2022年1月29日土曜日

心配する心を癒す
CARING FOR OUR WORRY


1月22日、マインドフル瞑想の普及に貢献されたヴェトナムの禅僧ティク・ナット・ハーン氏が95歳で逝去されました。主にフランスやアメリカを中心に活動されていましたが、日本でも様々な活動をされ、多くの人の生き方を変えてこられた方でした。

今回は、心配に関する彼の言葉をシェアしたいと思います。

RIP


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「今のような時こそ、マインドフルな呼吸をし、怒りや苛立ち、恐怖などの苦悩を静かに認識し続けるのです。きっと心配で不安を感じているでしょう。こんな風に実践するのです、『息を吸い込んで、不安が私の中にあるとわかっている。息を吐き出して、私の不安に微笑みかけよう』と」



「おそらくあなたには、心配する癖があります。そうすることが必要ではなく役に立たないとわかっていても、まだ心配する。心配するのを禁じて消してしまいたいでしょう。なぜなら、心配をしている時は人生の素晴らしさに触れることができず、幸せにはなれないからです。ですから、心配に怒りを感じ、心配は必要ないと感じます。でも、心配もあなたの一部であって、だからこそ心配は現れてくる。それを優しく穏やかに扱う方法を知らなければなりません」



「あなたにマインドフルネスのエネルギーがあるなら、行うことはできます。マインドフルに呼吸しマインドフルに歩くことで、マインドフルネスのエネルギーを培うのです。そしてそのエネルギーを持って、心配や恐れ、怒りを認識し、柔らかく受け入れることができます。あなたの赤ん坊が苦しんで泣いている時、その子を罰したいとは思わないでしょう。なぜなら、その赤ん坊はあなただからです。あなたの恐れや怒りは、あなたの赤ん坊のようなものです。窓からただ投げ捨てられるなどとは想像しないでください。あなたの怒り、あなたの恐れ、あなたの心配に対して、乱暴にならないでください」





瞑想の方法


座る瞑想は、本来の自分に戻ってあらゆる注意を自分に向けて慈しむことです。祭壇におられるブッダの穏やかな像のように、私たちもまだ穏やかさと安定性を放つことができます。威厳を持って真っ直ぐに座り、自身の呼吸へと戻ります。あらゆる注意を、私たちの内側と周りへと移します。精神をゆったりとさせ、心を柔らかく優しくしましょう。

座る瞑想はとても癒されます。痛みや怒り、苛立ち、あるいは喜び、愛、安らぎなど、それが何であれ私たちの内側にあるものと、ただ共にいられることに気づきます。それに押し流されることなく、そこにあるものとともに居ます。来るままに、あるままに、そして去るままに。無理したり、抑圧したり、あるいは考え事がないふりをする必要もありません。愛情のある目で受け入れ、考え事や心のイメージを観察します。自身の中に湧き上がるかもしれない嵐の中でも、静かに穏やかでいられるのです。

もし、座っている間に脚や足先が痺れたり痛くなったりしたら、静かに姿勢を調節しても構いません。呼吸を追うことで集中を維持することができるので、ゆっくりと注意深く姿勢を変えましょう。

座る瞑想を実践した後は、私たちは大抵、室内での歩く瞑想をします。息を吸い込む度に一歩、吐き出す度に一歩と歩きます。周囲の人たちに気づき、より大きな存在としての調和を感じます。皆がゆっくりとマインドフルに動くのです。




2022年1月24日月曜日

甲状腺のためのヨガ:喉を刺激し不調を予防する5つのエクササイズ
Yoga for thyroid: 5 exercises to stimulate the throat, prevent disorders



1月は「甲状腺認知月間」で、世界中の甲状腺患者や甲状腺の研究治療に携わっている人に捧げられています。甲状腺は、体内全ての細胞、組織、内臓に影響を与えるホルモンを作り出している、つまり、体が正しく働くため大きな役割を果たしている首に存在する小さな腺です。

米国甲状腺協会によれば、甲状腺疾患を持つ人の60%がその症状に気づいていません。そのため、甲状腺に影響を与える様々な健康状態について啓蒙するため甲状腺認識月間が必要となっています。今日では高血圧や肥満から起こる誰もが知るものとなった甲状腺疾患を緩和する手段や解決法を知ってもらうことが必要なのです。

甲状腺障害は、男性よりも女性に多いと考えられています。甲状腺障害の主な要因のひとつはストレスの多いライフスタイルにあります。以下の5つのヨガポーズを甲状腺障害の補完治療として、喉を刺激し、障害を予防、そして自然に治療することで元気を取り戻しましょう。


どんなヨガも始める前に医師に相談することが大切です。以下のエクササイズは今あなたが受けているいかなる治療や投薬の代替ではありません。補完としてのみ行うようにしてください。






1. サルヴァンガサナ(肩立ちのポーズ)




方法:
仰向けで横たわります。両脚を上にゆっくりと90度まで持ち上げます。お尻を持ち上げて両脚を頭の方向に伸ばします。次に、両脚、お腹、胸を持ち上げて一直線にしてみましょう。

両手のひらを背中に置いて支えにし、顎は胸に引きます。心地よい範囲で、できるだけ長くこのポーズを保ってみましょう。15秒から1分間は保ってみましょう。。


効果:
このポーズには、肩や首のストレッチ、脚や臀部の引き締め、甲状腺や腹部の内臓の刺激など数えきれない効果があります。甲状腺機能低下症、亢進症の両方によいとされ、ストレスや更年期症状の緩和を助けます。




2. マツヤサナ(魚のポーズ)




方法: 
床に両脚を伸ばして仰向けに横たわり、両手は腿の傍に置きます。手のひらは肩の近くに置いておきます。息を吸って、手のひらで床を押し肩と頭を持ち上げ、頭頂を床に下ろします。

背中をそらして、合掌した手を上げておきます。両脚を45度の角度まで持ち上げます。このポーズを10秒保ってから下ろしましょう。


効果:
このエクササイズには、胸やお腹、股関節屈筋、首のストレッチなど多くの効果があります。また、コミュニケーションと自己表現に関連する喉のチャクラ、そして叡智や知識と結びついている頭頂のチャクラという体の重要な二つの部分を刺激します。


注意:
首や背中の怪我、頭痛のある時はこのポーズは避けましょう。





3. ウシュトラサナ(ラクダのポーズ)




方法:
ヨガマットの上に膝まずき、両膝と両足を揃えます。骨盤を前に押し出して後方に倒れます。

頭と背骨を、無理なくできるところまで後方に曲げていきます。両手を足に置き、体、背中の筋肉をリラックスさせ、数秒間保ってから元に戻りましょう。


効果:
肩や背中のストレッチと強化、股関節の伸展や股関節屈筋の深いストレッチなど、ウシュトラサナは、胸を開いて呼吸を促進させるだけでなく、腹部を広げて消化や排泄を促します。首をストレッチし甲状腺の血流を増加させることで甲状腺を刺激、脊椎を緩める、腰痛の緩和、姿勢の改善や腿の脂肪を減少させるなどの効果があります。




4. ブジャンガサナ(コブラのポーズ)



方法:
お腹を下にして横たわります。両手のひらを胸の横に置き、腕は体に寄せて肘を後ろに下げます。息を吸って額、首、両肩を持ち上げます。

両腕の力を使って胴体を引き上げます。自然に呼吸しながら前を見ましょう。お腹が床についているのを確認します。このポーズを5秒間保ちます。ゆっくりとうつ伏せに戻りましょう。両腕を体の脇に置いて、頭を横に向けて休みます。


効果: 
このブジャンガサナという横たわった後屈ポーズは、背骨、臀筋、胸、腹部、肩、肺を強化し、血流を促し、体内のストレスを解消します。甲状腺の機能を高め、首や喉をストレッチすることで甲状腺機能低下症に悩む人に良いとされます。




5. シャヴァアーサナ(屍のポーズ)





方法:
仰向けに横たわり、両脚を伸ばして両腕を体の横にリラックスさせておきます。そっと目を閉じて、両足の先を心地よい自然な幅に開いておき、両腕は体から少し離してに沿わし手のひらを上にして休ませます。

自然に呼吸し、全身を地面に重く下ろし、意識をつま先に集中します。それから、意識を、つま先から頭の頂点まで、体、臓器、細胞のそれぞれの部分へと解き放ち始めましょう。心が逸れてしまった時は、そっと体に戻します。

眠ってしまわないように気をつけながら、目が奥の方へ下りていき、顎が緩むのを感じます。意識を回りの音へと向け、最も遠くの音から最も近い音までを見つけてみます。

リラックスして感じられたら、意識をそっと体に戻し、目を閉じたまま指先や足先を細かく動かし、ポーズを終えましょう。両膝を引き込んでゆっくりと片側へ寝返り、安楽座(あぐら)で座ります。その心地よい座位でしばらく休んだ後、そっと目を開けて意識をゆっくりと外側へと向けます。



効果:
深い呼吸を伴うシャヴァアーサナは、どんなヨガポーズよりも神経をリラックスさせ、すぐに体温を下げます。甲状腺機能低下症、亢進症の両方にとてもよい効果があり、夜眠れない亢進症患者のための仮眠のような効果もあり、ストレスを解消、細胞を再生し、体をリラックスさせ、そして妊娠中の女性が薬を使うことなく自身を癒すのにも役立ちます。










(出典)https://www.hindustantimes.com/lifestyle/health/yoga-for-thyroid-5-exercises-to-stimulate-the-throat-prevent-disorders-101642059191365.html


2022年1月17日月曜日

ヨガとエゴ  Vol.2
Yoga and the Ego

前回からの続きです。

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エゴを評価する


ありふれた4つの言葉「私は、私に、私の、私のもの(I, me, my, mine)」というの使い方に気づくことで、エゴの相対的なサイズ感を得ることができます。これらの言葉はもちろん日々の考えや発言の中で意味を持ちますが、時には特別の意味を含むこともあります。「私の考えでは・・・」と、誰かに向けて意見を言います。こうした時、これらの無害な言葉は、自分自身についての便利な言い方以上のものになります。


例えば、ブリハダラニャカ・ウパニシャッドという聖典のガルギャという高慢な男は、賢王アジャタシャトルに純粋な自我(「ブラフマンについてお教えしましょう」)を教えることを提案します。王はそのような智慧を聞きたいと思いその提案を受けます。しかし、どうしてもガルギャは王を満足させることはできず、王はガルギャの語る自我を認識してはいるが完全にではないと言います。ガルギャはついに、実は自分の語っていることを理解していないので王の指導に従うと認めざるを得ませんでした。ガルギャのプライドと彼の知識が不完全である問題に言及した王は、ガルギャに教えを与えるのです。


チャーンドギャ・ウパニシャッドにも同様の物語があります。このお話は、遠方で学ぶ間にエゴを大きくしてしまった、賢者アルニの息子であるシュヴェタケトゥについてです。彼が父の元に戻った時の彼は「熱心で、自分のことを読書家であると認識しており、そして傲慢であった」と書かれています。


彼の父は問題を感じとりシュヴェタケトゥに、高みにある自己について先生に教えを乞うたことがあるかと尋ねました。シュヴェタケトゥは、先生たちはそれについて何も教えてはくれなかったし、もし先生たちが知っていたら、そう教えてくれたはずだと答えます。素晴らしいことに彼の自惚れはすぐに消え去り、自己についてもっと教えてくださいと父に頼み、そうして教えが始まりました。


先生の助けがなくても、いくつかの段階を通して自身のエゴのバランスを取り戻すことはできます。大きくなりすぎたアイデンティティの感覚を変える方法のひとつは、自分自身を一人称で言及することをやめることです。三人称で自分を言及することは、エゴの大きさの観点を得るための古くからの方法です。「私は、私に、私の、私のもの」という言葉を使おうとするたびに自分の名前で置き換えます。「ポールの考えは・・・」「ポールは・・・したい」「ポールが強く感じるのは・・・」この置き換えを何度も強く行うことがエゴの評価する力強い方法となるのです。


しかしまた、この方法は裏目に出ることもあります。長期にわたると、異常な傲慢につながる可能性があります。自分自身を名前で呼ぶことは、「王位のあなた(つまり「王は話したいと願っている」というような)」が話しているような印象を与えます。そして、あなたは何か霊的なことを行っているが他の人はそうでないという意味を他人に与えてしまう可能性もあります。


エゴを把握しておくもう一つの方法は、より捉え難いものです。自分のエゴを守るために真実を曲げてしまうのに気づくことができます。ちょっとした誇張や、偽りをほのめかす過度の強調、情報の隠蔽、エゴのために物事を円滑に進めようと見え透いた嘘をつくこと。こうしたことは自分の正当化であり、隠し事をしているように感じさせます。エゴの問題に警告を与えてくれます。


チャーンドギャ・ウパニシャッドには、エゴに関する真実を語る人物が出てくる素晴らしい物語があります。聖典を学ぶ資格を得たいと願うサッチャカーマ(「真実を求める者」)という少年がいました。しかし彼は、自分の出生に疑いを持っていました。そして自分の経歴に自信がないので、サッチャカーマは先生に受け入れられるかどうか不安に思っていました。そこで、母親に助けを求めます。ところが母親は「あちこちの家でメイドとして働いていた時にあなたを身籠ったので、父親が誰なのかわからない」と驚くべきことを明かします。少年は、教わりたいと考えていた先生に、母親が言った通りに話をしました。「私の母親は、あちこちの家でメイドとして働いていた時に私を身籠ったので、父親が誰なのかわかりません」すると先生はこう答えます。「こんなことを説明することは、徳のない者には敵わない。私についてきなさい、息子よ。真実を偽らなかったお前を弟子として受け入れよう」




エゴを広げる



サッチャカーマのエゴは、非常に力強いものでした。多くの場合、人のエゴというのは根底にある弱さに苦しみます。その欠陥はヨガではアシュミタ、「自分であること」と呼ばれますが、内にそれだけで存在する純粋な意識に気づくことなく、世界とその中にある自分の役割を本能的に認識した結果です。短期的には、エゴは、「内」からの教訓を聞くことよりも外見(名声、評判、利得)を保つことの方が簡単です。そして、精神的な導きが通り過ぎていく日々の生活の中では、エゴは、多忙な電話オペレーターがメッセージを長い間保留にしすぎて不注意から無くしてしまうかのように振る舞います。


それでも、自分自身のどこかで、指の爪や経歴を長くする(自分自身で作り上げた外観を大きくする)ことが人生の目的ではないのではないかと感じています。そして、ヨガは、この世界に行きながらもより高みの源から強さとアイデンティティを得ることは可能だと伝えています。重要なのは、どこに優先順位を置くかということです。外観を保つという巨大な作業で費やすエネルギーを少しだけでも手放すことができた時、自分の内側にある何かもっと実りあるものが手に入ります。


その方法は?精神的な教えの素晴らしい集積であるバガヴァッド・ギーターが、それを垣間見せています。ギーターは、人生の精神的な目的は、心とエゴに隠されている無限の意識を紐解くことだと思い出させてくれます。それによれば、自制がなければエゴが健康であることはあまりありません。内にあるより意味のあるアイデンティティの覆いを外すことで、アイデンティティを見かけと同一視するエゴの癖を止める必要があります。これは、まずは瞑想の中で可能となり、そして徐々に日々の暮らしに広げていけます。あるいは、その順序が逆のこともあるでしょう。


柔軟性、謙虚さ、陽気さ、献身、誠実さ、他者を傷つけようとしないこと、こうしたことが進歩の印です。しかし、この世で行うべき行動から身を引くことは、そのリストにはありません。「行動に完全に心身を向けよ。行動しないことや不十分な行動から、何が得られるというのか」これは、ギーターのメッセージの素晴らしい意訳です。エゴが、傲慢に振る舞う時、責任を逃れようとする時、批判や非難の圧力にもがいている時には、ただ注意すること。これらは、エゴには、より高い観点により沿う必要があるという兆候です。


「どんな観点?」と思うでしょう。ギーターの観点の先端は、その結果への個人的な執着を捨てて行動することに向けられています。これは、朝から晩まで(寝ている時も)自分のために行動を行う欲望とともに暮らす毎日の生活でも同様です。つまり、エゴの根底にある欠陥は、目的を持った人生を通して正すことができると言えるでしょう。奇跡は必要ありません、ただ静かに気づくだけです。エゴが期待を持たずに働く時、偽りのアイデンティティは消え去り始めます。それは間違いありません。


ヨガの目的はエゴを消滅させることだと恐れる人もいます。その人たちは、エゴは捨ててはならないアイデンティティを与えてくれ、瞑想は自我の基本そのものを脅かすものだと言います。そんな考え方に、ヨギは驚きを隠せません。ヨギにとってエゴとは、自分のアイデンティティのもっとより深い状態に到達する限りは、ただの道具にすぎないからです。ヨガの道はエゴを消滅させることではなく、満たすものだと考えます。ペルシャの有名な神秘主義者ルーミーはこう記しました。


「間違った行いと正しい行いを超えたところに草原がある。そこであなたに会おう。魂がその草の上に横たわる時、世界は語れないほどに満たされる」

2022年1月13日木曜日

ヨガとエゴ  Vol.1
Yoga and the Ego

自我とは、意識とは何でしょう?
目に見えているものは本当にそこに存在しているのか、目に見えないものの存在はどうなのか。ヨガ哲学の一部についての記事です。
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エゴ(自我)。よく耳にするごく当たり前の意味を持つこの言葉は、心の中にある「自分」、自分自身について持っている感覚のことを指します。普段、エゴについて考えるときは、感情と結びついています。エゴは、安心や自信を感じたり、怯えていたり不安だったり、あるいは傷ついていると感じることもあるでしょう。希望や欲望に押しつぶされたり、気まずい選択に葛藤していたり、あるいは他人の要求や非難に抑制されたりするかもしれません。言い換えれば、エゴが落ち着きと喜びを求めているにもかかわらず、それが常に楽しみや歓喜の源というわけではありません。


「エゴ」という言葉を使うことの多い精神分析医の間でさえ、エゴが何なのかについて心からの同意はありません。この言葉自体はラテン語の借用です。ラテン語の短い文章 Ego「私は(それだ)」のように「自分」を意味します。ジグムンド・フロイドが、精神の一部を示すために使用していた言葉から、現代の意味を持つようになりました。その精神の部分が、本能的な衝動を抑えて倫理や社会的規範に対処しようとすることから生まれる葛藤を解決するための手段だ、と彼は信じていました。しかし後に、エゴは実際に存在するのかという議論が心理学界で起こります。そして、もちろん、エゴを顕微鏡で確認することは誰にもできないのです。


「そうかもしれない」とあなたは考えるでしょう。「でも、人生で確固としたエゴを何回か見てきたし、エゴの存在について全く疑問を感じない」そうした観察は、この言葉にもう一つの意味を与えます。私たちが「エゴ」という言葉を使うのは、他人との関係の中で映し出す自尊心の物差しとして捉えています。大きくなったエゴは、自分をかなり過大評価した自尊心です。またそれは、良心の声を軽視してしまっていることを示唆します。


こうした見解を前提に、健康的なエゴとはどのようなものなのでしょうか?そして、どれが健康的なエゴだとわかるのでしょう?これはもちろん本が一冊書けるほどの内容ですが、話を戻すと、ヨガではこの問題についていくつかの興味深くやりがいのあることが語られています。




ヨガにおけるエゴ


ヨガでは、哲学と心理学が密接に結びついており、一方の概念が他方を明らかにしています。例えば、ヨガ哲学の信条では、すべての個人は意識や気づきで満たされています。しかし、ヨギたちは、現代の理論とは異なり、意識は自然に湧き起こり、進化によって宇宙の奇跡がもたらされたわけではないと考えています。彼らによれば、意識は永遠で、それだけで存在し、現存する宇宙の中心に存在しています。それはあらゆるところに、いつの時も、そして全てのものに存在しています。全ての植物や動物、人間の命はその一部を映し出しているのですが、意識はそれらの存在の表れには全く依存していません。


この純粋でそれだけで存在する意識という哲学的背景のもと、精神(心)がどのようなものかという像が生じます。精神は自覚はしてはいませんが、意識の道具です。精神は、個人を外の世界と(感覚を通して)交流させ、内省の道具となります。ですから、サンスクリット語での精神を指す言葉のひとつは「Antah karana (内なる道具)」なのです。そして、古代のある時点で、この類稀な精神的道具を所有した種が「man(人)」であり、「考える、思考する」という意味のサンスクリット語の動詞 「man」が語源となっています。


同様に、精神には四つの機能があります。内なる傍観者、霊的理知と倫理観の源として働く、知性。日々の思考や気づきの手段として機能する、より低い精神。維持する能力や記憶。そしてエゴ。この意味においてのエゴはサンスクリット語で「Ahamkara」です。興味深いことに、これはサンスクリットの代名詞「I(aham)」と「作り手」「引き起こす人」という意味の「particlekara」の組み合わせです。つまり、この言葉は文字通り「自らを作る、あるいは引き起こすもの」という意味になります。


つまりヨガは、哲学的なもの心理的なもの、二つの注目すべき考えを示しています。一つは、ヨガにおける「見る者」が伝えてくれるのは、内側に知覚している意識、そして精神だと捉えているものは、実は実際には見えない内側にあるより深い意識の表れであるということです。そして、当たり前だと思っている個人のアイデンティティの感覚は、私たちの最も根底をなす自我ではありません。それは心理的なプロセスの結果です。精神は、エゴあるいは個人という自我という一時的なアイデンティティを与えてくれ、それは心理的な外見として作用します。しかし、この外見はもっとより深みにある主要なアイデンティティ、つまり根底をなす自我を、知り得る純粋な意識を覆い隠します。しかしながら、エゴのバランスが崩れれば崩れるほど、意識をそのまま受け止めることが難しくなります。

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次回に続きます。

2022年1月6日木曜日

お腹の調子が悪い?消化の火を刺激して維持する方法 
Tummy Troubles? How to Ignite and Maintain Agni

年末年始のご馳走三昧、そして休み中の運動不足でお腹の調子が悪くなったりしていませんか?今日はそんなお腹に、アーユルヴェーダのヒントです。
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楽しいとは言えないこんなようなことはありませんか?お腹の調子が悪くて、そこにいるみんなにわかってしまう。しばらくは必死で堪えて(周りの人も気づいていないと願って)無視するか、あるいは一時凌ぎに薬を飲むかも知れません。けれど、遅かれ早かれ消化不良の痛みが襲ってくるのです。


どうしてでしょうか?アーユルヴェーダの専門家であるロバート・E・スヴォボーダ氏によれば、「消化不良は全ての病気の元であり、その症状から他の全ての症状が起こる」からです。アーユルヴェーダでは、健康の鍵は正しく働くアグニで、消化の火という形で栄養を吸収しアーマと言われる老廃物を取り除くのを助けます。消化がうまく働いていると、体の全ての組織や臓器に栄養を与え健康を支えます。アグニのバランスが整って強いときは、以下のような恩恵があります。


  • 消化の働きが効率的になる

  • 毒素の蓄積が最小になる

  • 体内の温かさ

  • エネルギーと生命力
  • 心が明晰になる

  • 精神力

  • 健全さ


けれど、アグニが弱く、消化が不完全で毒素が残ると、身体中の血液やリンパ、エネルギーの流れを妨げます。こうした老廃物を自分で取り除くことができないときは、アーマが蓄積されて病気になります。アーマの蓄積の兆候には以下のようなものがあります。

  • 消化の働きが悪くなる(膨満感、ガス、便秘、下痢)

  • 毒素の蓄積の表れ(舌苔、体臭、過剰な粘液、嗅覚異常、混濁尿)

  • 体内の冷え

  • エネルギーが低くなる

  • 心がぼんやりして、忘れやすい、混乱する、集中できない

  • 精神的、感情的に弱くなる

  • 病気


実は、消化の力を整えることは可能です。おすすめの方法をいくつか見てみましょう。






太陽の力を活性化する


アグニは太陽神経叢(みぞおち)にあります。熱を作ってこの場所にある筋肉を強化することで、火を焚きつけて消化力を高めることができます。

習慣的な有酸素運動をおこなう。 アーユルヴェーダの一般的なルールは、額や腋の下、背骨に沿って汗が出るまで毎日運動することです。

腹筋を強化する。毎日、腹筋運動、クランチ、脚上げなどを5-10分行う。

プラナヤマを練習する。 消化力を高め全体的な健康を維持するために最も大切なエクササイズがプラナヤマの実践です。資格のある医師のもとで教わるべきアグニ・サラというものもありますが、まずは、腹筋の引き締めと上下に激しく動かすパンピングという2つのステップを覚えましょう。




食べる前に


腹式呼吸を5分間行いましょう。これによって体の休息と消化の反応やリラックスする神経が活性化され、消化器への血流が増加します。


右側の鼻腔が開いているか確認します。 ヨガの考えでは、どちらの鼻腔が優勢かによってエネルギーに微細な影響を与え、消化を助けたり妨げたりします。左の鼻腔が優勢の(開いている)ときは、エネルギーはより陰(冷たく受け身的)。右の鼻腔が優勢の時はエネルギーはより陽(熱くアグレッシブ、活動的で消化には理想的)になります。


ヒント: もし、食事の途中で、優勢な鼻腔が右から左に変わったら、食べるのをやめます。これは、十分食べたという体の微細な信号です。また、食後に左側を下に5分間横たわることで、右の鼻腔を開いたままにできるため、消化力が刺激されます。




食事でするべきこととしてはいけないこと


消化の火を点け(たり消したりす)るのは、何を食べるかではなくどう食べるかだと、アーユルヴェーダの医師たちは考えています。有効な食べ方6つのヒントです。

すること

  • バランスの良い、野菜中心の自然食法に従う

  • 最も重い食事はアグニが最も強い正午あたりに食べる

  • 食べない時間を毎日12時間作る(例:午後7時から午前7時まで)

しないこと

  • 食事中に冷たい飲み物を飲んで消化の火を消すこと

  • 食べ過ぎでアグニを疲弊させること

  • 夜遅い時間の軽食やジャンクフードで内臓を弱めること




腹部マッサージ


調子の悪い(そして無視していた)お腹には、愛情をこめた優しいケアが驚くほど効きます。
オーガニックのごま油を温め、静かな場所で灯りを暗くし、横たわって、5分間ほど時計回りにお腹をゆっくりと優しく撫でます。これによって、ガスの溜まったお腹が鎮まって、消化力を高めるとともに、体や呼吸に意識を向けやすくなります。