予防のために何を理解すべきなのか、何ができるのかをみていきましょう。
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一般的に、ヨガの実践者は心臓が健康なグループに入ります。ヨガは、体への習慣的な運動と心へのストレス緩和のテクニックを与えてくれます。喫煙する人は少なく、アルコールを飲む人でもその量は適度です。そしてほとんどの人は、マイケル・ポランが彼の著書「食べ物が守る力」で述べている率直なアドバイスに従っているでしょう。「食べ物を食べよう。食べ過ぎないで。主に植物を」
では、どうして心臓病について心配しなければならないのでしょう?第一には、病気にならない人は誰もいないし、米国で多い死因は心臓病だからです。第二に、健康診断に行ってコレステロールが高いとスタチンを処方されてしまった知り合いが誰にでも一人はいるからです。そして最後に、コレステロールが心臓病の主な原因ではないかもしれない(現在、研究者らは炎症が原因としている)ことを知る必要があるからです。つまり、私たちは長い間間違ったボールに目を向けていたということです。
コレステロールに注目し始めたのは約60年前、米国心臓協会が冠動脈疾患の原因が「バターとラード、牛肉、卵」だと宣言した時です。医療界が、血液のコレステロール・レベルを上げる食べ物に含まれる高レベルの飽和脂肪であり、過剰なコレステロールが動脈を閉塞させるという考え方を取り入れたのは間も無くでした。低脂肪の食事とコレステロールを低下させる投薬が劇的に増加した50年がすぎた現在、その概念は、ほとんどの医療関係者や消費者の頭の中にしっかりと確立されたのです。
そろそろ、それを見直す時期ではないでしょうか?「コレステロールの重大な俗説:コレステロール値低下が心臓病を予防できない訳(スタチンフリーに効果)」の共同著者(スティーブン・シナトラ医学博士著)で栄養士のジョニー・ボウデン博士は、「コレステロール値を下げて心臓病を予防しようとするのは、マクドナルドの巨大な食事からピクルスを取り除いてカロリーを減らそうとしているようなものだ」と述べています。65歳以上の男性、そして全年齢の女性で、冠動脈疾患を判断するのにコレステロール値を見るのは事実上意味がありません。そして、おかしなことに、ちょっと下がって大局をみれば、低いコレステロールは、予防どころかより病気の原因となる可能性があります。
敵を知る
医師らはめったに認めないのですが、高コレステロールの人は実のところ長生きです。少なくとも6つの研究で、コレステロール値が低いほど死亡率が高いことがわかっています。実際、米国の死因の全てを見ると、コレステロール値の高い人には癌が少なく、消化器官や呼吸器官の疾患で亡くなるリスクが低く、自動車事故や自殺も少ないのです。驚くことに、コレステロールによる防御は、深刻な心臓病にまで及びます。米国と欧州での研究では、心臓病患者でコレステロールレベルが高い人は、低レベルの人たちよりも長寿でした。
私たちの体がコレステロールを必要としているのは、脳細胞生成という何よりも重要な役割があるからであり、研究では低すぎる値(160以下)が鬱や攻撃性、脳出血、認知障害などと関係があるとされており、これらは全て事故や自殺の死亡率が高いことを説明しているのではないでしょうか。
高コレステロールの悪評
コレステロールを議論するには、まず肝臓が1日に約800ー1000mgのコレステロールを生成していることを知ることから始めるべきでしょう。これらは体が健康を保つために必要な量です。しかし、食べるものからコレステロールを追加摂取すると(動物由来の食物には全てコレステロールが含まれます)、体はその余分に対処するまで生成を抑えます。また、脂肪を消化し、細胞粘膜を強化・修復し、神経を隔離し、ビタミンDを合成し、性生活を制御するものの含めたホルモンを生成するのを助けるため体はこの柔らかでドロッとしたステロールを必要としています。
コレステロールは脂肪のような物質なので、水性の血液に溶けたり細胞に直接流れ込んだりはできません。そのかわりに、リポタンパク質という特別な乗り物に乗せてもらう必要があります。おそらく私たちが良く聞くのはLDL(低比重リポタンパク)とHDL(高比重リポタンパク)の2つでしょう。科学者らが発見しているのは、LDLが必要な場所にコレステロールを運び、より重いHDLが動脈壁をもすくい取って余分なコレステロールの掃除係として働き、それらを処理し排出するため肝臓に戻すということです。
この文脈からみれば、HDLもLDLも体の日々の活動で重要な機能を果たしているため、どちらも「善玉」コレステロールと呼べます。しかしながら、コレステロールが心臓疾患の原因だという議論の初期では、HDLだけが血中コレステロール・レベルを下げるため善玉だという扱いを受けました。一方LDLは、フラミンガム心臓研究の研究者らが心臓疾患の「限界危険要素」だと位置付けたため「悪玉」と烙印を押されました。
体が作る極めて重要な物質が死をもたらす可能性があるというのは想像し難いのですが、「悪玉コレステロール」という烙印はそう言及しており、LDLレベルをできるだけ下げる意図でのLDLコレステロール薬の全面戦争が勃発しました。この前提は、体がLDLを不可欠としていることを見落としているだけでなく(LDL無しでは細胞は必要なコレステロールを得られない)、重要な事実を見ぬふりをしています。LDLが「悪玉」になるのは、電子のひとつが放たれることでフリーラジカルが酸化(本質的に不安定化)した時だけです。それは動脈壁にくっついて炎症連鎖を起こし心臓発作の原因となる血栓につながるのです。
おそらくは、まだ他にも
高コレステロール論理(脂質仮説と呼ばれます)への最も的を得た乖離は、おそらく心臓発作を起こした人すべてのうち半分になる人のコレステロールが正常値だという不都合な真実です。ほとんどの人は、50%というその数字に注目し、コレステロール以外の何かがこの明らかな矛盾の原因となるのではないかと思うでしょう。
数えきれない研究によって、脂肪仮説が心臓疾患を深刻に単純化しすぎていること、心臓疾患の予防には抗酸化物質の果す役割を完全に軽視していることがわかっています。1990年代のリヨン食事心臓研究では、心臓発作で回復した人1グループを米国心臓協会認定の低脂肪、高炭水化物、抗コレステロールの食環境におき、他のグループを野菜、果物、ナッツ類、魚、オリーブ油を主にしたいわゆる地中海ダイエットとよばれる食環境に置きました。研究の結果、どちらのグループも同等のコレステロール値でしたが、地中海ダイエットのグループは2度目の心臓発作を起こした人が大幅に少なく、胸の痛み(不安定性狭心症)や心臓疾患を起こした人もかなり少数でした。どうしてでしょうか?果物や野菜に見られる抗酸化物質や魚に含まれるオメガ3脂肪酸の抗酸化作用に関係があるのではないかと研究者らは考えています。
そして、フランスのパラドックスがあります。フランス人はリッチで高コレステロールの食事を大胆に奔放に食べている様子ですが平均的な全コレステロールのレベルはおよそ250のあたりにとどまり、先進国では最も心臓疾患の件数が少ない国だという不思議な事実のことです。このパラドックスを研究している研究者たちはまた、新鮮な野菜や果物の摂取、そして特にレスヴェラトロールなど赤ワインの強力な抗酸化物質に注意を向けています。
それでは、抗酸化物質は体内でどんな役割をしているのでしょう?抗酸化物質は炎症を抑えます。そして、最近の研究などでは、炎症が心臓疾患の発症や心臓発作に重要な役割を果たしていることが確認されたようです。それはどのようにでしょうか?では動脈の中を覗いてみましょう。高血圧や高血糖の食事からくる血糖スパイク、喫煙の毒素、環境汚染や殺虫剤などの何らかが、動脈の表面を覆う細胞一枚の厚さである内皮を傷つけます。LDLは、おそらくは傷ついた細胞を修復しようとその傷にとどまり、そして血中のフリーラジカルによって酸化します。免疫細胞が傷を治そうと集まり、炎症はさらに悪化します。指を切った場所の周りが赤くなるのを考えてみてください。体は大きくなる「汚染」を止めようと、硬く繊維質の蓋をしますが、この蓋が動脈プラークです。このプラークが安定している時、炎症は治まって蓋はそのまま残りますが、このプラークが悪さをするのは動脈を狭めることだけです。一方で、不安定なプラークは、破裂して血栓を作り出すことがあり、結果的に狭まった動脈を堰き止めて心臓発作を引き起こすのです。
炎症のある心臓障害なのかを調べるため、医師らは数多くの血液検査に頼ります。こうした安価の検査は、症状が起こる前であっても心臓疾患の見つけるのに重要な役割を果たしています。
では、こぞって検査に行くべきなのでしょうか?おそらく、心臓疾患のリスク要因をいくつか持っていない限りは必要ないでしょう。特にストレスの多いライフスタイルや、過剰な体重、高血糖などです。簡単に言えば、炎症を引き起こすライフスタイルを送っているなら必要でしょう。しかし、まずは気持ちを新たにして、心臓の健康のために何をするべきか、何を食べるべきかをみていきましょう。
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次回に続きます。
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