今日はYogaInternationalから、よくある膝の痛みに関してです。
誰しも特に年齢を重ねると膝の痛みに悩む人が多いですが、それは年齢に関係なく起こる場合もあります。その原因と対処法を見てみましょう。
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慢性膝痛があったり、膝を曲げ伸ばしするとぽきぽき音がなったり、膝が過伸展する癖があったするならば、動きが変だったり膝頭が脱臼している可能性があります。こうしたアンバランスは、慢性膝痛や膝関節損傷の主な原因で、それはゆっくりと徐々に発症します。
では、簡単な解剖学を説明しましょう。膝頭は、大腿骨の溝に沿ってスライドするようにできていて、うまく動くためにはその溝の間をスムーズに動かなければなりません。もしそれがずれてしまったら(よく起こることですが)、その下にある軟骨をすり減らし、膝が不安定になります。結果として起こる損傷は、膝の代替手術をする主な原因ですが、多くの人は軟骨が「なくなった」から手術をしなければならないと信じています。しかし実際は、時間がかかるにせよ軟骨はまた成長します。問題は、バランスの悪い膝頭廻りの筋肉の引っ張りを直さない限り、身体が補修するよりも早く軟骨をすり減らし続けるということです。
では、なぜ膝頭がずれてしまうのでしょう?その原因は、膝のすぐ上で四頭筋腱に繋がる4つの筋肉である大腿四頭筋にあります。この腱は膝頭を囲んで付着しており、膝蓋靭帯として膝頭の下につながり、そこで脛骨に付着しています。膝頭はとても重要な力学的機能を司っています。大腿腱は、滑車にかかるロープのように膝頭の上を通り、膝頭は(滑車のように)大腿四頭筋の脚を伸ばす力を30パーセント引きあげています。大腿四頭筋と膝頭が脚を伸ばすための「伸筋機構」を形成しています。膝のアンバランスは、大腿四頭筋の「ロープ」が膝頭の滑車を横方向に引っ張り、機構の摩擦を引き起こしているのです。
ハタヨガはこのアンバランスを修正するのにとても役立ち、立位のポーズは特に効果的です。しかし注意してください。様々なポーズにおいて膝のアンバランスは、さらなるアンバランスとなり、直すどころか症状を悪化させたり怪我につながることもあります。ただよいことに、どこに注意すればいいかわかれば、良いアラインメントで正しい位置に膝を置くことは簡単にできます。
自然な立位のポジションでは股関節が両膝の幅よりも広いため、私たちの身体は「伸筋機構」の怪我をしやすくなっています。脚の骨に対する自然なY字型の配置は、大腿四頭筋の収縮をアンバランスにし、膝の過伸展などの問題がこのもともとあるアンバランスを余計に悪くさせます。その結果、脚を伸ばそうと大腿四頭筋を収縮させると、一番外側にある四頭筋(外側広筋)が強く引っ張られて膝頭が外側に引っ張られがちになります。
一番内側にある四頭筋(内側広筋)が、最もこの引っ張りに対抗する筋肉です。この筋肉はあまり使われず弱い傾向があり、一方で腿の外側の筋肉は使いすぎで強くなっていることが多いのです。なので、膝を健康的に保つためには、内側広筋の強化法を知る必要があります。実際、理学療法士は、膝の故障のリハビリおいてこのなおざりにされている筋肉を強化するエクササイズを取り入れています。
内側広筋の運動
ヨガのクラスでは、脚を延ばすポーズで膝が過伸展にならないように、(表面上は)大腿四頭筋を使うよう「膝頭を持ち上げて」と言われることがあります。しかし、膝頭を正しく持ち上げるには、膝に問題がある場合は特に、注意が必要です。
これは簡単にチェックできます。両脚をまっすぐにして足を平行に座るか立つかして、膝頭を「持ち上げる」か骨盤側に引くように腿の筋肉に力を入れます。あなたの膝頭は真っすぐ上に動きましたか?それとも外側に向かって斜めに上がったでしょうか?もし斜めならば、内側広筋を強化して正しく使う方法を知る必要があります。
これは少し困難をともないます。まず、内側広筋は膝の伸展の最後の10-20度の間だけ引き締まる感覚を感じられるため、この筋肉がどれなのかを見つけにくいからです。なので、この筋肉が動いているのを感じ理解するよう集中しなければなりません。
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外側広筋 内側広筋 |
次に、変えられない構造的なアンバランス(X脚やO脚)は、内側広筋の正しい機能を制限し、他の四頭筋比べて弱くなることがあるので、余計に難しくなります。
最後に、内側広筋に力を入れて膝の過伸展を防げたとしても、膝がすでに過伸展していたら意味がなくなります。つまり、筋肉を強化するよりも、まず過伸展を意識的に回避することが重要なのです。過伸展の癖があれば、いくら内側広筋を強化してもまたもとの膝のアンバランスな伸展にもどってしまうからです。
膝頭を正しく配置するために行うべきことは以下です。
- 内側広筋をみつける
- 伸展のエクササイズで内側広筋を強化する
- 膝を曲げた戦士のポーズで強化を続ける
- 脚を伸ばしたポーズの中に組み込む
内側広筋の強化法
内側広筋をみつけるには、アイソメトリックの(長さを変えない)伸展が役立ちます。脚を前に伸ばしてダンダーサナ(杖のポーズ)で座ります。背中を壁につけてもいいでしょう。過伸展を防ぐため、ブランケットかマットを丸めて膝の下に置いておきます。次に、右脚を10-15度(足裏を時計として1時の方向)に回します。内側広筋をみつけるため、膝頭の内側の角から2.5センチ上に指を置き、腿の内側に向かって4センチ歩かせてみましょう。脚をゆっくり伸ばして大腿四頭筋が働くのを感じます。涙型の筋肉が指の下で硬くなるのを感じましょう。これが内側広筋です。膝を完全に伸ばすとこの筋肉がもっと働くのを感じます。8-10秒そのまま収縮させて、そのあと解放します。膝が固定されたり締め付けられるほど強く伸ばさないようにして、これをもう2回繰り返します。このエクササイズを左脚にも行います。
次に、脚を外に回さずに同じエクササイズを行います。天井にまっすぐ膝頭が向くようにしておきます。脚を完全に伸ばし、四頭筋の内側(指で触っている個所)が四頭筋の外側と同じくらい収縮しているかを確かめます。外に回した時と比べ、バランスよく四頭筋を働かせたときは膝頭が膝関節に対してまっすぐ動くのを観察しましょう。反対の脚も行います。あまりやりすぎて筋肉が疲労してしまわない程度に、1日に数回このエクササイズを行いましょう。
戦士のポーズ
伝統的なアサナの中でも、前の脚を曲げて後ろの脚を伸ばした戦士のポーズI、IIは、正しいアラインメントと動きができれば内側広筋を強化するのに特に効果的です。この筋肉の動きを分離させるのは脚が完全に伸展しているときが最も容易ですが、膝が踵の上に垂直に配置され踵の内側が床についている限り、膝が90度に曲がり脚が体重を支えている時には力が入って強化されます。
このポーズをとるには、両足を大きく離して両腕をそれぞれ伸ばします。足はだいたい手首の下くらいにきます。左足を30度くらい、右足を90度に回します。胴部をまっすぐに保ったまま右足を曲げます。膝が足首やつま先より飛び出ないようにします。脛は垂直にして、腿を床と平行にし脚が直角に曲がるようにしましょう。もし膝が足首より出て体重がつま先に移動したら、足幅を広くしましょう。頭を回して右手の指先を見ます。
スタンスが正しく膝が直角であっても、よくある危険な間違いは腿が内側に回って膝が脚の親指側に向いてしまうことです。これは土踏まずのアーチがつぶれることで起こり、膝の内側にストレスがかかって大腿四頭筋をバランスよく強化できなくなってしまいます。また、体重が足の外側に移動して膝が足の小指側に回ってしまうこともあります。この場合、腿の外側の筋肉が硬くなり膝の外側にストレスがかかります。この場合もまた、内側広筋は正しく機能しません。
膝を守るために
足の人差し指の上に膝が来るようにし、膝と指と脛が一直線に並ぶようにします。内側広筋が正しく働いていないと膝は内側に倒れます。外側広筋が膝頭を外向けに引っ張って膝の内側にストレスを与えます。体重が踵の下の方に移動すると膝は小指側に向き膝の内側にストレスを与えます。
戦士のポーズでの正しいアラインメントによって、膝の伸筋機構を調整強化するため内側広筋がほかの四頭筋と調和して働くことができます。一方でアンバランスによって内側広筋が働かなくなり筋肉のバランスが崩れ膝の損傷につながります。戦士のポーズでの以下の3つのルールに従って内側広筋を強化し膝を守りましょう。
第一に、体重が踵の中心にくるように膝を正しく直角に曲げること。つま先が曲がっていたら、それは膝が踵を超えている兆候です。
第二に、土踏まずのアーチを壊さないように。これは膝が内側に倒れているサインです。足の外側に体重を移動することでこの釣り合いをとろうとしますが、踵の内側が持ち上がります。しかし、これが膝の外側にストレスを与えポーズの目的が失われます。踵の内側と足の親指を床に着けながら土踏まずを持ち上げます。この2つの動き(着地と持ち上げ)によって膝が内側あるいは外側に回りすぎないようにすることができます。足指と土踏まずを持ち上げ、膝を曲げてエネルギーを土踏まずからふくらはぎを通って膝の内側へと引き上げ、膝が内側にまわらず踵の真上にくるようにしましょう。
第三に、腰を少し回して曲げている足の踵、膝頭、股関節が一直線になるように。(壁際でやると、右の足首の外側、膝、腰が壁に当たるはず)そのためには、膝を曲げる際に(お尻のポケットに何か重いものを入れているかのように)腰の外側を床に向かって下げ、エネルギーを土踏まずから膝の内側に引き上げます。膝を曲げると脚がらせん状に動いて、踵と膝頭と股関節が一直線になるでしょう。
この3つの動きの目的は、4つの四頭筋全てが調和して働き膝を安定させることです。結果として、内側広筋の動きが必要となり他の四頭筋とのバランスがとれるようになります。これを確認するには、膝の少し上の腿の内側を軽くつねってこの内側広筋が膝の外側にある腿の筋肉と同じくらい硬くなっているかを確認します。
三角のポーズ
戦士のポーズでの正しい膝のアラインメントは、自動的に内側広筋によい運動をさせます。さて、この同じ動きを三角のポーズのような脚を伸ばしたポーズに適用しましょう。意識的に内側広筋を使うことがもっと難しくなります。
足幅を広くして立ち、マットの端に対して左足を45度右足を90度にします。右脚を少しまげて踵と膝、腰を戦士のポーズのように一直線にします。そして、脚をていねいに伸ばし、特に最後の20度のところで内側広筋を働かせます。脚を伸ばす際にこの筋肉が正しく使われ脚が正しい位置にあれば、膝頭が脚に向かってまっすぐ引きあがり、膝を固定するのがほとんど無理だということがわかります。しかし、内側広筋を解放したとたんに膝が過伸展してその位置に固定されていまします。
股関節から右に屈曲し三角のポーズに入ります。内側広筋を安定させて腿の内側に沿って引き上げ、膝を固定せずに足を延ばします。膝関節に圧迫を感じたら、おそらく内側広筋が弛緩して膝が過伸展しているはずです。ポーズをやめてもう一度試しましょう。正しいアラインメントにあると、腿の内側に沿って、膝の内側から座骨まで、より強いストレッチを感じます。ストレッチしすぎないように注意しましょう。必要なら手の下にブロックをおいて支えにしましょう。
結論
ハタヨガの立位のポーズは、膝の慢性的な損傷(痛み)につながる構造的なアンバランスを克服するための膝を強化し安定させるパワフルで効果的な方法です。脚の使い方やアラインメントにもう少しのマインドフルネスを用いることで、こうしたポーズがもたらす自然な治癒的効果が高まるのです。
(出典)
https://yogainternational.com/article/view/yoga-therapy-for-your-knees1