今回は、逆立ちやアームバランスの時に必要となってくる前鋸筋をみていきましょう。
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「前鋸筋」という言葉を聞いたことがありますか?秘密の場所というわけではありませんが、他の筋肉と比べてあまり気にされない場所です。発音しづらいせいかもしれませんし、筋肉に特化したヨガクラスではもっと大きな筋肉群(ハムストリングスや四頭筋など)に注目するからかもしれません。
前鋸筋は、第8あるいは第9の肋骨の上部から起始し、肩甲骨の内側へと走っています。まず第一に、これらは肩甲骨を突き出す(お互いを遠ざける)役目をしています。また、胸郭に対して肩甲骨を維持して安定させる役割があります。これらの動きは、プランクやチャトゥランガ・ダンダアサナ(四肢の杖のポーズ)、アームバランスや逆転のポーズなどで、上背部、肩、胸の筋肉の動きをサポートします。
前鋸筋のどこがそんなに重要なのでしょうか?前鋸筋は、ヴィラバドラーサナ1(戦士のポーズ1)やアド・ムカ・ヴルクシャサナ(ハンドスタンド)で両腕を頭上にあげる時など、肩の上方への回転や動きに重要な役割をしています。
しかし多くの人のこれらの筋肉は、硬く弱くなっています。毎日、常に頭と首を胸椎より前に突き出してタイプしたりメールをしていて、上背部が丸くなり常に肩甲骨が突き出た状態になりがちだからです。
時間が経つに連れ、常にスイッチが入った状態で前鋸筋の繊維が縮み、慢性的に短くなります。そして、やがて柔軟性を失い萎縮していきます(そうして筋肉が硬いのに弱くなる)。
結果として、安定させるために、他の筋肉が担う負荷が増えます。これが、さらに前鋸筋を弱め、首の痛みや肩の挟み込み(大抵は、回旋腱盤の使いすぎや炎症が原因)までを引き起こします。
これは多くの場合、首周りの緊張や痛みとして現れ、特に、多くの人がストレッチやマッサージが必要だと思うような僧帽筋の上部に出ます(それがまた、前鋸筋をなおざりにする原因となります)。
前鋸筋が弱くても、最初のうちは特定のポーズをする邪魔にはなりませんが、時間とともに筋肉のバランスが崩れ、やがて怪我の原因となります。
前鋸筋は、後鋸筋とともに胸郭を持ち上げて肺の拡がりを支持し、起立姿勢を保つのに重要な役割を担っているため、前鋸筋が弱まると最終的には呼吸が浅くなる原因ともなります。
両腕を頭上に動かすことが困難で、菱形筋や僧帽筋上部が痛み、あるいは頭が前方へ突き出して(肩が丸まって胸が縮んで)いることに気づいたら、前鋸筋に注目するとそうした組織の問題を緩和させることができるかもしれません。
あなたの肩甲骨は後方へ開いていますか?タダサナ(山のポーズ)で真っ直ぐ立った時の肩甲骨の動きで、前鋸筋にストレッチや強化が必要かどうかがわかります。例えば、タダサナで、胸を広く保った状態で、肩甲骨が背骨に近く、背中で平らになっていますか?(それならOK!)
背中と肩甲骨 |
プランクやチャトランガで、その形を維持できていますか?それとも、片方か両方の肩甲骨が翼のように浮いていますか?もしそうなら、肩甲骨の内側の下端が持ち上がるため、背中と同じ面上にはなく、肩甲骨と背骨の間に谷ができています。
プランクで浮き上がった肩甲骨 |
翼のように浮き上がった肩甲骨は、この辺りの神経機能障害に関係していて、多くの場合は使いすぎや後遺症が原因です。アームバランスのポーズをサポートするために前鋸筋を強化したい時には、以下のようなストレッチと強化のエクササイズが有効かもしれません。
可能なら、各エクササイズを10回以上くり返し、2-3セット行うことをお勧めします。何度か繰り返す内、毎日の活動の中で前鋸筋を機能的に使っていることに気づくでしょう。
プロップ:折り畳んだブランケットかブロック、半分の高さのブロック2つ、そして友人(肩甲骨の動きを見てもらうために!)
ダンダアサナ(杖のポーズ)で床を押す
ダンダアサナから始めます。腰が丸くなっていた李、股関節やハムストリングスが硬い場合は、折り畳んだブランケットかブロックの最も広い面に座ります。足首を曲げたまま保ちましょう。
坐骨からしっかりと根付かせて体を安定し、そこで立っているかのように、両脚を踵への方へ伸ばします。腿に力を入れて、やや内側に回転させ、膝とつま先を天井へ向けておきます。
背骨を頭頂から上方へできるだけ伸ばし、仙骨から頭頂を直線に保ちます。手のひらをそれぞれ腰の横におきましょう。床に届かなければ、半分の幅のヨガブロック2つか、同じ幅のしっかりした本2冊、あるいは、平らでしっかりしていて滑らないものを補助として手の下に置きましょう。
床を押し、腕を伸ばし、肩の前を後方へ引きます。そして、肘を後方にやや曲げましょう。腋の下の後ろ側に何か感覚を感じるはずです。頭の上に向かって伸び続けましょう。胸郭が持ち上がるのに気づきます。
半分の幅のブロックを使って |
ここで3回呼吸してから解放します。この姿勢でホールドできる時間が、徐々に伸びていくでしょう。
強化されてきたら、手で床を押しながら足首を組み両方の坐骨を持ち上げて、負荷をかけることもできます。
片腕を交互に挙げる肩甲骨の動き
四つ這いから始めます。両膝は股関節の真下に、手首と肘は肩の真下に置きます。5-10センチ程度前の床を見て、背骨を真っ直ぐに保ちましょう。
下腹部を引いて腹筋に力を入れます。左手でしっかりと押しながら、右の指先を前そしてやや右へ移動し、右腕が右肩に対して斜めになるようにしましょう。
右腕を肩の高さの半分まで持ち上げ、手のひらを(小指が下になるよう)顔の方向へ向けます。右肘をやや曲げて、右肩の上部を少し伸ばしましょう(落ち込ませたり、縮ませないように)。
ここから、頭を挙げて前を見たまま、息を吸って、指先の方向へ腕を伸ばします。
息を吐いて、肘を肋骨の右の方向へ曲げ、右の肩甲骨をもう一度引き込んで、床と垂直になるようにします。
右腕を再度伸ばして、右手を床に下ろし、四つ這いに戻りましょう。左側で繰り返し、それぞれ10回まで交互に腕を伸ばしましょう。
プランクのバリエーションで肩甲骨の腕立て伏せ
両膝をついたプランクから始めます(必要なら、折り畳んだブランケットを膝の下に敷きます)。胸を広げて、三頭筋を胸郭に近づけようとするように上腕を外旋し、肩甲骨の内端どうしを近づけるように引き込みましょう。
腹部全体に力を入れ続けます。そこで一呼吸し、やや背中を丸くしながら床を押して遠ざけま、肩甲骨を突き出しましょう。そこで一呼吸、そして少し胸を落として肩甲骨を引いて近づけます。
肩甲骨の引込 |
肩甲骨の突出 |
エクササイズの間、あまり腕を動かさないようにしましょう。肩甲骨を引くと胸は数センチ落ち込み、肩甲骨を突き出すと胸は持ち上がります。全ての動きは、肩甲帯の中で起こっています。
コツ:エクササイズの引込み段階で、肩甲骨がまだかなり「翼」になっていたら、この練習を四つ這いから始め、徐々に膝をついたプランクへと進みましょう。強くなってきたら、肩甲骨腕立て伏せを、プランクの姿勢でやってみましょう。
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