2020年1月30日木曜日

神経をストレッチ:ヨギのための4つの方法 vol.1 
Stretching the Nerves: 4 Neural Glides for Yogis

PCで翻訳作業をする時間の長い私もそうなのですが、掌や手首、肘、肩などの強張りや軽い痛みに悩まされる人は、現代のデジタル社会においては少なくないと思います。それに加え、加齢や慢性的な運動不足で起こる痛みもあります。その構造と緩和する方法を見てみましょう。
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編集註:以下の助言はヨガ実践者や指導者への一般的な助言です。医療従事者の個人的助言の代替にはなりません。


私たちヨギは筋肉のストレッチに価値を見出す傾向があります。しかし、神経をストレッチし自由に動かすことについて、つまりは筋肉と脳の間の伝達経路のストレッチについてはどうでしょう?神経の動きが制限されると痛みに繋がりヨガの練習を妨げかねませんが、そのことは手根間症候群や肘管症候群、胸郭出口症候群、坐骨神経症などをもつヨギたちがよくわかっているでしょう。


The Back Pain Secret: The Real Cause of Women’s Back Pain and How to Treat It (腰痛の秘密:女性の腰痛の本当の原因と治し方)の著者でアトランタで40年の経験を持つ理学療法士ビル・リーフによれば、神経の健康を保ち軽度の神経の問題を緩和する方法は、「神経グライド(滑り)」あるいは神経ストレッチをヨガの練習に入れることです。



神経はどのように「硬く」なるのか


座る、肩をすくめてコンピューターで作業するなど、筋肉を短く硬くする日々の同じ動きは、脊椎から手足に伸びる筋肉の間に走る末梢神経(腕や脚に走る神経)の動きを妨げます。

リーフはこう描写します。「1日コンピュータの前に座っていると、腕や脚の筋肉、腱、靭帯、そして神経が短くなった状態になる。肘は曲がり二頭筋や腕の神経も短くなる。膝が曲がり、ハムストリングス、坐骨神経などの脚の神経は短くなる。筋肉や神経の組織はこの長さを『記憶』する」


この記憶は、筋肉や神経の周りで起こる筋膜(結合組織の一部)の癒着(粘着的な場所)が原因で、大抵は動かずにいることの結果であり神経が滑るように動く(グライドする)のを妨げています。癒着はまた、怪我をして治癒する間に動きを制限することでも起こり、またタイピングのような繰り返す動きでも起こります。「キーを繰り返し打ったりマウスを繰り返し使うことは癒着を起こすが、前腕、手首、指が理想的な位置にないときは特にひどくなる」


座り続けやコンピューターでの作業に加え、悪い姿勢、慢性的なよくない位置関係、妊娠や怪我(ムチ打ちなど)も神経の動きを制限します。事務職員、レジ打ち、医療従事者、生産ライン従事者、機械技術者、ドライバーなど同じ作業を何度も続けて行う人は神経の問題に脆弱で、特に野球や水泳、ゴルフ、バレーボール、ウェイトリフティングなどの腕や肩の反復運動をするスポーツをする多くのアスリートもまたそうです。


極端に広範囲の動きを長時間あるいは何度も繰り返す必要のある動きは、神経の問題を引き起こし悪化させる可能性があるとリーフは指摘します。これにはヨガの「ヴィンヤサ」のポーズも含まれ、プランクやチャトゥランガ、アップドッグなどは手に荷重がかかります。すでにキーボード作業やミスアライメントで脆弱になっている手首がある場合、手首の完全な伸展が必要となる このようなポーズは、手首を横切る正中神経に炎症を起こす可能性があります。


「神経が癒着してしまうと、体を動かすたびに正常な経路に沿って動こうとして神経が引っ張られる。この神経の引きが炎症に繋がり、時間につれピンや針のような感覚や痛みになる。神経の損傷もまた起こりうる」


神経の問題がある場合、力が入らない、疲労感、しびれ、チクチク感、焼けつくような感覚、可動域の制限、反射スピードの変化、腫れ、そして重たい感覚や冷たい感覚などの兆候が出ることがあります。こうした症状がよく現れる神経は、正中神経、尺骨神経、橈骨神経(全て腕に存在する)、そして腰椎から脚を通って足へと走る坐骨神経です。


こうした神経の継続した炎症の結果、手根間症候群(手首を通る正中神経の圧迫)、肘管症候群(肘を通る尺骨神経の圧迫)、胸椎出口症候群(上胸部の神経の圧迫や短縮)、または坐骨神経痛(坐骨神経の圧迫、通常は臀部に現れる)と診断されるのが一般的です。



ヨガは神経を健康的に保つのに役立つ


多くのヨガクラスで励んでいるように、骨を最適に調整しながら習慣的でない動きをすることで、神経のグライドを妨げる癒着の形成を防いでいると言えるでしょう。しかし、すでに封じ込まれた神経を動かすのにはアサナでは役に立たないこともあります。


「神経を動かすのと筋肉をストレッチするテクニックは違う」とリーフは説明しています。彼は、神経を筋膜癒着(各筋肉の周りの組織にある動かなくなった場所)と瘢痕組織(筋肉と筋膜の両方)から神経を切り離すために神経グライドを行います。神経が最も短い経路を通る場所から最も遠い経路を通る場所へと手足を動かす連続的な動きで、神経経路を「(歯のように)フロス」するのです。



例えば、右耳を右肩に近づけ右肘を曲げたときに(詳細は次回の1番)右の正中神経が短くなります。そして頭を左肩の方へ傾け肘を伸ばすと長くなります。優しく前後左右に動かすことで癒着をはがし、神経が自由に動くようになります。




神経グライドのやり方


「神経グライドはゆっくり、能動的にそして正確に行わなければならない」受動的なストレッチは、さらなる伸展に抵抗する筋肉の保護的な収縮(伸展反射)を引き起こすため、こうした動きを行うときは意識をコントロールして筋肉を使うことをリーフは患者に伝えるそうです。


神経グライドを行うときは「だらーんと」ならないように、そして力一杯行わないほうがいいでしょう。「優しくストレッチするように。痛みやピンや針で刺したような感覚(知覚異常)を起こす場所に動かしてはいけない」(より重要なのは、チクチクや他の感覚を避けること。 詳しくは“What Happens If I Feel Tingling, Numbness, or Shaking During Yoga Class?”)(訳注:いずれこの記事も訳します)


もしチクチク感や痺れを感じたら、その感覚がなくなるまでストレッチを緩めるようリーフは勧めています。そうした感覚は神経の炎症や過剰なストレッチの兆候である可能性があるからです。「時間が経てば、この正常でない感覚を感じないでもっとストレッチできるようになる」筋肉や神経がどのように短くなったのか、そして短くなった期間の長さがどれくらい動くようになるかそしてどれくらい早く向上するかを決定づけるのだとリーフは言います。




神経グライドは誰にでも効果的?


頻繁で痛みのある神経の挟み込みのある人は個別に医師に相談すべきですが、神経グライドは、下記のような神経に関わる怪我の治療の重要な一部だと考えられます。(とても堅固筋肉や逸脱した骨に神経が挟み込まれている場合は、神経グライドは緩和に役立たないかもしれません(有害でもありませんが)。こうした場合の問題は癒着のせいではない可能性があるからです)

神経グライドはまた、診断されるほどの症状にはなってはいないが、ある部分に神経の緊張を感じる人にとっての価値のある予防でもあります。


「誰にでもひとつやふたつのグライドの必要な神経がある」とリーフはいいます。グライドが必要かどうかをはかる最良の方法は、ただ試してみることです。「グライドでストレッチの感覚を感じるなら、あるいは行うのが困難なら、それは重要だ」


この動きのどれも困難だと感じない経験のあるヨギや柔軟な人にはどうなのか?「加齢にともない神経の経路を健康に保つのに、そうした人にもグライドを練習するのはよいことだ」


リーフによれば、グライドのそれぞれの位置で約20秒、あるいは深い呼吸2、3回の間保持し、最高10回全てのグライドを繰り返すとよいそうです。最も効果的だと感じたグライド(1セット10回)を、1日に2、3回、仕事の休憩中やヨガの練習の一部として行いましょう。最も難しいと感じた方(大抵は利き腕、利き足)をもっと頻繁にグライドしてもよいでしょう。




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次回に続きます。


(出典)https://yogainternational.com/article/view/nerve-stretching-for-yogis

2020年1月25日土曜日

テニス肘のためのヨガ Vol.2 
Yoga for Tennis Elbow

前回からの続きです。
ポーズの具体的な緩和方法があります。
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テニス肘の生徒のために


数多くのヨガ・ポーズは、テニス肘の人が避けるべき(つまり手首と肘を伸展しながらの負荷をかける)ポジションにならなければなりません。手首と肘を進展させて手と腕に荷重のかかるポーズを以下のように緩和することで、練習に気付きがもたされポーズをここりよく感じられるようになります。


1. 手首伸展の角度を小さくする


テーブルトップやプランク、チャトゥランガなどのポーズでは、手首は90度に伸展させなければならず、これは私たちほとんどの人にとって可能な最大の角度です。テニス肘の人の手首にかかる荷重を減らすには、ヨガ・ウェッジ(ドアストッパーのようなもの)を使って手の手首側を高くしてシンプルに角度を小さくするとよいでしょう。あるいは、テーブルトップなどのポーズでは、両手を手首の少し前に動かしましょう。(この緩和法は肩に大きな負荷がかかるので、プランクよりはテーブルトップの方がよりよいでしょう)


ウェッジを使ったテーブルトップ



より深刻なテニス肘の場合は、拳を下にしてダンベルを強く握り手首をまっすぐにして伸展角度を0度にしましょう。


ダンベルを使ったテーブルトップ



または、拳や前腕を使ってもよいでしょう。(キャット・カウなどのポーズで前腕をブロックの上におくなどしていつもの形を保つこともできます)



ブロックを使ったキャット・カウ



2. 両手と両腕の荷重を減らす



両手に(上記のようにウェッジやダンベルを使って)荷重をかけるときは、肘や手首など脆弱な組織にできるだけ守るように両手への圧力を小さくします。例えば、プランクやダウンドッグではなくテーブルトップを練習したり、チャトゥランガやアップドッグで両膝をついたまま行ったりしましょう。



こうしたポーズで手首にほとんど圧力をかけないようにするには、壁に向かって立って垂直で練習することも可能です。


壁でのチャトゥランガ


3. 肘のアライメントに気を付ける


テーブルトップやプランク、チャトゥランガ、ダウンドッグ、アップドッグなどのポーズでのアライメントに関するリーフの助言はこうです。「肘の目(内側)を親指と人差し指の間に向けると肘の伸筋腱の負荷を減らすことができ、筋肉のよいバランスを促すことで肘の負荷を下げるのに役立つ」


「二頭筋や三頭筋の強い支持がなければ、肘を横切る他の筋肉や腱すべてにより多くの負荷が、特にテニス肘には、かかることになる。肘の内側と外側の筋肉バランスが安定性には重要で、肘の両側から「助け」を受けられなければ炎症した腱は間違いなく負荷を感じる」と彼は説明します。


4. 両肩を並べる


「肩の習慣的なミスアライメントは肩の酷使に繋がり、特に回旋腱板の損傷や二頭筋腱炎に、そしてドミノのように肘の損傷へと繋がる。肩の位置を保つことが肘へのストレスを最小限にする」


ではどうすればいいのでしょう?「プランクのようなポーズでは、肩を耳の方にすくめるのを避ける。かわりに、背中側で肩甲骨を強くそして安定して保つ。プランクからチャトゥランガに降りるときは、肩甲骨が自然に近づき合う。この動きで肘への負担が最小化され、腕の伸筋へのストレスが三角筋と菱形筋に移る。強い上背部の筋肉にストレスを移せば移すほど、肘に全てを任せることというがなくなっていく」


プランクからチャトゥランガに降りるとき、両手の位置などの他の要素がどのように肩のアライメントに影響するか気づいてみましょう。リーフによれば、この移行のときに手の手首側を胸郭の下端近くに置き続けないで、肩の下に置いておけば「肩が床に落ち込むのを防げ、胸筋がほとんど全ての仕事を受け持つ必要もなく、肩関節の前の損傷や肘へのさらなる負荷を防ぐこともできる」




テニス肘のための3つのストレッチ


腱炎に関係する痛みを緩和するための次の3つのストレッチをリーフが提案しています。しかし、腱炎と診断された人やテニス肘が1年以上続く人は、医師やセラピストの治療を受けるまでこうしたエクササイズは控えた方がよいでしょう。


ストレッチを始めてもよくなったら、ヨガの練習の中にこうしたストレッチを入れてみましょう。リーフはまた、肘や前腕に痛みを起こすどんな運動でも前後でこのストレッチをして痛みが緩和されるか試してみて欲しいと言います。


1. 手の裏を引く


山のポーズで立ちます。右腕(あるいはテニス肘のある方。右の方をよく使う人が多いので右がほとんどです)を体の前に上げ、掌を内側に指先を床に向けて手首を曲げます。


左手を右手の裏に置き(手首の下)、優しく右手を手前に引き優しいストレッチを感じる程度に力を入れましょう。ここで3ー5回深い呼吸をして、指、手首、肘伸筋、特に腕橈骨筋、長指伸筋、短指伸筋をストレッチしましょう。





前腕の伸筋側全体に優しいストレッチを感じるよう、快適な範囲で右肩を内旋して手首の小指側と前腕を上方にします。







2. 指を後ろに引く


山のポーズから、掌を手前に指先が下に向くよう右腕を体の前に再度あげます。今度は、左手で右手の指を優しく引いて、指と手首、肘伸筋に少し違うストレッチをします。ここで3ー5回呼吸します。そして右肩を内に回して手首の小指側を無理のように上方へと回します。







3. チップを掴む


山のポーズのまま同じ筋肉や腱に働きかける他の方法は、両腕を伸ばして体の横に置きます。右手首を曲げて掌を上に向け、指も天井に向かって曲げましょう。(こっそりチップを受け取るウェイターのような感じです)そして右肩を内旋して手の小指側を体からとおざけるよう外側へ回します。そこから腕を対角線状に後ろに持ち上げて数呼吸ホールドしましょう。橈骨神経の「神経滑り」を高めるため頭を左に傾けましょう。













医師やセラピストの助言に従い、手首と肘の伸展負荷を避け、上記のようなストレッチをしていれば、時間の経過とともに痛みが引くかもしれません。こうした反復運動で起こる怪我の再発を防ぐため、ヨガの練習であってもなくても手首や肘にかかる負担に気付きをもつようにしましょう。




Photography: Andrea Killam







(出典)https://yogainternational.com/article/view/yoga-for-tennis-elbow?

2020年1月22日水曜日

テニス肘のためのヨガ Vol.1 
Yoga for Tennis Elbow

この記事では「テニス肘」のためとなっていますが、似た症状はテニスをしていなくてもスポーツをしていなくてもなる可能性があります。また、ヨガのポーズがきっかけとなることもあり得ます。
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編集注:以下はヨガ練習者と指導者のための一般的な推奨のためのものです。医療専門家の個々の助言の代替ではありません。ヨガの指導者は自身の実践範囲に留めるべきです。つまり、診断、治療、医学的助言を生徒に与えようとしないということです。



テニス肘は痛い。特徴的にずきずき痛みを感じますが、症状が進むと握ったり持ち上げたり、ドアノブを回すと、前腕から肘にかけて鋭い痛みを感じ、誰かと握手するのがいやになるでしょう。また、ヨガをしてもいいのかと悩むことでしょう。


しかし、The Back Pain Secret: The Real Cause of Women's Back Pain and How to Treat It の著者で理学療法士のビル・リーフによれば、「肘を悪化する可能性のあるストレスのあるものを避けるか緩和さえすれば、テニス肘の人でも問題なくヨガをすることができる」


また、テニス肘の人が避けるべきあるいは変更すべきポーズについて彼からのヒントが以下になりますが、伝統的なヨガのポーズは症状を緩和するとは限らないため、ヨガポーズに治療としてのストレッチを組み合わせるとよいと勧めています。


ヨガクラスや自宅での練習で何を避けて何をすべきかを理解するために、まずテニス肘が何なのか原因は何なのかを探りましょう。



テニス肘とは


テニス肘の医学名は「外側上顆炎」です。肘の外側にある外側上顆に繋がる腱、そして手の指、手首、肘を伸ばす前腕の外側についている筋肉(長・短橈側手根伸筋、総指伸筋、尺側手根伸筋)に影響します。同じように、ゴルファー肘とか投手肘と呼ばれる珍しい症状では、肘の内側の内側上顆に影響します。「テニスプレーヤーも、時にはフォアハンドのストロークで内側上顆炎を起こすこともある」とのことです。


テニス肘は、腱炎、腱症とも呼ばれます。腱炎では、肘、手首、手指伸展筋の小さい断裂が炎症を起こします。腱症では、炎症を繰り返した後、肘の伸展腱が変形します。腱炎は急性の怪我で数日から数週間で治癒しますが、腱症は「頑固」な慢性の怪我で数ヶ月かかります。「まるで体の組織が治る方法を忘れたようなものだ」とリーフは言います。


ある集団研究の結果を一般化できるとすれば、米国で毎年テニス肘の新しい患者が約百万人いることになります。同じ研究によれば、最もテニス肘になりやすいのは40歳から60歳です(女性の方がやや多い)。


リーフによれば、テニス肘はテニスのサーブやフォアハンド、バックハンドなど一般的に繰り返される動作によって引き起こり悪化します。こうしたストロークは、ラケットが硬すぎたり重すぎたり、ガットがきつすぎたりすると特に危険です。間違った使い方(肘でリードする、バックハンドの時手首を伸ばさず曲げて打つ、ボールがラケットに当たったあとすぐにグリップを緩めないなど)もまた、テニス肘に関係します。



テニス肘はテニスだけが原因ではない


「テニス肘」というのは少し呼び名が悪いかもしれません。テニス選手のおよそ50%が肘痛を訴えますがそのうちの75%は「本当の」テニス肘ではないので、この症状のある全ての人のうちテニス選手の比率はおよそ10%にすぎません。


こうした統計はリーフの経験と一致しています。「テニス肘患者のほとんどは、テニスでなったわけではない。身体の限界を越えて何度も組織を疲労させると、その組織が炎症を起こす」つまり症状は、バレーボールのサーブやギターやチェロ、ヴァイオリンなどの楽器演奏、バーコードのスキャン、ウェイト・リフティング、肉体労働(ハンマーを振る、チェインソーの操作など)料理、ガーデニング、組立てラインの作業などからも起こる可能性があります。テニス肘は、ゲームセンターのゲームやビデオゲームでも起こり得ます(数十年前に「パックマン肘」が流行したことを思い出します)。


これらの場合、テニス肘に繋がる可能性のある連続した動きは、荷重のかかった手首と肘の伸展です(「止まれ」の手をしたまま身体の前に腕をまっすぐに伸ばす)。
荷重のかかった手首と肘の伸展の例としては、先ほど述べたテニスのバックハンドのスウィングや腕立て伏せ、そしてヨガのチャトゥランガからアップワード・フェイシング・ドッグへの移行です。


繰り返される怪我のケースをみてみると、アライメントと筋肉の使い方が重要です。リーフはこう説明します。「両腕のアライメントが良いほど、肘に直接かかる疲労は少なくなる。だから、肩の内外旋が大きすぎると肘の内側外側を酷使することになる可能性がある」


場合によっては、連続的な動きの中での伸筋の酷使は、肩や胴部の筋肉が効果的に使えていないせいかもしれません。「肩や胴部に弱い部分があれば肘の不快感や怪我になる可能性がある。支持の土台となる肩やコアなしでは、ボールを打ったり、釘をハンマーで打ったりするのに必要な力を肘まわりの筋肉で作らなければならないからだ」


ヨガだけでテニス肘の原因にはならないがいくつかのポーズは一因とはなり得るとリーフは考えています。「午前中ずっとテニスやウェイトリフティングをしたり絵を描いていたという人がヨガクラスを受けるとする。いくつかのポーズは、特に繰り返すと状況を悪くすることもある」


テニス肘のためのヨガ


テニス肘(腱炎、腱症)の急性ステージでは著しい痛みと脆弱さを伴いますが、リーフによれば、ヨガで「やってはいけないこと」ひとつ大きくあります。「手首や肘を伸展させて両手に荷重がかかるポーズを練習しない」テーブルトップやプランク、アップドッグ、そしてダウンドッグなどが含まれます。「特に車輪ポーズは、両肘により体重がかかるので問題になる」テニス肘の痛みがいくらか弱まったら、下記のようにポーズの変更をすることもできます。


伸展した腕と手首に体重全てがかかるハンドスタンド、両膝が肘の真上にくるクロウ・ポーズや肩を押すポーズ(ブジャピダーサナ)などのアームバランスは、テニス肘の人は何にもまして避けるべきだとリーフは推奨します。「両肘の上で両膝のバランスを取ろうとすると肘に直接圧力をかけることになり、損傷しているまさにその構造の上に乗ることになる」


リーフによれば、伸展への、そして伸展からの移行(伸ばした肘を曲げる、曲げた肘を伸ばす)もまたテニス肘を悪化させます。「屈曲から伸展へ(曲げた肘を伸ばす)の繰り返しは肘に大きな負担をかける」つまり、例えば、チャトゥランガに入ったり出たりする方が、チャトゥランガでホールドするよりも腱や筋肉により負担をかけることになりえます。チャトゥランガからプランク、そしてチャトゥランガからアップドッグへの移行は、テニス肘のある人にとって最もお勧めできないもののひとつで、特に繰り返すヴィンヤサでの移行はよくありません。

テニス肘があって練習するときや、テニス肘を患っている生徒のためのシーケンスを考えるには、単純に両手に荷重のかかるポーズを全て避けて立位や座位、横たわったポーズにフォーカスしましょう。負荷のかかるポーズを緩和することもできます。


(次回に続きます)









(出典)https://yogainternational.com/article/view/yoga-for-tennis-elbow?

2020年1月20日月曜日

チェア・ヨガ 重症認知症高齢者に音楽療法よりも効果的
Chair yoga more effective than music therapy in older adults with advanced dementia

2019年10月に掲載された SCIENCE DAILY の記事です。
(Florida Atlantic Universityの研究)

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認知症の症状が進むと、エクササイズでの能力が下がります。認知機能が衰え、運動機能の問題や怪我のリスクなどを考えると、エクササイズのプログラムに参加し続けることさえ困難になってくるでしょう。エクササイズの中には、単に複雑すぎたり身体的にもきついものさえあります。身体的活動が認知症に効果があることは研究によって示されていますが、認知症がより深刻な患者を含むもの、また優しい運動の効果について含むものは限られています。





フロリダ・アトランティック大学の研究者らは、認知機能の衰え、バランスの問題、転倒の恐れなどにより定期的なエクササイズや立って行うヨガに参加することのできない中程度から重度の認知症高齢者に対するチェア・ヨガの効果を調べるため無作為化比較対照の予備研究を行った。この研究の主たる目的は、これら個人の非薬理学的な行為に参加能力の可能性を評価するとともに、全レベルの認知症高齢者へのチェア・ヨガの安全性と効果を明らかにすることであった。


American Journal of Alzheimer's Disease & Other Dementias(全米アルツハイマー病およびその他認知症ジャーナル)に発表されたこの研究でチェア・ヨガと比較されたのは、椅子ベースのエクササイズ、音楽療法という2つの非薬理学的介入である。各3グループは、週に2回45分間のセッションの参加を12週間継続した。まず初め、そして6週間後、12週間後のデータが集められた。


結果によれば、中ー重度認知症の参加者らは安全に非理学的介入に遵守することができることを示した。97パーセント以上の参加者が各セッションに完全に参加した。チェア・ヨガのグループは QOL において音楽グループと比較して顕著な向上がみられた。チェア・ヨガと椅子エクササイズグループの両方において時間と共に向上が見られた一方、音楽グループでは低下がみられた。さらに、チェア・ヨガと椅子エクササイズグループ両方に3回全てのデータにおいて、音楽グループと比較して鬱の数がより少なかった。


椅子エクササイズや音楽療法の効果と比較した、バランスや可動性など身体機能に対するチェア・ヨガの効果が調べられた。また、不安症や鬱などの精神的症状、激越や攻撃行動などの行動症状の緩和効果、QOLについても調査された。また睡眠障害に対するチェア・ヨガの効果についても調査された。


チェア・ヨガは、椅子を使用することで転倒の危険を減少させる一方で、ストレッチや強化、柔軟性のための安全な環境を提供できる。また、様々な筋肉グループのアイソメトリック収縮とリラックスへの誘導を利用する静止ポーズで、重要な呼吸とリラクゼーション法をも提供する。


研究の筆頭者であり、FAU's College for Design and Social Inquiry 内にある Phyllis and Harvey Sandler School of Social Work の准教授である Juyoung Park, Ph.D はこう言う。
「チェア・ヨガと椅子エクササイズのグループで使用したポーズは、我々の研究の中でQOLを向上させる重要な要素だったと考えている。ヨガセッションの前に治療室におちて軽度の激越や徘徊を見せていた参加者らが、ヨガポーズのデモンストレーションを始めた途端に落ち着いて熱心に注意を向けたのが素晴らしかった。認知症が進んで認知機能の衰えのため言葉は理解できないにもかかわらず、インストラクターのポーズを真似していた」


身体機能について3つのグループで差異は認められなかったが、チェア・ヨガ・グループで音楽グループより握力が高かった。調査された身体機能はどのグループにおいても低下は認められなかった。


どの時点においても不安症の顕著な差異も認められなかった。鬱や不安症の変化にも差異は認められなかった。3回の全ての時点でどのグループにも睡眠の質に対する著しい差異は認められなかった。


「チェア・ヨガのグループでは、身体状態、気分、機能的能力、人間関係、有意活動の参加能力、最終的な状況などを含むQOLのスコアも高かったと報告されているが、激越が増加した。QOLというのは単なる激越の値ではなく、より総括的な生物学的・心理学的・社会的アプローチであり行動機能であるということが重要だ。この研究では、瞑想や心身の繋がりといったチェア・ヨガのプログラムが参加者のQOLを高めたのだろう。この発見は、目標を決めたアプローチが認知症患者のQOLを高めるのに役立つことがわかった我々の前回の研究と一致する」



研究の参加者は60才以上(平均84才)でアルツハイマー(最多)、レヴィ小体病、パーキンソン認知症を含む「認知症」と診断された者。各グループの構成に著しい差異はなかった。半数以上(67.7%)が認知症に関連した症状を抑えるための薬を服用していた。






(出典)https://www.sciencedaily.com/releases/2019/10/191002102800.htm?fbclid=IwAR2FG7ndm2GXj8iNCoOgKMIAntlnapqrKt6L-02BQD6QTQZlSWH_2etZQUs