手根管症候群、腱鞘炎など累積外傷性障害(RSI)の場合
これらのポーズが肩と上背部を安定させて手首の痛みを和らげます。
RSIは、悪い姿勢や職場での労働効率などがもたらすことが多く、過度で反復される金骨格系へのストレスから起こります。腕の動きを肩や上背部が支持しなければ、動きの負荷がより小さな関節にかかってきます。さらに、肩や上背部の連携がうまくいかないと腕の神経を圧迫し、手首の痛み、腫れ、痺れを起こすこともあります。
ヨガは、少ないストレスと影響下で日々の生活を送るのに役立ちます。まず、スピードを落として自分自身と癖を観察し、怪我の原因を探りましょう。それから、より健康的で意識した新しいパターンを作りましょう。特に、ヨガでは上半身にあるより大きな筋肉が肘や手首、手の動きを支持し誘導できるよう、上半身を調整することにより手首のRSIの治癒を促すことができます。
手首のRSIのためのポーズ
以下のアサナは、肩や上背部の可動性や強度を高める助けとなり、神経圧迫や小さな関節へのストレスを最小限に留めます。これらのポーズでは、僧帽筋(頭骨の基底部から首を通って鎖骨へと延びています)の上部が、後ろに向かって緩むような感じを得るようにします。そうすることで首の基部の近くに詰まりがなくなり、首の両側が自由に伸びます。この動きは、私たちがコンピューターの前にいるときにありがちな、肩が前下に引かれ僧帽筋上部の緊張が頭骨へと広がって頭が前に傾いてしまう、そんな前かがみの姿勢で起こるバランスの崩れを和らげるのが目的です。
まず、手首に負荷のない位置から始め、それから、より大きく安全に手首をストレッチし、最終的には荷重のかかった位置に移っていきましょう。これらのポーズを定期的に練習すれば、徐々に肩や肘、手首に強く効くチャトランガ・ダンダーサナやアド・ムカ・ヴリクシャサナ(ハンドスタンド)など上半身のためのアサナの準備ができてくるでしょう。
1. ウルドヴァ・ハスタサナ
(上向きの手のポーズ)
背中を壁につけてタダサナで立ちましょう。壁から5センチの場所で足を骨盤幅、平行に開きます。足のかかとに重心を移し臀部を壁に向かって長く下ろし、腰を反らさないようにします。胴体の前とサイドを持ち上げ胸を開きましょう。肩のもっとも外側を壁に向かって後ろに回し、胸部が広くなる感覚を感じましょう。
手のひら同士を向かい合わせにし、両腕を曲げずに床と平行に前に伸ばします。両肩を壁の方向に引いて肩甲骨を後ろに下げましょう。そして腕を頭上に上げます。両手が壁につくかつかないかは肩の可動域によります。天井に届くかのように腕は強くまっすぐ伸ばし続け、肩と肩甲骨は壁に向かって下ろします。腰背部、腿、腰を動かさず、両手に向かって脇腹を伸ばしましょう。
今度は腕を横から上げ、上腕と肩の回転に注意しながら同じポーズを繰り返しましょう。手のひらを下にして肩の高さに両腕をまっすぐ伸ばします。腕の内側を胸の中心から伸ばし、手首の向かって二頭筋のストレッチを感じます。胸のサイドを持ち上げ、上腕を肩から回転させ、手のひらを天井に向けましょう。この回転で、肩甲骨が下方内側、胸に向かって前方へ動いているように感じます。壁から離すように前方に三頭筋を回転させて両腕を頭上に上げます。腕を落とし込まず僧帽筋を耳から遠ざけて、手の指方向に脇の下の外側を引き上げます。息を吐きながら両腕を横に下ろしタダサナに戻りましょう。
2. ウルドヴァ・バッダングリヤサナ
(上向きの指を組むポーズ)
このポーズの最初のヴァリエーションでは、僧帽筋を緊張させずにいかに腕を伸ばすことに集中しましょう。タダサナで、ぴったりと指を根元から組み合わせ、手のひらを上に向けて頭の上に手の甲を載せます。両腕を天井の方向へ伸ばし始めるとともに、僧帽筋の上部を背中の下方に向かって首から遠ざけるように解放しましょう。僧帽筋の緊張を感じたら(片方でも)、そこでやわからくなるまで動きを止めます。腕を伸ばすために肩を緊張させるより、三頭筋のあたりで上腕骨を抱えられるか確認しましょう。息を吐いて、手を解放し、体の横に腕を下ろします。
次は、脇腹を開いて指と手首を伸ばすことに集中して、このポーズを繰り返しましょう。反対の人差し指が上になるように指を変えて組み替えます。(変な感じがしても気にしないで)組んだ手の甲を胸におき、床と平行に体の前の方向へ腕を伸ばしましょう。指の根元から押し出し、手のひらの手首に近いところを広げます。腕の外側を強くし、腕の内側にストレッチを感じるまで腕を伸ばします。腕を完全に伸ばしたまま、頭上に持ち上げます。手首を天井に向かって高くあげたら、肋骨の脇を持ち上げて腋を開き、両手にむかってどんどん上へ伸ばしましょう。
手のひらを大きく開きながら、腕が耳の横か後ろにくるまで後方へ動かしましょう。腕をさらに後方へ動かすとともに、肋骨の下端と腰を前方に押さないで肩甲骨と上背部を前に動かしましょう。腕をまっすぐ強くしたまま、手のひらを下げないで僧帽筋を下げます。息を吐いて、組んだ手を解放し、腕を前から横に下ろしてタダサナに戻ります。
3. アルダ・パルシュヴァ・ハスタサナ
(半分の横向きの手のポーズ)
壁から腕の長さの位置にタダサナで立ち、体の左側を壁と平行にします。左手のひらを肩高さで壁におき、中指が後ろを向くように手を回します。(もし手首に負担があれば、指を天井に向けても構いません)左肘を軽く曲げ、上腕を肩関節から外に(手と同じ方向)回します。全ての指の付け根や腹など手のひら全体を壁に押し付けます。特に人差し指にかかる圧力を感じましょう。左の肩甲骨を引き込んでから耳から遠ざけながら下ろし、胸を壁から遠ざけるように回しながら優しく左腕を伸ばします。胸の真ん中から壁を推しているような感覚がするはずです。2分程度ポーズを続け、反対側で繰り返します。
4. 壁際でのブジャンガサナ
(コブラポーズのバリエーション)
このブジャンガサナの立位バージョンは、うつ伏せの後屈の効果が得られます。手首に荷重をかけることなく、上背部を強化し、肩や首の圧迫を解消、日常の前屈みを中和します。
約15センチ壁から離れて恥骨を壁に当てて立ちます。肩の高さで指を立てて壁におきましょう。両脚を伸ばし、踵を床から高くあげ、尾骨を壁に向かって引きましょう。胸を開き、肩は後ろへ回して壁から離してお尻の方向に下げます。肩甲骨を引き下げ胸に向かって前に出します。胸の脇を引き上げると、肩甲骨の下端同士が近くなっていくような感覚を感じるでしょう。下腹部を胸骨の上の方にあげながら、指先で壁を下げようとしているかのように位置を変えずに(アイソメトリック)手の指を床に向かって引きます。胸が開いて首が自由だと感じたら上を見ましょう。このまま1分間、あるいは力強く開いた感覚が有る限りホールドしましょう。そして休憩してから繰り返します。
5. バラドヴァジャサナ I
(聖バラドヴァジャのポーズ)
ふたつに折ったブランケットの上に、両足をお尻の左にして座ります。左足の甲を右足の土踏まずに置いて、左足のつま先が真後ろに向き、右足のつま先が左に向くようにしましょう。両膝は前に向けます。膝に負担があるようなら、サポートを増やして高く座りましょう。
骨盤が水平になるように左のお尻を下げます。右の肘を曲げて背後に回し、右手で左の上腕を掴みます。右肩は後方へ回しましょう。右に向きながら、左手を前にして右膝のできるだけ外側に近いところにおきましょう。息を吸って、胸の脇を持ち上げます。吐きながら、胸を右の方向に向けましょう。右の腕と肩がツイストをリードするように、右肩を後ろに回し続けます。胸を広く平らに保ちながら、息を吐き、頭を右の方向へ回します。30秒ホールドしましょう。そして吐きながら真ん中へ戻って両脚を解放し、反対側も行いましょう。
6. 四つ這いのポーズ
最後に、手首に荷重をかけるポーズで、肩と腕の正しいアライメントを探っていきます。荷重のかかるアサナの練習は、しっかりとした面で行い、手首の上だけではなく手全体に荷重が分散させることが重要です。(柔らかな面では手首が曲がりすぎる可能性があります)
両手を肩の下に両膝を腰の下にして四つ這いになりましょう。手のひら全体と指の付け根を平らに床に押し付け、前腕は手首から持ち上げます。手のひらの皮膚が手首から指先に向かって伸びるような感覚が得られるはずです。両腕を伸ばし、鎖骨を広げ、上腕は肩関節に引き込みましょう。
もし手首に不快感があれば、手首のあたりに畳んだマットの端かヨガウェッジをおきましょう。これらを使うと手首が指よりも高くなり、荷重が手全体に分散することで手首関節の圧迫を少なくします。
手首が十分強いと感じたら、両手を外に回して指先同士を逆方向に向け、肩を回転し手首を大きく動かしてポーズを深めましょう。腕の内側をより伸ばし手首の柔軟性を高めるために、指先が膝の方向に向くように回転させてみましょう。
これらのバリエーションで無理を感じなければ、肩、腕、手首の動きをいかに統合させるかという新しい気づきを、手首の進展や腕にかかる荷重を徐々に増やしたアサナに取り入れていきましょう。例えば、アドムカシュヴァナサナ(ダウンドッグ)、チャトランガダンダサナ、バカサナ(鶴のポーズ)、ウルドバダヌラサナ(上向きの弓のポーズ、車輪のポーズ)などです。
(出展)https://yogainternational.com/article/view/wrist-relief-6-poses-for-rsi-repetitive-stress-injury
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