2024年1月24日水曜日

伝統的なヨガで筋肉のバランスが崩れる? Vol.1 
Does Traditional Yoga Lead to Muscular Imbalance? - Part 1


ヨガを実践する人の多くは、体や心、精神のバランスを作り出す本質的な力がヨガにはあると信じています。ヨガは変化をもたらす素晴らしい実践ですが、アサナには意外にあまりバランスが良くはないものもあります。実際、この不均衡が身体的な怪我の元になる可能性も低くありません。


「バランス」という言葉は、霊的な体験から精神、そして物理的空間での肉体的なバランスと多岐にわたります。けれど、ここで論じようとしているのは、肩の機能的筋肉バランスについてです。ヨガは肉体的に完全にバランスの取れたものだと教わることが多いのですが、解剖学的視点でヨガのアサナを深く調べると、アサナを通して肩のいくつかの筋肉はとても強化される一方で、他の筋肉は全く強化されないということがわかります。この筋肉の不均衡が長期的には怪我や痛みとなって現れます。


幸い、私たちの体は負荷に対して常に適応しているので、筋肉バランスが崩れたままにはなりません。けれど、この問題に気づき理解することが、私たちの肩を健康でバランスの取れた状態にする第一歩となります。






ヨガにおける肩の強さの不均衡


ヨガがどのように体の筋肉の不均衡を作り出すのかを理解するために、2つの解剖学的動きを理解する必要があります。肩を押す動きと肩を引く動きです。
 

肩を押す動きは、何か押して体から遠ざける際に腕を使う動きです。玄関を通ろうと重たい扉を押す、あるいはリビングを掃除する際に掃除機を押すのをイメージしてみてください。肩を押す動きをする時はとても多くの筋肉が共に働くのですが、この動きに関連する主役に焦点を当てましょう。腕を使って何かを遠くへ押す時、主に働く筋肉は胸筋、三角筋前部(肩の前にあります)、三頭筋(上腕の後ろにある筋肉群)、そして前鋸筋(肩甲骨から胸郭の横に広がっています)です。これらの筋肉は、腕の角度や動きと重力との関係によって異なる働きをしますが、「押す」筋肉群はこれら4つの大きな筋肉だと考えることができます。


ヨガの中でよく見られる肩を押す動きの例をいくつか見ていきましょう。ヨガでは、玄関扉や掃除機はありませんが、何度も押す大きな面があります。ヨガマットのしたにある床です。プランク・ポーズは、腕でこの面を遠くへ押すアサナの完璧な例です。ここでの肩の動きをイメージするには、このポーズで腕を使わなければ何が起こるのかを想像するとわかりやすいでしょう。腕の力を全て抜いてしまえば、肘は体重で曲がり、体が重力で床に崩れるでしょう(あまりいい格好ではありませんね!)。けれど、床に崩れないで、肩を押す筋肉群(胸筋、三角筋前部、三頭筋、前鋸筋)を収縮させて床を押すことで、腕を伸ばしたまま床から体を浮かせておくことができます。


その他ヨガでの肩を押す動きは、アドムカ・シュヴァナサナ(下向きの犬のポーズ)、チャトゥランガ・ダンダアサナ(ヨガの腕立て)、アドムカ・ヴルクシャサナ(腕立ち)、バカアサナ(カラスのポーズ)、ヴァシシュタサナ(横向きのプランク)などがあります。
 

押す動きと異なり、肩の引く動きは自身の方へ何かを引く時に起こります。地面の頑固な雑草を引く時、リスを見つけて捕まえたいと追いかけようとしている犬のリーシュを強く引っ張っている時などを考えてみてください。こうした肩を引く動きをしている時に収縮している主な筋肉のことは、肩を押す筋肉群の「拮抗筋」と呼びます。それには、菱形筋、中部僧帽筋(左右の肩の後ろにあります)、二頭筋、上腕筋(腕の前に走る筋肉です)、広背筋(背中の大きな筋肉)があります。ここでも腕の角度や重力との関係性によって、各筋肉の働く強さは異なります。しかし、この全体的な筋肉群が肩を引く筋肉だと考えてください。
 


ヨガでの肩を押す動きについて理解したことを基に、肩を引くヨガの動きがあるか考えてみましょう。この分類に正しく当てはめるには、そのポーズは腕で自身の方に何かを引可なければならないということを忘れないでください。どのポーズでしょうか?思いつきますか?これが引っ掛け問題じゃないかと思ったあなた、正解です!実際は、ヨガでは自分の方に引く何かは存在しません。伝統的なヨガは、自分の体とマット、床、そしてポーズを支えるため(引くためではなく)の様々なプロップスのみで行います。ヨガでは、頑固な雑草や興奮した犬を引くことはありませんし、練習の中で肩を引く動きもないのです。強く肩を押す動きが数多いこと、それを補完する肩を引く動きが全くないことを組み合わせた時、機能的強さのアンバランスが起こるのは自然な結果です。
 

ここで明らかにして置きましょう。引く動きがヨガに全くないのは、ヨガの欠点ではなく手落ちでもないのです。単に床の上のマットで全て行う練習での動きだという事実だけなのです。けれど、ヨガがバランスの良い完全な長期の健康とウェルネスの実践だと表現されるため、多くの人たちは主な運動法としてヨガを選ぶのです。そういった意味では、ヨガは実際にはその目標を果たしてはいません。
 

ありがたいことに、「ヨガの肩」に本当に機能的なバランスを取り戻すための方法は、伝統的ヨガの境界を超えて動きのレパートリーを増やす必要はあるものの、数多く存在します。次回の記事では、ヨガマットの上でも外においても、肩の強さの不均衡に対処するクリエイティブな方法をご紹介しましょう!


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