2017年9月23日土曜日

シャヴァサナ:解放と静寂、静止のポーズ 
Shavasana: The Posture of Relief, Silence, and Stillness

今回はシャヴァサナについてです。
まだヨガを始めて間もないという方でも、一度は必ずしたことがあるのではないでしょうか。回復・休息のポーズですが、最後のシャヴァサナの時間にマットを丸めて帰ってしまう方が(私のクラスではありませんが)時折いらっしゃいます。「シャヴァサナがなければヨガではない」と教えられてきた私にとって、この至福の時間を経験せずにいるなんてもったいないと思うのですが。
瞑想への第一歩とされるこのポーズについて、少し見てみましょう。
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まだヨガを始めたばかりの頃、すごく難しいポーズと軽々とこなす熟練した先生のワークショップに参加しました。その週末、彼女にとってヨガがどんなに大事かを語りながら、先生は将来の夫となる人と出会った時の話をしてくれました。彼がヨガの何がそんなにすごいのかと尋ねたので、先生はシャヴァサナ(屍のポーズ)を教えました。そうしたら「これすごいね。これがヨガだというのならぜひやりたいよ」と彼は言ったそうです。そしてヨガを始めたのです。それ以来二人は幸せに過ごしているのだそうです。

どんなアサナでも教えることができたはずなのに、屍のポーズを選んだとは少し変に思えます。簡単そうだし、どんなバカでも床に横たわって目を閉じればいい。それで?屍のポーズを過小評価するのは簡単です。アサナといえば、やったことのない人には絶対にできない筋肉と骨を複雑に組み合わせたような、体操選手がやるようなポーズをイメージします。つまり、筋肉レベルの努力と技術が必要なポーズです。

シャヴァサナは、面白くもおかしくもないという人が多いでしょう。じゃあなぜやるのか?なぜなら、その効果は数えきれなく、他の多くの精神的な練習の基本となるからです。シャヴァサナは、心を落ち着かせ意識に集中してポーズの準備をするために時にセッションの初めに行われたり、疲れを取るためにポーズの合間に少し行われたり、そして大抵は体を休ませ心を落ち着かせエネルギーを全身に行き渡らせるために練習の最後に行われます。全てはリラクゼーションのためなのです。


シャヴァサナでリラックスするということ


私たちは、本当にストレスにさらされています。現代社会の高度のストレスが健康に悪影響を与えるという文書が今まで多く書かれてきました。簡単にいえば、出勤途中で事故に遭いそうになったとか、大切な人と口喧嘩をしたとか、突然の来客があったりなど、ストレスは普段の生活の中でどんどん積み上がっていきます(ストレスの多い出来事が常に悪いとは限りませんが)。身体的、感情的に危険を感じると、自律神経が赤信号にかわり(「闘争逃走」シンドローム)、内分泌、呼吸器、循環器、消化器の調整など維持・回復機能が犠牲になります。自律神経が常に興奮していると、体は休んで回復する時間を持つことができません。緊急モードでは誰も長時間、正常に機能することはできないのです。

屍のポーズは神経を回復モードに戻す手助けをしてくれます。これはとても大切で、神経が素早く「闘争逃走」モードに入っても回復モードにゆっくり戻してくれるからです。リラックス状態で神経と身体機能を落ち着かせることで、私たちはエネルギーを使えるようになります。自律神経に支配されている筋肉から緊張が解け、閉じ込められていたエネルギーが解放されます。そうしてリラクゼーションの後に爽快さを感じるのです。またこの新しく使えるようになったエネルギーが意識をより高くし、防御を外して無意識に向かわせ、私たちの創造的な局面が目覚めるのです。そしてより深いレベルのエネルギーに触れることができるのです。

リラックスするには今の瞬間にいることです。力を抜き、評価、義務、自己批判、周囲の環境、他者を手放します。リラクゼーションには信頼が必要です。屍のポーズでは、体の前面と内臓があらわになって脆弱になります。目は閉じられ、注意を向けることもできません。ただ横たわるのです。深いシャヴァサナでは意識全体が変化します。「今」に完全に意識を向けながら別の次元に存在します。心は活発で注意深く、それでいて安定して穏やかです。その結果、肉体と精神の両局面の力強い回復が得られるのです。


シャヴァサナの練習


誰にも邪魔されないような静かな場所と時間を見つけましょう。両脚を前に伸ばして床に座ります。床が硬いようであればブランケットか薄いマットを敷きましょう。背中を丸めて床に両肘を下ろしながら、両足と骨盤は動かさずに徐々に脊柱を床に下ろします。体全体が床に降りたら、両脚をリラックスし、つま先が自然に外側に向くよう骨盤の外に向かってゆったりと力を抜きます。尾骨は床につけたまま、腰は自然な曲線を保つよう少し浮かしましょう。腰が楽になるよう、お尻の肉は仙骨から遠ざけるようにしましょう。骨盤の背面全体が広く柔らかに感じるでしょう。腰に不快感を感じたら、膝の下に枕を置くか、両膝を内側でつけたまま曲げます。

さて、下腹部を解放し、胴体全体も力を抜きましょう。そうすれば、脊柱の中心から広がる開放感を感じるでしょう。両肩を下げ、両腕の内側が見えるよう広く外へと下ろします。肩は床に平らにしておきましょう。手のひらは上に向け、指は自然に曲げておきます。もし手が床に着かなければ、枕で前腕を支えましょう。

特に長いセッションの場合は、頭の下に平らで硬めの枕を置きます。頭を左右に何回か振って首を緩めます。そして、両耳が両肩から同じ距離になるように頭骨を中心に戻しましょう。顎先は少し引いて柔らかくし、喉元と下あごをリラックスさせ、首の背面を長くします。

目を閉じましょう。脳の活動は目の動きに密接に関係しているので、目は動かさず柔らかくしておきます。両目を覆う布、あるいは目的に合ったアイバッグを使って目の緊張を解くと良いでしょう。心が落ち着きます。視覚以外の感覚も落ち着かせ、顔と顎を完全にリラックスさせて自分の内へと向かいましょう。

数分してから、まっすぐでない箇所を調整します。脊柱を長く、肩甲骨は広く、骨盤も広く、頭と首と胴体はまっすぐにしましょう。最小の動きで調整したら、動きを止めます。
心を受け身にしていきます。心が集中できれば、平穏と静穏が訪れるでしょう。



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