2018年12月24日月曜日

健康的なハムストリングスのための7つの方法 VOL.3
7 Strategies for Healthy Hamstrings


さて、ハムストリングスのためのヨガ、後半です。
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4. 大臀筋とハムストリングスを鍛える


大臀筋とハムストリングスが一緒に働いて、股関節伸展をさせることを思い出しましょう。毎日何時間も座って股関節を屈曲させる副作用のひとつに、慢性的に大臀筋が伸びハムストリングスが短くなるということがあります。

筋肉は、容易に収縮し弛緩できる時により効果的に働きます。ある位置で動かなくなるとこれを妨げるのです。そうすると筋肉はほとんど「怠けた」状態になり、働かせるのがより困難になって働かせようとしてもうまく働かなくなります。短くなる位置に止まるだけでなく、ハムストリングスは「怠けた」大臀筋の代わりに縮むことが多いです。この重労働に応えようとして、ハムストリングスが硬く緊張して炎症することがしばしば起こります。当然の反応として、私たちはハムストリングスをストレッチ(ヨガでよく行いますね)しますが、炎症した筋肉をストレッチするともっと緊張してしまうことがあることに気づく人も多いでしょう。その一方で、大臀筋とハムストリングスを鍛えて、同じ場所に長時間いるために起こった緊張や炎症を和らげることで、それらがより効果的に働くことを促進できるかもしれません。

理論的には、脚を伸展させたり(例えばダウンドッグから片脚を上げるなど)股関節の屈曲から伸展に移る(前屈やランジから立ち上がるときなど)たびに、臀筋やハムストリングスが使われます。しかし練習では、体は弱い箇所を補うことが得意で、代わりに脊柱起立筋や股関節外旋筋(梨状筋、双子筋、閉鎖筋)などより強い筋肉を使いがちです。ですから、ブリッジ・スライドのようなエクササイズでは大臀筋やハムストリングスを特定することに価値があるのです。

試してみよう: 滑らかな堅い床の上でブランケットかタオルを手が届く場所に置いておきます。両ひざを曲げて仰向けで横たわり、右足をブランケットの上に左足は床の上に置いておきましょう。両足と両ひざは骨盤幅にし、両かかとは坐骨にかなり近いところまで近づけておきます。両足を踏ん張ってお尻と腰椎を持ち上げて、膝から肩まで体がまっすぐになるようにします。必要なら、足首の真上に膝が来るように調整しましょう。

腰を上げ続けるのに大臀筋を使うことになります。下腹部をすくって尾骨を膝の方に伸ばすと背筋を使いそうになるのを防ぐことになり、両膝を外に開かないで骨盤幅にしておくと股関節の外旋筋を使うのを防げます。

右足のかかとに体重を移しましょう。右脚が伸びきるまでかかとを滑らせ、そして右のハムストリングスを使ってゆっくりと右かかとを右膝の下まで引き戻しましょう。5-10回繰り返してから、ゆっくりと腰を床に下ろし反対の脚に移ります。




このエクササイズが簡単に感じるようなら、両足をブランケットにのせて同時に動かしましょう。



このエクササイズを毎日か一日置きに最低1ヶ月繰り返すと、臀筋とハムストリングスの自然な強さのいくらかを取り戻すことができるはずです。



5. 股関節屈筋と四頭筋を解放する


体の前面にある股関節屈筋と四頭筋は、体の後ろにある大臀筋とハムストリングスの拮抗筋だということを思い出しましょう。四頭筋は通常ハムストリングスよりも強いですが、ヨガには四頭筋強化(平均的なクラスで何回戦士のポーズや椅子のポーズをやるか考えてみて)や、ハムストリングスのストレッチ(ウッターナサナとダウンドッグで始まってどんどん続きます)がたくさんありますが、その逆はほとんどないのです。そのうえ何時間も座っていると、もっとバランスを崩して前面の筋肉が短く硬くなり後面の筋肉が弱くなっていくことに気づくでしょう。時間が経つにつれ、このバランスの崩れは骨盤を前に引きハムストリングスをより緊張させるのです。

大臀筋とハムストリングスのストレッチをよく行うことが均衡の片方に働き、股関節屈筋と四頭筋を定期的に解放することがその反対側に働きます。頑固な股関節屈筋と四頭筋の緊張を優しく解きながら、より長時間リラックスできるポーズはとてもよいことです。私のお気に入りは陰ヨガのハーフ・サドル・ポーズです。

試してみよう: 座ります。左に体重をかけて右膝を曲げ、右かかとを右のお尻の外側近くに引きましょう。つま先を伸ばして足の甲を床に下ろしましょう。快適に感じるために必要ならば小さなタオルか畳んだマットを引きましょう。両手にもたれ、腰を少し浮かせて仙骨を両ひざ裏の方向に伸ばします。この少しの骨盤後傾が全ての四頭筋群や腰筋を伸ばすのに必要なのです。すでに右の股関節や腿の前にストレッチを感じていたら、左脚に快適なポジションを取りながら、そこにしばらく快適に止まりましょう。




そうでなければ、ボルスター、重ねたブランケットやクッションなどの上、あるいは床の上か、快適に感いじれるところで横たわりましょう。もし右膝に圧迫を感じていたら、左腰にもっと体重をうつしましょう。もし腰に少しでも圧迫を感じたら、もっと骨盤を後傾しましょう(そうするために半分サイズのブロックか、きつく畳んだブランケットの上に股関節をのせる必要があるかもしれません)。




左脚は最も快適なところにおいておきましょう。曲げた左膝を外に開くと(上図)右腿のストレッチが緩み、左足を床に押し付けて膝を天井に向けると(下図)ストレッチが深まります。



理想的な場所がみつかったら、そのままスムーズに呼吸して3分以上止まりましょう。準備がでいたら、ゆっくりと左側に転がって左脚を伸ばし、横向きか仰向きで横たわって数回優しい呼吸し感覚を感じたあと、反対側に移りましょう。このストレッチを週に2-3回行って四頭筋とハムストリングスのバランスをよくしましょう。



6. ハムストリングスとふくらはぎの筋肉バランスを整える


解剖学的な広い視点に戻ると、ハムストリングスの股関節伸展における協力筋は大臀筋で、拮抗筋は股関節屈筋と四頭筋でした。ハムストリングスの健康を考えるなら、ハムストリングスを膝屈曲で補助する腓腹筋もチェックするのは理にかなっているでしょう。

この表面にあるふくらはぎの筋肉の2頭は大腿骨の両サイドに着いており、ふくらはぎを通って(ふくらはぎ深部の筋肉、ヒラメ筋に沿って)、アキレス腱になりかかとへと入ります。膝を曲げて足をそらす(足先を脛の前面に向かって動かす)ことで、この筋肉を伸ばすことができます。ですから、腓腹筋の緊張はダウンドッグでかかとが浮いてしまう理由のひとつになるのです。聞き覚えがあるなら、あなたの腓腹筋は、膝屈筋の自然な関係性を変えてしまうほど堅くて、ふくらはぎのストレッチに時間を割く方がいいのかもしれません。。

試してみよう: 巻いたブランケットか巻いたマットを壁に平行に、腕の長さくらい離して置きます。片手か両手を壁に置いて支えにし、巻いたプロップスの上に足指の付け根で立って、かかとが床に向かってゆっくりと重力で降りるようにしましょう。両脚はまっすぐに保ち腓腹筋のストレッチに焦点を当てましょう(膝を曲げるとヒラメ筋に効きます)。





もしこれが簡単に感じたら、同じようにかかとが降りていくよう、ダウンドッグやウォリアーIの後ろの足で行ってみましょう。最低3-5回ゆっくりと呼吸し、かかとの重みで徐々にふくらはぎの筋肉が長くなるようにしましょう。このストレッチを毎日か一日置きに行って、膝屈筋がバランスを取り戻してハムストリングの緊張が解けるか確認しましょう。



7. 健康的な血流を取り戻す


健康的な筋肉というのは、強く柔軟であるだけでなく淀みのない血流によって栄養が行き渡っています。毎日ハムストリングスの上に何時間も座っていれば血流が減流可能性があります。座っている時間を減らしたり、定期的に休憩したり、様々な形でストレッチしたり、副交感神経に働きかけて筋肉の慢性的な緊張を解いたり、ハムストリングスの強化をしたり、こういったことはすべてそれぞれの方法で健康的な血流を促します。もうひとつの効果的であろう方法は筋膜リリースです。狙った圧をかけて筋肉と筋膜の緊張を解いて血流を促します。

試してみよう: テニスボールかゴムのマッサージ・ボールを2個用意します。体の前に幅の狭いV字になるよう両脚を伸ばして座りましょう(快適でなければ堅い座面の椅子に座ります)。マッサージ・ボールを、坐骨から3-5cm程度の腿の下にひとつずつ置きます。両脚をリラックスするか優しく左右に転がしましょう。それが快適であれば両手か椅子の背にもたれましょう。2回深い呼吸をしたらさらに3-5cm下へと動かして同じように行い、膝まで3ぶんの2あたらにくるまで続けましょう。ボールが脚の裏側を動くにつれ、体重をかけるようにやや前方にもたれて、ストレッチというよりもボールの上で両脚が重たく載るように集中しましょう。





ボールを取り除いて2-3分経ったら、仰向きに横たわってハムストリングスになにか変化を感じるかみてみましょう。痛みや炎症を感じたらやめるようにして、週に2-3回この練習を繰りかえしましょう。刺激によってハムストリングスが快適に感じるか観察します。


結論


ハムストリングスの柔軟性は、ヨガの練習と通常関わりがありますが、長期的なハムストリングスの健康への道というわけではありません。それらが周りの全ての筋肉とともにバランスよく働くことができるのは、大きな視野でハムストリングスを考える時だけなのです。

2018年12月21日金曜日

健康的なハムストリングスのための7つの方法 VOL.2
7 Strategies for Healthy Hamstrings


前回からの続きです。
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1. 背骨をニュートラルにしてストレッチする


ヨガの練習にはたくさんの立位や座位の前屈がありますが、ハムストリングスが堅くて骨盤が後傾したままになると腰が丸まりがちになり背筋の方によりストレッチを感じるようになります。脊柱起立筋などの背筋をストレッチするのは悪いことではありませんが、背骨をニュートラルに保つ方がハムストリングスに注目しやすくなります。個人的な意見ですが、ハムストリングスだけをストレッチする最も効果的な方法は仰向けの足の親指を持つポーズ「スプタ・パダングシュタサナ」で、床が背骨を比較的ニュートラルな位置へと導くので、より効果的にハムストリングスをターゲットにしやすくなります。

試してみよう: 仰向けに寝て両膝を立て、ベルトやストラップがタオルを手がとどく範囲に置いておきましょう。曲げた右膝を胸に引き込み、膝か脛を両手で持ち大臀筋の緊張を解くように1-2呼吸しましょう。




それから右足の母指球にストラップをかけてかかとを天井にむけて伸ばしましょう。坐骨や膝裏ではなく、ハムストリングスの膨み(腿裏の真ん中あたり)がストレッチされるようにします。右膝を少し曲げておくか右足首の角度を緩める必要があるかもしれません。もしすでにストレッチを感じていたら、左膝を立てたままにしておきましょう。




もしストレッチを感じていなければ、左脚を床にそって伸ばしますが、背中が丸くならないよう、また右のお尻が右肩の方向に引きあがらないよう気をつけます。




骨盤をニュートラルに保つため、右腿と左足に輪にしたもう一本のストラップをかけてもよいでしょう。



ハムストリングスの優しいストレッチを感じたら、そこで胸と肩は柔らかくし少なくとも3回穏やかに呼吸してから、右腿の四頭筋を働かせましょう。関節の横にある一方の筋肉を収縮させると、関節の反対側にある拮抗筋が収縮するのを妨げます。つまりこのポーズでは、四頭筋を働かせることでハムストリングスの深いストレッチになります。その深いストレッチのままさらに3-4回呼吸したら、右脚をリリースして反対の脚に移りましょう。このストレッチを毎日か一日置きに繰り返しましょう。練習のあとにハムストリングスが温まっていると特によいと感じるかもしれません。



2. ストレッチの場所を変える


もしかすると場所を変えるとハムストリングスの感覚が変わるのに気づいたかもしれませんね。脚を開いた前屈(プラサリタ・パドッターサナ)や開脚座位の前屈(ウパヴィスタ・コナーサナ)などのポーズはハムストリングスの中間にある半膜様筋、半腱様筋ストレッチを促進します。立位の前屈(ウッターナサナ)や座位の前屈(パスチモッターナサナ)など両脚をそろえたポジションは、ハムストリングスの側面にある大腿二頭筋のストレッチを強めます。ハムストリングスのストレッチで膝を曲げたりつま先を伸ばしたりするといいと気づく人も多いでしょう。ですから、単にストレッチを求めて可動域の限界まで動かすよりも、ポジションを変える方がハムストリングスの緊張を解き、血流を高め、ハムストリングスの周囲や間の潤滑が促される可能性があります。


試してみよう: ストラップやベルトを右足にかけてスプタ・パダングシュタサナになり、再度ハムストリングスの膨らみのストレッチに注目しましょう。今度は、ややストレッチを感じるところで止め、脚や足の位置を変えられるようにハムストリングスが少し緩んだ状態にしておきます。そして右脚を曲げたり伸ばしたり、足首を曲げたり伸ばしたり、足で天井をホウキがけするように右脚を左右に振ったりしてみましょう。4-5回穏やかな呼吸をしながら滑らかに動かし、ハムストリングスの感覚を観察したあと、右脚をリリースして反対側に移ります。




この優しい動きを毎日あるいは一日置きに、1日のはじめ(あるいはヨガの練習の前)に行い、ハムストリングスを温めて動かし、ハムストリングスの緊張を解き、血流を高め、ハムストリングスの間と周囲の自由な動きを促します。長い1日の最後にハムストリングスを緩めるためにも使えます。



3. 実現可能な期待を持ってリラックスする


あなたがもしソーシャル・メディアで見るような「アドヴァンス」のヨガ・ポーズのファンなら、脚を伸ばした状態での股関節屈曲の通常の可動域はだいたい90度ぐらい(腿と骨盤の角度が直角ぐらい)だと知って驚くかもしれません。多くのヨガポーズはそれよりもっと柔軟である必要があるので、ハムストリングスの可動域を増やす必要があるのかを測るのにヨガクラスは必ずしも最適な場所ではありません。例えばスプタ・パダングシュタサナで上げた脚が腰の真上で止まっているなら、実際のところ柔軟性を高める必要はもうありません。しかし、健康的な可動域であっても、もしハムストリングスが堅いとか固まっていると感じるなら、緊張を解く、つまりストレッチよりも弛緩させる方がよいかもしれません。

上記のようなストレッチのフローもよいですが、筋肉の緊張の主な要因は神経系にもあります。交感神経には多くの役割があり、そのひとつは筋肉の張りを高め、「闘争か逃走か」の準備をすることです。均衡を保つもう一方である副交感神経は、「リラクゼーション反応」と呼ばれる事柄に関係しており「筋肉の緊張」を解きます。ですから、優しいストレッチのため穏やかに弛緩できる時間を取りましょう。大腿骨の後ろにたるんでしまうほどハムストリングスが弛緩すれば、頑固なハムストリングスの緊張を深いストレッチよりも解くことができるでしょう。


試してみよう: スプタ・パダングシュタサナにもう一度なり、今回は、下の脚が床の上に上げた脚が壁に持たれるように、出入り口か壁の角(あるいは下図のように柱)に向かって横たわります。お尻と壁の間にスペースを作り、上げた膝を曲げ、頭の下にクッションを入れるなどして数分の間快適に横たわりましょう。




快適になったら、呼吸に意識を向けましょう。呼吸は、意識的にも制御することのできる少ない無意識プロセスの1つですから、意識と無意識の間をつなぐ特別な役割を担っています。弛緩した腹部で、吐く息を長くしたゆっくりで優しい呼吸は、リラクゼーション反応への近道となります。深くリラックスした呼吸に落ち着いたら目を閉じ、外側の形状よりも内側の微細な感覚に集中しましょう。

2-3分とどまったら、ゆっくりと解放します。反対の脚に移る前に少しリラックスする時間をとってもよいでしょう。このリラックスの練習は、特に就寝前に慢性的なハムストリングスの緊張を徐々に解くために、定期的に繰り返しましょう。









(出典)https://yogainternational.com/article/view/7-strategies-for-healthy-hamstrings?fbclid=IwAR3nL2-qImqjcfTvYSB-t444ptAB6wL_fJLubOAPZ-VWaACfAgr-RpeX4a4

2018年12月17日月曜日

健康的なハムストリングスのための7つの方法 VOL.1
7 Strategies for Healthy Hamstrings


Yoga International の記事からです。
この記事にあるハムストリングスのストレッチは、私もとてもよいと感じていてクラスでは定番です。ぜひ、ご自分でもやってみてください。
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Yoga Medicineの上級ティーチャーであるレイチェル・ランドがハムストリングスの緊張を解きハッピーで、健康で、力強くいられる7つのヒントをお伝えします。

ヨガといって思いつくことがひとつあるとしたら、それは柔軟なハムストリングスでしょう。結局のところ、ヨガクラスに参加するのを拒否する友人たちのいったい何人がつま先を触ることもできないのにと主張するでしょう?

私たちの多くはハムストリングスに悩まされます。ストレッチしてもストレッチしてもこの苛だたしい腿裏の筋肉群は今までと同じように硬く戻ってしまいます。ハムストリングスが柔軟な人でさえハムストリングスの不快感をよく訴えます。ヨガにはとてもたくさんのハムストリングスのストレッチがありますが(前屈、ダウンドッグ)、ハムストリングスのストレッチは大抵の場合問題解決にはなりません。ではどうすれば?

私たちは、身体の部分を簡単に分けて別々にとらえがちです。しかし現実は、そんなに簡単ではありません。全ての筋肉は、周りの筋膜によって、横、下、上、そして深く繋がっているのです。それぞれが複雑な全体の一部であり、全ての構造に影響し影響されており、またその逆にも働いています。もし、ハムストリングスのストレッチが役に立っていないとしたら、そろそろもっと大きな絵をみる時でしょう。




ハムストリングスの解剖学と機能


では、もう少し詳しく解剖学をみていきましょう。両方の腿裏には3つのハムストリングスが走っています。半膜様筋、半腱様筋、そして大腿二頭筋です。

半膜様筋、半腱様筋、そして大腿二頭筋の長頭は骨盤の両側の基部にある骨の出っ張りである坐骨結節から始まっており、大腿二頭筋の短頭は大腿骨から始まっています。ハムストリングスは大腿骨の後部を走って膝関節を通り、下腿骨に入っています。


大腿四頭筋  半腱様筋  半膜様筋     


膝の裏を触ると、3つの繊維質の腱を感じることでしょう。膝内側には半膜様筋と半腱様筋(脛の大きな方の骨である脛骨に繋がっています)が並んであり、膝外側には大腿二頭筋の一本の腱があります(脛の小さな方の骨である腓骨に繋がっています)。

解剖学を覚える必要はありませんが、これらの筋肉の通り道をイメージすることはこれらの機能を理解するのに役たちます。ハムストリングスが収縮する時、以下の2つの動きが起こります。

1. 股関節伸展ー後屈やランジをする時など、大腿骨を骨盤の後ろへ動かす動き。股関節伸展では、ハムストリングス(大腿二頭筋の短頭は別)は、骨盤の後ろにある大臀筋を補助します。これらに対する拮抗筋は通常「股関節屈筋」と呼ばれ、腸腰筋や大腿直筋(股関節を通る唯一の四頭筋)が含まれます。

2. 膝屈曲ー膝を曲げて脛骨と腓骨を坐骨に近づける動き。膝屈曲では、ハムストリングスは、他の協力筋とともにふくらはぎの表面にある腓腹筋を補助します。これらに対するこの動きでの拮抗筋は腿前にある四頭筋、大腿直筋、外側広筋、中間広筋と内側広筋です。


さて解剖学がわかったところで、膝を曲げて股関節を伸展させるとどのようにハムストリングスが収縮し、反対の動き(股関節を屈曲して膝を伸展する)がハムストリングスをどのように伸ばすかをイメージしてみてください。そしてどのようにハムストリングスが骨盤や下肢に繋がっており、股関節や膝間接の機能にだけでなく、骨盤の位置(つまりは腰へも影響)にも影響することがわかるでしょう。

他のあらゆる筋肉と同じく、ハムストリングスは安定性と可動性のバランスが取れている時に最適に働き、あらゆる位置において様々な負荷のもと役割を果たすことができ、そして休むことができるのです。残念ながら、私たちのライフスタイルや姿勢の癖、動きのパターンなどによって、少しの努力でハムストリングスの安定性や可動性のバランスをとることが難しくなっています。



ハムストリングスの機能障害


ハムストリングスを健康に保つのを困難にする大きな要因は、座っている時間の長さにあります。この習慣は人類の進化という面で比較的新しいものですが、慢性的にハムストリングスが短くなり、弱くなり、血流を制限します。ヨガのほとんどはハムストリングスの強さよりも柔軟性に重点を置いているため、ヨガの練習も必ずとも助けにはなりません。

ハムストリングスのバランスの崩れは、単に腿裏の局部的な緊張だけに関連があるわけではありません。過剰に短く硬くなったハムストリングスは、骨盤の上部を後方へ引き骨盤が後傾します。過剰に長く弱いハムストリングスは逆に骨盤上部が前方に傾くのを止められず骨盤が前傾します。それ自体では何も起こりませんが、骨盤の位置が変われば、腰椎の位置や股関節屈筋の長さが変わります。骨盤の前傾が腰椎の自然なカーブを深め、仙腸関節に余分な荷重がかかり、股関節屈筋が短くなります。後傾は腰椎カーブを平らにし(腰の椎間板に余分な負荷がかかります)、股関節屈曲が長くなります。どちらの傾きも、習慣的になれば腰椎、仙腸関節、膝に影響を与えるのです。

So what can we do to help the hamstrings achieve elasticity and resilience and to be able to meet the demands we place on them without strain?
では、ハムストリングスの柔軟性と弾力性を取り戻し、傷めることなく必要に応じられるようになるには、何ができるのでしょう?
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<日記>最高のプレゼント

今年もあと二週間となり、そろそろレギュラークラスも今年の最後を迎えています。

私がシンガポールに住んでいた頃、両親や友人や親類を始めとして
いろんな人にヨガの良さをシェアしていきたい、役に立ちたいと思いたち
英語で授業を受け試験を受け論文を書き、無事ヨガセラピストの資格を取って
帰国後も何週間かドクターの元でフィールドワークを続けました。
教え始めた頃は手探りで至らないところも多々あったと思いますが
生徒さんたちがみなさん急にお休みになったりして落ち込んだこともありながらも
「なんくるないさ」と前を向いてマイペースで続けてきました。
そんな私に、ちょうど昨年の冬あたりから通っていただいている生徒さんから今日は大きな言葉のプレゼントをいただきました。


ずっと体調が優れず精神的にも不安定だったその方は、
少しでも体力をつけようと参加してくだったのが始めでした。
体調が悪かったり都合がつかなかったりでお休みされることももちろんありましたが
振り返ってみると、ほとんど毎週通ってくださっています。
お付き合いが長くなってくると、抱えてらっしゃる悩みや問題も見えてきて
どうすればよいのか私のできる範囲で色々と調べつつ
でもご無理のないようにと一所懸命向き合ってきました。
で、今年最後のクラスが終わったとき、こうおっしゃったんです。

「今年一年はヨガのおかげでほんとに元気に過ごせました。前はしんどくて何もできなかったんですけど、今はいろんなことができるようになって忙しくって(笑)。よかったです、ヨガしてみて。全てが良い方になってきてます」

ああ、少なくとも私がヨガをお伝えしていることで、少し幸せになってくださった方がいらっしゃるのだの思うと泣きそうになりました。(実際には泣いてませんけどネ)
こうしてなによりも「幸せ」を共有できるって
なんて私はラッキーなんだろうと感謝の気持ちでいっぱいになりました。


ヨガといえば、格好のいいポーズだったりファッションだったりが前面に押し出されていることが多いですが、私にとってのヨガは畳一枚のスペースでそして自分のペースで一人ででも行えるお金のかからない心と身体の健康法なんです。そんないいものをみんなでシェアしないなんて勿体無いと思うんです。そんな思いを持ちながら、これからも Happy をもっともっとシェアしていこうと改めて思いました。本当に感謝です。







2018年12月14日金曜日

ヨガをしている時の脳
This is Your Brain on Yoga


Psychology Todayの記事からです。
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習慣的なヨガが脳の作用を変え幸福感に影響する


もしいつもの平日、夜のだいたい8:30ごろに私を見つけたら、きっとスパンデックスを着て汗まみれで、同じく汗まみれの薄着の人たちでいっぱいの蒸し暑く薄暗い部屋で、ヘトヘトになっているでしょう。音楽はガンガンなっているけれど、私の耳には心臓の音しか聞こえません。ふらふらして疲れ切っています。我慢できないほどではないにしても不快感を感じています。これの中毒になっていると話すと、みんな目を丸くして精神不安定なのじゃないかと尋ねます。「そんなことをやりたいなんて理解できない!」と。

実際に試したことのない人からは、いつもこんな風に言われるのです。

ヨガはこの25年で、健康志向のヤッピーの流行にすぎないところからほとんどの医師から勧められるまでになりました。そのアドバイスはつまり、ヨガのアサナ(ポーズ)を通して体力や柔軟性を向上させるのは、体と心の健康に大変よいというものです。どんくさい新米ヨギとしてのこの3年間で、私もこれは事実だとわかりました。「ヨガの会員は、ジムとセラピストとカイロプラクティックをひとつにしたくらいの価値があるよ」とよく冗談をいうほどです。

「つまり」とあなたは言うでしょう。「単に一般的に習慣的なエクササイズっていうことでしょ?」それに私はこう答えます。「その通り!習慣的などんなエクササイズもとても大きな効果がある」しかし、様々なタイプのエクササイズの医療への応用や神経生物学の最近の研究では、ヨガが他の有酸素運動よりも、特に感情の安定と幸福感という面で大きな利点があることを示しているようです。

ヨガの練習とは何をするのかについて短く説明されたとしたら、おそらくなぜ鬱っぽい症状を防止したり気分安定につながるか直感的にわかるでしょう。初めはあれこれとつまらないストレッチに思えるでしょうが、1、2週間ほど頑張れば体と感情の注意深いコントロールを得ることにその本質があると気づくでしょう。忍耐強く自分と向き合い、プライドを飲み込み、やりすぎないでその時の最善をつくすよう促されるのです。私自身、もっとも体にストレスがあるポーズの際、呼吸と集中が助けてくれることに気づいてきました。(体重が減って気分が最高ってことも言いましたっけ?減量して最高な気分になるよ!)クラスで身体的にきついポーズの間、欲求不満や不快感などの感情をコントロールできるようになることは、実生活でのストレスや困難における感情への素晴らしいトレーニングなのだとインストラクターがよく言うのを聞きます。


そして知っていますか?これまでの研究の結果はまさにそうだと示しているのです。ウォーキングなど比較的強度の低い他の運動に比べ、ヨガは不安を減少させ鬱の症状を和らげることがわかっています。

ある研究では、ストレスや不安の治療の結果がヨガと認知行動療法で大きな違いがありませんでした。

つまり、これは事実であるようです。でも、どのような仕組みなのでしょう?気分へのエクササイズの化学的な効果はあまりよくわかっていません。いわゆる「ランナーズ・ハイ」がエンドルフィンに関係がないらしく、それよりも内的な大麻類のせいかもしれないということを科学者らが発見したのもたった数年前のことです(そう、体が自分で作るホームメイドマリファナです!)。

しかし、近年のヨガの神経化学研究では、ヨガが抗不安性の効果を持つかもしれないという手がかりが得られました。任意に抽出、制御した磁気共鳴スペクトロスコピーのストリーター氏らの研究で、優しいヨガの週間的な実践(ウォーキングではなく)で、脳の視床内にGABAと呼ばれる化学物質が出ることが示されたのです。

GABAとは脳内の「偉大なる抑制者」のようなもので、神経活動を抑える中心的役割を持っています。ベンゾジアゼピンなど昔からの抗不安薬は、中枢神経系にGABAを出させるのを促すことで効いています。ヨガを行っていた被験者らの脳内には、とても高い値のGABAが見られました。研究ではまた、ヨガの直前とヨガ後1時間のGABAレベルを比較したところ27%の増加がありました!GABAはアルコールのように一時的に同じ化学物質受容体と結合します。お酒を楽しむ時に感じるリラックスし不安が減る感覚は、GABAが受容体と結合するおかげなのです。ストリーターたちの発見は、ヨガの瞑想的なストレッチと呼吸が落ち着かせる化学物質を出すよう脳に信号を送り、それによりヨガ後何時間もの間、気分に影響することを示唆しています。そうしたメカニズムの詳細については研究はまだ初期段階ですが、脳内のコネクションが化学的な信号を使ってその強さや形状をまさに変化させることはわかっています。習慣的なヨガの実践でGABAが放出されることでこの化学物質のベースラインが上がり、脳自体が変化して日々のストレッサーに対してもより穏やかで不安のない状態にするのかもしれません。

仕事や学校の長い1日を終えるころ、もしあなたが私のように自分に「さて、ビールにするかヨガにするか?」と聞くならば、ビールの穏やかさはやがて消えますがヨガの穏やかさは持続するかもしれないことを思い出してみてください。





(出典)https://www.psychologytoday.com/us/blog/quilted-science/201209/is-your-brain-yoga

2018年12月6日木曜日

アーユルヴェーダの時計 
THE AYURVEDIC CLOCK


バランスを取り戻して健康になりたいですか?
食事の時間、睡眠サイクルそしてドーシャの活動サイクルを知ることが役立ちますよ。

私たちの1日は、仕事の時間、自由時間、睡眠時間に分けられ、そして多くの場合仕事の時間が長いでしょう。しかしアーユルヴェーダでは、異なった見方をします。1日を6時間ごとにわけ、3つのドーシャが昼と夜のどちらにも現れます。バランスの取れた生活をし健康を謳歌するには、古いアーユルヴェーダの時計のリズムに合わせる必要があります。

この象徴的な時計によれば、1日は日の出とともに始まり、冷たく重い、土のカパ・ドーシャの時間が午前6時から10時まで続きます。日中の午前10時から午後2時は熱く鋭い、火の「消化の王様」ピッタ・ドーシャに属します。軽く乾いた、空気のヴァータは、午後二2時から6時までを司り、その後は同じサイクルを繰り返します。


起きて輝く


時計と合わせるには、ヴァータが力強い日の出前に起床しなければなりません。陽が昇れば、私たちは、カパの土と水の時間に入ります。午前6時にアラームが鳴り目が覚めると気持ちがいいでしょうが、7時までに起きないと密度が高く鈍く重いカパが、体にも精神にも影響を与え始めます。ですから、鳥たちの前に夜明けに起きるのが理想なのです(伝統的には午前5:30、時間帯によれば6時かも)。そのように自然の光のリズムで1日を始められ、ヴァータの活発で明るく天空の質の恩恵が得られ、それが瞑想の助けにあるでしょう。



正午に主な食事を


アーユルヴェーダでは、主な食事をピッタの火が優勢な正午に摂るようにすすめています。ピッタは、食事や思考、感情など全てを消化する能力を助けます。消化の代謝においての消化は(アグニ)、日中にもっともよく働きます。時間が遅くなるにつれ、食事を消化するのが難しくなります。夜にたくさん食べるのも同じことが言えます。就寝のだいぶ前に体が食物の消化を終えているよう、アーユルヴェーダでは代わりに軽い食事を摂ることを勧めています。そうすると、起きている状態からより安らかな状態(「軽い眠り」)に移行することができ、眠りの精がちゃんと働いてくれるでしょう。



徐々にくつろいで


夕方の6時ころには、再度ヴァータからカパに移行します。日の出後に起きにくくさせて今う鈍く遅く安定して重いカパのエネルギーが、今度は眠りへと誘います。(カパの人は大抵の場合早く就寝します。)波長が合えば、体と精神の疲労を感じ始め、よい眠りへの欲求を感じるでしょう。



第二の波に抵抗する


午後10時ごろには、眠いカパから夜中のランプであるピッタへと移行します。体はこの4時間(午後10時から午前2時)を使って、経験や感情、日中の残った食事などを消化し、修復し力を取り戻します。ピッタは火のように熱いため、カパ時間の眠さを通り越して遅くまで起きていると、第二の波をとらえてずっと起きたままになり、よい眠りへの希望とは決別しなければなりません。

やっと眠っても眠り続けるのは難しいのです。というのもピッタはヴァータへと代わり、軽く微細でより動きのあるものへとなります。事実、アーユルヴェーダの時計では、午前2時ごろには私たちは「起床」のプロセスを始めるのです。もしそのまま夜明けまで落ち着かなければ、体や心、深い生命力であるオージャスを支える眠りの恩恵を受けられません。

控えめに言っても、忙しい現代の暮らしをアーユルヴェーダの時計に合わせるのは困難なことですが、その努力によって大きな利益が得られるでしょう。現代の健康問題の多く、不眠症や胸焼け、不安症、鬱などは生活のバランスの崩れに関係しています。食事の時間、睡眠サイクル、一般的な活動とドーシャのサイクルを合わせることが、そうしたバランスと健康を取り戻すのに役立ちます。



アーユルヴェーダの睡眠習慣


午後10時までに就寝するため、以下を試しましょう。
  1. 就寝の最低1時間前にテレビは消す。 
  2. オンラインの何もかも我慢する、買い物、ツイッター、フェイスブック、ニュース、仕事も。
  3. その時間は、反省や日記、レストラティブヨガや瞑想に使う。
  4. フット・マッサージをする。ラベンダーの香りの暖かいごま油を足に塗り込んで古いソックスを履く。
  5. 好きな深いリラックスできるCDやヨガ・ニードラのCDをかけて(早い時間に)、安らぎ神経のトゲをとる。就寝直前のヨガ・ニードラはエネルギーをリフレッシュして深い眠りを妨げます。
  6. 眠りを誘うハーブで香りをつけた温かいミルクを作る。オーガニックの幸せな牛からとったミルク120ー180ccをソースパンに入れ、1、2つまみのシナモン、カルダモン、ナツメグ、サフランにティースプーン1杯のギーを入れて3分ほど煮る。火からおろして1分ほどなじませる。ティースプーン1杯前後のロー・ハニーで味を足す。この温かい万能薬をベッドまで持って行き、ゆっくりとすすって素晴らしい眠りにつきましょう。




2018年12月3日月曜日

ヨガは慢性疼痛を緩和する? 
How Does Yoga Relieve Chronic Pain?

Psychology Todayの少し前の記事からです。
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ヨガは慢性疼痛と逆の効果を脳に与える


慢性疼痛は脳の構造の変化させるきっかけとなり、鬱や不安、認知機能障害などに繋がる。ヨガは逆の効果を脳に与え、慢性疼痛を解消する可能性があるという新しい研究がある。

慢性疼痛は脳の構造を変えてしまう。脳画像診断の研究では、脳の灰白質の量そして白質の相互関係を変えてしまうことを示している。灰白質には特定の脳領域ニューロンが集まっており、白室は様々な脳領域間の伝達ラインを形成している。

2015年5月にパームスプリングスで行われた「American Pain Society」年次会議で、「慢性疼痛の長期的結果に対する環境の影響」という講義が行われ、国立衛生研究所のM・キャサリン・ブッシュネルが慢性疼痛を緩和するヨガの効能についての最新研究レポートを発表した。

米国立衛生研究所(NIH)にある国立代替統合医療センター(NCCIH)の科学責任者であるキャサリン・ブッシュネル博士は、痛みを知覚、緩和、管理する脳の役割についてのプログラムを監督している。プレスリリースでは、「ヨガは慢性疼痛と逆の影響を脳に与える」と研究結果をまとめている。

ブッシュウェルと彼女の同僚たちは、薬物以外の痛みの治療法の発見を目的とした研究を行なっている。慢性疼痛は「精神と体の訓練」を通して防止、後退させることができることを彼らは発見している。ヨガの練習や瞑想などのライフスタイルが、痛覚を減少させ、加齢による灰白質量の減少を抑える効果を示す一方で、白質の質を保つのに役立つこともわかっている。

灰白質量の減少は、記憶障害、感情の問題、認知機能減少などを引き起こす。否定的感情や痛覚に関連する脳領域間の白質束が極度に結合することによって、対応する精神状態に物理的に結合してしまう可能性があるのだ。

研究者らは、拡散テンソル画像を使用し脳の灰白質量と白質束結合を分析した。ブッシュネルは、人の脳の痛みに対する耐性と限界の変化について最重要要素なのはおそらく島皮質の増加量と結合だろうと仮定している。

ヨガは、神経発生を通した灰白質の増加させ、神経可塑性を通した白質結合を強化するようである。痛み減少の脳への影響を評価し、島皮質や大脳皮質の内部組織での灰白質の変化が慢性疼痛に対し最も重要な役割を果たしているとブッシュネルは考えている。

「島皮質の灰白質のサイズは痛み耐性に関係しており、島皮質灰白質の増加はヨガの実践によって得ることができる」とブッシュネルは言う。彼女によれば、痛みの調整に関連するものなど複数の脳領域で、ヨガの実践者にはコントロール・グループよりも多くの灰白質があるという。

脳形態の変化は、気分障害や慢性疼痛の他の感情に関する認識共存疾患と関連する可能性がある。慢性疼痛の人々にとって朗報なのは、「精神と肉体」の訓練に灰白質を保護する効果があり、それが慢性疼痛の神経解剖学的影響を中和するかもしれないということだ。あるヨギたちの灰白質の増加がヨガの経験の長さに比例していることは、ヨガと灰白質増加の間に因果関係があることを示唆している。齧歯類の研究では、ストレスレベルが増加すると疼痛顕示行為に変化がみられ、反対に社会的および身体的によい環境が痛みに関連する脳の変化を減少させることがわかっている。これらの動物と人間両方に見られる結果が示すのは、慢性疼痛は、脳内の痛み調整システムを向上する環境要素の変更やライフスタイルにより緩和し防止することができるということだ。



ヨガは灰白質量を増加し白質を結合する


ブッシュネルはシャンタル・ヴィルムルとともにヨガの慢性疼痛への効果を研究してきた。彼らの最近の研究では、少なくとも6年ヨガを日常的に実践しているヨギたちと、ヨガはしてないが年齢、性別、学歴、他の運動など同じ条件の健康な人々と比較した。

ブッシュネルとヴィルムルは、一般の人とヨガ実践者たちの間に灰白質と白質に大きな違いがあることを発見した。ブッシュネルはこう説明する。


「脳解剖学研究からヨガの実践者は多くの領域で灰白質が多いことがわかりました。年をとると灰白質は減少しますが、ヨガ実践者にはそれが見られず、ヨガに神経保護効果があることを示唆しています。ヨガ実践者には痛み耐性に著しい増加がみられ、そして痛みの閾値にも変化がありました」


ヴィルムルの理論では、ヨガの効果の多くは、慢性疼痛に関係のある自律神経とストレス軽減に関連している可能性がある。自律神経には、交感神経系と副交感神経系の2つがある。ヴィルムルはまた、ヨガ実践者がどのように痛みの予兆に対処する異なった方法を持つのかについて詳しく調べている。

痛みを感じている時は、大抵の場合、交感神経系の「戦うか逃げるか」の反応を引き起こしコルチゾールのレベルが急上昇する。反対に、ヨギが痛みを予感した時には副交感神経系が活性化することをヴィルムルは観察している。これが、「戦うか逃げるか」反応とは反対の「優しく接する」「休んで消化する」反応を作り出すのだ。


結論:ヨガは慢性疼痛のための薬を使わない治療として有効な選択である


慢性疼痛の薬物療法の多くは、オピオイド系であり中毒性が高い。幸運なことに、ヨガや瞑想などの薬物以外の方法が、痛みの緩和という面で脳に対して効果があることがわかってきた。長期的に見れば、ヨガなど痛みの代替療法は、慢性疼痛にとって薬物治療よりも効果的である可能性があるのだ。


(出典)https://www.psychologytoday.com/intl/blog/the-athletes-way/201505/how-does-yoga-relieve-chronic-pain