2017年4月5日水曜日

セツバンダーサナのお話
The Mythology Behind Setubandhasana (Bridge Pose)

セツバンダーサナ、またはブリッジ・ポーズと呼ばれているアサナ、
ヨガをされている方なら、結構、頻繁に行うことが多いのではないでしょうか?
今回は、このアサナに関する神話など深く掘り下げた記事です。
今度このアサナをするときは、少し違った風に感じるかもしれませんね。
-----------------------------------------

「神の名を絶え間なく繰り返すこと(ジャパ、スマラナ)は、死すべき運命のサムサラ(訳註:輪廻)、この世の存在の海を渡るためのやさしい方法である」
ースワミ・シヴァナンダ


インドの偉大な叙事詩であるラーマーヤナでは、女王シーターが魔王ラーヴァナにさらわれ遠く離れたランカ島に閉じ込められます。猿のスーパーヒーローであるハヌマーンは、そのスーパーパワーで海を跳び越え、シーターに助けがすぐ行くと伝えます。しかし、彼独りではランカを制圧はできないし、誰も彼のようには跳べないので、ラーマ王と動物たちの軍はシーターを助けるために橋を造らなければなりませんでした。

「石を持ってこい!」ラーマが命令し、熊や猿たちは海岸の周りにある丘から巨大な岩を引き抜いては寄せる波の中へと投げ込みました。しかし岩は浮かずに沈みます。造ろうとしていた橋が波に消えていくのを見ている動物たちの気持ちもまた沈んでいきました。

さて、熊や猿のラーマ軍のリーダーはハヌマーンでした。そして、ハヌマーンにとってラーマは究極の王様だったのです。ハヌマーンはラーマのことをあまりにも愛していたため、あっちにもこっちにも彼の名前を何度も何度も書いていました。あるとき、ハヌマーンが胸を開いたら、心臓に書かれた「ラーマ」の文字がはっきりと見えたといいます。動物たちとともに途方に暮れ、失望してランカ島を見つめながら海岸で立っている時、ハヌマーンはいつものように「ラーマ、ラーマ」と砂や岩の上に指で書いたのです。この癖が素晴らしい発見につながりました。海岸の石に「ラーマ」と書いたら、石が浮かんだのです。その美しい名前の力によって、そしてハヌマーン自身の愛と信頼によって浮かんだのでした。みなも慌てて石を集めて「ラーマ」と書き始めました。あっという間に、全軍が渡るのに十分広く強い土手道が、インドの最南端からランカ島へ海を越えて伸びていきました。今日でも、インドのタミル・ナドゥの南東端とスリランカの北海岸を分かつ海はセツサムドラム「橋の海」と呼ばれています。そして、ラーマセツと呼ばれるサンゴ礁でできた橋が二つの海岸を繋いでいるのです。




ポーズ


このポーズには様々なヴァリエーションがあり、動的なものもあれば、もっとゆったりとしたものもあります。どちらも穏やかな後屈であり逆転のポーズです。後屈としての力強さを強調するか逆転としての鎮静効果を使うかは、どのように、またはシークエンスのどこで行うかが鍵となります。

両腕を身体の脇にして上向きに寝ます。足の内側を平行にし、両かかとが座骨に並ぶように両膝を立て足裏をマットにつけます。脛は垂直にしましょう。両足の四隅(親指と小指の付け根、踵の内側と外側)を押します。マットの端をつかんで、両方の肩甲骨を引き寄せながら胸骨を持ち上げます。首の後ろと床の間に空間が残るように気を付けましょう。

マットをつかんだまま、骨盤を持ち上げましょう。仙骨の中心を天井に向かって上げ、尾骨を両膝に伸ばします。胸骨を顔に近づけます。(もしこれで首の後ろが床についてしまったら、顎を少しだけ胸から遠ざけ、しばらく後頭部をマットに押し付けます。頸椎が持ち上がって首の自然な湾曲が維持されるはずです)胸を持ち上げたまま、首の後ろのスペースを保ったまま、マットを離して小指側を床に向けて手を組みます。肩の上から手首の外側にかけて、両腕を床に押し付けます。ひもに通したビーズのように、骨盤を両膝に向かってそして胸を頭の方へスライドするように、背骨を長くします。

静かに呼吸しましょう。脛が垂直のまま保てるなら、かかとか足首を掴みましょう。足首の前をつかむ(あるいはストラップを使って)のは、チャトシュパダサナ(四つ足のポーズ)と呼ばれるバリエーションです。肩甲骨を深く身体の内側に引き寄せ、仙骨をもっと持ち上げましょう。体重を「肩の足」の間でバランスよくかけ、まるでもうふたつ足があるかのように両肩の上端の上に「立ち」ましょう。吐きながら、手を解放して床に骨盤を下ろします。1,2呼吸したら、手を組み替えて繰り返します。





ポーズをホールドする間、身体の2か所の大きな曲線に注目しましょう。尾骨から頭への長い曲線、そして胸の前の曲線です。鎖骨を羽根のように広げ、胸骨を持ち上げて広げましょう。力強く、胸の中心を身体の一番高い位置まで持ち上げます。胸の中心に呼吸を淹れましょう。最後に、吐きながら下りてきます。




考察


悲しみや落胆、怒りで胸が石のように重く感じた時を思い出してみましょう。それを解消するのに何が役立ちましたか?胸を持ち上げて開き、静かな呼吸をしてこのポーズをとりながら思い出してみましょう。胸に刻まれたどんな名前やシンボルが、胸を軽く浮き上がるほど強くしてくれますか?ハヌマーンにとって、ラーマの名前が強力だったのです。それが、ラーマが愛するシーターと再会するための橋を造らせたのです。何があなたを変えたでしょう?あなたのマントラ、強い考えは何でしょう?あなた自身の分かたれた部分とつながるために何が必要なのでしょう?

スワミ・ラーマはこう書いています。
「世界に存在する教え全ては、妄想の沼地を越え人生のもうひとつの岸にたどり着くための橋として、マントラと呼ばれる音節や音、単語や言葉を使う。セツのマントラは、瞑想者に内側の一点に心を集中させ、最終的に意識の中心へ、平安と幸福、至福が存在する不変の静寂の奥地へと導く」

マハトマ・ガンジーにとって、「ラーマ」は名前であり、音であり、彼自身とインドの解放のための彼の努力を支えるものでした。誰もが知っている通り、彼はその名を口に亡くなりました。解放への葛藤は個々人の人生で続いていて、だから私たちはヨガを実践するのです。今日、セツバンダーサナを練習し、頭と心で「ラーマ」と言い、何が起こりましたか?

私の最初の先生であったスリ・ブラフマナンダ・サラスワティは、ラーマーヤナは寓喩と呼びました。シーターは精神を意味し、ラーマは魂、そしてラーヴァナはエゴであると。エゴが精神を乗っ取った時、精神と魂が分かれてしまう。練習を通して、それをもとに戻すため橋を造らなければならない。

シーターを助けた軍は、ラーマへの忠誠と献身に導かれた直感的な動物たちで構成されています。聖なる源につながる直感的な智慧にあなたの身体は共鳴していますか?このお話では、追放された知性が、動物たちによって表現された身体、そしてハヌマーンで表された呼吸の働きを通して救出されます。(ハヌマーンの父はヴァ―ユ(風)なのでプラナヤマの守護神なのです)

あなたとあなたの努力を結び付けてくれるのは、どんな力やシンボルでしょう?中毒性のあるエゴによる行動によって盗まれ捉えられたあなたの一部である知性を、区別できるでしょうか?

足から頭まで、身体全体を通る呼吸を感じましょう。身体、心、精神すべてに流れる生命エネルギーを感じましょう。呼吸とともにあなたのマントラを身体中に伝え、私たちがヨガと呼んでいる内面の結合へとつなぎましょう。


(出典)https://yogainternational.com/article/view/the-mythology-behind-setubandhasana-bridge-pose

0 件のコメント:

コメントを投稿