2019年3月6日水曜日

あなたの脊柱、あなたのヨガ 
Your Spine, Your Yoga

前回まで脊柱側彎症を取り上げましたが、そもそも背骨の正しい位置や形何なのでしょう?今回はそんな記事からです。
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人の背骨の働きは、第一には上半身と下半身の間に安全に負荷を伝えることで、次に自由に動くことです。この順番に注目しましょう。負荷やストレスを伝えることは、動くことよりも重要です。ヨガクラスではこれらが逆になっていて、安定性よりも可動性が重視されることが多いのです。

直立二足歩行では、脊柱は下半身を押し下げている上半身の荷重に対応するのに十分な強さがなければなりません。四つ足で歩く動物の脊柱は、このように継続的に支える必要はありません。彼らの脊柱はより可動性に注目することが可能なのです。私たちの脊柱の最も重要な優先事項は安定性で、最も安定しているのはニュートラルの位置にある時です。つまり、ニュートラルからもっとも離れた場所にある時に最も不安定だということです。



ニュートラルな脊椎とは?


もし脊椎がまっすぐな棒だったら、曲線が大きすぎたり小さすぎる場所が簡単に見えるでしょう。どんな曲線も、そのまっすぐな脊椎から逸脱しているとわかります。しかし、すでに曲がっている脊柱のニュートラルとは何なのでしょう?どんな曲線が大きすぎるのでしょう?小さすぎる曲線とは?脊柱生体力学者のスチュワート・マクギルによれば、ニュートラルな脊柱とは、「脊柱が最もリラックスしており、ニュートラルから外れて関節が曲げられた時に生じる関節の緊張がない場所です」

残念ながら、人によって様々であるため、あなたのヨガの先生のニュートラルとあなたのニュートラルは違うことがあるのです。

タダサナで立った時、脊柱に緊張が最も少ない場所を見つけることができますか?そうならば、おそらくそれがニュートラルの位置です。

残念なことに、慢性的な悪い姿勢もまたリラックスして感じられるのですが、筋肉の正常な張りがなくなっていて結合組織に多くのストレスがかかっているかもしれません。筋肉が弱くなると、筋肉の働きに関係してきます。

脊柱の緊張に注意を向ける時には、筋肉の緊張だけでなく関節や筋膜のストレスにも注目しなければなりません。言うのは簡単ですが、それには練習が必要です。様々なポーズをとって背骨の感覚を感じる実験をしてみましょう。どの場所で、自由で軽く、長くしかもリラックスしていると感じられるでしょう?そこがおそらくあなたのニュートラルの位置です。この実験でもわからなければ、鏡や資格のある先生の目でニュートラルの脊柱を見つけましょう。



脊柱の安全な圧迫


ニュートラルな脊椎とそこから最も遠い位置との距離が、脊椎の柔軟性と言えます。脊椎は、ニュートラルな位置から最も遠い時に荷重やストレスに耐える力が最も小さくなり、これらの負荷に耐える力が最大になるのはニュートラルの位置あるいは最もニュートラルに近い時です。

ヨガの世界では、脊椎のこの2つの能力を混同しがちで安定性よりも動きに注目しがちです。格好良く見える深く弧を描く後屈や捻りに見惚れます。美しく背後に下りてブリッジしたり足首を掴むようなヨギを素敵だと思わずにいられません。しかし、ほとんどの脊椎にとっては、そのような劇的な可動域を得ようとするととても大きな代償を払うことになるかもしれません。可動域の最大に近い時に、脊椎の関節を何度も伸展しすぎることで起こる、怪我や外傷です。可動性よりも安定性の方が重要であるため、脊椎を動かす際には以下の2つの指標が重要となります。

1. 脊椎に荷重がかかっている時は、できるだけ脊椎をニュートラルに近い形にし、かつ強く硬直させて動きを制限する。

2. 可動域を高める時は、脊椎に負荷をかけない。



これを言い換えれば、ストレスがかかっている時は堅める、動きを高める時は負荷をかけない、ということです。もし脊椎に大きなストレスがかかっておらず、かつそうした動きが可能なのならば、深い後屈や捻りをしても構いません。

大きな動きをしながら大きな負荷を脊椎にかける例の1つは、頭上に両手を伸ばしたラクダのポーズです(ウシュトラサナ、下の図3c参照)。このラクダのポーズでは、上半身の荷重全てが脊柱にかかっており、脊椎下部の関節にとても大きな垂直のストレスをかけながら劇的に伸展しています。このポーズは、「脊椎に荷重がかかっている時はあまり動かさない」という先ほどの原則から外れています。(この場合は、上半身の重量全体を支えなければなりません)

ラクダ・ポーズの(a)と(b)を見てみましょう。両手は床かかかとに置かれています。ここでは上半身の重量全ては脊柱にかかっておらず、垂直方向のストレスは大きく減少しています。「脊椎の伸展時には負荷を下げる」という二番目の原則に従っているため、これらはより安全なアプローチになります。

これらの原則を完全に理解したなら、ポーズの練習方法が大きく変わることでしょう。
図3: ラクダのポーズは、(a)のように脊椎へのストレスを最小で行う方法、または(b)のように両腕で上半身の重みを支えながらより深い後屈をする方法、そして(c)のように大きなストレスを脊椎にかけながらかつ深く伸展する方法があります。これらの位置が良い状態なのかそうでないのかは各個人の脊椎によりますが、(c)は間違いなく最も危険です。



脊椎の差異


平均的なヨギは24個の可動椎骨を持っていますが、誰もが平均というわけではありません。ほとんどの人は12本の肋骨を持っていますが、13本の肋骨と13個の胸椎骨を持つ人もいれば、たった11本の肋骨とたった11個の胸椎骨しかない人も少数ですがいます。ほとんどの人の腰椎骨は5個ですが、たった4個の人もいれば6個の人もいます。ある人には、仙椎が4つあり、ある人には6つあります。ある人の尾骨は3つですが、他の人には5つあります。幸いなことに、頚椎は全ての哺乳類と同じ数で(キリンでさえも!)7つだというのは事実なようです。しかし、平均の数を聞いたり、解剖学の教科書にある図をみたりすると、私達皆がそうではないかもしれないのに、12の胸椎と5の腰椎を持っていると考えてしまうのです。実際に持っている骨の数が、あなたのヨガの練習と自然な脊椎の可動域に影響を与えるのです。下の表1は、これらの差異がどれくらの頻度で起きるかを示したものです。

表 1: 太字は平均値と脊椎差異の相対頻度。赤の数字は仙骨より上の可動椎骨の総数を示しており、青字は胸椎と腰椎の可能な組み合わせを示している。
 可動椎骨総数         出現頻度 
 胸・腰椎の数          頻度 




通常より椎骨がひとつ多い人が30人のヨガクラスに1人はいて、20人のクラスに通常より椎骨がひとつ少ない人が1人いるということです。椎骨の多少がその人の柔軟性に関係するかどうかは明確ではありません。通常と異なるのがどの場所の椎骨なのか、またその椎骨の形状に依るでしょう。しかし、腰椎が胸椎よりもより伸展・屈曲しやすいことから、
数の多い腰椎は、屈曲・伸展のポーズで通常よりも大きな可動域をもたらすことが推測できます。しかし、腰椎は胸椎のようにねじることが出来ないため、胸椎の数を犠牲にして腰椎が多い場合は、捻りの可動域を小さくする可能性があるでしょう。

美しく大きな弧を描く後屈や、他の極限的な脊椎の動きを賞賛する世界では、そうしたポーズを望ましく賞賛すべきものだと考えがちです。しかし、最大限のパフォーマンスや柔軟性を追求するよりも最適な健康を得て維持することに焦点をあてるようにすれば、ヨガの練習に機能的視点が必要となってきます。より大きいことが良いというわけではないのです。健康でいるために、大きな可動域や脊椎の大きな柔軟性など必要ないのです。むしろ柔軟すぎる脊椎は多くの場合で不健康なことが確かにあるのです。


みんなそれぞれが個性的であり、経歴や生活が同じという人は1人もいません。つまり、脊椎のエクササイズやヨガポーズ、そして気にしなければならない注意は一人一人違います。「腰を守るために前屈をする時には膝を曲げなければならない」などという大雑把な一般論は、全ての人に当てはまるわけではありません。多くの人がそうである一方で、両脚がまっすぐで前屈しても大丈夫な人もいるのです!人には様々な差異があるので、あなたの体に最も合った動きやエクササイズを見つけることが挑戦なのです。他の人の体に効果のあるものはただの指針であり、指示でもなければ定説でもないのです。





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