腰痛のためのヨガ
腰筋に働きかける
腰筋はとても深いところにあるので、正確な位置や機能を感じるのは難しいかもしれません。二の腕を曲げるかのように腰筋を曲げられたり、ハムストリングスが伸びるように腰筋がストレッチするのを感じられる人は少ないのです。腰筋はこうした筋肉と異なった組織を持っており、その筋膜や結合組織はとても柔らかいのです。ハムストリングスのように硬くはならないので、そんなにストレッチする必要もないのです。硬くなった腰筋のもうひとつの珍しい局面は、理想的な長さに戻す前に調整したり強化したりする必要があるということです。通常は、筋肉が硬くなるのは発達しすぎたか使いすぎたと考えます。が、弱い筋肉もまた硬くなることがあり、腰筋もまたそうなのです。例えば、何時間も椅子に座ったり庭にしゃがんだりするとその間ずっと腰筋は収縮したままですが、強くはならないのです。それどころが、こうした姿勢は腰筋を短く弱くさせます。では、腰筋が硬く弱いとどうして言えるのか、そしてそれにどう対処すればいいのでしょう?
腰筋運動の3要素
- 腰筋を感じその動きを観察する
- 筋肉へ意識を集中し深く呼吸して腰筋の緊張を解く
- 他の筋肉と調和できるよう腰筋を調整、強化する
腰筋の感覚と解放
腰筋を感じ緊張を解く一番簡単な方法は、仰向けに寝るところから始めることです。顎を緩め、口を少し開けて快適に呼吸します。息を吐くときは「ハアァァ・・」と静かにささやくように優しく温かく吐きます。骨盤の奥から息を吐くようにイメージします。横隔膜と胸筋が受動的に解放されて息が出ていき、あなたが手放せば、腰筋もまた解放されます。尾骨が少し踵の方向に傾き、腰のアーチが緩くなるのを感じるでしょう。これは腰筋がゆるんだ証拠です。床に背中をぴったりつけるのが目的ではないですが、背骨が完全に受動的で自然なカーブを描いているこの解放感をただ感じましょう(図1)。背骨より顎が解放されるのを感じる人もいるでしょう。これもまた骨盤の奥がゆるんだ証拠です。どちらにせよ、これを最大10分行いましょう。図1 |
腰がこのリラックした自然な位置に落ち着いたら、このアーチを次のエクササイズでも保ちます。右かかとを床にそって少し足首を曲げながらスライドさせます。膝とつま先は天井に向けたままにしながら、脚をゆっくりとスムーズに伸ばします(図2)。骨盤の奥深くから解放され、寛骨(訳註:恥骨、腸骨座骨が一体化した骨)の内側から腿の上部内側まで楽になります。もし、骨盤が前方に引っ張られて腰椎が大きく曲がって浮くようであればそこで止まって戻ります。この感覚は腰筋が硬くなって引っ張っているためで、緊張を解いて脚を伸ばしているのではなく腰を緊張させて腿を持ち上げているからなのです。骨盤の奥深くを解放し脚のスライドを続けます。呼吸の流れに意識を向け、身体の中心から深い解放感を感じましょう。
図2 |
腰筋を調整
次のエクササイズは、腰筋の場所を感じるためのものです。ほかの筋肉と異なり、脚を挙げるために腰筋を使いコアから動きます。腰筋そのものから動かしましょう。最初のエクササイズで作った自然なアーチを保ったまま、足の親指が天井を向くように脚を回転させておきます。脚を強く伸ばし、息を吐きながら10cmくらいまで踵を床から持ち上げましょう(図3)。そのまま3呼吸したら踵をおろし、それを3回繰り返します。脚をまっすぐにするために、踵の内側に小さな重りをイメージし、腿の内側、骨盤の深く内側から持ち上げるようにしましょう。どこか深い床に近い内側から脚が持ち上げられているのを感じましょう。このエクササイズは、腰筋を緊張させずに強化し優しく調整します。
反対に、次はもっと外側の筋肉から脚を挙げるバリエーションを行います。感覚を比較し、不均衡なストレスの多いパターンをよりよいものに変えていきましょう。
図3 |
ひとつめのバリエーションは、脚を外に回したまま数回挙げたり下げたりします。動きが足と腰の違う場所(内転筋)から始まっており、脚を挙げるために股関節の内側が硬くなるのを感じます。これは、脚や足が外に向いたまま歩く際に起こっていることです。腿の内側に沿って内転筋から脚が前に動き、腰や臀部が徐々に硬くなります。あなたの靴をチェックしてみましょう。かかとの外側が極度にすり減っていれば、こういう風に歩いているということで、腰や臀部に問題を引き起こします。
最初のポジションに戻りましょう。次に、腰を床にぺたっとつけて脚を上げ下げしましょう。鼠径部が硬くなります。これは、骨盤を後傾にして(猫背、前に説明した疲れた感じの姿勢)動いている際に起こり、腰筋が慢性的に収縮されます。この姿勢は腰痛のレシピといえるでしょう。これを治すには、腰筋を解放して正しい長さに戻し、脊椎の自然なカーブを取り戻すことが必要です。
もう一度もとの位置に戻ります。今度は、バレリーナのようにつま先を伸ばします。このように脚を上げ下げすると動きが楽に感じるはずです。しかし、腿がほとんどの働きを担っているのに気付きましょう。これは、腰のカーブが強いときに起こり、つま先で歩いているように見えるでしょう。また、腰は緊張してカーブしたまま、足を腿から持ち上げることになります。ここでまた、コアとのつながりが薄くなり、腰筋の代わりになるはずのない他の筋肉に依存して、腰に大きな負担をかけます。この場合は、腰筋が骨盤を引っ張って前傾し、動きに正しく調和しようと下腹部からの大きな支持が必要になります。
もう一度足を内側に回し、よい姿勢に戻ってから、左脚で全部の動きを行い中心を探します。そして、次のアサナを練習して腰筋のストレッチで伸ばしましょう。正しい姿勢で腰筋を使うため、踵の内側にむかって伸ばして床を蹴りコアから動くのを忘れないようにしましょう。
戦士のポーズ ヴィラバドラサナ
立位のポーズの中でもヴィラバドラサナI(戦士のポーズI)は、最も効果的で難しい腰筋のストレッチのひとつです。重要な筋肉を伸ばすのに加え、ふくらはぎを伸ばし、腿の強さが求められます。最もむずかしいのは、柔軟性を保ったままコアを伸ばすことです。このポーズは臀部や脊椎を伸ばすのが必要な後屈です。それによって腰筋が解放され伸展し、廻りの筋肉に支えられながら「ストレッチ」します。腰筋が収縮すると、腰椎が引っ張られ骨盤が前傾し腰が詰まります。まず、左脚を大きく後ろへ下げ、右ひざを曲げながら両手を前に出して前傾します。両足は左脚がまっすぐ伸ばせる距離に開き、右の脛は床に対して直角になるようにしておきます。膝が踵より前になってはいけません。後ろの足を30-45度の角度にし踵を床に下ろします。右踵から後方に伸びるラインをイメージしましょう。バランスを保つため、左足を調整して左かかとが交差するか、そのラインの左側に置くようにします。左腿に力を入れて脚をまっすぐに保ち、踵の内側に向かって下ろしましょう。これで左の腿が少し内側に向きますが、同時に左の骨盤の外側が前に動いて左右の骨盤の先(骨盤前部の骨ばってとがった点)が平行になって前を向きます。後ろ脚の位置が正しく収まれば、先ほどのエクササイズで感じたコア(腰筋)とのつながりを探しましょう。脚を挙げるのに使った筋肉が、今、戦士のポーズIでストレッチしています。
左足を床にべたっとつけないようにします。腰の内側や内転が硬くなるからです。内側のアーチを持ち上げたままにし、脚のエネルギーを骨盤へと引き上げましょう。腰筋に向かってもっと上方へ伸びるため、下腹部を引き込んで骨盤の上部か持ちあげます。大きく息を吸いながら下腹が落ちないようにします。腕を横に開き、手のひらを上に向け、頭上に持ち上げます。踵を床に伸ばし続けながらアーチから、腿の内側を通り、下腹部、手の指先へとエネルギーを引き上げます。
腹部の動きをさらによくするため、骨盤の中心にあるオレンジ大のエネルギーのボールをイメージします。ボールの前面を上に回転させてエネルギーを下腹部から引きあげながら、ボールの背面を仙骨の前から尾骨にかけて下方へと向け、後ろ脚をまっすぐに保ちながら踵に向かって踏むこみます。この感覚は、下腹筋の引き上げと調整によって腰筋が伸びることで感じられます。ポーズから抜けるためには、反対の動きをしていきます。息を吐きながら、おなかが落ちないように腕を下げます。両手を腰に下ろしてやや前傾し、前足を伸ばします。前に歩いてタダーサナ(山のポーズ)になり、数呼吸して心を落ち着かせ、反対の足でポーズを繰り返します。
戦士のポーズIは、腰痛のよくある原因のひとつである腰筋を解放し伸ばす特によいポーズです。しかし、実際は、ハタヨガの立位の全ポーズが、腰筋と周りの筋肉の調和を促進し、腰を健康的で強く保つように作られています。こうした基本的なポーズは、意識的な呼吸と組み合わせることで、腰痛を軽減し、さらにバランスのとれた有意義なヨガの実践への道を開いてくれるのです。
(出典) https://yogainternational.com/article/view/lower-back-blues
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