ーーーーーーーーーーーーーーーー
編集註:以下の助言はヨガ実践者や指導者への一般的な助言です。医療従事者の個人的助言の代替にはなりません。
私たちヨギは筋肉のストレッチに価値を見出す傾向があります。しかし、神経をストレッチし自由に動かすことについて、つまりは筋肉と脳の間の伝達経路のストレッチについてはどうでしょう?神経の動きが制限されると痛みに繋がりヨガの練習を妨げかねませんが、そのことは手根間症候群や肘管症候群、胸郭出口症候群、坐骨神経症などをもつヨギたちがよくわかっているでしょう。
The Back Pain Secret: The Real Cause of Women’s Back Pain and How to Treat It (腰痛の秘密:女性の腰痛の本当の原因と治し方)の著者でアトランタで40年の経験を持つ理学療法士ビル・リーフによれば、神経の健康を保ち軽度の神経の問題を緩和する方法は、「神経グライド(滑り)」あるいは神経ストレッチをヨガの練習に入れることです。
神経はどのように「硬く」なるのか
リーフはこう描写します。「1日コンピュータの前に座っていると、腕や脚の筋肉、腱、靭帯、そして神経が短くなった状態になる。肘は曲がり二頭筋や腕の神経も短くなる。膝が曲がり、ハムストリングス、坐骨神経などの脚の神経は短くなる。筋肉や神経の組織はこの長さを『記憶』する」
この記憶は、筋肉や神経の周りで起こる筋膜(結合組織の一部)の癒着(粘着的な場所)が原因で、大抵は動かずにいることの結果であり神経が滑るように動く(グライドする)のを妨げています。癒着はまた、怪我をして治癒する間に動きを制限することでも起こり、またタイピングのような繰り返す動きでも起こります。「キーを繰り返し打ったりマウスを繰り返し使うことは癒着を起こすが、前腕、手首、指が理想的な位置にないときは特にひどくなる」
座り続けやコンピューターでの作業に加え、悪い姿勢、慢性的なよくない位置関係、妊娠や怪我(ムチ打ちなど)も神経の動きを制限します。事務職員、レジ打ち、医療従事者、生産ライン従事者、機械技術者、ドライバーなど同じ作業を何度も続けて行う人は神経の問題に脆弱で、特に野球や水泳、ゴルフ、バレーボール、ウェイトリフティングなどの腕や肩の反復運動をするスポーツをする多くのアスリートもまたそうです。
極端に広範囲の動きを長時間あるいは何度も繰り返す必要のある動きは、神経の問題を引き起こし悪化させる可能性があるとリーフは指摘します。これにはヨガの「ヴィンヤサ」のポーズも含まれ、プランクやチャトゥランガ、アップドッグなどは手に荷重がかかります。すでにキーボード作業やミスアライメントで脆弱になっている手首がある場合、手首の完全な伸展が必要となる このようなポーズは、手首を横切る正中神経に炎症を起こす可能性があります。
「神経が癒着してしまうと、体を動かすたびに正常な経路に沿って動こうとして神経が引っ張られる。この神経の引きが炎症に繋がり、時間につれピンや針のような感覚や痛みになる。神経の損傷もまた起こりうる」
神経の問題がある場合、力が入らない、疲労感、しびれ、チクチク感、焼けつくような感覚、可動域の制限、反射スピードの変化、腫れ、そして重たい感覚や冷たい感覚などの兆候が出ることがあります。こうした症状がよく現れる神経は、正中神経、尺骨神経、橈骨神経(全て腕に存在する)、そして腰椎から脚を通って足へと走る坐骨神経です。
こうした神経の継続した炎症の結果、手根間症候群(手首を通る正中神経の圧迫)、肘管症候群(肘を通る尺骨神経の圧迫)、胸椎出口症候群(上胸部の神経の圧迫や短縮)、または坐骨神経痛(坐骨神経の圧迫、通常は臀部に現れる)と診断されるのが一般的です。
ヨガは神経を健康的に保つのに役立つ
「神経を動かすのと筋肉をストレッチするテクニックは違う」とリーフは説明しています。彼は、神経を筋膜癒着(各筋肉の周りの組織にある動かなくなった場所)と瘢痕組織(筋肉と筋膜の両方)から神経を切り離すために神経グライドを行います。神経が最も短い経路を通る場所から最も遠い経路を通る場所へと手足を動かす連続的な動きで、神経経路を「(歯のように)フロス」するのです。
例えば、右耳を右肩に近づけ右肘を曲げたときに(詳細は次回の1番)右の正中神経が短くなります。そして頭を左肩の方へ傾け肘を伸ばすと長くなります。優しく前後左右に動かすことで癒着をはがし、神経が自由に動くようになります。
神経グライドのやり方
「神経グライドはゆっくり、能動的にそして正確に行わなければならない」受動的なストレッチは、さらなる伸展に抵抗する筋肉の保護的な収縮(伸展反射)を引き起こすため、こうした動きを行うときは意識をコントロールして筋肉を使うことをリーフは患者に伝えるそうです。
神経グライドを行うときは「だらーんと」ならないように、そして力一杯行わないほうがいいでしょう。「優しくストレッチするように。痛みやピンや針で刺したような感覚(知覚異常)を起こす場所に動かしてはいけない」(より重要なのは、チクチクや他の感覚を避けること。 詳しくは“What Happens If I Feel Tingling, Numbness, or Shaking During Yoga Class?”)(訳注:いずれこの記事も訳します)
もしチクチク感や痺れを感じたら、その感覚がなくなるまでストレッチを緩めるようリーフは勧めています。そうした感覚は神経の炎症や過剰なストレッチの兆候である可能性があるからです。「時間が経てば、この正常でない感覚を感じないでもっとストレッチできるようになる」筋肉や神経がどのように短くなったのか、そして短くなった期間の長さがどれくらい動くようになるかそしてどれくらい早く向上するかを決定づけるのだとリーフは言います。
神経グライドは誰にでも効果的?
頻繁で痛みのある神経の挟み込みのある人は個別に医師に相談すべきですが、神経グライドは、下記のような神経に関わる怪我の治療の重要な一部だと考えられます。(とても堅固筋肉や逸脱した骨に神経が挟み込まれている場合は、神経グライドは緩和に役立たないかもしれません(有害でもありませんが)。こうした場合の問題は癒着のせいではない可能性があるからです)
神経グライドはまた、診断されるほどの症状にはなってはいないが、ある部分に神経の緊張を感じる人にとっての価値のある予防でもあります。
「誰にでもひとつやふたつのグライドの必要な神経がある」とリーフはいいます。グライドが必要かどうかをはかる最良の方法は、ただ試してみることです。「グライドでストレッチの感覚を感じるなら、あるいは行うのが困難なら、それは重要だ」
この動きのどれも困難だと感じない経験のあるヨギや柔軟な人にはどうなのか?「加齢にともない神経の経路を健康に保つのに、そうした人にもグライドを練習するのはよいことだ」
リーフによれば、グライドのそれぞれの位置で約20秒、あるいは深い呼吸2、3回の間保持し、最高10回全てのグライドを繰り返すとよいそうです。最も効果的だと感じたグライド(1セット10回)を、1日に2、3回、仕事の休憩中やヨガの練習の一部として行いましょう。最も難しいと感じた方(大抵は利き腕、利き足)をもっと頻繁にグライドしてもよいでしょう。
「誰にでもひとつやふたつのグライドの必要な神経がある」とリーフはいいます。グライドが必要かどうかをはかる最良の方法は、ただ試してみることです。「グライドでストレッチの感覚を感じるなら、あるいは行うのが困難なら、それは重要だ」
この動きのどれも困難だと感じない経験のあるヨギや柔軟な人にはどうなのか?「加齢にともない神経の経路を健康に保つのに、そうした人にもグライドを練習するのはよいことだ」
リーフによれば、グライドのそれぞれの位置で約20秒、あるいは深い呼吸2、3回の間保持し、最高10回全てのグライドを繰り返すとよいそうです。最も効果的だと感じたグライド(1セット10回)を、1日に2、3回、仕事の休憩中やヨガの練習の一部として行いましょう。最も難しいと感じた方(大抵は利き腕、利き足)をもっと頻繁にグライドしてもよいでしょう。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
次回に続きます。