2019年3月23日土曜日

多忙すぎる?自分の生き方を創造するヒント Vol.1
Crazy Busy? Tips to Create the Life You Want


今回は精神科医で注意欠陥障害の専門家 Edward M. Hallowell の記事からです。ユーモアを交えながらどうすれば日々のストレスから解放されるのかについて書かれています。ゆるーい気分で読んでみてください。
(この記事を読んでる時間が無駄!?)

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どのように人生のコントロールを失うのか、どうすればいいのか


昨年の夏、僕たち家族は古いダイヤル式の電話しかない湖のほとりのコテージに滞在した。あまりに人里離れていたので携帯が繋がらないそのコテージにあったのは、ピーチ色でへたれたソファ脇のテーブルに置かれたボロボロの電話帳の上にあった真っ黒の電話だけだった。

その電話のダイヤルを初めて回したときはこうだった。それは朝。目覚めに泳いだ後コーヒーを淹れソファに腰掛け、友人に子供と一緒に私の家族と一緒にマイナーリーグの野球を見に行かないかと電話で誘うつもりだった。緊急ではないし急ぐこともなかった。

ダイヤルを回し始めたばかりで僕の中に短気の火が点いた。一度回すたびにダイヤルが元に戻るのを待たなければならない。それはものすごくゆっくりだった!それから、錆びた金属の引き出しみたいに、元に戻るたびいらいらする音を出した。5、4、3、2…。なんとか全ての番号を回し終えるまでに、僕はすっかり腹を立てていた。こんなに鈍い電話に我慢できる人間なんているだろうか?いらいらが爆発した。

そこでハッと気づいた。これは馬鹿げている。友人と話し終えた後、もう一度彼の番号を回してみてどれくらい時間がかかるかを試してみた。きっかり11秒。そのゆっくりとした11秒間はまるで命がかかっているかのように途方もなく僕を苛立たせたのだ。なんという馬鹿になってしまったんだろう。なんてイマドキな人間なんだろう。無意識の苛立ちに恥ずかしくなった。急ぐ必要がない時でさえ急いでしまう人間になってしまっていた。

休暇の毎日が過ぎるにつれ、僕は変わり始めた。あの古い電話が教えてくれたことに感謝し始めた。動きの悪い引き出しのような電話の音が、長い年月を経てもなお頑強に働き続ける古い風車の音のように聞こえるようになった。ブッダのごとくサイドテーブルにゆったりと落ち着いた電話が、そこにまだ在るうちに、夏を、子供達の幼少期を、円熟した結婚生活を、人生のよい時間を、ゆっくりと楽しみなさいと戒めてくれる賢明な助言だと考えるようになったのだ。



何に忙しいのか?


これまでになく今が忙しく感じていて、もうこれ以上ペースを保てるのかわからないと思っているのはあなただけではない。携帯電話、24時間ひっきりなしに来るメール、ショートメッセージ、忙しい朝、子供のサッカー試合の果てしない送り迎え、慌ただしく食べる食事、そして長い勤務時間。そうなろうと思ってもいないしどこから始まったのかもわからないまま、自分では作ってもいないし(少なくともそのつもりはない)嫌だと思っている慌ただしさの中に僕たちは生きている。

忙しいことは、本質的に悪いことではない。大事なことをしていて忙しいなら、忙しいことは至福だ。あなたに合った人生のリズムを見つけたということだ。この世界は可能性に満ち溢れていて、そのエネルギーはどんどん広がっていく。その熱狂に取り憑かれたら毎日ベッドから飛び起きて忙しくしていたいと思うだろう。それは、細かいことに必死になっているわけでも家族をなんとか養っていくためではなく、この人生に恋をしているからだ。

だけど、忙しすぎて自分にとって一番大事なことができなくなっていたり、ダイヤル式の電話に腹を立てるような賢明ではないことをしてしまっていれば、その忙しさは問題とななる。

何が自分にとって一番大切なのかを決定すること、そしてそれに集中することは簡単ではない。なぜなら、やるべきことの選択はこれまでになく幅広く、常に時間、注意力や精神力を奪ってしまうからだ。うまく立ち回らなければどんどん奪われてしまい、本当にやりたいことのための時間がどんどん少なくなっていく。

どうすれば、この狂気の世界を、逆らうことなくあなたのためになるようにできるのだろう?僕は、この現代社会の奇妙さ(部分的に新しい技術によってもたらされた状況や感情といったもの)の表現をいくつか作って(作り直して)みた。これらが表現する問題に気づくことそのものが、あるいはその問題に対処するすべになるかもしれない。ではいくつか提案してみよう。



スクリーン・サッキング(Screensucking)


コンピューター、ビデオゲーム、テレビ、ブラックベリーでもなんでも、スクリーンに向かって時間を浪費すること。不思議な力によって、仕事が終わってたり番組が終わった後も長時間ぼんやりとスクリーンを見続け、特に楽しくもないのに接続や電源を切ったりできない。

例文:「論文を書くつもりだったんだけど、代わりに午後の間ずっとスクリーン・サッキングしてた」とか「博士論文を終えていないのは、実際に研究をしているふりをしながらスクリーン・サッキングに多くの時間を費やしてしまったからだ」

ヒント:故意でしているわけではないので解決するのが難しい問題。残念ながらスクリーン・サッキングに対抗するパッチなない。第一歩は洞察力だ。ログオンしたり電源を入れる度に自分が影響を受けやすいということに気づくこと。そうして構造の変化を起こす、環境や行動を。接続を切ろうと思う時間に設定したアラーム時計をマシーンの横に置く、数クリーンを違う部屋に移す、10分ごとに音が鳴るようコンピューターをプログラムするなど。独創的に自分に合った方法を考えよう。




ヒルとユリ(Leeches and Lilies)


ヒルとは、あなたの時間や注意力を無駄にさせ、疲弊させ、そもそもこの一連の作業をなぜ始めたのだろうと思わせるような人々や課題を指す。ユリとは、それに取り組んでいると満足感が得られ生きていることそして今していることに喜びを感じさせる人々や課題のことだ。

ヒント:完了させようとしたり(課題の場合)、彼らをハッピーにさせたり(人の場合)するのをやめて、できるだけ多くのヒルを取り除こう。習慣や罪悪感、強情さ、恐怖などのせいで難しいかもしれない。あなた自身が友人らしく振る舞わない誰かの「友人」だとしたら、その人に他の誰かの時間を無駄にさせたり、誰かの気分を害させるようにしてみよう。失敗した課題をなんとか頑固に成功させようしているのなら、時間を使う以外にどれくらい効果的になれるかを考えてみよう。僕らは、得意なことにエネルギーを注ぐより不得意なことがうまくなるよう何年も無駄にすることが多い。あなたがヒルに耐えることが普通になっているなら、目を覚ませ!この惑星で持っている短い時間を有効に使うことを自分自身に許そう。そしてできるだけユリを育てよう。



死の矢(Doomdarts)


僕たちのほとんどが容易に対処できる以上のものを引き受けてしまうため、全部に絶えず注意を払うことは特に難しい。死の矢とは、毒矢みたいに意識に突然入ってくる忘れていた義務を表現する僕の言葉だ。自分の車で楽しくドライブしていたり楽しく夕飯を作っている最中に、どこからともなく忘れていた義務(夫の誕生日プレゼントとか、書くと約束した友達の提案書の見直しとか)が意識に突き刺ささってその毒があなたの中に広がり、数分の間にあなたは不安で取り乱してしまう。

ヒント:死の矢が当たったらすぐ、その問題にどう対処するか頭の中で計画を立てよう。「後で対応しよう」というのは計画ではない。死の矢は刺さったままで毒を吐き続ける。いつどのように対応するかを自分に言い聞かせ、内なる監理者にその計画にOKを出させる必要がある。そうすれば矢は抜け落ち、痛みなく前に進むことができる。



メールの声(EMV, or E-Mail Voice)


電話で話している時にメールを読んでいると、声が奇妙になる。わずかだが、それは間違えようもない。MITメディア・ラボの賢い人たちは、携帯電話で話しているときに電気的に注意をモニターするプログラムを開発した。Jerk-O-Meter(訳注:びっくりメーター?)と呼ばれるその機械は、まだ明瞭ではなくちょっと冗談めいて聞こえる。APレポートによれば、「会話にどれほど集中しているかを0から100のスケールで人を評価するため、話しのパターンや声のトーンを分析する」

ヒント:無作法なことだが、EMVは日課のように毎日起こる。あなたに話しかけている間なにか別のことをさせたくなければ、ただ穏やかにそれを指摘すればいい。それだけでその人はこちらに注意を戻してくれるだろう。あなた自身がやっているとすれば、自分にされている時どんなに不快かを考えよう。あるいは、同時にメールを書いている誰かに話しかけてみてもいい。



ギガ罪悪感(Gigaguilt)


十分やり切っていないという罪悪感は今に始まったものではない。ジョン・ミルトンは、盲目のせいで力が弱っている自分への罪悪感を感じ僕たちや彼自身にこう言っている。「ただ立って待っている人だけが満たされる」あの輝かしい罪悪感の見本サミュエル・ジョンソンは「自分ができる限り多くのことをしなければならない人は誰もいない」と彼自身を安心させた。しかし、コンピューター技術とそのギガバイトのメモリは、直接的にも間接的にも、1人の人間が絶えず把握しておかなければならない事柄の数をあまりにも増やしてしまっていて(大きい数字というより無限大)、それを全部把握出来るとはずだと思っているのだが(とても莫大で実質的には無限大)、何かを見失ってしまう可能性はうなぎ登りだ。僕らのほとんどにとってそれは100%確実だ。こうして何かを忘れたり誰かを失望させたりするギガ罪悪感をもたらすのだが、何もかも把握しておくことなど不可能で誰をもを喜ばせる時間を持つことも同様に不可能だとわかっていてもなおそうなのだ。

ヒント:多くの辛い感情のように、ギガ罪悪感には理屈に合っているわけではない。不可能を自分に期待するなんて明らかに理屈に合わないのだが、僕らの多くがそうしている。僕が知る最善の方法は体系をもった理屈を立てることだ。何に対処して何にしないかを指示してくれるようなシステムを作る。そうすれば、毎回そこで決定する必要がなくなる。例えば、自発的な委員会に参加するのは一回につきひとつだけにすると決めることができる。あるいは一度に受けるのは、ある一定数の依頼人、患者、顧客だけにする。あるいは、夕食の間は絶対に電話に出ないとか。母親に電話する時間帯を決めておいて母親に電話がくるのだとわからせておけば、他の時間は罪悪感を感じることはない。

自分に一番大事なことに時間を残しておく。そして自分に大事なことをしている時に誰の役にも立っていないという罪悪感を感じるのなら、自分に最も大事なことをする時間がないなら他人にとってもあまり役に立たないと思い出そう。気分が落ち込み、疲弊し、短気で怒りっぽく、役に立たなくなってしまうだろう。自分自身か誰かと話しをして、あなたはみんなのためになにもかもをすることはできないし、自分がしたいと思うほどですらできないという事実を折り合いをつけよう。



クズ(Kudzu)


東南アジアから米国にうっかり入ってきてしまったこの草は、30m以上も深く根を張って駆除することができない。僕はクズという言葉を「グチャグチャの山」につけたが、これは、僕らの速度をのろくさせるそこら中の人々からの絶え間ない不意の小さな依頼のことで、働いているところ住んでいるところ構わず侵略してきて止めることも駆除することもできない。メールにはびこっているスパム、郵便ポストに溢れかえる広告、そうしないように懸命になっているにも関わらずどんどん入ってくるどうでもいい情報などなど。

ヒント:物理的なクズへの最良の解毒剤は、管理者らが呼ぶところのOHIOだ(Only Handle It Once=処理するのは一回だけ)。書類や会報など有形のものに対しては、できる限り(1)すぐに返事する(2)名前をつけたファイルに入れる(3)捨てる。大抵の場合、(3)が一番だ。

あちこちからどんどんやって来る依頼への最良の解毒剤は遮断、誰からも連絡が来ないようにする。聞いてなければ、それをしていなくても罪悪感を感じることはない。自分に合った形の遮断方法を作ろう。誰にでもドアを開けておくのは、とにかくやめておこう。10年前にはドアを開けておくのはいいことだったが、今やそれはフーバー・ダム(訳注:コロラド川の巨大なダム)に向けてるようなものだ。








(出典)https://yogainternational.com/article/view/crazy-busy-tips-to-create-the-life-you-want?
Edward M. Hallowell, MD, a psychiatrist and ADD expert, is co-author of the best-selling Driven to Distraction (drhallowell.com).

2019年3月20日水曜日

ヨガは高齢女性の尿もれを防ぐ 
Yoga May Reduce Urinary Incontinence in Older Women

高齢になってくると、外から見えない筋肉もまた衰えてきます。
先日、80才台の生徒さんが内臓のヘルニアで手術を受けられたケースはより深刻なものでしたが、これもまた深層筋の衰えも原因の1つでしょう。そんなに深刻なものではなくても、女性で尿もれを経験したことのある方はかなり多いと思います。
今回は、米国でのニュースからです。
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3ヶ月間のヨガ
50歳以上の女性の尿もれの頻度を減少させるという研究



米国はカリフォルニア州サンフランシスコ大学(UCSF)の研究者らは、日常的に尿失禁があるが医療的治療を今は受けたくない任意の56人(平均年齢65歳)の女性で実験を行った。18ヶ月間に渡り任意に抽出した女性らは、3ヶ月間、週二回のアイアンガー・スタイルのヨガセラピーに参加と週一回の自宅練習を行う者と、あるいは「時間・注意管理」(time-and-attention)のために作られた特定しない筋肉のストレッチと強化プログラムを行う者に分けられた。

尿失禁頻度の変化は基準となる排泄の記録で評価し、この3ヶ月の実験では50人の女性(89%)が記入した。そのうち75%が90%を超えるグループ・クラスに参加、88%が90%以上の自宅練習を行った。その結果、ヨガ・グループでは74%、時間・注意管理グループでは51%に尿失禁頻度の減少がみられた。どちらのグループにも悪化の傾向はみられなかった。この研究は、2018年5月サンフランシスコで行われたAmerican Urological Association(米国泌尿器科学会)の年次大会で発表された。

「これらの結果は女性にとって大変期待のもてるもので、下部尿路障害の症状を減少しQOLを向上させることにより女性に大変有効で、単純に行動範囲が変えられる」と議長を務めたミーナ・ダヴルリ博士(ニューヨーク、モンテフィオーレ・ヘルス・システム)は述べた。「療法的なヨガのプログラムは、他の医療治療と比較して多くの患者が簡単に一週間の習慣に組み込むことができる大変行いやすい方法です。医師らは、失禁への最善の対策として患者と話し合う際、この素晴らしい結果を選択肢のひとつに加えることができるでしょう」



B. K. S. アイアンガーの名前から名付けられたアイアンガー・ヨガは、1970年代の初めに創設されたハタヨガのひとつで、ポーズ(アサナ)の実践における細部、正確さ、アライメントと呼吸のコントロール(プラナヤマ)に重点を置いている。体力、柔軟性、安定性がアサナを通して得られる。アイアンガー・ヨガではアサナの実践において、補助としてベルトやブロック、ブランケットなどのプロップスを使用することが多い。




(出典)https://www.hospimedica.com/womens-health/articles/294773891/yoga-may-reduce-urinary-incontinence-in-older-women.html

By HospiMedica International staff writers
Posted on 24 Jun 2018

2019年3月18日月曜日

ヨガの怪我についての10のウソ vol.2 
10 Myths About Yoga Injuries


前回からの続きです。

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ウソ その6 : 手でアジャスメントをする時、指導者は生徒の身体の抵抗によって安全でない領域まで無理をさせているという警告を受け取るはず


これは、ティーチャー・トレーニングで私が教えられたことですが、ヨガ・スクールで間違って学んだものの1つとして付け加えることができます。


これには2つの欠陥のせいだとリーフは指摘します。抵抗は常に問題の兆候というわけではなく、抵抗がなければ全て良好という明らかな印でもありません。実際、とても柔軟で全く抵抗のない人を押したり手で導いたりするのは、どちらかといえば硬い生徒を押すよりも危険である可能性があります。「非常に柔軟な生徒に圧力を加えると、関節の生理学的に正常な可動域を超える恐れがあり、それによって不安定になり痛みを生じることがあります」


彼は、下向きの犬のポーズで、生徒の腰を斜め上後方に引く時を例にあげています。「ここでの抵抗は、骨盤の前傾がなく腰椎が前弯しているあまり柔軟でない大形の男性などなら、丸まった背中を伸ばすのに有効かもしれませんし、どの方向に骨盤を動かせばいいのか彼にヒントを与えることができるでしょう」この圧力を感じないような抵抗がない生徒の場合は、すでに過剰に柔軟な関節の動きをより大きくしてしまうかもしれません。「過剰に柔軟な生徒の場合は、この良いと思われているアシストに対して身体が全く抵抗しません。この場合の圧力は適切とは言えません。もっと前傾して、過剰に腰椎を前弯させてしまう恐れがあります」

柔軟な身体へのアジャストには最大の注意を払うべきだとリーフは助言しています。限界まで深めるようなアジャスメントより、深みを制限するためにアジャスメントする方がおそらく良いでしょう。こうした柔軟な生徒には、すでに過剰に柔軟な関節を安定させることが不可欠なので、柔軟性を高めるアジャスメントよりは、弱めたバージョンのポーズで強化を促す動きをさせる口頭での指導がより効果的でしょう。



ウソ その7: 押したり引いたりしない生徒自身の努力を促すアジャスメントはいつも安全


生徒に指導者の手の中で「持ち上げ」たり「押し」たりを促すアジャスメント(大抵は筋肉を使わせるため)は、多くの場合、押したり引いたりするよりは安全です。「生徒は、インストラクターができない動きの内面の効果を感じます。しかし、アライメントがよくない状態で動きを促すと、よくない位置で筋肉収縮を行うよう指導しているかもしれません。間違ったアライメントで力を加えると怪我をする可能性があります」


そうしたよくない力は、外からもあり得ますし(指導者のせいかもしれません)、生徒自身の身体から来る内側からもあり得ます。例えば、三角のポーズで、肩が前に巻いた状態で上の手を指導者の手のひらに押すと肩を痛めることもあります。


力を入れるよう促す前に、生徒に骨を正しい位置に収めさせるには、口頭で指示してみてくださいとリーフは勧めています。例えば、肩が前に巻いていたら、肩を上にそして後ろに動かして肩甲骨を背中に引くよう指示する。(最適な肩の位置を自分の体で)デモンストレーションをする。肩がどこにあるのかわかりやすくするため壁などの補助を使う(「肩を壁まで引いて」)など。それから押すように指導しましょう。



ウソ その8: クラスで誰かが怪我をしたら指導者はいつもわかる


「私のクラスには怪我をしたことがあル人はいません」とか「私のクラスで怪我をしたことがあるのはたった1人だけです」などと確信を持って言えれば素晴らしいことです。しかし、実際には生徒の怪我を全て知ることはできません。単純に、生徒がそう言わないからです。


私の場合は、怪我をしてしまったアジャスメントを受けても黙っていました。先生の気分を害したくなかったし、どんな方法でも非難したくなかったからです(左臀部の痛み以外は全ての面でクラスは最高だったのですから)。しかし、リーフが「その4」で指摘したように、多くの怪我はすぐには感じず、私も怪我をしたかどうか完全には確信を持てなかったのです。鳩のポーズで先生がたった一回腰を押したとき突然鋭い痛みを感じ他にも関わらず、クラスの終わりにはかすかな熱しか感じませんでした。怪我をしたとわかったのは、実に1日後のことだったのです。


私のように、先生の気分を悪くしないよう、怪我かどうか確信できないから、問題を口にするのをためらう人はいます。おそらく、行動で示して単純に二度とクラスに戻らない人もいるでしょう。どちらの場合も、指導者は知らないままです。


指導者に怪我のことを伝えるのは大切だとリーフは強く言います。「怪我を指導者に伝えることで、何が起こったのか探ることもできるし、おそらく同じことが起きるのを防ぐこともできます」指導者側は「どう感じますか(感じましたか)?」と尋ねていつもコミュニケーションを取ることができるでしょう。神経質な雰囲気を作らず生徒の行動に批判的にならず、何かよくないと感じたら伝えて欲しいと伝え、怪我をしたと言われたら受け入れましょう。(「伝えてくれてありがとう。怪我をさせてごめんなさい。その怪我に気をつけておきましょう」)



ウソ その9: ゆっくり動けばいつも安全


ゆるやかな動きをリーフは尊重します。「ヨガ・クラスで最も大きな不満を感じるのは、みんながポーズに入れる十分な時間をインストラクターが与えない時です。誰か怪我をするのではないかと不安になります」


しかし、ゆっくり動くことも万能の解決策というわけではないと彼は認めています。「動きが間違って行われていると、どんなにゆっくりでも痛めることはあります」骨が正しい方向へ向いていないこと(例えば、右膝が右足の中心線の方向に向いていないなど)で怪我が起こるとすれば、ゆっくり動いたとしても、右膝が自動的に右足の中心線方向に向くとは限りません。ゆっくりした動きが与えてくれるのは、膝の位置に気づいて正す時間をなのです。


生徒も指導者も、ゆっくり動いてどんなポーズもどんな移行もアライメントにマインドフルであり続けるべきだとリーフは勧めています。




ウソ その10: 昔の怪我は過去のもの!(心配無用で先生にも言わなくていい)

リーフによれば、小さな怪我は完全に治癒する可能性がありますが、そうでない可能性もあります。過去に怪我したり脆くなった体の部分は、現在もとても脆い可能性が高いのです。


「ヨガの指導者も含め、どんな活動的な大人にも、『アキレスの踵』と言われるような脆い箇所が体にあり、痛みや捻髪音(音)、動きや強さ、連携の制限があるものです。これは、昔の骨折や後遺症、運動経験、幼少期、スポーツの怪我などの結果なのです」


様々な理由により、そうした場所は再び怪我をしやすいのです。まず「傷ついた組織は柔軟にならないので、また怪我をしやすくなります」第二に、怪我が完全に治癒していても、怪我の元になった間違った動きのパターン、最適とは言えないアライメントをまだ行なっている可能性があります。(右膝は治っていても、いまだに右足の中心線の方向に向いていないかもれません。)第三に、その場所からの反応をあまり感じなくなっているかもしれません。「以前に怪我をした手足の自己受容の感覚は小さくなっていることが普通です。つまり、注意を向けていないと感じないこともあるのです」これは、痛みやチクチク感などの警告がはっきりとしないかもしれないことを意味します。この脆くなった箇所には(はっきりとした警告を出しているかどうかに関わらず)、全てのヨガクラスで気をつけなければならないのです。「例えば、同じ足首をなんども挫くなら、そこが気をつけなければならない「弱い結合部」で、特にバランスポーズや片足のダウンドッグなどで足に負荷をかける時には注意が必要です。仙腸関節の痛みや過度の柔軟性があったなら、常に非対称のポーズには注意するべきでしょう」


脆い部分への気づきを持ち続けることに加え、インストラクターに過去の怪我(現在の怪我だけでなく)について知らせることをリーフは勧めています。特に過去の後遺症が繰り返されたり深刻な場合には必要でしょう。そのように、その部分に注意するよう指導者が力になり、少なくともそこへの圧力を避け、そしておそらくは特定のポーズを変更したりしないようにしたり助言をしてくれるはずです。




危険を避ける

上記にあげた提案の多くは(正常でない感覚に気をつける、ゆっくり動く、アライメントだけでなく今の状態や制限に常に気をつける、生徒と指導者が明確にコミュニケーションする)、リスクを最小限にするために大変重要です。しかし、これらは決して確実というわけではありません。

「ヨガクラスでも生活のなかでも、怪我を予防する魔法の方法などありません」とリーフは締めくくります。しかし、これがヨガをしないという理由にはならないと彼は思っています。結局のところ「何をするにも想定されるリスクがつきものです」

体を強くし、柔軟性を高め、心肺機能の健康促進、依存症からの回復、ストレス解消、感情や痛みからの解放、一般的な幸福感などヨガのパワーを肯定する研究が多くあるので、リーフは彼の患者らにヨガクラスに出るよう勧めることが多いそうです。彼はまた、特定の怪我からの回復に対するヨガの役割を評価しています。「ヨガ・フローやポーズなど体の左右に繰り返すリズミカルで対称的な動きは、患者が正常な運動パターンを思い出すのに効果的です。例えば、均等な重力配分で片足で歩いてばかりいた患者にはヨガが役にたつでしょう」リーフは言います。


では、ヨガクラスで怪我してしまったら?コーチやヨガティーチャーから習った「RICE」はウソではありません。リーフによれば、遅すぎる「R」や「I」に反対する声もあるけれど RICE(rest=休む、ice=冷やす、compression=圧迫、elevation=持ち上げる)はよいアドバイスです。「この理論での大きな変化は、今では「休む」ことが何週間も完全に動かさないということではないと理解していることです。つまり怪我がどれくらい深刻かにより、外傷後24時間から48時間の間、その箇所の動作を止めるというわけです。例えば、激しい痛みと腫れ、青黒い変色のある足首の捻挫には、48時間の休みが必要です。しかし、軽い捻挫の場合は、その日のうちに足首を動かし始めた方が良いでしょう」中断なく血液を凝固させる時間をとることが重要だとリーフは説明しています。

冷やすことは、治癒には関係がありません。「痛みを感じなくする効果があります。怪我のあと、1、2日は4時間おきに約10分間、怪我を直接冷やさなければなりません」さらに、圧迫包や高くあげることはどちらも腫れを防ぎます。「腫れを防げなければリハビリが長引くかもしれません」1、2日のRICEのあと、腫れや痛みが治れば、徐々に活動を再開するべきでしょう。(もちろん、怪我をしたら医師に相談しましょう。怪我の状態により特別な処置が必要になる可能性もあります)





ヨガを練習したり指導したりするときは、安全に行うようにしていたとしても常にいくらか怪我の可能性があるということを忘れないでいることが大切です。

そのためには、この不確実性に向き合いながら冷静でなければならないことを受け入れ、この世界を全てをコントロールすることなどできないことを受け入れ、そして完全性とともに不完全性をも勇気をもって受け入れなければなりません。幸いなことに、これらはヨガが私たちに教えてくれるスキルなのです。




2019年3月12日火曜日

ヨガの怪我についての10のウソ vol.1 
10 Myths About Yoga Injuries


脊椎の状態と負荷の関係が守られていれば、危険は避けられるということを前回見ましたが、今回は「怪我」についてです。

長くヨガをしていると、結構いろんな場所を怪我してしまう人が多いのに気づきます。そしてまた、それをまるで勲章のように自慢する人がいるのも事実です。が、特に歳を重ねると後遺症を引きずってしまうことも多くなりますし、怪我などしない方がいいに決まっていますよね。

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マットの上で起こる怪我を防ぎ、あなたの生徒たちを守るための魔法のような秘訣は誰もが知りたいものです。しかし、この安全への願いは、時にヨガの怪我を誤解させている可能性もあります。例えば、十分にマインドフルで(注意深く)あれば怪我は防げると信じているかもしれません。または、十分にゆっくり動けば、完璧にポーズを取れば、怪我など決してしないとか。

けれど、怪我の裏にある要因は複雑で変化に富んでいるため、全ての場合において正しい怪我の予防法と一般化するのはとても困難なのです。40年の経験を持つアトランタの理学療法士ビル・リーフは(「The Back Pain Secret」の著者)、正しいと信じたいヨガの怪我について以下の10のウソに懸念しています。



ウソ その1:ヨガは100パーセントの割合で100パーセント安全


ヨガは、いつもとは違う方法で身体を努めて動かす運動です。その局面が大変よいものである一方、時には怪我に繋がることもあります。2016年「Orthopaedic Journal of Sports Medicine」で公表されたこの研究のような)統計によれば、ヨガによる怪我(多くは筋挫傷や捻挫、骨折など)の割合が上昇しています。


しかし、どんなヨガで怪我をしたか簡単に数に出せないものもあります。どうやって怪我をしたのかよくわからないヨギ患者が多くいるとリーフは言います。「ヨガクラスで突然起こる怪我もありますが、怪我の多くはもっと漠然としています。多くは累積的で時間をかけて起こります。不安定な関節が原因の怪我は、何年間にもわたる関節の過伸展の結果起こります。よくある首や腰の問題は(ヘルニアなど)、痛みや痺れなどの症状が起こるのは何ヶ月、時には何年も後になって起こることがあります」



多くの怪我は徐々に起こるため、「ヨガの怪我」とそうでないものの間の線引きが曖昧です。ヨガの途中で初めて感じた怪我の中には、マットの外での動きのパターンによるものかもしれません(私がチャトゥランガで感じた痛みは、悪い姿勢で左肩にいつも重いバッグを持っているからかもしれません)。逆に、日常生活で感じた痛みがマットの上での動きのパターンからきているかもしれません(左肩に重いバッグをかけた時に感じる痛みは肩を前方に巻いた状態でずっとチャトゥランガをしてきたことに関係するかもしれません)。そして、腰を丸くして重い箱を繰り返し持ち上げてきたことが、ヨガクラスでの腰痛に関係するかもしれませんし、ヨガの激しい動きで脊椎に問題が起こり、洗濯カゴを持ち上げるまでそれに気づかなかっただけかもしれません。「深い屈曲(前屈)は椎間板の損傷を起こし得ますし、深い伸展(後屈)は椎間関節の損傷を起こし得ます。どちらも、何年間もの間、脊椎を支えている靭帯を摩耗させてしまいます」


ヨガが怪我に関係しており、原因となることもあるということを受け入れれば(クラスで現れることもあるし、もっと後で現れることもある)、自分自身や生徒を練習の守るための対策をとることができます。しかし、日常生活の動きがクラスで経験する怪我に関係がある場合もあるので、マットの外での気づきや注意はヨガの怪我を避けるのにも有益です。




ウソ その2: 注意深く経験豊かなヨガ指導者は絶対に怪我をさせない


軽率で経験の浅い指導者はもちろん生徒に怪我をさせてしまうことが多いでしょうが、経験豊かなヨガティーチャーでも怪我を起こしてしまうポーズを教えたりアジャスメントをしたりすることがあります。


「全ての怪我を防げる指導者などいません。怪我の可能性を下げることは誰でもできます」とリーフは言います。


リーフによれば、生徒の限界を尋ねてそれにより添い、「このヨガの練習は旅であり、ひとつとして同じ筋骨格系の経験をもった身体はないということを常に彼らに思い出させ」ることで怪我の危険を下げることができます。補助具を使った方法、ポーズのより優しいバージョンなど、例外ではなくルールとして見せることで、安全を保つことができます。重要なのは、特別に注意を払ってアジャスメントをし、ゆっくりと注意深くポーズを移行するよう指導することです。


生徒の側としては、過去の筋骨格系のどんな状態もインストラクターに知らせるべきであり、「自分の身体に責任がある。身体を大切にし、何かよくないと感じたらやめること」を常に念頭においておくべきです。




ウソ その3: 注意深く経験豊かな生徒は絶対に怪我をしない


野心家で経験不足の生徒が怪我をしやすい一方で、経験豊かな実践者であっても、私たちの多くがよく知るように、怪我をします。


「どんなコンディションのアスリートでもそうであるように、より経験豊かな実践者は初心者に比べて怪我をする可能性はとても低くなります」とリーフは言います。しかしまた、とても経験豊かな実践者でさえ今まで感じなかった身体の変化や脆さなど、あらゆる変化を感じます。


例えば「妊娠中は、ホルモン変化によって組織や靭帯が緩んでいることに経験のある生徒や指導者が気づかないこともあり、仙腸関節への非対称なストレスは避けるべきです」ヨガ・トレーニングの集中した期間の筋肉疲労もまた、経験のあるヨガ実践者が怪我しやすくなる要因だとリーフは言います。


経験に関係なく、老化によっても怪我をしやすくなります。「Orthopedic Journal of Sports Medicine(スポーツ医学整形外科ジャーナル)」に2016年に掲載された研究では、65歳以上では全般的な怪我の率が3倍でした。怪我をした人はみなヨガ初心者で野心的すぎたのでしょうか?また経験のある人たちの中には、慣れたポーズで身体が違う反応をした人がいたのでしょうか?「骨が脆くなっているため、前屈や深い後屈など極度の可動域を必要とするポーズをやめた方がいいということを、何十年も練習してきた骨粗鬆症のある高齢の生徒は気づかないことがあります」また、老化による筋肉量の減少によって経験豊かな人でも怪我をしやすくなっており、すでにある怪我や病気の可能性も多くなると彼は付け加えています(詳細はその5を参照)。


生徒はみな、体内に起こる変化を、日々の小さな変化であっても常に気づく必要があります。そして指導者は、以下のように気づきを与えるべきです。「あなたの練習は、1日、1年といった動的な経験であるべきで、ポーズのもっと難しいバージョンに挑戦してもいいし、その他のポーズはしなくてもいい。マットの上に来るたびにその体験は変わります。身体に『今度にしよう』『これで十分』と言わせてあげましょう」




ウソ その4: 身体の声を聞いていたら怪我はしない。気をつけていれば全ての怪我が発する警告を前もって受け取ることができる


自身の身体からの信号を注意深く聞くのは素晴らしいことである一方で、その警告は、特に初心者にとって、いつも簡単に理解できるわけではないとリーフは指摘します。「新しい生徒は、感じているのが「正常」なのかを常にわかっているわけではありません。ハムストリングスの引っ張り、つま先のチクチク感、股関節の「パ キ」という音が、よいストレッチなのか怪我をしそうなのかはすぐにはわかりません」リーフによれば、こうした感覚や音は時に後者を知らせています。


しかし、経験豊かな実践者でさえ分析するのが難しい警告もあります。リーフによれば、片足のバランス・ポーズでぐらつくのは強さとコントロールを得るプロセスの一部で大丈夫なのですが、激しいぐらつきは、足首や膝のねじれ(ツイスト)や、膝蓋骨(膝頭)や半月板(膝軟骨)、膝や足首の靭帯の損傷の警告であったり、今にもこけそうだという警告かもしれません。「軸足の膝や足首がひどくぐらつき始めたら、それは車のダッシュボードに警告ランプがついているのと同じです。言い換えれば『停止』サインです。ドゥリシティ(視点)に集中してもぐらつきがおさまらなければ、両足をついた方がよいでしょう」


さらに「全ての怪我をすぐに感じるわけではありません。腰痛は大抵の場合、原因になる動きの数分から数時間のちに現れ、頚部や腰仙部の痛みなどの診断は累積的で、損傷したその時ではないのです」言い換えれば、怪我の前に痛みを感じないばかりでなく、怪我そのものをすぐに感じないという可能性もあります。


痛みだけでなく、しびれやチクチク感を感じたらポーズをやめるようリーフは勧めます。必要ならいつでもポーズから出てもいいと指導者は生徒に許可するのが重要です。




ウソ その5: ポーズを正しく(理想的なアライメントで)行っていれば怪我はしない


まさに全てのポーズは理想的なアライメントで練習するべきです。しかし「怪我は、正しく行わなかったからというわけではありません」とリーフは言います。


「ヨガクラスのうち1つのミスアライメントが原因で怪我が起こるのは少ないです。それよりも、小さな首や背中のヘルニアなど気が付いていない問題やすでにある怪我が、そのポーズで痛みが現れるという方がはるかに多いです」それはまた「正しく」ポーズを行っていても痛み現れることがあるのです。


小さな怪我は「生理学的容量が限界になるまで」またはその弱い組織や骨が限界まで負荷をかけられるまで、感じなかったり、違う場所の痛みに感じたりします。


「もしヨギに気づいていない肩回旋筋腱板損傷があったらー」(最高50パーセントの50歳以上に自覚症状のない回旋筋鍵盤損傷があるので(80歳以上には80パーセント!)、特に高齢者には高い確率です)、「糸通しのポーズ(四つ這いから片腕を反対の肩の下に通すポーズ)をするまでそれに気づかないこともありえます」それは、ポーズを間違って行っているのではなく、単に身体の弱い部分に圧力をかけたため既存の怪我にその時初めて気づいたというわけです。


ヨガクラスでの突然の痛みはまた「我慢の限界」の可能性があり、よいアライメントに関わらず、すでに弱い組織や骨にダメージを与えているのかもしれません。「肩回旋筋鍵盤損傷などの肩組織の問題があるなら、糸通しのポーズなどはどんなに正しく行っていても損傷を深める可能性があります。骨粗鬆症だとしたらー」(米国では50歳以上の55パーセントに骨粗鬆症か骨量低下があると推定されるため、ありえないことではない)「どんなに正しいアライメントであったとしても、上体を曲げすぎて突然骨折することもありえます」


隠れた怪我や病気をヨガクラスで悪化させないために(やり方がどんなに素晴らしいかに関わらず)、深刻な問題になる前に少しでも長引いた痛みは調べた方がいいとリーフは言います。「小さな怪我に早期に対処することは、早い治癒を意味し、回復できない状態までの累積を防ぐことになります」初期段階での診断をリーフは勧めています。例えば高齢女性なら、骨粗鬆症が練習内容を変える必要をもたらす可能性があるため、骨密度を調べるといったようなことです。



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後半は次回に続きます。

(出典)https://yogainternational.com/article/view/10-myths-about-yoga-injuries1

2019年3月6日水曜日

あなたの脊柱、あなたのヨガ 
Your Spine, Your Yoga

前回まで脊柱側彎症を取り上げましたが、そもそも背骨の正しい位置や形何なのでしょう?今回はそんな記事からです。
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人の背骨の働きは、第一には上半身と下半身の間に安全に負荷を伝えることで、次に自由に動くことです。この順番に注目しましょう。負荷やストレスを伝えることは、動くことよりも重要です。ヨガクラスではこれらが逆になっていて、安定性よりも可動性が重視されることが多いのです。

直立二足歩行では、脊柱は下半身を押し下げている上半身の荷重に対応するのに十分な強さがなければなりません。四つ足で歩く動物の脊柱は、このように継続的に支える必要はありません。彼らの脊柱はより可動性に注目することが可能なのです。私たちの脊柱の最も重要な優先事項は安定性で、最も安定しているのはニュートラルの位置にある時です。つまり、ニュートラルからもっとも離れた場所にある時に最も不安定だということです。



ニュートラルな脊椎とは?


もし脊椎がまっすぐな棒だったら、曲線が大きすぎたり小さすぎる場所が簡単に見えるでしょう。どんな曲線も、そのまっすぐな脊椎から逸脱しているとわかります。しかし、すでに曲がっている脊柱のニュートラルとは何なのでしょう?どんな曲線が大きすぎるのでしょう?小さすぎる曲線とは?脊柱生体力学者のスチュワート・マクギルによれば、ニュートラルな脊柱とは、「脊柱が最もリラックスしており、ニュートラルから外れて関節が曲げられた時に生じる関節の緊張がない場所です」

残念ながら、人によって様々であるため、あなたのヨガの先生のニュートラルとあなたのニュートラルは違うことがあるのです。

タダサナで立った時、脊柱に緊張が最も少ない場所を見つけることができますか?そうならば、おそらくそれがニュートラルの位置です。

残念なことに、慢性的な悪い姿勢もまたリラックスして感じられるのですが、筋肉の正常な張りがなくなっていて結合組織に多くのストレスがかかっているかもしれません。筋肉が弱くなると、筋肉の働きに関係してきます。

脊柱の緊張に注意を向ける時には、筋肉の緊張だけでなく関節や筋膜のストレスにも注目しなければなりません。言うのは簡単ですが、それには練習が必要です。様々なポーズをとって背骨の感覚を感じる実験をしてみましょう。どの場所で、自由で軽く、長くしかもリラックスしていると感じられるでしょう?そこがおそらくあなたのニュートラルの位置です。この実験でもわからなければ、鏡や資格のある先生の目でニュートラルの脊柱を見つけましょう。



脊柱の安全な圧迫


ニュートラルな脊椎とそこから最も遠い位置との距離が、脊椎の柔軟性と言えます。脊椎は、ニュートラルな位置から最も遠い時に荷重やストレスに耐える力が最も小さくなり、これらの負荷に耐える力が最大になるのはニュートラルの位置あるいは最もニュートラルに近い時です。

ヨガの世界では、脊椎のこの2つの能力を混同しがちで安定性よりも動きに注目しがちです。格好良く見える深く弧を描く後屈や捻りに見惚れます。美しく背後に下りてブリッジしたり足首を掴むようなヨギを素敵だと思わずにいられません。しかし、ほとんどの脊椎にとっては、そのような劇的な可動域を得ようとするととても大きな代償を払うことになるかもしれません。可動域の最大に近い時に、脊椎の関節を何度も伸展しすぎることで起こる、怪我や外傷です。可動性よりも安定性の方が重要であるため、脊椎を動かす際には以下の2つの指標が重要となります。

1. 脊椎に荷重がかかっている時は、できるだけ脊椎をニュートラルに近い形にし、かつ強く硬直させて動きを制限する。

2. 可動域を高める時は、脊椎に負荷をかけない。



これを言い換えれば、ストレスがかかっている時は堅める、動きを高める時は負荷をかけない、ということです。もし脊椎に大きなストレスがかかっておらず、かつそうした動きが可能なのならば、深い後屈や捻りをしても構いません。

大きな動きをしながら大きな負荷を脊椎にかける例の1つは、頭上に両手を伸ばしたラクダのポーズです(ウシュトラサナ、下の図3c参照)。このラクダのポーズでは、上半身の荷重全てが脊柱にかかっており、脊椎下部の関節にとても大きな垂直のストレスをかけながら劇的に伸展しています。このポーズは、「脊椎に荷重がかかっている時はあまり動かさない」という先ほどの原則から外れています。(この場合は、上半身の重量全体を支えなければなりません)

ラクダ・ポーズの(a)と(b)を見てみましょう。両手は床かかかとに置かれています。ここでは上半身の重量全ては脊柱にかかっておらず、垂直方向のストレスは大きく減少しています。「脊椎の伸展時には負荷を下げる」という二番目の原則に従っているため、これらはより安全なアプローチになります。

これらの原則を完全に理解したなら、ポーズの練習方法が大きく変わることでしょう。
図3: ラクダのポーズは、(a)のように脊椎へのストレスを最小で行う方法、または(b)のように両腕で上半身の重みを支えながらより深い後屈をする方法、そして(c)のように大きなストレスを脊椎にかけながらかつ深く伸展する方法があります。これらの位置が良い状態なのかそうでないのかは各個人の脊椎によりますが、(c)は間違いなく最も危険です。



脊椎の差異


平均的なヨギは24個の可動椎骨を持っていますが、誰もが平均というわけではありません。ほとんどの人は12本の肋骨を持っていますが、13本の肋骨と13個の胸椎骨を持つ人もいれば、たった11本の肋骨とたった11個の胸椎骨しかない人も少数ですがいます。ほとんどの人の腰椎骨は5個ですが、たった4個の人もいれば6個の人もいます。ある人には、仙椎が4つあり、ある人には6つあります。ある人の尾骨は3つですが、他の人には5つあります。幸いなことに、頚椎は全ての哺乳類と同じ数で(キリンでさえも!)7つだというのは事実なようです。しかし、平均の数を聞いたり、解剖学の教科書にある図をみたりすると、私達皆がそうではないかもしれないのに、12の胸椎と5の腰椎を持っていると考えてしまうのです。実際に持っている骨の数が、あなたのヨガの練習と自然な脊椎の可動域に影響を与えるのです。下の表1は、これらの差異がどれくらの頻度で起きるかを示したものです。

表 1: 太字は平均値と脊椎差異の相対頻度。赤の数字は仙骨より上の可動椎骨の総数を示しており、青字は胸椎と腰椎の可能な組み合わせを示している。
 可動椎骨総数         出現頻度 
 胸・腰椎の数          頻度 




通常より椎骨がひとつ多い人が30人のヨガクラスに1人はいて、20人のクラスに通常より椎骨がひとつ少ない人が1人いるということです。椎骨の多少がその人の柔軟性に関係するかどうかは明確ではありません。通常と異なるのがどの場所の椎骨なのか、またその椎骨の形状に依るでしょう。しかし、腰椎が胸椎よりもより伸展・屈曲しやすいことから、
数の多い腰椎は、屈曲・伸展のポーズで通常よりも大きな可動域をもたらすことが推測できます。しかし、腰椎は胸椎のようにねじることが出来ないため、胸椎の数を犠牲にして腰椎が多い場合は、捻りの可動域を小さくする可能性があるでしょう。

美しく大きな弧を描く後屈や、他の極限的な脊椎の動きを賞賛する世界では、そうしたポーズを望ましく賞賛すべきものだと考えがちです。しかし、最大限のパフォーマンスや柔軟性を追求するよりも最適な健康を得て維持することに焦点をあてるようにすれば、ヨガの練習に機能的視点が必要となってきます。より大きいことが良いというわけではないのです。健康でいるために、大きな可動域や脊椎の大きな柔軟性など必要ないのです。むしろ柔軟すぎる脊椎は多くの場合で不健康なことが確かにあるのです。


みんなそれぞれが個性的であり、経歴や生活が同じという人は1人もいません。つまり、脊椎のエクササイズやヨガポーズ、そして気にしなければならない注意は一人一人違います。「腰を守るために前屈をする時には膝を曲げなければならない」などという大雑把な一般論は、全ての人に当てはまるわけではありません。多くの人がそうである一方で、両脚がまっすぐで前屈しても大丈夫な人もいるのです!人には様々な差異があるので、あなたの体に最も合った動きやエクササイズを見つけることが挑戦なのです。他の人の体に効果のあるものはただの指針であり、指示でもなければ定説でもないのです。





2019年3月1日金曜日

脊柱側湾症のためのヨガ・シーケンス Vol.4
A Yoga Sequence for Scoliosis Vol.4


シーケンスの最終回です。

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16. 座位の開脚前屈のバリエーション


この座位での開脚前屈でひねるバージョンの側屈では、背骨のための牽引を行います。足か足首、脛が把みにくければ、ストラップを輪にして足にかけましょう。

座って両脚を約90度に開きます。両かかとを下に押し下げ、つま先が天井を向くように足首を曲げましょう。

両手を右腿の両側に歩かせ、胸を右に回します。

左の坐骨を床に押し付けながら、左手を右脛か右足首の外側、あるいは右足先の方へ動かし前屈しましょう。





右手を右腿の横に置いたまま押し下げ、胸を右に回転させます。

ここで5呼吸しましょう。それから上体を戻し反対側にうつります。

よりやりにくい側で繰り返します。



17. 牛の顔の腕をした安楽座・英雄のポーズ


「このポーズは肩甲骨の菱形筋、肩甲下筋、大円筋、小円筋、棘下筋、そして傍脊柱筋(特に凹側の)のストレッチになります」とリーフは言います。ストラップを使うよう指示されていますが、簡単に両手が繋げるようであれば必要ありません。

鏡の前で快適に脚を組んで座ります。より快適にするためにブロックやボルスターの上に座ってもいいですし、膝に負担がかかるようなら英雄のポーズで膝をついてもいいでしょう。再度、背骨をニュートラルに整えましょう。

左手にヨガ・ストラップを持ち、左腕を天井へと伸ばします。

左腕を曲げて肘を天井へ向け、ストラップを背中に垂らします。右腕を曲げて右手を手のひらを外にして背中へと持っていきましょう。右手を右の肩甲骨の内側へと移動し、ストラップを掴んだら、優しくストラップを伸ばすように引いてみましょう。ここで深い横隔膜呼吸を5回以上行いましょう。




腕を解放し、組んでいる脚を左右組み替えてから、反対側を行いましょう。難しく感じる方で繰り返します。



18. ディールガ・シュヴァサム


練習のはじめに行ったプラナヤマに戻り、呼吸がより深くたっぷりとしやすくなったかどうかを確かめましょう。

呼吸に集中できるリラックスできる姿勢を取ります。脚を組んで座ってもいいですし、英雄のポーズ、仰向きに横たわってもよいでしょう。最初のポーズで確認したように、背骨をよりニュートラルに調整し、片手を胸にもう片方をお腹に置きます。

目を閉じ、呼吸、姿勢、そして内面を感じましょう。息を吸い、左右の肺が下から上へと満たされてくのをイメージしながら、腹部と胸郭下部を膨らませ、そして胸郭の中心、最後に胸の上部を膨らませます。息を吐き、左右の肺が上から下へと空になっていくのを想像しながら、胸の上部を空にし、胸郭の中心、そして肺の下部と腹部を空にしていきましょう。吐く息の最後に少しお腹を引き込みましょう。

両サイドの違いを感じます。息を吐きながら、より制限のある側に「落ち込み」がないようにしてみましょう。



全部で5〜10回繰り返しましょう。



19. 横向きのシャヴァサナ


リーフによれば「この受動的なポーズは、無理なく両側を対称にし、痛みを和らげる効果もあります」ボルスターを使いましょう。畳んだブランケットやブロックを頭の下に置いてもいいです。湾曲が2つある場合は、他に巻いたブランケットやタオルも使いましょう。


ボルスターをマットを横切るように水平に置きます。最も突出している場所の胸にサポートが必要になります。ですから、胸椎が右へ出ているなら、横向きに寝た時に右側の胸郭が支持されるようボルスターを置きましょう。(S字曲線がある場合、腰椎が左へ出ている場合は、どちらの湾曲も優しく圧迫されるよう、シャヴァサナの途中で寝返りして左のウェストの下に巻いたブランケットかタオルをひいて左を下に横たわりましょう。)下の腕以外に頭を支えるものが欲しい時は、ブロックか畳んだブランケットをマットの端のあたりに置きます。

背骨がより中心線へ向かうようにボルスターの優しいサポートで、凸面を下に横たわりましょう。下の腕(あるいは畳んだブランケットかブロック)の上に頭を置き、上の腕を頭の上に伸ばします。



もし快適なら、上の腕を曲げて体の目に置いておいてもよいでしょう。膝は自由に曲げます。快適なら目を閉じましょう。 




そこで5〜10分間優しく呼吸し、あなたを対称へと導いてくれる重力と時間に委ねましょう。









(出典)https://yogainternational.com/article/view/a-yoga-sequence-for-scoliosis