2019年4月25日木曜日

腰痛をかばいすぎるのは治癒を遅らせる可能性が 
Babying your back may delay healing



腰痛の最良の薬は、エクササイズと運動?


腰痛を治すために手術や他の治療法を考えている人もいるでしょう。しかしあまり知られていないかもしれませんが、多くの場合、このよくある症状に昔ながらの運動やエクササイズが最良の薬なのです。



腰痛の謎


国立衛生によれば、腰痛は米国で最も多い健康問題のひとつです。そして病気というには少し変わったところもあります。


足首をひねったとしたら、通常、怪我が治っていくにつれ痛みはゆっくりと去るものです。腰痛はそうではありません。その痛みは大抵怪我と関係がないため、痛みの緩和も治癒に関係がないようです。実際、ヘルニアや関節炎など根本的な問題がまだそこにあったとしても、腰痛は時間につれて消えていくことが多くあると、ハーバード医学大学の物理療法・リハビリの助教授であるジェームス・レインヴィル博士は言います。

腰痛のさらなる謎は、高齢になるよりも40台や50台の人の方が腰痛を訴えることが多いのです。しかし、一般的に骨の変形は時間が経つにつれ多くなるので、理論的には高齢になるほどより痛みを感じる人が多いはずなのです。

さらに、8割もの成人が少なくとも一回は腰痛を経験しています。他の2割は全く腰痛を経験しません。しかし、彼らの背骨が正常だからというわけではないのです。レインヴィル博士によれば、痛みを感じていない人たちに画像検査をしたら、他の人と同じように腰椎の変形があるのだそうです。では、画像検査で見られるこうした変形がなぜ痛みをもたらさないのでしょうか?

腰痛の変わったところは、物理的なものではなく神経の治癒プロセスに関係しているようだとレインヴィル博士は言います。理論では、問題が起こって痛みが誘発されると実際には神経システムが痛みに適応していくので、不快感が去っていくのだそうです。エクササイズや運動がこの神経システムの調整をより早くする可能性があるのです。



腰痛を理解する


脊椎の変形の自然な老化現象です。「ある意味、ヘルニアは目の横のシワをそう変わらないのです」とレインヴィル博士は言います。
多くの人が考えているのとは異なり、重い物を持ち上げたり激しい運動をしているときに腰痛を起こす人はとても少ないのです。「エアコンを持ち上げるなど強度の身体活動と認められる行動をしている時に、初めてヘルニアや坐骨神経痛を起こす人は5パーセントしかしない」そのようなケースは稀なのです。ほとんどの人は、歯磨きの最中にシンクに屈み込むなど簡単な行動をしている時に起こります。「鉛筆を取ろうと手を伸ばしただけ、とかくしゃみをしただけという話がほとんどです」と博士は言います。

腰痛は、老化に関連した劣化のために起こる避けようのない組織の不調の結果で起こることがほとんどです。「注意することが椎骨の劣化プロセスを遅らせるという証拠は全くありません」レインヴィル博士は言います。結局のところ、シワや白髪と同じように老化の兆候というのは、注意していても止められないのです。



腰痛の遺伝的特徴


腰痛というのは、個人の遺伝的体質にとても関連しています。「腰痛関連の症状は大変不安定なものです。痛みは1日から3ヶ月までどこにでも残る可能性があります」
そして繊維筋痛症など痛みが激しくなりやすい人がいる一方で、全く逆で痛みを感じにくい人もいます。

腰痛を経験する傾向というのは幾分遺伝するものだと研究が示しています。例えば、一卵性双生児には大抵よく似た腰痛の病歴があります。これは、その双子のうち1人はデスクワークでもう1人が建設業で強度の労働をしているなど、完全に異なる生活や経験をしていたとしてもみられるものです。「こういったものは大変遺伝的であることが多いのです」レインヴィル博士は言います。


腰痛を緩和する方策


米国立神経疾患脳卒中研究所は、腰痛が急に悪化した時に緩和させる方法をいくつか推奨しています。

  • 痛いからといって寝こまない。 ベッドに居たいと思うでしょうが、そうすれば痛みは次第に悪化し、鬱のリスクが高まるだけでなく、実際に柔軟性や筋力が失われることになります。
  • 痛みを治療する。湿布や薬局にある痛み止めは問題の解決にはなりませんが、我慢できるくらいまでには痛みを緩和できます。医師に相談し、あなたの選んだ薬が適切で安全かを確認しましょう。
  • 身体を強化する。 深刻な腰痛がある時にジムに行くのは勧められませんが、あなたの医師が、筋力をつけたり痛みを少なくするためのエクササイズを教えてくれることでしょう。
  • 理学療法士を見つける。理学療法士は、あなたが安全に痛みを和らげられるよう援助し、柔軟性や可動性を高められるエクササイズを教えてくれます。



    腰痛に対する態度を変える


    腰痛が多くの人にとって避けられないものである一方で、問題に対する態度を変えるとそれを悪化させる可能性があります。昔は、腰痛に対してあまり深刻に考えず、大抵は医師にかかることもありませんでした。「過去30年で、より多くの人が腰痛で病院に行く人が増えてきています」とレインヴィル博士は言います。しかし、それが痛みと障害を削減しているわけではありません。実際、腰痛による障害は時代とともに増えてきています。

    1990年のある研究では、米国で最も辛い症状のうち腰痛は6位だとランクづけしました。米国立神経疾患脳卒中研究所(NINDS)によれば、2010年、腰痛が心臓病と慢性閉塞性肺疾患に次いで3位に急上昇しました。

    腰痛は治療するのが厄介だと一時は考えられていたため、今日でも腰痛のために多くの人が動くのをやめてしまいます。「注意して動かないようにとアドバイスされてきたので、みな動けなくなってしまっています。これは、何十年も言われてきたこと全てに逆行しています」
    腰痛に対処することに関しては、多くの医師が、過去に立ち戻り、治療に重点を置くよりも運動を推奨しています。



    腰痛の治療


    運動は、神経システムの痛みへの反応を正常化させる刺激となっているようです。脊椎傷害のある動物での研究では、動かないようにされた個体よりも運動させられた個体の方が痛みが早く消えたとレインヴィル博士は言います。

    「これはおそらく、生存メカニズムの結果でしょう。野生の動物が動けなくなれば、食べられるか餓死するでしょう」運動は人にもよいようです。「運動している人、またジムに行ったりまた部屋を掃除したりする人は、最も早いです」

    NINDSによれば、進行性神経損傷を起こす病気や正常化すべき構造上の変形がある場合などの症状には、手術が必要でしょう。「しかし、多くの場合はそうすべきとは言えない」とレインヴィル博士は言います。

    ですから、もし通常の消耗による腰痛だとしたら、多くの場合はいつもの生活をやめて治癒を待つ必要はないでしょう。その代わりに運動しましょう。

    理学療法士は徐々にそして安全にあなたの活動レベルを上げていく援助をしてくれ、それによって神経システムの反応感度が下がりいつもの日常生活に戻れるようになるでしょう。





    (出典)https://www.health.harvard.edu/pain/babying-your-back-may-delay-healing

    2019年4月17日水曜日

    <日記>陰ヨガの講習に行ってきました

    ずっと興味があったものの、いろいろ事情があって
    中止になったり受けられなくなったりで
    今まであまり陰ヨガを深く学ぶ機会がなかったのですが
    やっと受けてきました。

    陰ヨガという分野は、
    本山博士の研究に基づき
    ポール・グリリー氏、サラ・パワーズ氏などが深め広げてこられた
    中医学の経絡(いわゆるツボやナディの通る道ですね)と関連が深いヨガです。


    古代中国の医療(哲学)と古代インドの医療(哲学、アーユルヴェーダ)は
    体系的にもとても似ているところがある一方で
    全く異なるところもあります。
    中国もインドも、さらにヨーロッパも陸地で繋がっていて
    シルクロードがあったりして
    それぞれが影響しあって発展したのは当たり前といえば当たり前なのですが
    それでもやっぱり不思議でとても面白いです。


    最近はテレビでもよく取り上げられるように
    鍼灸もだいぶ受け入れられてきたように思いますが、
    経穴とか経絡なんて実際に存在するの?本当に効果があるの?
    と思う人がほとんどのように思います。

    今回のティーチャー・トレーニングでは、
    経絡や中医学の歴史や現代科学の立証の話など大変興味深かったです。



    何年か前に読んだサラ・パワーズ氏の陰ヨガの本や、
    トム・マイヤーズ氏の筋膜などアナトミーの本も
    もう一度読んでみようと思いました。

    まだまだ勉強中です・・・。





    2019年4月8日月曜日

    深い呼吸にまだよく理解されていない効果がある?
    Deep Breathing Might Have Benefits We're Only Beginning to Understand


    Discover Magagineからです。
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    古代ヨガのテクニックによる細胞変化を探る研究者



    細胞生物学者のサンダー・バラシュブラマニアンは、南インドの農村にある彼のルーツや、村のヒーラーだった叔父が教えてくれた伝統的な習慣を忘れることはない。現在、南カリフォルニア医科大学の調査員かつ助教授であるバラシュブラマニアンは、これらの起源、特に深い呼吸のリラクゼーション・テクニックであるプラナヤマに注目している。彼によれば、この古代のヨガの行為はリラックスだけではなく、細胞レベルで私たちを変化させる可能性があるとみられている。




    Q: このテクニックを細胞生物学の視点から調べることになったきっかけは?

    A: 2005年、私がプラナヤマを行なっていた時、大量の唾液が出てきてよだれを垂らしてしまいそうになっているのに気づきました。それがなぜなのか、またその相対的な影響とは何なのか不思議に感じたのです。この体験によって私と私のチームは唾液分泌の増加が通常の反応なのかを研究したのですが、ということがわかりました。



    Q: 呼吸やリラックスに集中している時、唾液が出てくるなどあまり考えない人がほとんでしょう。しかしあなたのBMC補完・代替医療での2016年の研究では、この唾液の増加が注目されました。なぜでしょう?

    A: 唾液には数えきれない抗体とタンパク質が含まれており、それらが腫瘍を抑制したり肝臓を再生するなど様々なことをします。例えば、唾液に含まれるイムノグロブリンは細菌と結合する抗体で、DMBT1は正常細胞がガン細胞に変わるのをブロックする腫瘍抑制物質です。



    Q: 2015年の International Psychogeriatrics の研究では、プラナヤマは単に唾液を増加するだけではないと示されています。詳しく教えてください。

    A: はい。プラナヤマは、神経成長因子(NGF)の量を増やし唾液の構造を変えます。NGFが作られるとそれが脳に運ばれ、脳内で細胞に成長したりより長く生存するよう信号を出します。NGFの増加は老化に大きな影響を与える可能性があります。特に今日のアルツハイマーやガンなどの変性疾患の方への影響は大きいでしょう。



    Q: 現在そして今後、プラナヤマに関する研究プロジェクトはありますか?

    A: 身体の結合組織が腫れて硬化する慢性病の強皮症の患者に対する研究を開始するところです。呼吸のテクニックがどのように炎症に影響を与えるか、これがどのように症状に関連するかをみていく予定です。また、ガン患者で深い呼吸が痛みを緩和するか、食欲や気分を向上させるかをみる研究の段階に入るところです。










    (出典)http://discovermagazine.com/2019/apr/take-a-deep-breath

    2019年4月4日木曜日

    研究結果 ヨガが摂食障害の症状を軽減する 
    New Research Finds Yoga Improves Eating Disorder Symptoms

    Swami Vivekananda Yoga Anusandhana Samsthana (S-VYASA University)の会報であるInternational Journal Yogaで発表された調査についての Pcycology Todayの記事からです。
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    新しい研究、ヨガが摂取制限と食事への不安を改善


    International Journal of Yoga (国際ヨガ会報)で発表された研究では、ヨガが摂食障害の症状を軽減するのに有望であり、その効果は1ヶ月後も続くことがわかった。過食嘔吐あるいは摂食障害を診断されたという以外は特定せず女性を任意抽出した小規模のコントロール実験で、11週間のヨガ・プログラムを調査した。(http://www.ijoy.org.in/article.asp?issn=0973-6131;year=2018;volume=11;issue=2;spage=166;epage=169;aulast=Karlsen)


    ヨガをしたグループは、週2回90分のハタヨガ・クラスに参加、翌週から11週間に渡り自宅でもヨガを練習するよう指示された。ヨガのクラスは、身体の気づき、ヨガポーズ、呼吸練習、集中した瞑想、そして最後に深いリラクゼーションをすることに重点をおいた。クラスではヨガ哲学も含まれ、ヨガの本質である競争しないことと判断しないことを強調した。コントロール・グループには、週2回90分のクラス、栄養と摂食障害についての指導が行われた。


    被験者は心理学者と面接し、11週間のプログラム後と6ヶ月後の自己申告アンケートで調査を完了した。面接は4つの項目にわたり、摂食障害の症状である摂取制限、食べることへの不安、体重、体型などが含まれた。


    この調査で、ヨガが長期の効果を見せたのは摂取制限と摂食不安で、体重や体型への不安へはあまり効果がなかった。この結果は、より広範囲で症状が緩和された2010年の研究など他の調査結果とはやや異なる。この違いはおそらく、2010年の研究ではグループではなく個々にヨガを行ったのでヨガの経験が変わったことが原因と考えられ、特に身体の外見やイメージについての不安のある者にとっては大きな違いであろう。その他の違いは、2010年に使用されたヨガが異なるスタイルの Viniyoga であった点である。


    ヨガが摂食障害の有望な代替治療であるということを、複数の調査結果が示してきている。ヨガの技術が広汎であることから、ヨガポーズや呼吸法、瞑想などのタイプを特定したり、個人で行うヨガとグループで行うヨガの間にあり得る違いなどを特定し、理解をさらに深めるべきであろう。




    (出典)https://www.psychologytoday.com/us/blog/urban-survival/201805/new-research-finds-yoga-improves-eating-disorder-symptoms

    2019年4月2日火曜日

    多忙すぎる?自分の生き方を創造するヒント Vol.2
    Crazy Busy? Tips to Create the Life You Want


    前回からの続きです。
    著者のおかしな造語が続きます。
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    ゲメルマーチ(Gemmelsmerch)


    1981年から、僕は精神科医として注意欠陥障害を治療してきた。90年代半ばには、慢性的に不注意で、秩序を欠き、予定を入れすぎていると言ってやって来る人の数が急激に増えた。遺伝的な注意欠陥障害症状のある人も確かにいたが、ほとんどはそうではなかった。環境によって現れたものにすぎない。 「ゲメルマーチ(訳注:ゲメルは米国の白人の中で最多の苗字)」と僕が名付けたのは、心を乱したり、やりたいことややらなければならない事から気をそらさせたりする力のことだ。それは重力のようにどこにでもありパワフルだ。


    高速道路の事故はゲメルマーチの宝庫だ、速度を落としてぼおっとするしかない。窓の外の掘削機もゲメルマーチだらけ。税務署から監査が入るという知らせもゲメルマーチ。ラジオから聞こえる怒りの喚き声もそうだ。テレビ番組(画面に映るもののほとんど)がゲメルマーチにあふれている。


    ヒント:周囲からゲメルマーチを減らし、その引き寄せにどうやって抵抗すればいいのかを身につけるのはとても重要な現代のサバイバル技術だ。以下は、日々の原因の例とそれをどうコントロールしたり消したりできるかだ。

    先延ばしにしたいと思っている重要な仕事があるが、故障したコンピューターの修理にこれから3時間をかける。まず重要な仕事をやろう。今やる事を書いたカードを目につくところに置いておくといい。ゲメルマーチは、綺麗なビーチの沖にある強い波のようなものだ。注意していないと、そっちに泳いでいってしまって帰って来られなくなる。

    開けてくれと待っているメール。メールを開ける時間を決めてそれに従おう。開封前のメールはゲメルマーチにあふれているので、他の部屋でした方がいいかもしれない。

    電話や携帯電話。電源を切ろう。電話を取る時間を制限する。例えば、僕らの小児科医は毎朝電話を受ける時間を作っている。その他の時間は、緊急のものしか取らない。本当にいつもいつも電話を取りたいのか考えてみよう。ドアが開いていると人は入って来るものだ。邪魔をされたくない時はドアを閉めよう。「仕事中。○時に戻ります」と張り紙をしておこう。

    今やっていることが困難になったり退屈になった時に手招きして来る「タスク一覧」の項目。休憩を取る時間だと考えよう。立ち上がり、ちょっとした短時間の体操をし、コップ一杯の水を飲み、3分間瞑想し、そしてやっていたことに戻るのだ。やっていたことを止めてしまわないようにしよう。

    仕事中に浮かんでくる新しいアイデア。メモをいつも近くに置いておこう。素晴らしいアイデアや忘れなくないちょっとしたこと(帰りに牛乳を買うとか)をメモしておいて、仕事に戻ろう。

    メール、とジャンクな時間。期限のある重要な連絡書をさあ書こうと机に向かう。コンピューターを起動したら、ワープロのプログラムを立ち上げないでまずメールをチェックするのだが、結局そのまま45分間。このジャンクな時間(大事な仕事を放ったらかしでドリトスを口に掻き込むのに匹敵するような無駄な時間)を最小限にしたいなら、(前回の)「スクリーン・サッキング」のヒントを見てみよう。




    モーニング爆発(Morning Burst)


    1日の内、気分が最も爽やかで、最も集中し明瞭に考えられて、面倒なことも新しい仕事も一番気にならなくて、ひとつの仕事に全てを集中できる時間だ。ほとんどの人にとってそれは朝なので、この名前をつけた。それ以外の人にとっては、昼間だったり夕方だったりするかもしれない。


    ヒント:自分の「モーニング爆発」がいつやってくるかを知り、その時間を有効に使って最も重要で最も困難なことをやろう。




    情報中毒(Info-Addict)


    いつの時代も情報に飢えている人はいるものだが、今ほど情報があふれていることはない。CNNやインターネット、新聞にラジオ、書籍と呼ばれる遺物などなど、情報が途切れたとたん僕らは飢えを感じる。

    新しいことは何なのか、最近何があったのか、今は何なのかを知りたくて、人は毎秒何が起こっているのかを追うのに中毒になり、面白いものを選択する判断を完全に他人に頼っている。しばらくすると、情報中毒者の人生には、他人が決めて起こっていること以外は世の中に何も起こらなくなる。

    現代社会の矛盾は他にもあり、情報中毒者は、他の人の最新情報を追うのに忙しすぎて、自分の力を発揮する能力を失う可能性がある。



    フラジング(Frazzing)


    非効率な複数作業(マルチタスク)のこと。マルチタスクという言葉はそもそも、タイピングをしているキーストローク間のマイクロ秒にコンピューターがすることを表現したものだ。ほとんどの人にとって、マルチタスクは楽しいし必要な時もある。しかし、ひとつのことに専念している時ほど効率的で効果的なことはほとんどない。

    フラジングは僕らがよくすることだ。慌ててマルチタスクし、大事な情報を逃し、無礼になり、最良の仕事ができない。なぜなら、脳の活動は同時に起こっているように見えているが、実はその注意をあっちからこっちへと素早く移動させているからだ。


    ヒント:脳というのは、複数作業としようとしていることのたったひとつに対しても、一度にひとつのことをしている時のようには能率的に働かないということを覚えておこう。




    ザ・メガロクトパス(The Megaloctopus)


    この獣は毎日あなたにつきまとう。どこに行っても、メガロクトパスはその触手を伸ばし、あなたを捕まえてやろうとしていることをさせてくれない。メガロクトパスの次のようなものでできている。あなたの時間を欲しがる全ての人たち、やることになっている全ての課題、行くことになっている全ての場所、逃すことのできない全ての機会、抗おうとしている全ての誘惑、今までになかったほどの全ての希望や恐怖。つまり、どこからともなく現れて、今、この時に終わらせようとしている課題からあなたを遠ざけようとしているもの全てだ。


    ヒント:メガロクトパスをやっつける最良の方法は、そいつがそこにいることを知ることだ。あなたが頼まれたことを全てやらなければならないという考えの罠にハマっちゃいけない。メガロクトパスは、あなたのその考え次第なのだ。「やめろ!」とか「十分だ!」と言う練習をしよう。あなたが出来ることしか出来ないし、適切に出来る量よりもっともっと必死でそこに詰め込もうとしなければ、出来ることももっと効果的にすることができるはず。触手があなたをからめとろうとし始めたら、そいつらを切ってしまおう。




    ピズり(Pizzled)


    「ピズる」とは「いらつく(pissed-off)」と「困る(puzzled)」を組み合わせた言葉で、一緒に歩いているときや、一緒に食事をしているとき、会ったり、車に乗っているときとか、とにかく何かを一緒にしているときに、承諾を得るでもなく何か説明するでもなく携帯電話を持ち出し、電話をかけたり電話に出たりされた時の感情を表す。隣のテーブル、ブース、椅子にいる人が同じことをしていると同じような感情が湧き上がる。ピズりが重なってくるとすぐに怒りが爆発する。


    ヒント:現代社会が発達すると、そんな状況へのエチケットというものを僕らは作り上げるが、まだどうするべきか明確ではない。誰かと一緒にいる時に携帯に答えるのは、教会でタバコに火を付けるくらい失礼にもなり得る。それとも、便利であることの方が重要で、電話が鳴って相手が大事な仕事を処理している間は、黙って待つのが礼儀になるのかもしれない。




    忘れんぼ熱と失くしっぺ(Fuhgeddomania and Loseophilia)


    人は常に、物忘れや物を失くしてしまう問題と闘っているものだが、最近は情報がどんどん溢れて流れ込んでくるので、みんな早期のアルツハイマーなんじゃないかと考えてしまうほど問題が増えてしまっている。覚えていたり処理したりしなければならない事柄やデータの量は、これまでにないほど膨れ上がっている。神経的な問題に起因する物忘れに見えているのは実は「忘れんぼ熱」であって、データが多すぎて起こる物忘れにすぎない。よく物を無くすように見えているのは、通常の人間が対処できるよりずっと多くのことから目を離さないでおく結果なのだ。


    ヒント:ひとつの解決法としては、覚えておくことや整理することを、できることなら誰かにやってもらうこと、そしてリストやメモ、ファイル、コンピューターのプログラムなどを使う。使い終わったらいつもそれを同じ場所に置くことにすれば、失くしっぺ問題の解決に役立つだろう。そして、もう一度言う、覚えておくものや気にかけておくものの量に限界を決めておくというのはいいことだ。




    人との繋がりを大事にする(Treasuring the Human Connection)


    人との時間というのは、2人以上の人間が直接会ってお互いに繋がることだ。他の人にかこまれてショッピング・モールでうろつき回るのは、人との時間とは言えない。電子の時間は、電話や携帯、メールなどを通して会うものだ。過去10年で、人との時間は徐々に電子の時間にとって変わってきていて、他人の身体的な存在を感じる時間はとても少なく鳴った。

    電子の時間は、データをやりとりするには効率的だし素晴らしい。けれど人との時間はもっと多くの情報を伝える。声のトーンやボディ・ランゲージ、顔の表情、そして言葉に出さないサインなんかは、人のコミュニケーションや繋がりに不可欠な部分をつくりあげている。感情がより現れるようになれば、人との時間をもつ方がよい。家族と夕飯を共にするとか、ライブ・ミーティングとか、直接顔を合わせる会話とか。


    今の社会で充実して生きるには、結局のところシステムをよくすることではなく(それがとても役に立つとしても)、僕らが大切にしている物への繋がりが何なのかを理解し、そしてそれを大事にして守るという能力なのだ。人々や場所、活動、ペット、精神的な活動、音楽、そして僕らにとって大切に思う物。あまりにも多くの繋がりがありすぎると、どれも成り立たなくなる。大切なものを選んでそれを心から育もう。意識して慎重に時間を取り、家族との夕食や友達とのランチ、エクササイズや好きな楽器の演奏や、子供の発表会に行ったり、庭の草むしりをしたりする。そうすることで、前向きの感情を育むことができ、自分が望む人生を作り上げる方へとあなたの時間や関心やエネルギーを向けられるようになるのだ。







    エドワード・M・ハローウェル:医師、精神科医、注意欠陥障害専門家、ベストセラー「Driven to Distraction」の共著者 (drhallowell.com)。