2020年6月4日木曜日

呼吸の「失われた技術」が睡眠や回復に影響する 
How The 'Lost Art' Of Breathing Can Impact Sleep And Resilience


呼吸についての「Breath: The New Science of a Lost Art」の著者ジェームス・ネスター氏のインタビュー記事です。
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ヒトは一般的に毎日およそ25000回の呼吸をしている。大抵の場合はそれについて考えたこともない。しかしCOVIDー19のパンデミックで、呼吸器疾患とこれまで当たり前だと思ってきた呼吸が新たに注目を集めている。


ジャーナリストのジェームス・ネスターは数年前、彼がたびたび悩まされる肺炎と気管支炎を緩和するため呼吸のクラスを取ってはどうかと医師に勧められてから、呼吸器に興味を持つようになった。


著書「Breath: The New Science of a Lost Art(呼吸:失われた技術の新しい科学)」のために呼吸の科学や文化を調査していた時、ネスターはある研究に参加した。そこでは10日間完全に鼻に栓をされ口だけで呼吸することになった。それは心地のよい体験ではなかった。


「最初は夜間に数分いびきをかく程度だったが、3日たつといびきは4時間に及んだ」口呼吸を強制されたことについて彼は語る。「睡眠時無呼吸症になった。ストレスのレベルが異常になった。神経は無茶苦茶になった。最悪だった」


「こうやって身体は空気を取り込もうとするんだ」ネスターは言う。「正しく呼吸をすれば、そして本当に横隔膜を使えれば、心臓の負荷を減らすことができる」



インタビューのハイライト


なぜ鼻呼吸が口呼吸よりもいいのか?

鼻は、空気を濾過し、温め、処理する。みんなそれを知っている。しかし、あまりに多くの人が(少なくとも私は)鼻で息を吸うと身体の中に様々なホルモンを流す引き金になるということに気づいていない。そして、血圧を下げ、心拍数を調整し、記憶する手助けすらする。つまり、バランスを取るために体内の無数の機能を調整するという素晴らしい臓器なんだ。



鼻には勃起組織がある

鼻は他の臓器よりも生殖器と深い関係がある。同様の組織で覆われている。そのため、ある部分が刺激されると、鼻もまた刺激される。その関係が深すぎて、下の方が刺激されるとくしゃみが止まらなくなる人もいる。そしてこの状態は、ハネムーン鼻炎と呼ばれるほど一般的である。


また非常に興味深いことに、勃起組織はそれ自体で鼓動する。つまり、片方の鼻腔を閉じて他方の鼻腔から息を吸うようになったり、その鼻腔が閉じて息を吸ったりする。身体というのは勝手にそれをしている。


これを研究した多くの人は、このようにして私たちの身体はバランスを維持していると考えている。右の鼻腔で呼吸する時は血流が速くなって身体が熱を持ち、コルチゾールのレベルが上昇、血圧が上がる。そして左の鼻腔で呼吸するとよりリラックスするからだ。体は自然にこれを行っている。そして、口で呼吸すると身体のこの能力を使わせないということになるのだ。



呼吸が不安症に与える影響

神経心理学者と話をしたら、不安症や恐怖からくる症状などを持つ人は大抵の場合呼吸が多すぎるのだと説明してくれた。つまりそれほど多くの呼吸をするということは、自分を絶え間なくストレス状態へと置いていると言うことだ。つまり、神経の交感神経側を刺激しているのだ。そしてそれを変えるには、深く呼吸すること。考えてみて欲しい、虎が君に向かってやってくるとか、車に引かれそうだというストレスのある時は、できるだけたくさん呼吸して呼吸して呼吸するはずだ。しかしゆっくり呼吸すると、これがリラクゼーション反応と関係する。横隔膜が下がり、より多くの空が肺に入り、身体はすぐにリラックスの方へと切り替わる。



息を吐くとリラックスできるのはなぜ?

息を吐くことが副交感神経反応だからだ。今、心臓の上に手を置いてみて。ゆっくりと息を吸うと心臓が速くうつのを感じるだろう。息を吐くと、心拍も下がるはずだ。つまり息を吐くことは身体をリラックスさせる。そしてとても深く呼吸すると他のことが起こる。息を吸うと横隔膜が下がり、大量の血液 ー 夥しい量の血液だ ー を胸腔に吸い上げるんだ。息を吐くと、その血液は身体の方へと戻っていく。



浅い呼吸の問題とは

呼吸をボート漕ぎだと思えばいい。とても短くぎこちないストロークでたくさん漕いで、目的地へ向かウトする。いつかは着くだろうがとても時間がかかる。それとも、たくさんの水をかいて長いストロークで漕ぎ、もっと効率的にたどり着くか。空気を体内に取り込むために簡単な方がいいだろうし、特にそれが1日に25000回も行うことなら尚更だろう。だから、この呼気吸気をちょっと長くして、横隔膜をもう少しだけ上げ下げすれば、血圧や精神状態に大きな効果が得られる。



フリー・ダイバーは数分間息を止められるよう肺の容量を増やす

世界記録は12分半だ。ダイバーの多くは7、8分間も息を止められるが、それでも信じられないほどだ。それを見たのは数年前で、フリー・ダイビングの競技についてのレポートのために私は送り出された。この選手は、水面でひとつ大きく呼吸をすると海の中へと肝ぇんに消えてしまい5、6分間戻ってこなかった。私たちが何を持っていようと、何を持って生まれようと、それは生きている間ずっと続くもので、特に臓器に関してはそうだと言われてきた。けれど、肺の容量に関しては全くもって変化させることができる。こうしたダイバーたちの容量は14リットルで、普通の成人男性の約2倍だ。彼らもそんな肺を持って生まれてきたわけじゃない。彼らの身体に大きく影響を与えられるような方法で呼吸するよう自身を訓練したんだ。




(出典)https://www.npr.org/sections/health-shots/2020/05/27/862963172/how-the-lost-art-of-breathing-can-impact-sleep-and-resilience

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