ひざ痛や腰痛を経験したことのある人なら、ヨガクラスでよくある広範囲の動作やポジションを試すなどもっての他で、しゃがんだり階段を降りたりというちょっとした動作でさえも辛いことを知っているでしょう。痛んだ膝や腰を一定期間大事に使っている間に脚のバネがなくなっていき、悪化を怖がっているうちに完全に動けなくなるなど、実際には状況をもっと悪化させることにもなり得ません。幸いにも、スペースを作って膝や腰の痛みを緩和する多くのツールがヨガにはあります。
急性の怪我を除いては、膝や腰の痛みは消耗が原因で起こることがほとんで、微細な非対称によってさらに炎症する場合もあります。腰のバランスの悪さが膝の位置調整を妨げ、またその逆もあります。股関節(球窩関節)の可動域は、膝(蝶番関節)よりも大きいです。膝が屈曲・伸展のために作られている一方で、股関節はさらに内外転、内外旋することも可能です。股関節での動きの中で、その可動性が限られたりあるいは過度に動くと、膝が拗れたり傷ついたりすることがあります。例えば、上脚が股関節で外旋しにくいと、下脚が代わりに回転して補い、それが膝を捻って関節まわりの結合組織が過度に伸びてしまいます。ヨガでは、股関節の動きが最大になるよう股関節や腿のまわりにある筋肉をストレッチ、強化することができます。そしてそれが膝を守ることになります。
腰と膝のための安全なシーケンス
膝の問題は、痛みが現れ始めるまで関節が悪化するのに何年もかかることがある股関節より早く問題が現れがちです。膝の痛みや腫れがあるのなら、荷重のないアサナの練習を始めるの最善です。下記のシーケンスのスプタ・パダングシュタサナ I(横たわった足親指のポーズ I)やウパヴィスタコナサナ(座位の前屈)など、伸展した脚を膝関節の上に調整するポーズを選択しましょう。
荷重のかかるアサナでは、膝が曲がっていてもまっすぐであっても、膝が正しい位置に置くことが重要です。股関節の正しい外旋によって膝が安全に屈曲できるパールシュヴァコナサナ(体側を曲げるポーズ)や、足首、膝、股関節を立っている脚の上に並べることで腰が安定するウッティタ・ハスタ・パダングシュタサナ(伸展した手と足親指のポーズ)で、これを細かく見ていきましょう。
膝を曲げたポーズでは、膝の内側が外側以上に伸展・収縮しないようにしましょう。もし、ヴィラサナ(英雄のポーズ)などで膝を90度以上曲げることが難しい場合は、巻いた布や折りたたんだブランケットなどのプロップスを膝の後ろに置いて関節にスペースを作るようにしましょう。膝を曲げる動きをした後は、膝を伸ばしたアサナで再度膝関節を伸展させなければなりません。
こうした原則をもっと細かく見ていきましょう。下記のシーケンスでは、各ポーズを左右どちらも1ー2分間ホールドします。
スプタ・パダングシュタサナ I (横たわった足親指のポーズ I )
このポーズでは股関節の屈曲が必要となりますが、股関節の回旋や内外転はしないので膝の内側と外側は同様に伸展します。仰向けに横たわり、両脚を伸ばし両腿を床に下ろします。背中がニュートラルな状態で腰椎が床に着いていなくても、腰部は長く感じるようにしましょう。つま先と両膝はまっすぐ天井に向けておきます。ふくらはぎからかかとまで伸ばし、足裏を広げましょう。
右膝を胸に引き込み、右足の母指球あたりにベルトをかけます。右の腰を床に押し付けながら、床と直角になるまで右脚を挙げましょう。脚をまっすぐ伸ばせないとき、右の臀部が床から浮いてしまう時は、足を頭からもっと遠くへ持ち上げます。母指球を引き込むようにベルトを床の方向に引きます。右の足裏を天井と平行に保ち、左のつま先と膝はまっすぐ上を向けておきます。
次にベルトを右足のかかとにもどし、母指球を天井へと持ち上げながらベルトをかけた右かかとの内側を押しましょう。右腿の前を脚の裏側へと押し脚を完全に伸ばします。ベルトに向かってかかとを押しながらベルトを引いて、右腿を股関節のくぼみへと引きます。右の腰の外側を床につけたまま、左の大腿骨を床に押し下げましょう。左のふくらはぎからかかとに向かって伸ばします。右の母指球を持ち上げながら右膝がまっすぐ前に向くように気をつけましょう。
右膝を曲げて胸に引き、脚を伸ばして床に降ろし、左側に進みます。このポーズを何度か両サイド行い膝の痛みを緩和しましょう。
ウパヴィスタ・コナサナ(座位の前屈)
体の前に両脚を伸ばし、ダンダーサナ(杖のポーズ)で床に座ります。そして、両手で膝の内側を支えて両脚を大きく開きます。腰の横に両手を起き、上体はまっすぐ引き上げます。膝とつま先をまっすぐ天井に向けましょう。両脚が外に回転したり腰が沈んでいたら、腰が自然な曲線になる高さまで折りたたんだブランケットをお尻の下に置きましょう。そして骨盤の底から喉の上部に向かって背骨の前を伸ばします。
腿の前面を裏側に、それから両脚の裏側全体を床に向かって押しましょう。(ブランケットの上に座っている場合は脚の裏側を下方に下げます。)両かかとを床に着けたまま、ふくらはぎの筋肉を膝からかかとの方向へ伸ばします。この状態で数分座ったら、両脚をもう少し開くこともできるでしょう。腰のすぐ後ろで床を手の指先で押し、床からお尻を数センチ持ち上げ、骨盤を前へ押して両足がもう少し離れるようにスライドさせ、そしてお尻を降ろします。両脚がさらに大きく開いたら、腿の内側と膝の内側が伸びるのを感じるでしょう。足とつま先はずっと真上に向くように気をつけましょう。ウェストの横と肋骨を骨盤から離すように持ち上げ、胸を開きます。
このポーズから出るには、両手で膝の内側を持って脚を引いて膝を曲げ、それから両脚をもどして閉じます。
パールシュヴァコナサナ(体側を曲げるポーズ)
パールシュヴァコナサナでは、曲げた膝は足の中指の方向に向けなければなりません。硬い内転筋や外旋しにくい股関節のために膝が内側に入ることがしばしばありますが、膝の内側に余分な負荷をかけてしまいます。腿の基部である股関節から正しく外旋し、脚を安全にそして均等に曲げましょう。この動きで、硬い内腿がストレッチされ腰の外側が強化されるので、股関節を安定させるのに役立ちます。
タダーサナから、両脚両腕を広く開き、手を足の上にします。右足の後ろにブロックを起きましょう。右足を90度外に回し、左足はやや内側にします。右脚全体を外に回転させ、股関節と膝の中心、足首の中心をを結ぶ脚の中線が右足の中指が直線上に並ぶようにします。左かかとの外側を床にふみこんで脚を伸ばしましょう。膝が足首より前にいかないよう右脚を90度に曲げながら回転し続けます。右の股関節、膝、足首の中心が一直線に並ぶように保ちましょう。
左かかとの外側を踏み込んだまま、息を吐いて上体を右の方向へ伸展させ、右足の外側に置いたブロックに右手を置きましょう。右腰の外側を内腿に向かって前へ動かし、右膝は外側にある右上腕と押しあいます。左肘を曲げて左腰に手をおきます。左かかとの外側を根付かせ続けて体重が両脚に均等にかかるようにしましょう。左肩を後ろへ回し胸と骨盤の前面を回転させて天井の方向へ向けます。ポーズから抜けるときは、左かかとを踏み込みながら左腕を引き上げて左脚を伸ばしましょう。反対側もくりかえします。
ウッティタ・ハスタ・パダングシュタサナ(伸展した手と足親指のポーズ)
この片足のバランスポーズは、足首と膝、股関節のアライメントを意識して両腰の安定性を向上するのに役立ちます。
股関節程度の高さの壁や棚などを探し、それに向かって脚の長さの距離の位置でタダーサナ(山のポーズ)で立ちます。両手を腰にして右かかとを体の前にある棚に置きましょう。右脚を伸ばし、左足はまっすぐ前に向かせて置きます。脚を伸ばせない、あるいは左足を前に向かせたままにできない場合は、もっと低い棚を試してください。左かかとの内側を床に押し付け、膝頭をまっすぐ前に向けたまま左腿の前を腿裏に向かって押します。左股関節が左足首の真上に来て、脚が床と垂直になるようにしましょう。右腿を下方へ下げます。両脚を伸ばしながら、膝ではなく腿の上部(股関節に近い方)から後方へ引きましょう。両腿の前と両膝は強く保ち四頭筋を働かせて、膝頭から離しましょう。
左腰を左につき出したりして左腰の外側を落ち込ませないようにしましょう。そうではなく、左かかとの内側に体重をのせ、腿の外側を内腿に向かって動かします。左脚と腰を安定させたまま、右腰の外側を床に向かって下げ、ウェストの右側は引き上げましょう
息を吐いて右膝を曲げ、足を床に降ろしてタダーサナに戻しましょう。反対側も繰り返します。
このポーズの二番目のヴァリエーションは、脚を横方向に伸ばします。90度左に回転して、両足が壁や棚と平行になるようにします。つま先と膝は真上に向かせて右脚を棚に乗せます。左脚はまっすぐのまま腿の上部から後方へと押します。右脚を伸ばし右腰の外側とお尻を床に向かって下ろしましょう。右脚を外に回転させて膝を上に向けて股関節を下げておきます。左腰の外側が落ち込まないように気をつけましょう。1つ目のヴァリエーションのように、左かかとの外側を床に押し付け左の腰と膝を脚の内側へと動かしましょう。
スムーズに呼吸し、ウェストと胸を骨盤から離します。ポーズをはめてタダーサナでしばらく立ってから、反対側で繰り返しましょう。
ヴィラサナ(英雄のポーズ)
ヴィラサナは股関節、膝、足首の非対称や硬さに対応しながら、疲労した脚の筋肉を深くリラックスさせます。このクラシックなポーズは関節に問題のある人にとって難しいのですが、ここにあるヴァリエーションは簡単でリラックスできます。4枚のブランケットとブロックひとつが必要です。
2枚のブランケットを一緒に長く太く巻きましょう。もう1枚は半分の厚みで巻きます。両膝は揃えて体の後ろで両足を離し、薄く巻いたブランケットの上に膝の下部、脛の上部をのせ、そして足首は太い方に乗せます。お尻を持ち上げて平らに畳んだ4枚目のブランケットを膝の後ろに置きましょう。足は真後ろに向けてつま先は床に下ろします。ブロックをお尻の下そして足首の巻きの上に水平に置き、両かかとの間に座りましょう。臀部は下方に落ち着かせてください。骨盤を少し持ち上げなければポーズを続けられないと感じたらもっとサポートを増やしましょう。腿の上部と鼠蹊部の内側が下がるとともに、胴部と胸を骨盤から持ち上げましょう。両脚の前にストレッチを感じるかもしれませんが、膝に痛みを感じないようにしなければなりません。
このポーズから出るのに必要なことは、膝を捻らずに両脚を伸ばすことです。まずお尻を持ち上げてブロックを外します。両手を膝の前の床につき、ブランケットの後ろの床でつま先を立たせ、そしてアド・ムカ・シュヴァナサナ(下向きの犬のポーズ)に押し上がります。両腿と両膝を強く保ち、腿の前を脚の後ろ側へと押し、膝の裏を完全に伸ばします。ハムストリングをお尻に向かって持ち上げ、ふくらはぎとかかとを床に下ろしましょう。
(出典)
https://yogainternational.com/article/view/healthy-hips-and-knees