2023年10月6日金曜日

ハヌマナサナの神話 
The Mythology Behind Hanumanasana

この夏、久しぶりにシンガポールに行った時、インディアン・ヘリテージ博物館や何箇所かのヒンズー寺院を訪れました。久しぶりに直接見るヒンズーの神様たちに、懐かしさとワクワクした刺激を感じました。
ヨガでは、ポーズの中で実は何度もヒンズーの神様に出会います。今回は、その中でも見た目の個性が強いハヌマンについてみていきましょう。

ーーーーーーーーーーーーーーーー


ハヌマンは、猿族ヴァナラのスーパーヒーローで、風の神ヴァーユと猿族のアンジャナの息子だと言われています。この類稀な生まれから、ハヌマンには霊界と俗界のどちらにも特別なつながりがあります。南アジア文化全てにおいて、肉体的な強靭さ、勇敢さ、霊的な忠誠心といった特性を具現化しています。ハヌマンとヴァナラの人々は、古代インド叙事詩ラーマーヤナにおいて、王女シータと愛するラーマとを再会させるというきわめて重要な役割を果たしています。


風の神の息子であるハヌマンは、その力強い跳躍力で知られています。最も有名な跳躍のうち、2つはランカ島の戦いに関係しています。1度目にハヌマンは、囚われたシータを慰めるため、インドからランカ島まで海岸の間を100ヨージャナ(1ヨージャナは、伝統的に高地から呼び声が聞こえる最も遠い距離だと定義されています。諸説あり)の距離を跳びました。砂を巻き上げ波を後ろへ流す力で、彼の強い脚を伸ばしたのです。


ハヌマンは、後ろの脚の力で空へ舞い上がり、前の脚で遠ぉーいランカ島の海岸へと降りたちました。お祈りのように胸の前で合掌した手には、ラーマの指輪を携えていました。シータが番兵たちに見張られた木の下で悲しそうに座っているのを見つけると、こっそり指輪を渡してラーマがこっちに向かっていることを伝えました。


その後、ラーマの弟ラクシュマナが戦に倒れ、瀕死の状態になります。その傷を治す薬草は遠いヒマラヤに生えています。「行け、ハヌマン!お前の跳躍がもう一度必要なのだ。薬草は、ヒマラヤの・・」とラーマが話し始めるとハヌマンはもう居ませんでした。ヴァナラのスーパーヒーローは、ラーマが言い終える前に薬草がいっぱいの山上に立っていました。ああ、どの草なんだ?ラーマはどこを探せと言った?ハヌマンは植物から植物へと走り回りましたが、すぐに気づきます。「わからない!俺は猿だ、医者じゃ無い!ああ、全部持って帰って先生に選んでもろおう」そして山を根こそぎ引き抜いた彼は、何も落とさないように注意深く頭にのせ、医者の待つ戦場まで跳んで帰ったのです。「ありがとう!」彼らはハヌマンに言いました。「今度は、山を元の場所に戻しておくれ」そうして、また並外れた距離を跳んでいる間に医者たちはラクシュマナの傷を治したのでした。






ハヌマナサナの完成形


ハヌマナサナ(猿のポーズ)は、前後開脚のポーズです。このポーズには練習が必要で、安定性を得るには何かサポートが必要かもしれません。(パタンジャリがヨガスートラで述べた「アサナは安定して快適であるべき、Sthira sukham asanam」という戒めを思い出しましょう)また、股関節や肩、鼠蹊部がしっかりと開くようになって初めてできるポーズです。


まずは犬のポーズになる前のように四つ這いになります。両手は床かブロックに置きましょう。右足を両手の間に出して、一度止まります。右脚を前にのばして、左脚を後ろに下げます。両脚で床を押しながら、腕や両手で体重を支えましょう。ポーズの完成形は、右腿の後ろ(ハムストリングス付着部の上部)が床に着き、左脚の前部(鼠蹊の上部)が床に着いた状態です。後ろの足の甲を床に押し付け、前の足の指をしっかりと開き、両脚を均等に伸ばしましょう。胸郭を持ち上げます。息を吐いて、胸の前で「ナマステ(お祈り)」の手をします。


胸郭全体を引き上げ続けながら、両腕を頭上に上げます。肩甲骨の上部を広げましょう。鎖骨の外側を腕の内側の方へと伸ばし、みぞおちを引き上げます。腕を上へと伸ばし続けながら頭の上で合掌しましょう。


では、尻尾が背骨の下から伸びているのを想像してみましょう。(全ての猿に尻尾があるわけではありませんが、ハヌマンにはあります)跳躍の力で後ろにたなびかせるように、尻尾を長く尾骨を先の方へと伸ばしましょう。頭の頂点へと引き上げます、背骨をできるだけ長く伸ばしましょう。


ハヌマナサナは難しいポーズです。ヤマのアヒムサ(ヨガスートラ2.35 非暴力)、サティヤ(ヨガスートラ2.36 誠実)、アステヤ(ヨガスートラ2.37 不盗)を思い出しましょう。正直なところ、自分の股関節はどれくらい開いているのでしょうか?バガヴァド・ギータのクリシュナの助言を思い返しましょう。自分のダルマ(この場合は自分のアサナ)を不完全に行う方が、他の誰かのものをやろうとするよりも良い(バガヴァド・ギータ 18.47)。アイアンガーや前の列の誰かがやっているのが格好良く見えるからと言うだけで、サポートのない完成系を試そうとして自分を傷つけるのはやめましょう。




猿のポーズのバリエーション


床にマットを置き、マットに対し交差させてボルスターを横にして置きましょう。マットの前の床(マットの上でなく)に、二つに折ったブランケットを置きます。ボルスターの後ろに左膝をつきます。右足をボルスターの前のブランケットに乗せます。かかとはボルスターに接しているかもしれませんが、足の裏はブランケットの上です。このブランケットは、あとで右脚を前にスライドさせるのに役に立ちます。両手はボルスターのそれぞれの両端に。より高くしたい場合はブロックを使いましょう。


左脚を後ろへ伸ばし、膝頭をマットに近づけ(着けないで)ましょう。(後ろの膝はローランジと同様に曲がります)。左腿をボルスターの後ろ端に下ろします。では、右脚を前にスライドしましょう。動かしながら足指は顔に向かって引きます。脚がまっすぐになるまで踵をスライドさせるのに、ブランケットが役立つはずです。今度は、右腿の裏がボルスターの前端についています。左ひざは後ろ端につきます。両方の腿を下へ押し下げましょう。ナマステの形に合掌します。数呼吸ホールドしましょう。そして、両腕を頭の上へ挙げ、両手を離します。


両脚を均等に使いましょう。左腰を前に右腰を後ろに引いて骨盤を揃えます。胸郭と胸の中心を引き上げます。首の後ろを長く保ったまま上を見上げましょう。


ポーズから出るには、腕を下ろし、両手に体重を戻します。左右を替えて行いましょう。   





考察


猿のポーズで努力が要るのはどこですか?目?舌?首?呼吸?脚?楽な場所はどこですか?ポーズが完璧でなくてもかまいませんか?



この努力に自分自身を全て差し出して心を開くことができますか?バガヴァド・ギータは、最善の努力を尽くし、その結果は神に託すよう、私たちに伝えています(2.47)。ハヌマンは、薬草を探すのをやめて代わりに山全体を持って帰ることでこれを体現しています。彼はできることとできないことを認識し、その結果ラクシュマナを助けることができました。自分にできることをやり遂げた時、そして神の手に結果を委ねる時だとどうすれば知ることができるのでしょう?


ハヌマンはラーマのためなら何でもしますが、何でもできるわけではありません。「正しくやる」ことはどれくらい重要なのでしょうか?最善を尽くしたいという欲求が完璧主義になっていませんか?完璧主義モードの時は、おそらく自分に暴力を与えているのではないでしょうか?



ハヌマンが跳躍するのは、シータを慰めたり、ラクシュマナの薬を届けたり、誰かを助けるためです。彼は早まって山へと跳びますが、正しい薬草を誰かが見極められるよう山全体を取ってこなければなりませんでした。役に立とうと躍起になって、実際にはことを複雑にしてしまった経験はありませんか?



ハヌマンはスーパーヒーローですが、あがめられるのは彼の献身と奉仕のためです。ハヌマンを見習うとすれば、私たちの最大の努力と最高の才能を最高に理想的な奉仕に用いることです。ハヌマンの跳躍は、あなたの何に当たりますか?彼がラーマを愛したように、あなたは何を愛しますか?











(出典)https://yogainternational.com/article/view/the-mythology-behind-hanumanasana/

0 件のコメント:

コメントを投稿