりますが内旋するスペースは小さくなります。図6の右の人は外旋に最も適した人で、おそらくいつでも蓮華座はできるけれどイーグルをするのは嫌いかもしれません。内旋が制限されるので脚がかけられないのです。

さて、二つの差異を見てきました。寛骨臼の角度と大腿骨の角度です。稀にとても異常な何人かの人が、イーグルも蓮華座もできるのです!それは、彼らの大腿骨に長い骨頭があって寛骨臼がとても浅いからでしょう。イーグルも蓮華座もできない人もいます。大腿骨頭が短く寛骨臼がとても深いのです。

つまり、私たちは皆個性的で、誰もが蓮華座で瞑想的に座れたりイーグルのように飛べたりしないわけです。あなたには蓮華座に何の問題もないかもしれません、素晴らしい!幸運を楽しんでください。しかし、もし何年もこのポーズを練習しているのに膝の痛みを感じるだけなら、ヨガはあなたの骨の形を変えるわけではないことを理解してください。不可能なポーズを自分に押し付けようとすることは、解放ではなく怪我を招きます。真の賢者とは、ただ蓮華座の先を行こうと決心した人なのかもしれません。





(出展)https://yogainternational.com/article/view/lotus-pose-destroyer-of-disease-or-destroyer-of-knees

2017年10月19日木曜日

ダウンドッグからランジへ入るヒケツ 
The Secret to Stepping into a Lunge from Downward Facing Dog

先日久しぶりに会った友人がヨガを始めたらしいのです。話を聞いていると、ダウンドッグをどうやっていいのかわからない、そこから足を前にやる時にうまくいかないと言うのです。確かに最初はこれが大変だったなあと思い返していたところにこの記事を見つけました。慣れている人も教えている人も基本に返って丁寧に集中してやってみると面白いかもしれません。
このポーズだけでなく、ヨガをしていると「空間(スペース)」がいかに大事か思い知らされることが多いです。

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ヨガクラスはスムーズに流れて行きます。ツリーポーズもしっかり立てたし(ちょっとフラフラしただけ)、チェアポーズも耐えた(ちょっと顔が歪んだだけ)、呼吸もちゃんと続けられている。ではなぜ、先生が太陽礼拝に入りますと言うとイヤーな感じになるのでしょう?

おそらく、太陽礼拝のBやCに出てくるダウンドッグからランジへの移行が心配でそんな感じになってしまうと言う人が多いのではないでしょうか。きっと、隣のヨギの足が滑らかにお腹の下で浮いて、その足が両手の間に蝶のようにそっと降りるのを横目で見ながら、自分は足をようやっと持ち上げてまるで花壇に置いた砂袋みたいに下ろしたらまだそこはマットの端よりはるか遠く後ろだったり、前のかかとが床から浮いて膝がつま先より前に出てしまったり。まるでまだビギナーみたいだと感じたり(初心者を見下げたり上手になることへ執着はないのだけれど)、膝が正しい位置にないと(足首の皺より前にある)関節を痛めることもわかってる。でもどうやって前の足をあるべき場所に降ろせるのだろう?

ヨガでの移行の多くにあるように、ダウンドッグからランジに入るには強さと柔軟性だけではなく技術が必要なのです。では、ダウンドッグで先生が「足を前に」と言った時のイヤーな感じを消すことのできる簡単な方法をお教えしましょう。この3つの方法はマインドと呼吸と身体に関係しています。

この動きを試す前にウォームアップすると(特に腰回りとハムストリングス)やりやすいことを覚えておいてください。ダウンドッグーランジの移行の前に、キャット&カウ、前屈からランジ、好きな3本脚ドッグなど簡単な準備運動をしておきましょう。


1. マインド


まず、マインドの準備をします。どんな挑戦も最良の結果を得るためには、それに達するところをイメージすると効果的です。

子供の頃、体育の時間にみんなで大きな円に座り、大きなパラシュートにそれぞれが掴まったりしたことがありませんか?(訳注:無いですよねー?)このゲームは、パラシュートの下をあっちからこっちへと、交代でくぐり抜けることです。でもその下をくぐるためには、空に飛んで行ってしまわないようにしながらパラシュートをふわっと持ち上げて空間を作らなければ、向こう側へは行けなかったはずです。ダウンドッグ-ランジの移行を、こんな空間を自分の体で流れるように作って行うとイメージしてみましょう。

移行をイメージしましょう(まだやらないでただイメージするだけ)。ダウンドッグから右足を伸ばして3本脚のドッグに入り、そこから右膝を曲げて胸に引き込む、猫のように背骨を丸めて床を自分から遠ざけるように押す。背骨が「パラシュート」のように膨らみ、体育の時間のパラシュートのように軽く足を前に出す空間を作ります。

この移行であなたが作る空間をイメージすることが、簡単に前へ足を出せる第一歩です。


2. 呼吸


ヨガのどんなアサナの移行でも同じように、ランジからダウンドッグに入るために呼吸は重要な要素です。ヨガの黄金律を思い出しましょう(他にもあるかしら・・):収縮するときは吐きます。伸展するときは吸います。つまり、脚を上げて3本脚のドッグに入る時に吸い、膝を胸に引き込んで前に踏み込む時に吐きます。

実際に踏み込もうとする前に、この呼吸を交えたシンプルな練習を試してみましょう。

ダウンドッグから、息を吸って右脚をあげ3本脚のドッグになり、息を吐きながら膝を胸に引き込み、プランクに入るかのように少し前に移動、左踵を床から持ち上げ(もしまだだったら)左足の指の付け根で支えます。そのまま数呼吸して腰を持ち上げて平行に保ち、キャットのストレッチのように背骨を丸め、頭はリラックスします。空間をもっと作るために吐く息ごとに床を押してお腹をもう少し縮めて、もう少し丸まります。右脚をまた後ろへ伸ばして、吸う息とともに3本脚のドッグに戻ります。吐いて、ダウンドッグに戻り反対側も繰り返します。


3. 身体


マインドと呼吸ができたので、身体に行きましょう(ここで実際に前に足を出す練習です!)。ダウンドッグから息を吸って、右脚をあげ3本脚のドッグへ。お腹に集中して吐く息で膝を胸に引き込み、背中を丸め、両手で床を押し、左足の指の付け根でも床を押すと、右膝がもっと胴体に近づき足を出すための空間がもっと広がります。そこで右足を前にさっと出し(サッカーボールを蹴るように)、ゴール(両手の間の空間)に向かって足を出し、そして優雅に、そう優雅に、です、足の裏全体を地面に下ろし、ランジに入りましょう。

この移行を両サイド何度か繰り返しコツを掴みましょう。


最後に、人の体はそれぞれ違うことを思い出しましょう。長い腕、比較的短い脚、長い胴の人がいますが、そうした人は他の人よりも足を出すのが簡単でしょう。腕と胴が長くて脚が短いということは、体と床の間の空間が広く足を通しやすいからです。なので、これらのコツを試してもまだできない場合は、両手の下にブロックを一番低い状態で置いてみましょう。体と床の間の空間が広いといかに簡単に足が出せるかを感じてみてください。

この移行を練習する方法は他に、ウォームアップしてから四つ這いから練習することもできます。左脚を後ろに伸ばし、左踵を腰の高さ(これ以上高くしない)に上げ、そして吐く息で左膝を胸に引き、キャットのように背中を丸めて床を押します。吸う息でもう一度脚を伸ばします。これを数回繰り返し、四つ這いに戻ったら反対側も繰り返します。


ウォームアップし、イメージし、呼吸し、練習すれば、足を出す時に感じるイヤーな「ひざカクカク反応」が「膝がランジにするっと出る」にあっという間に変わり、思考と呼吸のバランスが取れて練習を楽しむことができるようになります。もしかしてまだこの移行が全然無理だと感じていますか?おそらく、今のあなたにとってのヨガの練習は、達成することへの執着を手放すことで、そして練習の中での成長に感謝することかもしれません。抗うより応えること、感謝を持って一瞬一瞬に呼吸するのです、マットの上でもそうでなくても。



2017年10月15日日曜日

ヨガと骨粗しょう症 Vol.2
Yoga and Osteoporosis : The Dos and Don'ts Vol.2

では前回からの続きです。
具体的にどんなポースがいいのか良くないのかについて見ていきましょう。
これらは、骨粗しょう症患者だけでなく、シニアヨガ全般に応用することができるでしょう。
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編集者より:下記のヨガ実践者や教師に向けた一般的な推奨事項です。医師の個人的な助言の代わりにはなりません。

ヨガは骨粗しょう症の治療の一端として効果的でしょう。近年のある研究では、毎日のたった8−10分のヨガで骨密度が増加することがわかっています。


やるべきこと


リーフは、骨粗しょう症のある人がヨガを行うとき、または骨粗しょう症の生徒を教える時は、以下のポーズや動きに注目するよう勧めています。

1. 自然な形の脊椎でのポーズ

骨粗しょう症の生徒は、山のポーズなど脊椎を自然な形にするポーズを中心にし、これらのポーズにおいて脊椎が最適な形をとるようにするべきである。

「尾骨を後ろへ十分引いて腰にカーブを作り、頭は両肩の上に来るようにする。重りのついた糸が耳から両肩、腰、足首の方向にぶら下がっているのをイメージする。ほとんどのポーズや流れの中で、この最適な背骨の位置を保つ」

自然なカーブが作れない上背が丸まっている人はどうすればいい?「できるだけ自然にする」
例:山のポーズ、立位の前屈(ストラップを使う)、ロー・ランジ、戦士のポーズ、テーブルトップ、プランクなどは全て背骨が自然な形のポーズである。


2. 伸展を意識する

背骨を自然なあるいは自然に近い形にした後は、伸展をすると良い。というのも「骨粗しょう症では、弱った椎骨が時に骨折した場所で曲がってしまうから」だ。背骨を長くすることで椎骨間の空間を作り、その曲がりを防いだり直したりできる。

例: バランスをとりながら、頭の上に乗せた本や水差しなどを上へ持ち上げるイメージをする。


3. 手に荷重をかけるポーズをする

マットに手をつけよう!前述の通り、他のエクササイズに比べヨガが優れている点は、荷重を手にかけることによって脚だけでなく腕の骨密度をも強化することができることだ。

例:テーブルトップ、 プランク、上腕のプランク、チャトランガ、上向きのテーブルトップ、下向きの犬のポーズなど

注意:上背が丸い場合はあまり両手に荷重をかけるのは危険です。テーブルトップでは、肩甲骨の間のスペースを凹ませるようにし、可能ならばチャトランガやプランク、ダウンドッグなどのポーズだけに移行するようにする。クロウなど背中を丸めるアームバランスなどは避ける)


4. 優しい後屈をする

骨粗しょう症は多くの場合に胸椎後弯を伴うため、優しい後屈をすることが特に重要。胸椎を内側に戻して胸を持ち上げ、胸椎伸展を向上させる。

こうした骨粗しょう症には、優しいものであっても前屈は勧められない(「避けること」の2項を参照)が、優しい後屈には良いものもある。「椎骨の皮質骨の強度により、屈曲よりも伸展の方が安全」とリーフは説く。
(注意:大きな後屈は圧縮するので禁忌である。後述の「避けること」参照)

例:橋、スフィンクス、ベビーコブラ、ラクダ(両手は腰に)、フォームローラーや巻いたブランケット(胸椎の下に水平におく)の上に横たわる、ゆるい後屈など。この後弯症のための練習は、骨粗しょう症患者の多くにとっても安全である。


5. 優しい側屈やツイストをする

「様々な背骨の動きは、椎骨の健康や強度を維持するのに重要だ」が、背中を丸めるポーズは避けるべきである。

これらの様々な動きには優しい側屈やツイストを含み、「骨粗しょう症に関連した骨折の危険を避けながら脊椎の柔軟性を最大に維持することができる」

しかし、どのくらいまですればいいのか?「胴が可動域の限界に遠ければ遠いほど負担は軽くなる」リーフは、背骨の長さが変わらないところまでを勧めている。

側屈の場合、曲げている方の腰が倒れてしまわないところまでにしておく。ツイストでは、腰にやや内向きのカーブが残っているところまでにする。

例:立位からあるいはランジから数度だけ横に曲げる。リバース・ウォリアーや門のポーズ、横たわったバナナサナなど。両脚を横に振る「フロントガラスのワイパー」のように横たわって優しいツイストを楽しむ。そして、もっと強いツイストをする際は、背骨をまっすぐにしたまま(丸めない)ほんの少しだけツイストする。


6. ポーズの移行はゆっくりと

例:半分の前屈のような位置からはゆっくりと起き上がる(膝を曲げ、肘を膝において椅子のポーズのようにして山のポーズまで起き上がる)ようにし、頭が急に動いて転倒するリスクを下げる。ウォリアーIや三日月のポーズのように片足を下げるポーズの際は、前の足が必ずしっかり着地していることを確認する。


7. 安定を保ったままバランスに挑戦する

骨粗しょう症の生徒にとって転倒は骨折を意味することになるので、ヨガクラスのバランスポーズは不可欠である。しかし、転倒を避けるため、まずはサポートをしっかり作ってからバランスに挑むべきである。

例えば、立位のバランスポーズでは、手を壁について安定させるか、足を上げる前に安定できるまでつま先をマットにつけておく。「『完全な』ポーズをしなくても、バランスや調整力は向上することができる」

例:

‌• ウォリアーIIIでは、後ろのつま先(あるいは後ろ足の指の付け根)をまず地面につけ、立つ方の脚へと体重を移していく。(ここで無理だと思わなければ後ろのつま先を軽くする)

• 立位のつま先を持つポーズを練習するときは、上げる足を壁につけるか、膝を曲げて足を椅子の上におく。(ここで無理だと思わなければ足を軽くする)

‌• 壁に手をついてきのポーズを練習する。安定したと感じられたら壁の手を徐々に軽くしていく。


8. そして、少し荷重をかける

もっと強いポーズに挑戦するよりも、手や足首に軽いウェイトを使って簡単なポーズを続ける。

バードドッグ(四つん這いから手足を伸ばす)のようなポーズが快適に行えるようになると、大きな後屈などのポーズをしたいと思うようになるかもしれない。(後ろの膝を曲げて足首を体の後ろで持ち上げるなど)

それよりも、前の手や後ろの足首にウェイトをつけて持ち上げる方が良い。「疲れずに10-12回続けられる程度の重さのウェイトにする。おそらく0.5-1kg程度だろう」

例:ウェイトを持った腕を椅子のポーズで頭上にあげる、またはウォリアーIIで横に開く。また、ウォリアーIIIなど片足のバランスポーズで、アンクル・ウェイトを持ち上げる方の足首に巻きつける。



避けるべきこと


リーフによれば、骨粗しょう症のヨガの生徒にとって必要なのは、過度に大きく動かすことだと言います。下記は彼が避けるべきだというポーズや練習です。


1. 腹筋運動はしない

腰を支持するのに強いコアは重要だが「これらのポーズは負荷のかかった腰の屈曲が必要だ。上半身の荷重を支えながら腰に大きな負担をかけると、胸や腰の椎骨が骨折する可能性がある」

代替案: 背骨がまっすぐなポーズで吐く息と供に腹部を入れたり引き上げることでコアの安定性に働きかける。横たわり背骨を自然な状態にしたまま、上体でなく両脚をあげたり下げたりする。


2. 実は、脊柱屈曲(背中を丸める)のポーズは全てよくない

骨粗しょう症の生徒は、腹筋運動だけでなく脊柱屈曲が必要なポーズ全てが、腰にストレスを与えるので避けるべきだ。つまり、優しいものであっても前屈はしない。横たわって膝を抱えるのも、アパナサナやハッピーベイビーもだ。

どんなに強いヨガの生徒でもうまくやるには難しい動きであるロールアップして立ち上がることは、骨粗しょう症の人は絶対に避けるべきだ。

代替案:ウッターナサナ(立位の前屈)をやめて アルダ・ウッターナサナ(半分の立位前屈)にする。この「背中をフラットにするポーズ」では、両手をブロックや椅子の座面、壁に置いたりして、背骨の最適な形を維持する。

パスチモッターナサナなどの前屈よりは、ダンダーサナのように垂直のポーズを選ぶこと(胸をあげ腰を腹部側にカーブさせるため必要なら横たわる)。

ハムストリングスをストレッチするには、前屈を深めるより、横たわり足にストラップをかけて足の親指を掴むポーズを練習しよう。これらのポーズでは、背骨をニュートラルにして伸ばし続けることに集中する。


3. 強い後屈は行わない

前述のように優しい後屈が骨粗しょう症の生徒にも可能な一方で、上むきの犬、車輪、弓、かかとに手をおくラクダなどの大きな後屈は圧迫し危険だ。リーフによれば、「骨粗しょう症が進んだ上体では、胸椎が椎骨の中で最も危険な場所だ。そこは背骨が曲がる際だけでなく伸展(後屈)においても最もストレスのかかる場所だからだ」

代替案:「やるべきこと」のリストに勧められている優しい後屈を守る。


4.強い側屈やツイストはしない

「胴の回転は脊柱にねじりのストレスをかける。椎間板や椎骨が最もストレスを受けるのは、曲げた上体で大きく捻った時。泥や雪をショベルで掻き出す動きを想像してほしい。そういう時によく背骨は傷つきやすい」

つまり、深い椅子のポーズでツイストしたり、マリチアサナで肘を腿の外側に置いたりするのはダメだということだ。強い側屈(例えばパリガサナやリバースウォリアーで手を脛へ伸ばす)では、ツイストの要素が加わり圧迫されることもある。

代替案:「やるべきこと」のリストに勧められている優しいツイストや側屈を守る。


5. 逆転の練習を始めない

骨密度が低いと診断されても、ずっと周期的に逆転を練習してきた人や、ポーズの中で背骨をまっすぐ保っていられる人ならば、ヘッドスタンドやショルダースタンド、ハンドスタンドなどの逆転の練習を安全に行うことができるかもしれないが、まず医師の判断を仰ぐ方が賢明だろう。

もし逆転の練習の許可を得たとしても、骨粗しょう症ならば転倒の危険を最小限にするため壁の前で行うべきだ。

今までそうした練習をしてこなかった人が骨粗しょう症と診断されたのなら、それは練習を始めるタイミングではない。「弱って密度が低くなった椎骨は、逆転での圧迫に耐えられない。頚椎の湾曲が無くなっていたら尚更だ」

代替案:逆転で得られる循環やエネルギッシュな効果のためには、下向きの犬や橋、壁に両脚をあげるポーズなど優しい逆転を行う。


6. ペースの速い、競争的なクラスは出ない

何を急ぐと言うのですか?全てではないけれど、ビンヤサフローやパワーヨガのクラスはポーズの移行が速いことが多いのですが、骨粗しょう症の生徒にとって安定性が欠かせません。バランスを崩しかねないほど速く動くことを勧めるクラスや先生は避けましょう。

代替案:ハタ、アイアンガー、優しいリストラティブや陰ヨガなど、アライメントを重視したクラスを選ぶ。



(出典)https://yogainternational.com/article/view/yoga-and-osteoporosis-the-dos-and-donts

2017年10月11日水曜日

ヨガと骨粗しょう症 Vol.1
Yoga and Osteoporosis : The Dos and Don'ts Vol.1

年齢を重ねるとともに骨の密度が低下する骨粗しょう症になってしまう方は多く、特に閉経後の女性に顕著な傾向があります。
骨折が怖くて運動を全くしなくなってしまう方もいらっしゃいますが、宇宙に出た飛行士が地球の重力に耐えられず歩けなってしまうなど重力と骨の関係は明らかで、骨のためにはある程度の負荷が必要だとわかっています。
それでは、ヨガはどうなのでしょう?
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編集者より:下記のヨガ実践者や教師に向けた一般的な推奨事項です。医師の個人的な助言の代わりにはなりません。

ヨガは骨粗しょう症の治療の一端として効果的でしょう。近年のある研究では、毎日のたった8−10分のヨガで骨密度が増加することがわかっています。
また、「The Back Pain Secret: The Real Cause of Women’s Back Pain and How to Treat It」の著者で医学療法士のビル・リーフによれば、ヨガは日々の練習により体力、柔軟性、バランス、筋肉の同調、耐久性、筋肉量、敏捷性、エネルギーレベルなど、骨粗しょう症の高齢者にとってす重要な全てを向上させることができます。

その効果を得るため、ますます多くの骨粗しょう症に悩む生徒がヨガクラスを訪れていますが、生徒も指導者も骨粗しょう症がどういうものなのか、また状況に合わせて効果を得るためどのように適応すれば良いのかを知ることが重要となります。


定義と広がり


骨粗しょう症とは、骨の密度が減少し骨折しやすくなる病気です。

骨粗しょう症は、一般に「沈黙の病」と呼ばれます。骨密度の低下はすぐにわかるものではなく、骨折するか自覚症状のない椎骨骨折が原因で上背が丸くなるまで、自分がその病気だということに気づかないことが多いからです。

2010年には、米国の50歳以上の成人約10%(およそ1020万人)が骨粗しょう症でした。50歳以上の約44%(およそ4340万人)に骨量の減少が見られました。

骨粗しょう症までではないが骨量が減少している症状を「骨減少症」と呼びます。症状は悪化しますが、必ずしも骨粗しょう症に至るわけではありません。骨密度が低下すると骨折のリスクを高まるということですが(大抵は脊柱、腰、手首)、骨粗しょう症患者より骨減少症患者の方に骨折が多いのは、骨減少症患者の数の方が多いためだと考えられます・

骨密度の低下は女性に多く見られます。男性に比べ骨粗しょう症になる人は4倍にもなります。

リーフによれば、「女性は、閉経時のエストロゲン減少により急激に骨量が減少します。男性は、一般的に70歳ごろに始まるテストステロンの減少が原因となります。また、投薬(特にステロイド)、体調(リューマチや摂食障害など)が骨粗しょう症に関連します」

他に、家族の病歴、喫煙、小さく痩せた体型、運動不足、カルシウムやビタミンD、たんぱく質の不足、アルコールやナトリウムの過剰摂取などの危険因子があります。

骨粗しょう症や骨減少症への一般的治療には、投薬、カルシウムやビタミンDのサプリメント、アルコールやタバコをやめること、脱水が原因の転倒を防ぐため水分を多く取ること、そして週に最低90分間の荷重をかけた筋力トレーニングなどが含まれます。

しかし、骨粗しょう症に関してはすべての運動が同じというわけではありません。



骨粗しょう症と運動


骨減少症患者は、医師の許可があればほとんどのスポーツに安全に参加することがほとんどですが、骨粗しょう症の場合は一定の運動は避けた方が良いとリーフは説明します。「骨粗しょう症では、骨や関節が弱くなっているので、ジャンプしたり負荷をかけた激しい運動は勧められません。これには縄跳びや激しいステップ・エアロビクスも含まれます。また、ランニングやデコボコした面でのウォーキングなど激しい循環器系の運動避けた方が良いでしょう」
スポーツについても注意を促します。「素早い方向転換をするバスケットや野球、テニスなどは転倒や骨の変形につながりかねません。これらは特に腰、大腿骨、下背の骨折の可能性が高いのです」

ゴルフもまた脊椎には危険なものです。ボールを拾うために何度も前屈して背中を曲げたり、スウィングで早くひねったりするからです。これら脊椎の動きは、時間を経るにつれて小さな骨折を起こし、さらに脊椎を弱め大きな骨折につながり麻痺してしまう可能性さえあります」こうした骨折は次第に治癒するかもしれませんが、原因となる構造的な脆弱性や良くない姿勢は多くの場合なくならず、年齢とともに悪化することもあります。

リーフによれば、骨粗しょう症患者には、穏やかな負荷をかけた運動が一番いい効果をもたらします。重力に逆らった運動が、骨の形成を促すのにさらに効果的です。

負荷をかけた動きの中でも、リーフが骨粗しょう症患者に勧めるのは、ウォーキング、ゆっくりとしたジョギング、階段を上る、ピックルボール、優しいダンスなどです。「これらは骨に良い影響を与え、密度を維持、上昇させるのに役立ちます」しかし、「両脚に大きな衝撃」がかかる類の運動は気をつけるよう彼は指摘しています。

腕も鍛えたいと思う人には、ヨガがお勧めです。「ヨガのポーズの多くは、四肢に負荷がかかり脚だけでなく腕の骨密度をも高めるでしょう」


骨粗しょう症患者すべてにヨガは可能?


骨粗しょう症患者に比べ、骨減少症患者はより激しい脊椎の動きを必要とする様々なポーズを行うことが可能です。しかし、その骨密度低下の度合いにより安全に行える運動のタイプや範囲が決まってくるので、どちらの患者もヨガのアサナをしても大丈夫なのか、また避けるべき動きがないかを医師に判断してもらうべきです。
胸椎後弯症(上背の丸まり)や骨折をしたことのある骨粗しょう症患者がヨガをする際には特に注意が必要となります。

「胸椎後弯症はリスクを高めます。たとえば、脊椎がCの字の形で前屈やひねりを加えることは、骨密度が低くなって脆くなった胸椎にとっては大変危険になります」骨折歴のある人はどうかといえば、一度でも椎骨の骨折をいたことのある人はその後の一年間にまた骨折する可能性が高くなるとリーフは指摘しています。

骨粗しょう症が進んだ状態では、ヨガ(アサナ)は勧められません。「水泳やアクアビクス、バイクなど重力のかからない運動など骨が耐えられるものだけを行うのがいいだろう」とリーフは言います。

ヨガを行なっても良いと医師の許可を得た生徒でも、その状態と医師の助言を常に指導者に伝えるべきです。


ヨガの指導者は、骨粗しょう症の生徒が医師の許可を得ていることを確認し、避けるべき動きがあるのかどうかを確認し、以下の(次回の記事に掲載します)一般的な注意事項を念頭に置くようにしましょう。