このGuardian の記事は実は10年前のものです。
世界状況や企業の環境も変化しティクナットハーン氏もいなくなった今、改めて読み返してみたいと思います。
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禅マスター GoogleなどIT巨大企業が世界のために善を促進する力となるようにという自身の助言について語る
マインドフルネスは、ビジネスリーダーたちの中でますます人気のトピックとなっており、利益を向上させるのに役立っていると公に語る重要な役員たちも存在している。
例えば、Intemix の CEO カジャク・ケルジアンは先週、彼の心の平穏の秘密を Wall Street Journal に打ち明けた。Huffington Post のチーフエディターであるアリアンナ・ハフィントンは、今週発売になった著書「Thrive」の中でマインドフルネスについて語っている。その他、Aetna の CEO マーク・ベルトリーニ、Salesforce.com の CEO マーク・ベノフ、Zappos.com の CEO トニー・シーなど枚挙にいとまがない。
先月のブログで、ハフィントンはこう書いている。「利益増加については大袈裟なことは何もない。経営は厳しい。ストレス解消やマインドフルネスは私たちをただより幸せにより健康にするだけではない。どんなビジネスでも必要なもののための競争の裏付けされた優位性なのだ」
しかし、マインドフルネスの効果が利益にあると焦点を当てたビジネスリーダーたちは、仏教徒の実践を腐敗させていることにならないのだろうか?
西洋で多くの人からマインドフルネスの父と知られている、87歳の禅マスター、ティク・ナット・ハーンは言う。ビジネスリーダーたちが「真の」マインドフルネスを実践している限り、その最初の意図が生産性を上げたりより大きな利益を得るため始めたものであっても構わない。なぜなら実践することで、より大きな哀れみに心を開いたり他者の苦難を終わらせたいという思いが自然に身についてくると、彼らの人生に対する考え方が根本的に変わるためである、と。
フランスはボルドー近郊にあるプラム・ビレッジの僧院で、蓮華座で座った彼はGuardian にこう語った。「マインドフルネスの実践法を知っているなら、今ここにある平穏や喜びを気づくことができます。そしてそれに感謝するようになり、自分が変わります。最初は、一番にならない限り幸せにはなれないと信じていますが、マインドフルネスを実践するとすぐにそうした思いから解放されます。マインドフルネスが結果ではなく手段にだけになるかもしれないと恐る必要はありません。なぜならマインドフルネスでは、手段も結果も同じだからです。幸せへの道はないのです、幸せこそが道なのです」
しかし世界中に何十万人もの信奉者がいる禅マスターのテイはこう指摘する。経営者らが利己的な動機のために実践するのなら、彼らの体験はマインドフルネスのまがいものにすぎないと。
「もしマインドフルネスを多くの金銭を得るための手段とみなすのなら、その真の目的に触れたことがないのです。それはマインドフルネスの実践に見えるかもしれませんが、内面には平穏も喜びも幸せも生み出されてはいません。ただの模倣です。みんな同胞だというエネルギーが感じられず、あなたの行いからも発散されないのなら、それはマインドフルネスではありません」
彼の言うように「もしあなたが幸福なら、自身の幸福の犠牲にはなり得ません。しかし、あなたが成功者なら、自身の成功の犠牲になり得るのです」
嘲笑のリスク
マインドフルネスがますます普及しているにも関わらず、多くの組織の中では、古い仏教の実践法に直接結びつけて嘲笑されることに対するピリピリ感がまだ多く残っている。
最近テイは、世界銀行ワシントン本部へ総裁のジム・ヨン・キムに招かれ、そのイベントはスタッフに大変好評だった。キム氏の愛読書はテイの著書 「The Miracle of MIndfulness」で、「苦しんでいる人々に哀れみ深く、大変情熱的な」禅僧の実践を讃えている。
しかし、キム氏の決意は堅かった。彼は、マインドフルネスの効果を表す科学的研究を複数示すことで非難を回避したとガーディアン誌に語った。
マインドフルネスとテクノロジーとの交点
おそらく、ビジネス界で最も興味深い交点は、全く反対の方向に向いているように見えるマインドフルネスとテクノロジーだろう。マインドフルネスの実践は心のスピードを落とし落ち着かせるが、デジタル革命は我々の生活をスピードアップし頭の中を大量の情報で満たす。
しかし、このふたつは長い歴史を持つ。Apple の CEO だったスティーブ・ジョブスは禅の仏教に魅せられていたが、ひとつにはテクノロジー企業が拠点を持つカリフォルニアのライフスタイルにマインドフルネスが数十年に渡ってつながりを持っていることだ。
だから、米国で200万冊以上の著書が売れているテイが Google にシリコンバレーへ招かれ、また世界でもっと強い15のテクノロジー企業たちに向けたマインドフルネスのプライベートセッションを依頼されたことは、大して驚くことでもない。
出会ったテクノロジー企業のリーダーたちにテイが伝えたかったことは、彼らの世界に及ぼす影響力を、できる限り多くの富を得ることではなく、どうすればより良い世界を作る貢献ができるかに使うべきだということだった。
彼と僧侶たちは Google 本社での1日を、上層部や約700名の社員たちとマインドフルネスのディスカッションや瞑想をして過ごした。あまりにも多くのスタッフが参加を希望したため、講義のライブストリームのために2箇所を追加しなければならなかったほどだ。
テイは、Google での通常の仕事の慌ただしさと、Googleplex 構内で静かに座るマインドフルネスからもたらされる穏やかな感覚との著しいコントラストについて語った。「その場の雰囲気は全く違っていました。静けさがあり、何もしないことから来る平穏があります。彼らは、あの場にいると時間の大切さに気づくことができます」
テクノロジー業界への助言
「意志、確信、洞察」をテーマにした訪問の中でテイは、多くの Google 上級技術者らと会い、Google が人々のストレスや孤独感を増大するのではなく、世界に良い変化をお互いにまた自然からもたらすため、どうすればより思いやりをもって効果的にテクノロジーを使うことができるかについて議論した。
「電子機器を作り出す時、その新製品が人々を家族や自然から遠ざけるのではないかとよく考えることです。そうではなく、自分自身に戻ったり感情に対処するのに役立つ機器やソフトを作る。そうすれば、社会に良いことをしているのですから良い気持ちになるはずです」
CEOたちを過ごした日、テイは静かな瞑想を指導し禅の茶会を行なったあと、億万長者が大勢いるグループの前で、個人として家族との時間を犠牲にして仕事で疲弊しないことの大切さを語った。「時間はお金ではありません。時間は人生です。時間は愛情です」
ボルドー近郊のPlum Village の僧院に戻った彼が語ったのは「全ての訪問で、会社の全ての人が幸せになれる方法でビジネスを行わければならないと伝えています。もっと辛くなるのにもっとお金を使いますか?良い野望があればより幸せになれることを理解するべきです。なぜなら社会を変えるのを手助けすることが人生に意味を与えてくれるからです」
この旅はまだ始まりに過ぎないと彼は言います。「たくさんの種を蒔いてきたと思います。その種が実るには時間がかかるでしょう。彼らがマインドフルネスを実践し始めたら、喜びや幸せ、変容を体験し、他の野望を持つようになれます。名声や権力、富は実際には、自身の体や心を大切にできるような生活を送っている時のような真の幸福をもたらしてはくれないのです」