2020年8月8日土曜日

ヨガが認知症患者にできること Vol.2
How Yoga can Help People with Dementia

前回からの続きです。

編集注記:以下はヨガ実践者と指導者に向けた一般的な助言を目的としています。医療従事者による個々の助言の代替にはなりません。指導者は自らの実践の範囲に止まるようにしてください(生徒の診断や治療、医療的助言を行おうとしない)。
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お勧めの練習法



アサナ


目的: 柔軟性や筋力、バランスの強化や維持

効果: 転倒や怪我の防止

コツ: 掌やお腹、胸などのアンカー・ポイントに注意を向けることによる身体への気付きをより感じてもらいましょう。

可能な練習:

1. センタリングの選択:クラスの始めに、目を閉じるか鼻先を見下ろすように提案する。心地よい目的を設定するか、愛する人にその練習を捧げるように促す。

2. 運動: 関節のウォームアップと背骨の全方向への動きを勧める。呼吸に合わせた単純な動きに集中する。

3. ツイストの選択: 肩越しに見るなど優しいツイストを促す。こうした練習は迷走神経を整えられるので、副交感神経反応を強化する。

4. バランスの選択: 壁や椅子を掴んで片足を持ち上げるなど簡単なバランス・ポーズを提案する。できることから始めそこから徐々に築きあげる。

5. 脳の両半球間の伝達を刺激するため左右に交差する動きを促す:反対の手で反対の肩を軽く叩く、片手ずつ風船を叩く、身体の部分を動かすダンス(hokey pokey)をするなど:このダンスでは動きの指示(例「右脚を内に」)の時に左右交差させるようにし、参加者の右腕や右脚を身体の反対側へ交差させるよう誘導する。この練習はふざけて楽しく行えるようにする。

6. 前屈で終了:神経系を鎮静するため、パスチモッターナサナ(座位の前屈)のような優しい前屈でクラスを終える。個人の能力に合わせる。例えば、車椅子の場合は腕をテーブルの上にのせる、転倒リスクのある時は同様にテーブルの前に座って前屈させる。



プラナヤマ


目的: 副交感神経反応を活性

効果: 神経のバランスを整えることで睡眠や気分の調整機能が向上

コツ: 呼吸の練習は混乱するので、ポーズの方が全てのレベルの人に合わせやすいと気付きました。このため、プラナヤマの練習には認知症のステージを考慮することが重要です。

可能な練習:

初ー中期:長い呼気(吸気の約2倍の長さ)でブラマリ呼吸(花蜂の呼吸)をし、副交感神経の調整を促す。

末期:ため息を促す。ため息は横隔神経を活性化し、身体を弛緩させ過覚醒を減らす効果が持続。手本を示して真似してもらう。





瞑想


目的: 心を落ち着かせ集中する

効果: 落ち着き、集中力、明晰な精神を促進

コツ: 生徒の生活と興味を知れば知るほど、より効果的な誘導瞑想になる。生徒のことをできるだけ多く知り、その発見をクラスに取り入れましょう。

可能な練習:

リラックスできる快適な姿勢を見つけるよう促す。横たわっても良いし、両足を床につけて椅子にまっすぐ座っても良い。簡単な身体スキャンか呼吸へ意識を向ける練習から始める。心象の誘導はこの世代に効果的で、好きな場所の記憶を思い出すのを手助けできる。



私は時折、このタイプの誘導練習を私のヨガのかつての生徒としたことを思い出します。アルツハイマー病の末期にあったトムという名の才能ある人でした。トムは、長期療養施設に居てスタッフのみんなにとても愛されていました。彼は死の過程にありかなりの痛みを感じていました。毎日同じ時間になると、彼はますます混乱して助けを求めて叫びました。彼の家族から彼が熱心な船乗りだったと聞いていたので、私は彼の横に座って海のことを話しました。目を閉じるように言い、波の音、船やかもめの姿、温かい海風を思い出すよう誘導しました。彼がついてこれる程に簡単なヨガニードラの練習を用意すると、すぐに彼は静かに休んだものです。心象、身体感覚、そして穏やかで愛情のある存在の力というのは共有できる贈り物でした。



チャンティング


目的: 内なる教えと触れ合う

効果: 鎮静効果、人と一緒にする時は一体感を作る

コツ: マントラを選ぶ際には、患者の文化的背景や人生経験を考慮しましょう。

練習: マントラの繰り返し

初ー中期:アルツハイマー研究および防止財団によるキルタン・クリヤ

末期:「ソーハム(私はそうである)」のマントラか、「私は愛である」などの肯定の言葉を聞こえるように大きく繰り返す。



リラクゼーション(誘導のあるリラクゼーションとヨガニードラを含む)


目的: 喜びや至福の状態への促進

効果: 神経のバランスを促し、人生の困難に平和的に反応し肯定的な感情を育むことができる

コツ: 環境を考慮する。例えば、高齢者介護施設では、大抵の場合騒がしく音レベルの調整はほぼ不可能だと理解する。加えて、補聴器は背景の雑音を増幅させる場合がある。意識を内側に向けるか、ひとつの音に集中するよう促す。重みのあるブランケットなどの補助具が、身体を落ち着かせたり、不安を抑えるのに役立つかも知れない。薄暗くしたり明かりを落とすこともリラクゼーションの助けとなる。

練習: 緩和したヨガニードラ

安定した声でゆっくり話し、生徒たちが確実に理解できるようにする。もし理解できなくても、優しい声で話せばリラクゼーションの過程をサポートできる。




最後に


認知症に悩む人々のために生活の質を最適にし意味のある体験を提供するケアの方法を見つけることは極めて重要です。ヨガは、喜び、成功、一貫性、安心と休息の瞬間を提供することでこれを促すことができます。信頼と安心感を重要視する安全な環境と遊びの機会を提供しながらストレスを最小限にすることができます。最も重要なのは、ヨガは誰に対しても、変わることのない私達の一部である内に秘めた自分自身を発見するのを助けてくれます。それでは、Memory Bridge というドキュメンタリーから私の好きな言葉を引用して終わりにしましょう。


「認知症に悩む人たちはまだここに居て、アルツハイマー病と認知症によるダメージを越えた記憶と存在の深みで、まだ手の届くところに居るのです。私たちは聞くことを学んでおり、学ぶために聞いています。彼らにはまだ愛すること愛されることができるのです」

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