2018年1月27日土曜日

仙腸関節痛を解消するヨガ 
Yoga Tips to Relieve Sacroiliac Joint Pain

仙腸関節とは、骨盤の後ろにある仙骨とその横にある腸骨の関節のことですが、腰痛の原因がここからきていることも少なくありません。なぜ、この関節が痛むのかの原因はあまり知られていないそうですが、今回はそれを解消する方法を見ていきましょう。
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大叔母のハッティは、よく腰の痛みを訴えていました。時々、手のひらを腰に当ててかすかに聞こえる呻き声をあげながらゆっくりと立ち上がり、「腰が痛いんだよ」とよく訴えていたものです。大叔母は何年も腰痛を持っていました。

理学療法の訓練を受けた今になってみると、あの大叔母の「腰痛」は実は仙腸関節に関連した痛みだったのではと考えます。それは、骨盤の腸骨と脊椎の仙骨が合うところです。仙腸関節の機能障害は、これらの関節面の小さなミスマッチで、ヨガの生徒の中でも珍しくはありません。その理由を知る前に、この場所の解剖学を理解しましょう。


仙腸関節


骨盤(Pelvis)は「basin(たらい、盆地など)」を意味し、腹部の内臓の容器として守る役割をします。骨盤はまた、脊椎の基点を支持するとともに、下肢に繋がる場所でもあります。ゆるやかにカーブする仙骨は、25歳までに融合する5つの椎骨からなる楔形の骨で、一番下の腰椎と骨盤の腸骨の両方と繋がっています。私たちが立っているときは、仙骨は骨盤にしっかりと差し込まれるように作られていて、それが安定性を作り出します。座っている間はそのしっかりとした繋がりが失われ、また立ち上がる時に再度作られなければなりません。仙骨と骨盤の間の位置がずれていたり問題があると、この小さな動きに干渉します。これがおそらく大叔母が立ち上がろうとする時に感じる痛みを引き起こしており、「仙腸関節機能障害」とよばれます。



この関節を安定させているのは他に、骨盤に収まるよう仙骨を支えている強い靭帯群です。しかし、習慣的な非対称の立位、座位、寝相や、または軸の回転をするヨガのアサナ(後で詳しくみましょう)によってこれらを伸ばしすぎてしまうことがあるのです。骨同士を繋げる靭帯に加え、体の関節の多くは周りの筋肉を安定させるという機能があります(例えば、上腕外側の強い三角筋が肩を安定)。しかし、仙腸関節には梨状筋という小さな筋肉がたったひとつついており、この関節を横切って安定性を与えています。


それだけでなく、女性には仙腸関節を不安定にさせる要因が他にもあります。まず、男性は仙骨と骨盤が三箇所で繋がっている一方で、女性は二箇所しかありません。(この違いは、他の要因と同じく出産に関係しています。)次に、女性の仙腸関節面は男性に比べて浅くなっています。また、仙骨そのものも女性のものは幅広く、この幅によって歩行の際、脚の交互の動きが仙腸関節に対する自然な軸回転を強めることになっているのです。ホルモン変化もまた要因のひとつです。毎月の月経や妊娠、授乳などのホルモン変化は、仙腸関節の靭帯を弛緩させ、骨盤と仙骨の間の歪みを増やす可能性を高めるのです。出産自体がこの関節に外傷を与える場合もあります。

上は男性、下は女性


非対称の動き


ゴルフやテニスなどのスポーツのように、ヨガ・アサナの練習の時も、仙腸関節の一体性にストレスを与える可能性のある非対称の動きがあります。ゴルフやテニスのスウィングのように非対称で勢いのある動きは、仙骨と腸骨が逆方向に動くため、仙腸関節に障害を与える原因となり得るのです。ヨガでは、常に非対称の動きを行っていますが、特に前屈やツイストなどのポーズに多く見られます。

障害を起こしやすい前屈は、「ランナーズ・ストレッチ」と呼ばれるジャヌ・シルシャアサナです。このポーズは、床に座り片膝を曲げて足を反対の鼠蹊部に置き、最後に腿と膝を床に下ろして前屈します。上級の生徒の場合は、曲げた膝を横ではなく後方に向けることもあります。



このポーズは、座っている姿勢より仙腸関節が不安定になるため障害を起こしやすいのです。(立位の時に自然に作られている楔形の仙骨と骨盤の「自分でロックする」メカニズムは、座位では緩むことを思い出しましょう)さらに、このポーズは非対称ですから、仙腸関節あたりに回転のストレスを与える可能性があるのです。例えば、右膝を曲げて前方にストレッチすると、骨盤の右側が固定されるか後方へ動き、その一方で脊椎は前方に動きます。この骨盤と仙骨の乖離が、仙腸関節機能障害に関係し、すでにあるバランスの崩れを悪化させることもあるのです。

もし、仙腸関節の右側に機能障害があると診断された場合は、次のバリエーションを試しましょう。痛みの軽減、さらなる障害を防ぐ効果があるかもしれません。右足を左腿の内側近くに置かず、左の膝かふくらはぎの横に置きましょう。そして脊椎と骨盤が一緒に動くように、脊椎と同じく骨盤の右側を前に動かすよう注意して前屈します。

これが、ヨガポーズの練習と仙腸関節に関して覚えておくべきもっとも重要な概念です。全ての動きにおいて、骨盤に対して仙骨がどう動いているかに注意しましょう。こう考えるといいでしょう。「仙骨ってアイデンティ・クライシスになっている。脊椎なのか骨盤なのかわからなくなっている。脊椎と一緒に行くべきか骨盤と一緒に残るべきか?」仙骨を脊椎や骨盤から離して別々に動かすとしたら、それは仙腸関節にストレスとなるでしょう。なので、全ての座位ポーズでは、骨盤、仙骨そして腰椎が一緒に調和して前方に動くように股関節から曲げるように気をつけましょう。



数年前、私は仙腸関節に痛みを感じ、それからは何が原因なのかを突き止めるために、練習の間「探偵」となることに決めました。「捜査」の2日目は、座位のツイストだけを練習したのです。翌朝、私はベッドから起き上がるのも大変でした。骨盤を床に押し付けて固定し、ツイストを強めるためにまるで脊椎に武器を使うかのように腕や肘で強く腿を押してツイストしようとしていたことに気づいたのです。



今では、座位のツイストの準備で、股関節まわりで最大限に骨盤をツイストさせることを学びました。実際、「ツイスト」を始める前に途中まで行うのです。それに加え、体の後ろの骨(脊椎)からではなく、体の前の内臓からツイストすることに集中しています。骨盤から動かすこととゆっくりとした自然な呼吸と同時に行うこのアプローチは、仙腸関節痛の90%を緩和することができました。



治療的動き


仙腸関節が「アウト」な時、効果のあるシンプルな動きが2つあります。まずは、骨盤に対して仙骨が前傾しているか後傾しているかを知る必要があります。(おそらく、カイロプラクターや理学療法士が教えてくれるでしょう。)仙骨がどっちを向いているがわかったら、次の「どちらか」を試してみましょう。仙腸関節機能障害とは非対称であるせいですから、ヨガアサナとは異なり、どちらかのサイドだけ行うようにします。


あなたの仙骨が片方に後傾していたら、壁から1mくらい離れて立ちましょう。後傾がある方の脚を後方に挙げ、同じ方の手で足首を持ちます。反対の手は壁においてバランスを取りましょう。何度か優しく膝を前後に動かしながら、できればウェストの高さまでゆっくり後方へ挙げます。肘を伸ばし、足首と手を拮抗させながら後ろへ押しましょう。15cmくらいの幅で、12回程度膝を挙げたり下ろしたりします。胸は垂直にして骨盤は壁の方に向けましょう。そして脚を解放したら、もう一方は「行いません。」部屋を何歩か歩きましょう。そのあと何日かは、弓のポーズなど簡単な後屈をいくつか練習に組み入れます。

仙骨が前傾していたら、片脚を伸ばして横になり、前傾している方の膝を曲げて胸に引き寄せます。ふくらはぎと腿の間を持ち、膝が腋の近くに下りるよう12回程度優しく上下に動かします。足の裏が天井を向くように床と垂直に動かすとより良いでしょう。十分柔軟ならそうしましょう。上下にうごかしたら、膝を解放して片方に寝転がって立ち上がり数歩歩きましょう。数日は、前述したジャヌ・シルシャサナを同じ側の膝を曲げて行いましょう。傾いてしまっている方だけ行います。



このポーズは片方だけ行うこと、そして呼吸は優しく動きは楽に、が重要です。上下に動かす時に何度か自然に息を吐くのが私は好きです。また、自分の座り方、寝方、立ち方に気をつけることも役に立ちます。関節周りの靭帯を伸ばしすぎて不安定にしているのは、非対称な習慣的な動きです。仙腸関節機能障害は、大抵は立位、座位、寝相など姿勢に関係しています。骨盤と仙骨を一緒に動かすのを身に付けることが防止のコツです。複雑な問題へのシンプルな解決方法なのです。




(出展)https://yogainternational.com/article/view/yoga-tips-to-relieve-sacroiliac-joint-pain

2018年1月22日月曜日

手首の累積外傷性障害(RSI)のため6つのポーズ 
Wrist Relief: 6 Poses for RSI (Repetitive Stress Injury)

手根管症候群、腱鞘炎など累積外傷性障害(RSI)の場合
これらのポーズが肩と上背部を安定させて手首の痛みを和らげます。


手は動きに関係する基本的な器官のひとつです。基本的な生活や、遊び、意思の疎通や創造的表現においても手を使います。手や手首の怪我は辛いものですし、治りづらいものです。便利になった現代では、タイプしたりメールしたり、マウスを使ったりという繰り返す動きを伴う交流がとても多く、今日、もっとも多い手首の問題はRSI(累積外傷性障害)です。手根管症候群、手首の腱鞘炎などよく見られるものはこのカテゴリーに入ります。

RSIは、悪い姿勢や職場での労働効率などがもたらすことが多く、過度で反復される金骨格系へのストレスから起こります。腕の動きを肩や上背部が支持しなければ、動きの負荷がより小さな関節にかかってきます。さらに、肩や上背部の連携がうまくいかないと腕の神経を圧迫し、手首の痛み、腫れ、痺れを起こすこともあります。

ヨガは、少ないストレスと影響下で日々の生活を送るのに役立ちます。まず、スピードを落として自分自身と癖を観察し、怪我の原因を探りましょう。それから、より健康的で意識した新しいパターンを作りましょう。特に、ヨガでは上半身にあるより大きな筋肉が肘や手首、手の動きを支持し誘導できるよう、上半身を調整することにより手首のRSIの治癒を促すことができます。


手首のRSIのためのポーズ


以下のアサナは、肩や上背部の可動性や強度を高める助けとなり、神経圧迫や小さな関節へのストレスを最小限に留めます。これらのポーズでは、僧帽筋(頭骨の基底部から首を通って鎖骨へと延びています)の上部が、後ろに向かって緩むような感じを得るようにします。そうすることで首の基部の近くに詰まりがなくなり、首の両側が自由に伸びます。この動きは、私たちがコンピューターの前にいるときにありがちな、肩が前下に引かれ僧帽筋上部の緊張が頭骨へと広がって頭が前に傾いてしまう、そんな前かがみの姿勢で起こるバランスの崩れを和らげるのが目的です。

まず、手首に負荷のない位置から始め、それから、より大きく安全に手首をストレッチし、最終的には荷重のかかった位置に移っていきましょう。これらのポーズを定期的に練習すれば、徐々に肩や肘、手首に強く効くチャトランガ・ダンダーサナやアド・ムカ・ヴリクシャサナ(ハンドスタンド)など上半身のためのアサナの準備ができてくるでしょう。


1. ウルドヴァ・ハスタサナ
(上向きの手のポーズ)




背中を壁につけてタダサナで立ちましょう。壁から5センチの場所で足を骨盤幅、平行に開きます。足のかかとに重心を移し臀部を壁に向かって長く下ろし、腰を反らさないようにします。胴体の前とサイドを持ち上げ胸を開きましょう。肩のもっとも外側を壁に向かって後ろに回し、胸部が広くなる感覚を感じましょう。

手のひら同士を向かい合わせにし、両腕を曲げずに床と平行に前に伸ばします。両肩を壁の方向に引いて肩甲骨を後ろに下げましょう。そして腕を頭上に上げます。両手が壁につくかつかないかは肩の可動域によります。天井に届くかのように腕は強くまっすぐ伸ばし続け、肩と肩甲骨は壁に向かって下ろします。腰背部、腿、腰を動かさず、両手に向かって脇腹を伸ばしましょう。

今度は腕を横から上げ、上腕と肩の回転に注意しながら同じポーズを繰り返しましょう。手のひらを下にして肩の高さに両腕をまっすぐ伸ばします。腕の内側を胸の中心から伸ばし、手首の向かって二頭筋のストレッチを感じます。胸のサイドを持ち上げ、上腕を肩から回転させ、手のひらを天井に向けましょう。この回転で、肩甲骨が下方内側、胸に向かって前方へ動いているように感じます。壁から離すように前方に三頭筋を回転させて両腕を頭上に上げます。腕を落とし込まず僧帽筋を耳から遠ざけて、手の指方向に脇の下の外側を引き上げます。息を吐きながら両腕を横に下ろしタダサナに戻りましょう。


2. ウルドヴァ・バッダングリヤサナ
(上向きの指を組むポーズ)




このポーズの最初のヴァリエーションでは、僧帽筋を緊張させずにいかに腕を伸ばすことに集中しましょう。タダサナで、ぴったりと指を根元から組み合わせ、手のひらを上に向けて頭の上に手の甲を載せます。両腕を天井の方向へ伸ばし始めるとともに、僧帽筋の上部を背中の下方に向かって首から遠ざけるように解放しましょう。僧帽筋の緊張を感じたら(片方でも)、そこでやわからくなるまで動きを止めます。腕を伸ばすために肩を緊張させるより、三頭筋のあたりで上腕骨を抱えられるか確認しましょう。息を吐いて、手を解放し、体の横に腕を下ろします。

次は、脇腹を開いて指と手首を伸ばすことに集中して、このポーズを繰り返しましょう。反対の人差し指が上になるように指を変えて組み替えます。(変な感じがしても気にしないで)組んだ手の甲を胸におき、床と平行に体の前の方向へ腕を伸ばしましょう。指の根元から押し出し、手のひらの手首に近いところを広げます。腕の外側を強くし、腕の内側にストレッチを感じるまで腕を伸ばします。腕を完全に伸ばしたまま、頭上に持ち上げます。手首を天井に向かって高くあげたら、肋骨の脇を持ち上げて腋を開き、両手にむかってどんどん上へ伸ばしましょう。

手のひらを大きく開きながら、腕が耳の横か後ろにくるまで後方へ動かしましょう。腕をさらに後方へ動かすとともに、肋骨の下端と腰を前方に押さないで肩甲骨と上背部を前に動かしましょう。腕をまっすぐ強くしたまま、手のひらを下げないで僧帽筋を下げます。息を吐いて、組んだ手を解放し、腕を前から横に下ろしてタダサナに戻ります。



3. アルダ・パルシュヴァ・ハスタサナ
(半分の横向きの手のポーズ)




壁から腕の長さの位置にタダサナで立ち、体の左側を壁と平行にします。左手のひらを肩高さで壁におき、中指が後ろを向くように手を回します。(もし手首に負担があれば、指を天井に向けても構いません)左肘を軽く曲げ、上腕を肩関節から外に(手と同じ方向)回します。全ての指の付け根や腹など手のひら全体を壁に押し付けます。特に人差し指にかかる圧力を感じましょう。左の肩甲骨を引き込んでから耳から遠ざけながら下ろし、胸を壁から遠ざけるように回しながら優しく左腕を伸ばします。胸の真ん中から壁を推しているような感覚がするはずです。2分程度ポーズを続け、反対側で繰り返します。


4. 壁際でのブジャンガサナ
(コブラポーズのバリエーション)




このブジャンガサナの立位バージョンは、うつ伏せの後屈の効果が得られます。手首に荷重をかけることなく、上背部を強化し、肩や首の圧迫を解消、日常の前屈みを中和します。

約15センチ壁から離れて恥骨を壁に当てて立ちます。肩の高さで指を立てて壁におきましょう。両脚を伸ばし、踵を床から高くあげ、尾骨を壁に向かって引きましょう。胸を開き、肩は後ろへ回して壁から離してお尻の方向に下げます。肩甲骨を引き下げ胸に向かって前に出します。胸の脇を引き上げると、肩甲骨の下端同士が近くなっていくような感覚を感じるでしょう。下腹部を胸骨の上の方にあげながら、指先で壁を下げようとしているかのように位置を変えずに(アイソメトリック)手の指を床に向かって引きます。胸が開いて首が自由だと感じたら上を見ましょう。このまま1分間、あるいは力強く開いた感覚が有る限りホールドしましょう。そして休憩してから繰り返します。



5. バラドヴァジャサナ I
(聖バラドヴァジャのポーズ)




ふたつに折ったブランケットの上に、両足をお尻の左にして座ります。左足の甲を右足の土踏まずに置いて、左足のつま先が真後ろに向き、右足のつま先が左に向くようにしましょう。両膝は前に向けます。膝に負担があるようなら、サポートを増やして高く座りましょう。

骨盤が水平になるように左のお尻を下げます。右の肘を曲げて背後に回し、右手で左の上腕を掴みます。右肩は後方へ回しましょう。右に向きながら、左手を前にして右膝のできるだけ外側に近いところにおきましょう。息を吸って、胸の脇を持ち上げます。吐きながら、胸を右の方向に向けましょう。右の腕と肩がツイストをリードするように、右肩を後ろに回し続けます。胸を広く平らに保ちながら、息を吐き、頭を右の方向へ回します。30秒ホールドしましょう。そして吐きながら真ん中へ戻って両脚を解放し、反対側も行いましょう。


6. 四つ這いのポーズ



最後に、手首に荷重をかけるポーズで、肩と腕の正しいアライメントを探っていきます。荷重のかかるアサナの練習は、しっかりとした面で行い、手首の上だけではなく手全体に荷重が分散させることが重要です。(柔らかな面では手首が曲がりすぎる可能性があります)

両手を肩の下に両膝を腰の下にして四つ這いになりましょう。手のひら全体と指の付け根を平らに床に押し付け、前腕は手首から持ち上げます。手のひらの皮膚が手首から指先に向かって伸びるような感覚が得られるはずです。両腕を伸ばし、鎖骨を広げ、上腕は肩関節に引き込みましょう。

もし手首に不快感があれば、手首のあたりに畳んだマットの端かヨガウェッジをおきましょう。これらを使うと手首が指よりも高くなり、荷重が手全体に分散することで手首関節の圧迫を少なくします。

手首が十分強いと感じたら、両手を外に回して指先同士を逆方向に向け、肩を回転し手首を大きく動かしてポーズを深めましょう。腕の内側をより伸ばし手首の柔軟性を高めるために、指先が膝の方向に向くように回転させてみましょう。

これらのバリエーションで無理を感じなければ、肩、腕、手首の動きをいかに統合させるかという新しい気づきを、手首の進展や腕にかかる荷重を徐々に増やしたアサナに取り入れていきましょう。例えば、アドムカシュヴァナサナ(ダウンドッグ)、チャトランガダンダサナ、バカサナ(鶴のポーズ)、ウルドバダヌラサナ(上向きの弓のポーズ、車輪のポーズ)などです。


(出展)https://yogainternational.com/article/view/wrist-relief-6-poses-for-rsi-repetitive-stress-injury

2018年1月14日日曜日

陰ヨガ5つの質問 
5 Common Questions About Yin Yoga

今日は陰ヨガについてです。
基本的には陽のヨガを行うことの多い私ですが、身体や感情の様子をみて陰ヨガがいいなと思うこともあります。ヨガの目的は身体だけではないので、バランスを見極めて落ち着かせるのには陰ヨガはいいと思います。
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陰ヨガは多くのヨガスタジオで定番になっています。陰ヨガを試したことがなければ、いったいどんなものかと思うことでしょう。あるいは、何回か出てみたけれどまだ陰ヨガについてわからないことがある!という人もいるでしょう。

よく知られている「陽」の練習(ハタ、フロー、パワースタイルなどもっと動くタイプのもので、呼吸と身体の両方の動的な動きにフォーカスしている)と比べると、陰のクラスはもっとゆっくりとしています。

陰ヨガのポーズは、基本的に受動的な性質があり、筋肉群ではなく身体の結合組織に働きかけるため1分から5分くらいまでも保ちます。比較的に簡単そうでしょ?そうでもないかも。陰のポーズを保持するには身体的なある程度の努力が必要となる場合もありますが、長く保持する心を持つことが時には本当に大変なのです。

陰ヨガを始めたい、練習を深めたい、そしてもっと知りたいと言う方に、以下の陰ヨガに関するよくある質問への答えが役に立てばと思います。


陰ヨガの効果って何?


身体の観点から見て、陰のポーズの全ては解放にあります。ポーズや呼吸は概して筋膜(個々の筋肉や筋膜群の周りを鞘のように沿う深い結合組織)を操ることに焦点をあてています。

腱(骨格の動きを助ける筋肉と骨を結合)や靭帯(全体的な安定性のため骨同士を結合)などの結合組織もまた、陰ヨガではその中心となります。これらの組織は筋肉や関節を支持し安定させるために頑張っているため、激しい身体の動きで起こる変化に本質的に抵抗します。しかし、あまり使われなかったり(座りがちの生活をすると起こります)、また加齢によっても、結合組織は弾力性を失います。それが、凝り、関節の痛み、関節が動きにくいなどの症状としてあらわれます。

さまざまなタイプの結合組織にゆっくりと重力をかけ、長く静止したまま保持することで、より強く関節を支持することのできる筋膜や靭帯をより柔軟に訓練することが陰ヨガの目的です。これによって、陽の練習でより筋肉を伸ばしたり、日々の生活で安全に関節の可動域を広げたりするためのスペースを作ることになるのです。

そして、陰ヨガの定期的な練習により、長時間快適に座ることが身体的に容易になってくるでしょう。瞑想に役立つのです!


ポーズを保持している間は何を考えればいいの?


陰の練習では、例えば「1呼吸で1動作」のビンヤサクラスなどより「精神的な時間」が少し多いことに気づくかもしれません。

この時間にどのように心を操るかを決めることが、陰クラスに入るための作業の一部です。この時間を使って自分の思考や感情によりそい、ヨガの基本的要素である自分自身とより繋がり理解しましょう。


定期的に瞑想をしたい、瞑想を始めたい人にとって、陰ヨガは理想的な機会となるでしょう。何も考えない何もしない動いてもダメと無理をせず、単に「そこにある」ためのほとんどの人がするべき少ない機会のひとつを、ポーズの保持によって得られます。

例えば、鈍っているとか固まっている、あるいはゆったりとして広がった感覚を身体に感じるでしょう。そうした感覚に関係する日常の動作パターンがあるでしょうか?あるポーズを続けていると、時間とともに最初は「粘って」「動きにくい」場所が徐々に柔らかくなってくるのを感じることでしょう。続けて陰ヨガの練習をすることで徐々にわかりやすくなってくるとても緩やかな変化かもしれません。

陰ヨガをしていると精神的に快適だとか不快だとか感じることもあるでしょう。この快適さや不快感の理由は何かあるでしょうか?

あるいは、今目指している個人的、職業的な目標があるかもしれません。陰ヨガのポーズを保持する時間は、1日を通してあなたを攻め続ける邪魔から離れて、ただ目標へと心のエネルギーを集中するのに良い時間となるでしょう。


目は閉じた方がいいの?


陰を始めたばかりなら、目を閉じた方がより深く自分の心と身体に落ち着いて行くことができるかもしれません。陽クラスよりも陰クラスの方が静止する時間が長いので、内的にも外的にも集中の妨げになることが多く浮かんできます。

目を閉じると、猿心の(落ち着かない)おしゃべりに繋がる視覚から入る集中の妨げを排除するのに役立つでしょう。(「どうして隣の人はもっとリラックスしてるのかしら?」「マット・スプレーどこにあるのかな?」「5分間ポーズしてる間、先生は何するつもりなんだろう?」なんて)

けれど、目を開けていた方が、精神的、感情的、身体的により快適なら、そうした方が全くよいでしょう。


アライメントは大事?


陰ヨガでのアライメントの概念は、陽ヨガのそれとは異なります。

陽ヨガにおいてアライメントは、ストレッチしすぎを防止したり、身体のある部分を直接強化したり伸ばしたり、また靭帯や関節の損傷を防ぐ意味があります。速いペースの陽ヨガでは、こうした心がけが身体のストレスや怪我を防止するのに役立つのです。

陰ヨガでは、ポーズをとるのに重力に頼ったり、陽ヨガでアライメントで守るべき箇所(靭帯など)をターゲットにするため、そのルールが少し違うのです。

例えば、背骨を伸ばして股関節から曲げることに慣れているポーズで、(例えばバダコナサナなど前屈)上半身を完全にリラックスし、背骨を丸くするように指導されるでしょう。

また、慣れたポーズも違う名前で呼ばれます。例えばバダコナサナは、陰では「バタフライ(蝶々)」これは、陽の練習と同じ先入観を持って筋肉を働かせてしまうことを防止するためです。




また、陰ヨガでは、各人はそれぞれに怪我やトラウマの経験、骨格、関節のつき方が異なりこうした要素がどのようにポーズに向かうかに強い影響を及ぼすことを重要視しています。「正しい」アライメントとはつまり、人によって異なるということです。もし対象にした箇所に何か感覚があれば(痛みではなく!)、そのポーズにおけるあなたのアライメントはあなたの身体にとっておそらく正しいというサインなのです。

バダコナサナ、あるいはバタフライをもう一度みてみれば、このポーズでどれくらいの可動域があるかは、各個人の筋骨格の柔軟性に左右されます。大腿骨頭の形状やその骨盤への付き方によって、多かれ少なかれ外転が難しくなり得ます。両膝が床に近いか、かかとが鼠蹊部に近いかを心配するよりも、腿内側と外側の臀筋にある内転筋に沿って感じる感覚に気づきましょう。気持ちのいいストレッチを感じるなら、あなたの身体にとって正しい位置にあるはずです。

また、ハムストリングが硬かったり、脚の後方にある結合組織をターゲットにするなら、バタフライで踵を鼠蹊部から遠ざける方があなたのニーズには効果的です。より内転筋に働きかけるのなら両踵は身体に近づけるべきです。


では、不快なら上達していること?それとも心配すべき?


もし「自分の限界を知る」という考えをヨガの練習で行なっているなら、陰ヨガでそのコンセプトにとても詳しくなるでしょう。

ポーズのあなたにとっての完成形を見つけるのにまだまだ長い時間があると知れば、「限界」に突き進む理由などありません。最初の限界に届いたら、マインドフルネスの練習のときのようにそこでしばらく感覚や思考を探求するのです。

そのポーズがターゲットとしている箇所(例えば、バナナサナでの体側)に強いストレッチ感を感じていても呼吸は楽だというとき、おそらくあなたは「快適な不快」の中にいます。これは、あなたの限界を通り抜けるのによい場所です(そして、陰クラスでは、深く入れば入るほどそのポーズでのいくつかの限界を経験し通り抜けるでしょう)。静の中で起こる思考や感覚とともにあるという精神的なよい練習となるでしょう。




狭い範囲に感じる鋭い痛みや、呼吸の乱れは、緩めろという警告です。

もちろん、怪我があればインストラクターに伝えるべきです。精通した陰ヨガ・ティーチャーなら、目的としている場所を安全にストレッチして解放させるよう違うポーズやプロップスを提案してくれるはずです。陰ヨガでは、みんながもっとも効果的にポーズに入れるよう、プロップスをよく使用します。



ますます「イケイケ!(つまり、もっと「陽」)」な世界で、陰ヨガはより必要なバランスを与え、ヨガで得たいと思う多くの人に休養と静寂を与えてくれます。始めたばかりなら、複数回受けてみましょう。陽スタイルのヨガとの違いは調整ですが、陰ヨガがどのような効果があるかに気がつくまで数回必要かもしれません。そして、結局のところ大昔の道教は正しいと気づくでしょう。陰と陽のエネルギーは、それぞれ完璧に補完し合っていると。




(出典)https://yogainternational.com/article/view/questions-about-yin-yoga