2018年3月30日金曜日

ストレッチ以上の効果:ヨガは心臓にも 
More than a stretch: Yoga’s benefits may extend to the heart

今回は、ハーバード大学医学部、Harvard Health Publishingからの記事です。
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ヨガを長年愛する人間として、この古代の実践法にまた効果があるという話を聞くたびに私は嬉しくなる。毎週数時間ヨガを行うと、身体的にも精神的にも落ち着きバランスが取りやすくなる。さて、新しい研究によれば私のこの実践がまた心臓にもこうかがあるようだと示している。

European Journal of Preventive Cardiology(欧州予防心臓病学)誌で発表された「ヨガと循環器病の研究(review of yoga and cardiovascular disease)」によれば、ヨガは早歩きなど従来のエクササイズと同様に心臓病のリスクを下げる可能性があるらしい。

Harvard Heart Letterの4月号に書いたように、この研究は優しいものとエネルギッシュなものと両方を含む異なったヨガを取り上げている。参加者も若く健康な人から健康問題を抱えた年配者までに至る。全体的に、心臓病リスクに影響を与える多くの要素からみて、ヨガクラスを受けた人たちに改善が見られた。平均で体重が約2キロ減少し、血圧が5ポイント下がり、有害なLDLコレステロールの値が12ポイント下がった。

ハーバード大学医学部の助教授でありこの研究論文の共著者であるグロリア・イェー博士にとっては、この結果は驚くまでもなかった。「ヨガは身体運動と呼吸、瞑想を組み合わせたユニークなものです」博士が説明するように、これらの要素全ては循環器病のリスク要素にプラスに働くため、それらを組みわせるということは効果があるはずなのだ。また、ゆっくりとした流れるような動きと深い呼吸を組み合わせた古代の実践法である太極拳や気功も同じような効果が期待できるだろう。

様々なヨガのポーズを行うと、筋肉が優しく伸ばされて鍛えられる。これが、血糖をコントロールするのに重要なインシュリンの感性を高める。深い呼吸は血圧を下げる効果がある。ヨガのもう1つの鍵である心を落ち着かせる瞑想は、神経を鎮めストレスを解消する。これらの全てが改善されることで心臓病の予防が期待でき、循環器系患者にとって間違いなくよいものであろう。

ヨガクラスのほとんどは、大抵は目を閉じて横たわる数分の瞑想で終了する。このポーズはシャヴァサナと呼ばれる。ヨガのストレッチやポーズはエネルギーを解放し、瞑想状態に入るためにリラックスしやすくするという指導者もいる。私は、それは本当だと思う。瞑想するときはいつも、私の好きな先生の一人が言っていた「どこにも行かなくていい。何もしなくていい。ただリラックスしましょう」という言葉を今でも思い出す。

ヨガは多くのエクササイズより激しくなく緩和することが簡単なので、そうでなければエクササイズに対して用心深い人にとっては完璧であると、イェー博士は言う。心臓発作や心臓手術の回復期にある人の心臓のリハビリに付け加えるにはよいと思われる。ハーバード付属マサチューセッツ総合病院の登録看護師であるクリスティ・クオは、ヨガを循環器リハビリに取り入れ、心臓病予防クラスを病院で教えている。

ヨガポーズで促進される筋肉のストレッチは、ウォーキングやサイクリング、他の有酸素コンディショニングの後のよいクール・ダウンの方法だとクオは言う。深い呼吸や瞑想もまた良いとも。「レハビリの強化トレーニングの際は、呼吸に注意を向けることが大事。マインドフルネスや瞑想によるさらに大きな気づきは、病気からくるストレスに対処するしたり、健康的な食事をしたり、よりぐっすり睡眠を取るなどに役立ち、それらは全て回復に必要なことです」

ヨガが初めてなら、ビギナーや優しいクラスから始めよう。65歳以上であったり病気がある場合は特にそうである。アメリカで教えられているヨガで最も人気のある2つはハタとアイアンガーであり、ビギナーにはよい選択だ。ハタヨガはゆっくりとした優しくスムーズな動きに特徴があり、動きに呼吸を融合させることに重きを置いている。アイアンガーはよく似ているが、もっと体のアライメントやバランスを重要視しており、ストラップやブランケット、ブロックなど補助具を使う。

私の考えでは、いい先生は必ずこう尋ねる「始める前に私が知っておくべき怪我や病気はありますか?」最もいいのは、マットをひいて準備をしている時にひとりひとり生徒に話しかける人だ。もし可能なら、いくつか違う先生の違うクラスを受けてみてどれが自分に合うか見極めるとよいだろう。



(出典)https://www.health.harvard.edu/blog/more-than-a-stretch-yogas-benefits-may-extend-to-the-heart-201504157868

2018年3月27日火曜日

公認の事実:ヨガは鬱を緩和する 
It's Official: Yoga Helps Depression

Time誌のサイトからです。
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ヨガが身体的、精神的な健康状態の両方に有益であるという証拠は、どんどん増え続けている。今度は、ボストン大学の小さな研究が、週に二回のヨガクラスで部分的に深い呼吸のおかげで鬱が和らげられるということを見出した。

Journal of Alternative and Complementary Medicine(代替医療ジャーナル)に発表されたこの研究では、18から64才の30人の臨床的鬱病患者で、抗うつ剤を服用していないか最低3ヶ月間安定した量を服用している者に対して行われた。患者の半数は、週3回90分間のアイアンガーヨガ・クラスに参加、毎週30分のセッションを4回自宅で受けさせた。その他は、毎週2回のグループクラスに参加、自宅のセッションは3回だった。

アイアンガーヨガのクラスはアライメントや正しいポーズ、呼吸のコントロールを重要視する。この研究でのクラスもまた、1分間に5回鼻で呼吸するペースの20分間のゆっくりとした優しい呼吸のレッスンがあった。

約3ヶ月後、どちらのグループにおいても、鬱検査のスコアが最低でも50%ほとんどの患者で下がった。驚くまでもなく、ヨガをたくさんした方が良く、週3回クラスを受けた方が週2回受けた者よりもスコアが下がった。

しかし、多くの時間の参加は大変だと多くの患者が訴えたため、研究者らは有意義な効果が得られるとして週2回の参加を勧めている。

こうしたヨガの効果は、鬱に悩む人々にはよい知らせである。ボストン大学医学部の精神科と神経科の准教授で、研究のリーダーであるクリス・ストリーター博士は、向精神薬に比べ副作用や薬の相互作用の恐れも大変少ないと言う。研究で報告された最も多かった症状は一時的な筋肉痛という小さなもので、自宅で呼吸を練習している際に苦痛を感じた患者が一人いた。

既存の治療では回復しない人の中にはヨガに向く人もいるだろう。というのも、抗鬱剤と異なりヨガや深い呼吸は自律神経を整えるからだとストリーターは言う。「自律神経のバランスが整っていると、脳の他の部分もよく働く」と彼女は言う。研究によれば抗鬱剤を服用する40%の人が完全に鬱から回復せず、再発のリスクが高まるそうだ。「その40%を回復させるのが本当に重要なゴール。さらなる投薬をするのではなく、効果があるであろう治療のひとつとしてヨガを勧めたい」

ヨガが他の治療に匹敵するのかを見極めるにはさらなる研究が必要である。(この研究には、ヨガとウォーキングを比較するさらに大きな試みが行われていると書かれている)

アイアンガーヨガは、一般的に全てのレベルの人々にとって安全なものであると認識されているが、健康効果があるのはアイアンガーだけではないとストリーターは付け加える。「誰が何を求めているかによる」現在明らかなのは、健康に効果が最もあるタイプのものを選ぶべきということだ。



http://time.com/4695558/yoga-breathing-depression/

2018年3月23日金曜日

マインドフルネス:「思考を考える」ちから 
Mindfulness: The Power of “Thinking About Your Thinking”

Psychology Today (ニューヨーク)から2015年の記事です。
マインドフルネスとは何なのか、その簡単な実践法が書かれています。
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マインドフルネスと瞑想は次の大きな健康革命なのか?


数年前、マインドフルネスと瞑想のパワーについて議論するため、突然ABCニュースのダン・ハリスが私にコンタクトしてきた。ニューヨークタイムスのNo.1ベストセラーになった彼の著書「10% Happier」では、瞑想(メディテーション)をわかりやすく解き、毎日数分間「思考を考える」ことでなぜ劇的に人生を向上できるのかを解説している。

NPR(公共ラジオ局)での最近のインタビューでハリスは、「10年前に私が瞑想の伝道者になることになると言われたら、鼻からビールを噴き出していたよ。つまり、こんなことになるなんて全く考えていなかった 」ハリスの卑下するユーモアのセンスと世俗的なアプローチによって、彼はマンドフルネスと瞑想のパワーのメッセンジャーとして思いがけなく完璧なものとなっている。また、とても明瞭、シンプルでわかりやすい言葉によって「どうやって」瞑想して日々のマンドフルネスを実践するのかをうまく説明している。

ジョン・カバット・ジンやハーバート・ベンソンのような開拓者によって行われた1970年代のマインド・ボディ・アウェアネスにおいても、「瞑想」や「マンドフルネス」はPRの問題に悩まされ続けていた。瞑想は実践するのが容易に見えていながら、一般のオーディエンスにとって伝統的にわかりにくいものだった。

ハリスは、自分で言う「瞑想の伝道者」になることで、世間に大きな公益を果たした。ハリスは健康的な皮肉をユーモアのセンスを組み合わせ、どんなニューエージの決まり文句や自己満足な難解語をも避けたアプローチをしている。彼の発見は科学的であり、そのアドバイスは何のレベルをも下げることなく簡潔だ。


瞑想 初級編:息を吸う、吐くに注目する


瞑想は、仏僧や修行所に住む人たちのものに見えるかもしれない。瞑想の実践者になるには、香を焚きながら「ナム」と唱え、蓮華座で何時間も座ることに一生を捧げなければならないと思うかもしれない。だが、そうではないのだ。

ハリスの日々の瞑想は1、2の3といったように簡単だ。ダンの説明によれば「ただ椅子にまっすぐ5分くらい座って、息を吸う・吐く感覚に全神経を集中することだけ。心が乱れたら、ただ呼吸に注意を戻すだけでいい」



ハリスによる瞑想への3ステップ


1. 快適に、背中をまっすぐにして座る
2. 呼吸の吸う・吐くの感覚に全神経を集中する
3. 呼吸に注意を向ける。心を空にする必要はない。迷ったら帰ってくるだけだ。

多くの人と同じく、私は瞑想があまり「得意」ではないといつも感じていた。というのも瞑想の時、心は散漫になり「心を空に」して禅的な境地に至るなどまったくもどかしいほどに無理だと感じるからだ。心を無にするのでなく呼吸に注意を戻すのが実際のところ全てなのだというハリスの説明を聞いた時、でかい「アハ」体験をした。
ハリスの瞑想の解釈は、「失敗」という判断や感情を取り除いてくれる。呼吸に注意を向けるという認識プロセスによって、実際に精神力を働かせ文字通り脳と繋がり、そして神経生物学的レベルで「思考を考える」ことにシフトしていくことを彼は明確にしている。


マインドフルネス 初級編:思考を考える


マンドフルネスとは概して「1. 何かに意識し気づいている状態や性質、2. 穏やかに自らの感情や思考、体の感覚を感じ受け入れながら、現在に気づきを集中させることで得られる精神的な状態」だと表される。

ハリスはマンドフルネスを簡潔で関連性のある表現をする。「それによって失われることなく、常に頭の中で何が起こっているのかを知るスキル」だという。

ハリスは、心の中の思考はほとんどが「私、私、私」の想いに占められている滝のようなものだと例える。この暗喩をつかえば、マインドフルネスとは、勢いよく流れる滝の流れから一歩離れて滝の中の思考の中身を遠くから判断せずに観察させてくれるものだ。

瞑想やマインドフルネスは、おそらくニルヴァーナ(涅槃)の状態を永遠に作ってくれるものではない。しかし、どのように、またなぜ瞑想やマインドフルネスが外的要素が究極的に幸福度を押し上げるという信念を超えるのを助けるダイナミックな組み合わせなのかを、「10% Happier(10%より幸福に)」は、明確に示している。

マインドフルネスは、あらゆる状況において、コップが半分満たされているのか半分しか入っていないのかを見る能力を与えてくれる。何も、全く反応しないボケや極端な楽天家になるためにマインドフルネスや瞑想をやれというわけではなく、現実的な楽観主義のためであり、マインドフルネスを使って「心の中の猿」にどのように応えるのかを決断することがコントロールの要だ。



結論:我々は「考え、そして考えることを知っている」ホモ・サピエンス・サピエンスである


ハリスは、人間は厳密に言うと「ホモ・サピエンス・サピエンス」に分類され、「考え、また考えるということを知っている男女」という意味だと指摘する。(サピエンスとは「知恵」と言う意味) 残念ながら、二番目の「サピエンス」は時間とともに私たちの名前からなくなってしまった。つまり、自分自身から離れて穏やかに判断なしで「思考を考える」能力は、人間特有のものなのだ。

あなたの思考について考える能力を働かせ、毎日少しの間瞑想することは健康によく、精神的にも肉体的にも数えきれない効能がある。ハリスはマインドフルネスのパワーを強く信じ、また瞑想が次の公衆衛生革命になるはずと信じている。私もそう思う。

マインドフルネスは、いつでもどこでも実践できる。瞑想は1日5分でいい。もしマインドフルネスも瞑想もしたことがないというのなら、今日始めてみてはどうだろう? 「10% Happier」が明確にしているように、それは1、2の3くらい簡単なのだ。





(出展)https://www.psychologytoday.com/blog/the-athletes-way/201504/mindfulness-the-power-thinking-about-your-thinking

2018年3月9日金曜日

多裂筋が新しい腰筋?腰痛を改善する新しい見識 
Is Multifidus the New Psoas? Fresh Insight into Relieving Back Pain

腰痛の原因と改善法のひとつを紹介した記事です。
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「左右で目で見える違いはある?」私はそう聞いた。私の友人でマッサージ・セラピストのジュリアは、私の腰まわりにある常に固まった筋肉をほぐしてくれていた。

「そうでもないわ」彼女は言った。

私は、枕から頭を上げて驚きを示した。時々、身体の左右が全く違っていて、まるで完全に分かれた2つの身体の中で生きているように感じることもあった。

「ちょっと待って」彼女が言った。「そこに寝ているときは、すごく対称に見えるんだけど。動くと、背中の筋肉に力が入って違ってくるの。わかった!」

「頭をあげる時に片方の筋肉だけが立ち上がる」彼女は続けた。「もう一方はそうならない」

それは、慢性的に痛む側弯した脊椎だけに関係しているわけではなかった。脊椎の横に走っている脊柱起立筋の片方だけがいつも堅く、痛みを感じている。

身体には、脊椎をまっすぐ安定させ続けるための方法がいくつかある。骨や靭帯、筋膜鞘など受動的な非収縮性の構造や、能動的に収縮する筋肉などが使われ、脊柱の安定性に重要な役割を担うことが研究により示されている。

長い筋肉の下で脊柱に平行に走る筋肉は多裂筋と呼ばれる。まあ、多裂筋はまるでひとつの筋肉のように言われることもあるが、実際は、腰から首にかけて脊柱の棘突起の長さで走っているとてもたくさんに分かれた筋肉だ。各多裂筋は、2〜4つの椎骨の長さで脊柱の棘突起についている。

腰にある筋肉全てが脊柱を支持する役割を担っているが、多裂筋の役割は重要だ。脊柱の複数の各関節間を支える役割の大部分を担っているのだ。「The Multifidus Back Pain Solution」の著者、理学療法士ジム・ジョンソンによれば、実際のところ多裂筋は脊柱の筋肉支持のなんと3分の2に寄与している。


多裂筋の重要な役割


脊柱全体に伸びているが、多裂筋は厚いので腰のあたりで容易に触診(触れること)ができる。自分の多裂筋を感じるには、肋骨の下そして骨盤の上にある腰のあたりの腰椎の横に指を置いてみよう。次に少し歩いてみる。動くたびに脊柱を安定させている多裂筋を指の下で感じるはずだ。

多裂筋は、最近注目を集めてきている「不良」筋肉のひとつだ。過去10年でとても多くの研究がなされてきている。というのも、近年、超音波により腰痛を持つ人の中に、多裂筋が片方だけ(つまり痛みのある方だけ)小さいか弱いということを示してきているからだ。

先の研究では、腰痛の治療を1年間受けた者の中で、多裂筋のエクササイズを行なったボランティア・グループのうち痛みを再発したのはたったの30%だったのに対し、エクササイズを行わなかったコントロール・グループでは一年後までに痛みを発症したのは84%になった。

今や悪評高くなっている多裂筋だが、たったひとつで孤立して生きる筋肉など存在しないということを忘れないのが重要だ。多裂筋は、身体の内側のコアを作る4つの筋肉のひとつにすぎない。あとの3つは、腹横筋、横隔膜、そして骨盤底にある筋肉群だ。

しかし、多裂筋は独特で、非常に多くの筋紡錘がある。筋紡錘とは、筋肉にある感覚受容器で、筋肉の長さの変化と感知しその情報を中枢神経へと報告する。中枢神経はその情報を使って体の今の状態を計算する。

どんな時でも、それぞれの部分がどこにあるのかを感じる体のこの能力は、固有受容性感覚と呼ばれる。固有受容性感覚のおかげで、フォークを持ち上げた時にどこに口があるのかわかり、また目を閉じた状態で鼻を触ることができる。(酔っ払っていなければ)


姿勢筋は体を支え、相性筋は体を動かす


姿勢筋は反重力の筋肉で、体を直立させる役割をする。これらは一般的にからだの深部にある。時に遅筋とも呼ばれる。例えば、桃の前にある大腿直筋は姿勢筋で立位を保つ。姿勢筋として、多裂筋は前屈に抵抗するのに左右対称(つまり脊柱の両側)に働き、そのおかげで何かを拾おうとかがむ時にも前に転げることはない。

相性筋は姿勢筋の補完的なパートナーだ。相性筋は体を動かす役割をする。一般的に表面にあり、速筋とも呼ばれることもある。例えば、大臀筋は歩く時に体を前に進ませたり座位から立ち上がる時に体を持ち上げたりする力強い相性筋だ。大臀筋が体を動かしている一方で、多裂筋は脊柱を直立維持させるのに忙しいのだ。

姿勢筋も相性筋も骨格筋で、随意筋に分類される。随意筋は内臓を作る滑らかな筋肉と相反する。内臓は意識的なコントロールや同意なしに(例えば、小腸が何をしているが考えることもない間に)働き続ける不随意筋である。


「良い姿勢」を再考する


「良い姿勢」と言えば、単純に慎重で怠惰に打ち勝ち「まっすぐに立つ」ことを思い浮かべることが多いだろう。一般的にはそうではないのだ。

姿勢というのは、認識の表面下にある意識の氷山の一角に圧倒的に支配されているものだ。解剖学書には随意筋とされているにも関わらず、姿勢筋の多くは、実際には自律神経に支配されている。つまり、それらのほとんどは無意識に調整されているということだ。

特に私たちのように座ってばかりの社会では相性筋が怠けがちな一方で、姿勢筋は働きすぎて過敏になりがちだ。多裂筋も働きすぎたり、働かなすぎたりするが、腰痛に関して言えば、私が見てきた研究のほとんどがその十分に働かない、あるいは抑制されている傾向に焦点をあてている。

すべての筋肉は、何をするかを伝える神経系に依存しており、確かな情報伝達が不可欠だ。抑制は単に筋肉の強さ弱さの問題ではない。伝達の問題なのだ。

中枢神経系は、効率的で習慣の虜である。委任すべき仕事があるときは、もっとも信頼できる「最初に反応するもの」に呼びかける。これによってある筋肉が慢性的に使用され続け(神経的に刺激が多すぎる)、その一方で抑制された筋肉が神経系に習慣的に無視され続けることになる。

弱い筋肉を強化するのは良いことである。しかし、中枢神経との伝達がうまくいっていないために抑圧されている筋肉に強化のエクササイズをしたらどうなるだろうか?身体の筋肉バランスがもっと良くなるのか、それとも補完のパターンを強めることになるのか?私は、どちらもありうると考える。

テーブルトップの状態から多裂筋を強化する標準的な方法を見てみよう。補完パターンを防ぐ慎重な方法を取り入れてもいい。

  1. 両手を肩の外側の幅(これは、鎖骨の間にある喉下の窪みから両方に水平に伸ばした両肩の外側への最大の長さ)に開き、両膝を腰の下に置いて「テーブルトップ」になる。
  2. 顎と上半身を柔らかにする。
  3. 下腹を引き締め、肋骨の前を床から離して持ち上げ、ハンモックのように垂れて背中を圧迫しないようにする。
  4. お腹の力を抜かずに尾骨を伸ばす。「怖いハロウィンの猫」みたいに床に落ち込まず、「ハッピーな猫」のように上へと解放する。これをお腹のサポートなしで行うと、可動域の大きい人は特に腰を圧迫する可能性大だ。
  5. 右足を身体の後ろへ。今は足指の付け根を床につけたままで、ゆっくりと呼吸する。急いで動かないように。腰が左に傾いているのに気づいたら、センターに戻る。肋骨の前を床から遠ざけ続けるのが難しいかどうか観察する。これは思っているより難しいかもしれない。
  6. 歩く時に感じていた多裂筋を思い出そう。そのあたりに意識を向ける。脊柱の両側にある多裂筋が、エレベーターのドアのように閉じるのをイメージする。多裂筋が抑制されているなら、想像することで神経系がもっと明確な地図を描く助けとなるだろう。
  7. センターで肋骨を持ち上げ続けられたら、ゆっくりと後ろの脚を腰の高さまで持ち上げる。そこで数呼吸。
  8. もし、上記の姿勢を保つことができたなら、左腕を身体の前にまっすぐ床と平行になるよう伸ばす。左の親指をヒッチハイカーのように天井に向け肩を開き続けよう。
  9. なめらかな動きを続けながらテーブルトップに戻る。
  10. 快適なニュートラルのポジションで数呼吸休む。このステップはとばさないように。休むことで、神経系が動きを処理して学ぶ機会を得ることができる。
  11. 強くになってきたら、このエクササイズを両サイドで数回続けよう。


いくらか驚き、興奮さえしてくるが、このエクササイズは使いすぎた多裂筋に効果がある。筋繊維を短くしている神経の状態を、この筋肉を使うことで改善することができる。筋肉を使った後は、神経系がその筋肉を休んだ長い状態にリセットすることができるのだ。

多裂筋が単に弱いなら、このエクササイズで筋肉を使うことで強化できる。もし抑制されているのなら、エレベータードアのイメージをしながら使うことが役立つだろう。

多裂筋は、左右対称の安定させる筋肉なので、背骨の左右両方に効く。背骨の両側の筋肉が適切に対象なら問題ではない。がしかし、脊椎側湾症などの場合、片側が抑制されている一方で反対側は促進されている。その場合、多裂筋を左右対称で動かすのは良い方法ではあるが、ほかの動きも考えられるだろう。

安定に加えて、多裂筋はまた、背骨の伸長、あるいは後屈を補助する。特に重力に反して行うコブラ・ポーズ(ブジャンガサナ)やバッタ・ポーズ(シャラバーサナ)のような伏臥の後屈においてだ。また、側屈や反対側への回旋もできる。

私のフェイスブックページで聞いたバカな質問に応えて、理学療法の学生でありヨガインストラクターのマーガレット・ピトキンは、その筋肉だけを特に動かすことに対する実現性や必要性について疑問をしめした。理学療法の動向は機能運動に向かっており、近視眼的な特定の運動からは離れて行っている。

機能運動は、よい生体力学的筋肉と関節機能をもって、痛みや無理なく日々の中で行える動きだ。異種の機会的な部分であるかのように筋肉を隔離するというのとは、全く異なるアプローチだ。機能運動は、ヨガのホリスティックなアプローチとうまく合うようだし、私のヨガを教えるアプローチとも似ている。

しかし、脊柱側彎症の場合、特定して行う方がよいだろう。サイド・プランクは、背骨の片方の多裂筋を強化するのに最適なポーズだろう。

ピトキンはこう説明した。

「片方だけを強化するには、多裂筋を脊柱の回転にもっとフォーカスする必要があると思う(片方だけを動かす時は脊柱を伸展させるだけ)。対側の回転をするものだから、右に回転すると左の多裂筋が使われる。私は、サイド・プランクを上の腕を下の脇の下へ下ろしまた上へあげるという繰り返しが好きだ。弱い方でなんども行う」

多裂筋の痛みを克服するのに興味があれば、フェルデンクライスの方法や、アレクサンダー・テクニックが、神経系と多くは無意識である姿勢筋とのよいコミュニケーションを作るのによいかもしれない。そして、もちろん、ゆっくりとした慎重な伝統的アサナの練習(安定した故意の呼吸、つながりと相互関係のヨガ哲学を組み合わせて)は、どんな腰痛改善プログラムにも理想的に追加することができるだろう。





https://yogainternational.com/article/view/is-multifidus-the-new-psoas-fresh-insight-into-relieving-back-pain

2018年3月2日金曜日

五十肩のための陰ヨガ
Yin Yoga for Frozen Shoulder Syndrome


陰ヨガのクラスの多くは下半身を対象としていることが多い一方で、この深くてストレッチの効いた練習は上半身にとってもとても効果のあるものです。ここにあるのは、五十肩として知られる肩の癒着性関節包炎のためのセラピー的なシークエンスです。癒着性関節包炎には痛みがあり、関節に近い軟組織の収縮による肩の可動域が狭まるのが特徴です。直接的な原因はある一定の肩の動き(伸展や内旋など)ですが、なせこうした動きが五十肩を引き起こすのかははっきりしていません。糖尿病などの全身疾患のある人や、骨折や手術などの後、腕を固定していた人に多く見られます。また、40才以上に多く、男性より女性に多く見られます。

7年前氷の上で転けた後4ヶ月の間この痛みに耐えた私にとっては、骨が骨を打っているような燃えるように警告してくる五十肩の痛みに耐えるくらいなら双子をまた産んだ方がましです。けれど、この陰ヨガのシークエンスで、痛みなくもとの可動域まで戻すことができ、また私のセラピー患者の多くにとってもこの緩やかな練習が治癒を早めました。そして、五十肩でなくても、このシークエンスで、陰ヨガの深い上半身のストレッチができるでしょう!


陰ヨガの準備運動


快適に座り、準備運動の間、深い呼吸を続けましょう。肘を曲げて指先を肩に乗せます(肩がとても固ければ肩に近づけるだけでもいいでしょう)。両肘で5回同じ方向に回した後、反対方向にも回しましょう。



ハーフ・ドラゴンフライ(半分のトンボのポーズ)


体の左側を下にして左腕を体と直角の方向に伸ばすところから始めます(体の前にあるものを掴むような動きで)。腹ばいになって、左上腕の上に胸がのるようにしましょう(あるいは不快感があれば痛みのない場所に)。額は床におろします。(床につかなければブランケットをサポートにしましょう)右腕を頭の横に伸ばして、右手のひらで床を押します。両脚はリラックスして快適な間隔で開いておきます。




右腕を頭上に伸ばすのが無理だったりとても不快である場合は、右ひじを曲げて右上腕に額をのせることもできます。



または、腰がより快適だと感じるなら、足や足首をボルスターにのせてもいいでしょう。




そのまま3分間、ゆっくりと深い呼吸をしましょう。ポーズから出たら、右サイドを行う前に優しく左肩を少し動かしましょう。


サポートのある可動域ポーズ


マットの上にボルスターか縦に重ねたブランケットをおきます。頭をボルスターの下、マットの上端に向けて仰向けに横たわりましょう。巻くか折りたたんだブランケットの上に肩甲骨の下端を置いて安定させるか(写真のように)、ただ床に寝てもいいでしょう。両脚は伸ばしてリラックスしておきます。膝を曲げてもいいし、両足をマット幅に開いてもいいですし、膝同士をつけたり、写真のようにスッカーサナ(安楽座)でするように両脚を組んでもいいでしょう。両腕は頭上に伸ばし、できればボルスターか折り畳んだブランケットの上におきましょう(両腕が快適な高さになるように重ねましょう)。



腕が怪我をしていたらかなりの高さが必要です。ボルスターひとつで足りなければ2つ使うか折り畳んだブランケットを使用しましょう。



ここで3分以上、呼吸をして背骨を伸ばしましょう。数週間のうちに徐々に可動域が広がってきたら、サポートの高さを下げていきましょう。ポーズから出たら、肩をストレッチして少し回しましょう。



地上の翼


下向きに寝て、手のひらを下にして左腕を肩の高さくらいで外に向かって伸ばします。右肘を曲げて、コブラのポーズをするときのように右手を右肩の真下におきます。それから左腕を伸ばしたまま左に転がります。両膝を股関節で90度になるように胸に引き寄せ、膝を曲げたまま、右脚を左脚の後ろの床に下ろしましょう(このポジションは「鹿の脚」とも呼ばれることがあります)。右手は体の前の床に置いておくか、背中に回してウェストのあたりに置きましょう。ここで3分間、ゆっくりと深い呼吸をします。



バリエーションとしては、右足を右手で持って弓のポーズになってもいいでしょう。緊張をなくすため、右膝をボルスターにのせましょう。


リリースするときは、お腹の方に転がって、肩をすくめて動かしましょう。そして反対側も行います。


横たわった牛の顔


左を下にして横たわり、右腕を曲げて後ろに回して、手が背中を向いて指が上になるようにします(ゴムカーサナまたは牛の顔のポーズの下の腕のように)。そして背中をついて、体の下で腕を押さえます。左腕を頭の横から頭上に伸ばして、肘を曲げて左手が肩甲骨の間に入るよう(ゴムカーサナの上の腕のように)上背部を少し持ち上げます。手がつかなくても構いません。両膝を曲げて足の裏同士を合わせ、バッダコナーサナの脚にして両サイドに開き下ろします。このポジションで仙骨に強い引きを感じたら、膝の下にブロックをおいてサポートにしましょう。深い呼吸でこのまま3分続けます。このポーズから出たら、次のサイドに移る前に、両肩をすくめたり回したり全体的に動かしましょう。







胸を開くツイスト


仰向けに横たわり、ボルスターを肩の位置で左に置きます。右を下に寝ましょう。両膝を曲げて揃えたまま、腰の高さまで引きます。肩の高さで手のひらを上にして右腕を前に伸ばし、左腕は体の前から手のひらを合わせるようにします。次に、左腕をT字に広げ(胸筋のストレッチを感じましょう!)ボルスターを軽く叩いてから、手のひらを合わせるところまで戻りましょう。息を吸いながらT字に開き、息を吐きながら手のひらを合わせて、これを3回繰り返します。視線は開閉を追うようにします。そして、T字に開いてそのままボルスターの上に手をのせて胸を開きます。頭はどちらを向いていても構いません。実際、頭を片方から反対側へ動かすことで、胸の両サイドをストレッチする効果があります。ここで3分間ホールドし、反対のサイドに移る前に胎児のポーズにもどりストレッチを相殺します。




支持のあるシャヴァーサナで癒される


マットの真ん中に薄く縦に巻いたブランケットを置きます。頭と背中、ウェストまで支持されるよう、その上に横たわりましょう。頭のサポートがなくならない程度に、首の曲線に沿ってブランケットに襞を作りましょう。




ここで10分間、胸と肩に広がる熱と潤いを思い浮かべながら休みましょう。



アーユルヴェーダ的アプローチ


アーユルヴェーダでは、関節や組織の硬さはヴァータ・ドーシャの問題だとみなされているので、この陰シークエンスのゆっくりとした深いストレッチと、温かく地についた水分の多い食事とたっぷりの健康的なオイルの摂取、規則正しい睡眠習慣を組み合わせることで、癒着性関節包炎の治癒を早めることになります。






(出展)https://yogainternational.com/article/view/yin-yoga-for-frozen-shoulder-syndrome