2019年3月12日火曜日

ヨガの怪我についての10のウソ vol.1 
10 Myths About Yoga Injuries


脊椎の状態と負荷の関係が守られていれば、危険は避けられるということを前回見ましたが、今回は「怪我」についてです。

長くヨガをしていると、結構いろんな場所を怪我してしまう人が多いのに気づきます。そしてまた、それをまるで勲章のように自慢する人がいるのも事実です。が、特に歳を重ねると後遺症を引きずってしまうことも多くなりますし、怪我などしない方がいいに決まっていますよね。

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マットの上で起こる怪我を防ぎ、あなたの生徒たちを守るための魔法のような秘訣は誰もが知りたいものです。しかし、この安全への願いは、時にヨガの怪我を誤解させている可能性もあります。例えば、十分にマインドフルで(注意深く)あれば怪我は防げると信じているかもしれません。または、十分にゆっくり動けば、完璧にポーズを取れば、怪我など決してしないとか。

けれど、怪我の裏にある要因は複雑で変化に富んでいるため、全ての場合において正しい怪我の予防法と一般化するのはとても困難なのです。40年の経験を持つアトランタの理学療法士ビル・リーフは(「The Back Pain Secret」の著者)、正しいと信じたいヨガの怪我について以下の10のウソに懸念しています。



ウソ その1:ヨガは100パーセントの割合で100パーセント安全


ヨガは、いつもとは違う方法で身体を努めて動かす運動です。その局面が大変よいものである一方、時には怪我に繋がることもあります。2016年「Orthopaedic Journal of Sports Medicine」で公表されたこの研究のような)統計によれば、ヨガによる怪我(多くは筋挫傷や捻挫、骨折など)の割合が上昇しています。


しかし、どんなヨガで怪我をしたか簡単に数に出せないものもあります。どうやって怪我をしたのかよくわからないヨギ患者が多くいるとリーフは言います。「ヨガクラスで突然起こる怪我もありますが、怪我の多くはもっと漠然としています。多くは累積的で時間をかけて起こります。不安定な関節が原因の怪我は、何年間にもわたる関節の過伸展の結果起こります。よくある首や腰の問題は(ヘルニアなど)、痛みや痺れなどの症状が起こるのは何ヶ月、時には何年も後になって起こることがあります」



多くの怪我は徐々に起こるため、「ヨガの怪我」とそうでないものの間の線引きが曖昧です。ヨガの途中で初めて感じた怪我の中には、マットの外での動きのパターンによるものかもしれません(私がチャトゥランガで感じた痛みは、悪い姿勢で左肩にいつも重いバッグを持っているからかもしれません)。逆に、日常生活で感じた痛みがマットの上での動きのパターンからきているかもしれません(左肩に重いバッグをかけた時に感じる痛みは肩を前方に巻いた状態でずっとチャトゥランガをしてきたことに関係するかもしれません)。そして、腰を丸くして重い箱を繰り返し持ち上げてきたことが、ヨガクラスでの腰痛に関係するかもしれませんし、ヨガの激しい動きで脊椎に問題が起こり、洗濯カゴを持ち上げるまでそれに気づかなかっただけかもしれません。「深い屈曲(前屈)は椎間板の損傷を起こし得ますし、深い伸展(後屈)は椎間関節の損傷を起こし得ます。どちらも、何年間もの間、脊椎を支えている靭帯を摩耗させてしまいます」


ヨガが怪我に関係しており、原因となることもあるということを受け入れれば(クラスで現れることもあるし、もっと後で現れることもある)、自分自身や生徒を練習の守るための対策をとることができます。しかし、日常生活の動きがクラスで経験する怪我に関係がある場合もあるので、マットの外での気づきや注意はヨガの怪我を避けるのにも有益です。




ウソ その2: 注意深く経験豊かなヨガ指導者は絶対に怪我をさせない


軽率で経験の浅い指導者はもちろん生徒に怪我をさせてしまうことが多いでしょうが、経験豊かなヨガティーチャーでも怪我を起こしてしまうポーズを教えたりアジャスメントをしたりすることがあります。


「全ての怪我を防げる指導者などいません。怪我の可能性を下げることは誰でもできます」とリーフは言います。


リーフによれば、生徒の限界を尋ねてそれにより添い、「このヨガの練習は旅であり、ひとつとして同じ筋骨格系の経験をもった身体はないということを常に彼らに思い出させ」ることで怪我の危険を下げることができます。補助具を使った方法、ポーズのより優しいバージョンなど、例外ではなくルールとして見せることで、安全を保つことができます。重要なのは、特別に注意を払ってアジャスメントをし、ゆっくりと注意深くポーズを移行するよう指導することです。


生徒の側としては、過去の筋骨格系のどんな状態もインストラクターに知らせるべきであり、「自分の身体に責任がある。身体を大切にし、何かよくないと感じたらやめること」を常に念頭においておくべきです。




ウソ その3: 注意深く経験豊かな生徒は絶対に怪我をしない


野心家で経験不足の生徒が怪我をしやすい一方で、経験豊かな実践者であっても、私たちの多くがよく知るように、怪我をします。


「どんなコンディションのアスリートでもそうであるように、より経験豊かな実践者は初心者に比べて怪我をする可能性はとても低くなります」とリーフは言います。しかしまた、とても経験豊かな実践者でさえ今まで感じなかった身体の変化や脆さなど、あらゆる変化を感じます。


例えば「妊娠中は、ホルモン変化によって組織や靭帯が緩んでいることに経験のある生徒や指導者が気づかないこともあり、仙腸関節への非対称なストレスは避けるべきです」ヨガ・トレーニングの集中した期間の筋肉疲労もまた、経験のあるヨガ実践者が怪我しやすくなる要因だとリーフは言います。


経験に関係なく、老化によっても怪我をしやすくなります。「Orthopedic Journal of Sports Medicine(スポーツ医学整形外科ジャーナル)」に2016年に掲載された研究では、65歳以上では全般的な怪我の率が3倍でした。怪我をした人はみなヨガ初心者で野心的すぎたのでしょうか?また経験のある人たちの中には、慣れたポーズで身体が違う反応をした人がいたのでしょうか?「骨が脆くなっているため、前屈や深い後屈など極度の可動域を必要とするポーズをやめた方がいいということを、何十年も練習してきた骨粗鬆症のある高齢の生徒は気づかないことがあります」また、老化による筋肉量の減少によって経験豊かな人でも怪我をしやすくなっており、すでにある怪我や病気の可能性も多くなると彼は付け加えています(詳細はその5を参照)。


生徒はみな、体内に起こる変化を、日々の小さな変化であっても常に気づく必要があります。そして指導者は、以下のように気づきを与えるべきです。「あなたの練習は、1日、1年といった動的な経験であるべきで、ポーズのもっと難しいバージョンに挑戦してもいいし、その他のポーズはしなくてもいい。マットの上に来るたびにその体験は変わります。身体に『今度にしよう』『これで十分』と言わせてあげましょう」




ウソ その4: 身体の声を聞いていたら怪我はしない。気をつけていれば全ての怪我が発する警告を前もって受け取ることができる


自身の身体からの信号を注意深く聞くのは素晴らしいことである一方で、その警告は、特に初心者にとって、いつも簡単に理解できるわけではないとリーフは指摘します。「新しい生徒は、感じているのが「正常」なのかを常にわかっているわけではありません。ハムストリングスの引っ張り、つま先のチクチク感、股関節の「パ キ」という音が、よいストレッチなのか怪我をしそうなのかはすぐにはわかりません」リーフによれば、こうした感覚や音は時に後者を知らせています。


しかし、経験豊かな実践者でさえ分析するのが難しい警告もあります。リーフによれば、片足のバランス・ポーズでぐらつくのは強さとコントロールを得るプロセスの一部で大丈夫なのですが、激しいぐらつきは、足首や膝のねじれ(ツイスト)や、膝蓋骨(膝頭)や半月板(膝軟骨)、膝や足首の靭帯の損傷の警告であったり、今にもこけそうだという警告かもしれません。「軸足の膝や足首がひどくぐらつき始めたら、それは車のダッシュボードに警告ランプがついているのと同じです。言い換えれば『停止』サインです。ドゥリシティ(視点)に集中してもぐらつきがおさまらなければ、両足をついた方がよいでしょう」


さらに「全ての怪我をすぐに感じるわけではありません。腰痛は大抵の場合、原因になる動きの数分から数時間のちに現れ、頚部や腰仙部の痛みなどの診断は累積的で、損傷したその時ではないのです」言い換えれば、怪我の前に痛みを感じないばかりでなく、怪我そのものをすぐに感じないという可能性もあります。


痛みだけでなく、しびれやチクチク感を感じたらポーズをやめるようリーフは勧めます。必要ならいつでもポーズから出てもいいと指導者は生徒に許可するのが重要です。




ウソ その5: ポーズを正しく(理想的なアライメントで)行っていれば怪我はしない


まさに全てのポーズは理想的なアライメントで練習するべきです。しかし「怪我は、正しく行わなかったからというわけではありません」とリーフは言います。


「ヨガクラスのうち1つのミスアライメントが原因で怪我が起こるのは少ないです。それよりも、小さな首や背中のヘルニアなど気が付いていない問題やすでにある怪我が、そのポーズで痛みが現れるという方がはるかに多いです」それはまた「正しく」ポーズを行っていても痛み現れることがあるのです。


小さな怪我は「生理学的容量が限界になるまで」またはその弱い組織や骨が限界まで負荷をかけられるまで、感じなかったり、違う場所の痛みに感じたりします。


「もしヨギに気づいていない肩回旋筋腱板損傷があったらー」(最高50パーセントの50歳以上に自覚症状のない回旋筋鍵盤損傷があるので(80歳以上には80パーセント!)、特に高齢者には高い確率です)、「糸通しのポーズ(四つ這いから片腕を反対の肩の下に通すポーズ)をするまでそれに気づかないこともありえます」それは、ポーズを間違って行っているのではなく、単に身体の弱い部分に圧力をかけたため既存の怪我にその時初めて気づいたというわけです。


ヨガクラスでの突然の痛みはまた「我慢の限界」の可能性があり、よいアライメントに関わらず、すでに弱い組織や骨にダメージを与えているのかもしれません。「肩回旋筋鍵盤損傷などの肩組織の問題があるなら、糸通しのポーズなどはどんなに正しく行っていても損傷を深める可能性があります。骨粗鬆症だとしたらー」(米国では50歳以上の55パーセントに骨粗鬆症か骨量低下があると推定されるため、ありえないことではない)「どんなに正しいアライメントであったとしても、上体を曲げすぎて突然骨折することもありえます」


隠れた怪我や病気をヨガクラスで悪化させないために(やり方がどんなに素晴らしいかに関わらず)、深刻な問題になる前に少しでも長引いた痛みは調べた方がいいとリーフは言います。「小さな怪我に早期に対処することは、早い治癒を意味し、回復できない状態までの累積を防ぐことになります」初期段階での診断をリーフは勧めています。例えば高齢女性なら、骨粗鬆症が練習内容を変える必要をもたらす可能性があるため、骨密度を調べるといったようなことです。



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後半は次回に続きます。

(出典)https://yogainternational.com/article/view/10-myths-about-yoga-injuries1

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