ヨガでは山のポーズ(タダーサナ)と呼ばれることが多いこのポーズ、
正しい二足歩行ってこんなにも難しいことなんだと改めて気づくことが多いはずです。
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あなたは猫背?それとも腰を突き出してる?多分、幾分かはそのどちらかでしょう。そしておそらくヨガクラスに初めて出てタダーサナ(山のポーズ)をやってみるまで、自分の姿勢についてそんなに考えたことなどなかったでしょう。
初心者の間は、両足で地面に根を下ろしながら、背骨に沿って長くなり、肋骨の下部が突き出さないように胸を開き続け、お腹と顎の緊張を作らないで脚の筋肉を強く持ち上げるなんて技をマスターするなんて驚くほど複雑なのです。でも最終的には、タダーサナをするにはたった一つの簡単なことが必要なだけなのです。健康的な背骨の自然な曲線を支える方法で立つだけ。なのになぜそんなに難しいのでしょう?なぜ、ヨガで良い姿勢をマスターするのにこんなに努力がいるのでしょう?背が高くなってより健康になったような気分でクラスを出たのに、帰宅する車のシートの上で前かがみになったり、いっぱい詰まった重いヨガバッグを背中に担いで後ろ向きに傾いたりして?
簡単に言うと、現代の生活は良い姿勢をしにくいのです。机の前に座ってコンピューター画面を見続ける。移動の時は、車だとか(もっと悪いのが)飛行機だとか。椎骨の支持なんかよりかっこよく見えるようにデザインされた分厚い椅子でぶらぶら過ごすのです。座りっぱなしでなければ(少しの例外を除き)、こんなに腰や首の問題が蔓延することもないのです。食べ物を入れた大きなカゴを優雅に頭の上に乗せている女性を想像して見てください。そんな重いものを乗せるためには、背骨と姿勢を保つための強い筋肉が完全に一直線になっていなければなりません。座ってばかりで動画ばかり見ていては、そんな強さやアライメントなど得られません。けれど、定期的にヨガを行うと可能なのです。
良い姿勢の法則:この3つの方法を試そう
身体を良いアライメントにするには、3つの方法があります。まず、自分の姿勢や生活スタイルを見直して気づくことです。次に、いくつかの簡単なポーズをいつもの練習に組み入れて、自分の姿勢の問題に対するヨガを作ります。最後に、新たに持つようになった自分のアライメントの問題への気づきを、毎日の生活に取り入れていくことです。
どう行うかに入る前に、正しい姿勢の解剖学を理解しなければなりません。座っていても立っていても、背骨はあるべき自然な曲線になっています。首と腰は少し前にカーブしており(優しい後屈のように)、上背部と背中の真ん中あたりは少し後ろにカーブしています。ヨガの練習をする時は、多くの立位のポーズ、ほとんどの座位のポーズ、シルシャーサナ(頭立ち)やアドムカ・ヴルクシャーサナ(逆立ち)など逆転のポーズで、この最適な曲線を維持することを学んでいきます。
もし、習慣的にこのカーブが緩くなったり強くなったりしていると、異常な姿勢が身体に染み付いてしまいます。首や腰の曲線がなくなるなど、こうした異常は様々な形で起こりますが、ここでは二つのよくある問題に注目しましょう。一般的に頭が前に突き出ている猫背(脊柱後弯)、そしてその逆は脊柱前弯です。こうした異常な湾曲は、多くの痛みを伴います。筋肉疲労、関節痛、椎間板異常など、理学療法士や医療関係者が毎日治療を行なっているようなものがたくさんあります。
正しい曲線を維持することは問題の一部でしかなく、効率的に機能するには、骨格構造もまた垂直に並ぶ必要があります。つまり、立っている時は両耳が両肩の上、両肩は腰の上、そして腰は膝と足首の上になければなりません。身体のどの部分もこの垂直ラインから外れてしまうと、その隣の筋肉が疲労を感じます。例えば、重力に逆らって頭の重みを持ち上げることで上背部と首は疲れて痛みが出ます。
ですから、猫背のことをとやかく言うよりは、単純にまっすぐ立つことが人生を変えると気づきましょう。正常な背骨の曲線を維持し姿勢をゆったりと垂直に保つことを身体に覚えさせれば、その後ずっと気分よくなることでしょう。そしてそれが重要なのです。
前傾か後傾か?評価してみよう
ドア枠に立つことで、頭が前すぎたり後弯しすぎたりしている状態も測ることができます。ドア枠に後頭部をつけると顎が上に向いてしまうことに気づいたなら、胸椎が後弯しすぎだということでしょう。過剰な後弯と同時に頭が前にくることはよくあることで、それが首の筋肉と椎間板にかなりの疲労を与えます。
また、前弯が強くなる一方で過剰に後弯するなど、姿勢の問題は組み合わさっていることがあることを知っておかなければなりません。その場合は、まず骨盤と腰の正しいアライメントを整えることに集中してから、背骨へと移った方が良いでしょう。
評価が終わったら、毎日、仕事や家、学校など長い時間を過ごしている場所の家具をじっくり見てみましょう。支えのあるベッドや椅子、注意して組まれたコンピューターを使う仕事机は良いアライメントを促進します。その一方、緩んだベッド、デザインの悪い椅子、間違った高さに置いたキーボードは、姿勢を悪くします。背骨の健康への旅を支えてくれる良い家具を選びましょう。
デスクワークをするヨギのための姿勢修正ポーズ
座ることは、全ての悪の根源ではないものの、前弯・後弯のどちらの一因にもなります。仕事中ほとんどの人は、机の上の書類を見たりコンピューター表示を読んだりするために、無意識に頭を前に傾けています。腕もまた、多くの場合キーボードに向かって前に引っ張られています。見るからに、これらが前のめりの垂れ下がったような姿勢の要因になっています。
机に向かって背中を丸めると、胸は沈み、心臓や肺、横隔膜を圧迫します。背中を丸めることはまた、背筋を疲労させ、伸展しすぎて弱めてしまいます。脊柱後弯の場合にこの癖を直すには、胸の筋肉をストレッチし、胸椎と肋骨の柔軟性を高め、背筋を強く短くすることが鍵です。支えのある後屈は大胸筋をストレッチし、胸を開くのに大変良い方法です。また、脊柱の最も硬い場所である胸椎の可動性を高めることもできます。
中背部を支えている筋肉を強化、短くするには、シャラバーサナ(バッタのポーズ)やブジャンガーサナ(コブラのポーズ)を練習しましょう。肩甲骨を正しい位置で支える筋肉(特に僧帽筋、菱形筋)とともに、背骨を平行に走る長い筋肉を効果的に強化するポーズです。猫背の姿勢では、肩甲骨は大抵の場合胸に向かって落ちこみ、耳の方に丸まっています。ブジャンガーサナもシャラバーサナも、中背部が肩甲骨を正しい位置(耳から離れ、肋骨背部に平行)に保つように訓練します。
一日中座っているのもまた、腰と骨盤の深刻なアライメントの間違いを引き起こします。長時間の座位により股関節の前面に交差する股関節屈筋(腸腰筋、大腿直筋、大腿筋膜張筋などなど)が短くなります。毎日長時間、定期的に股関節屈筋のストレッチをせずに座り続けると、徐々に正常の長さでなくなり、立っている時も骨盤が前に傾きます(骨盤前傾)。強い前傾は多くの場合、過剰な前弯を引き起こし、腰の筋肉に慢性的な緊張や痛みの原因となります。また、椎骨がお互いに重なり合っている場所の双方に沿ってある小さな関節、椎間関節を圧迫して腰痛を起こすこともあります。椎間関節は大きな荷重に耐えるようにはなっておらず、圧迫により関節の軟骨の内側を磨耗し、関節痛を起こします。不幸にも軟骨が磨耗していることに気づかないまま過剰な前弯のまま座って立って歩き、慢性的に痛みのある腰の関節痛があることに気づくのは何年も経ってからなのです。
もしこの分類に当てはまるなら、こうした硬い股関節屈筋を伸展するストレッチをヨガの練習で重視しましょう。ランジやヴィラバドラサナ I(戦士のポーズ I)を日々の練習に組み入れるか、最低でも週に2、3回は行いましょう。もちろん、太陽礼拝の一部にこのストレッチを含めても良いですが、股関節屈筋のストレッチは1-2分間ホールドすることが理想的です。筋肉が温まる練習の最後に、股関節屈筋の長いストレッチを追加してみましょう。呼吸に集中し、リラックスして腰部の前に交差するこの筋肉を伸ばしましょう。
また、ランジやヴィラバドラサナI で、尾骨を床に向けて引き下げながら骨盤の前面を腿から離して持ち上げ、後傾を練習しましょう。この動きは、腰の椎間関節の圧迫を解きスペースを作ります。
これらの動きに加え、腹筋を強化することで骨盤の前傾を減少させ、内臓を支え、腰の怪我のリスクを減らすことができます。体を丸めるカールアップやクランチなどのエクササイズは、腹筋の上部を鍛えます。しかし、腹筋上部が強く硬くなりすぎると、呼吸を阻害し肋骨を引き下げ、前弯を強めて腰の正常な曲線を平らにしてしまうこともあります。その代わりに、ナヴァーサナ(船のポーズ)やウルドヴァ・プラサリタ・パダーサナ(脚上げ)などのポーズを行なって、腰と骨盤を支持するのに最も重要な腹筋下部を強化しましょう。
より良い姿勢のための毎日行うヨガ:ヴィラサナ
問題の箇所が背中の上の方か、下の方かそれともそのどちらもかに関わらず、1日に1、2回ヴィラサナ(英雄のポーズ)で数分座ることをお勧めします。これは良い姿勢の習慣をより強固にする素晴らしいポーズです。全ての背骨の曲線の正しいアライメントを教えてくれるからです。ヴィラサナを毎日少しだけ練習すれば、座った時にそのアライメントへの気づきにもっと容易に集中することができるようになります。ソファや机の前に座るときも、ヴィラサナで覚えた同じ動きをするようにしましょう。
ヴィラサナで落ち着いたら、片方の手を腰に置きます。その上に座っているはずの尾骨を下方に下げましょう。この状態で、前かがみになっていて腰椎が平らになっているのを感じます。今度は、恥骨を前方の床のように回しながら、さっきと逆の動きをします。骨盤が前を向き腰椎が過剰に後弯しますが、これは手で感じることもできます。これら二つの極端な状態から前後に動き、その間のバランスの取れた場所を見つけましょう。そこでは、坐骨の真上に座っていて、骨盤と腰に健康的なアライメントであることを感じられるはずです。
次に、上背部に意識を移します。前弯を少なくするために、胸骨を心臓と肺から遠ざけて持ち上げるイメージで、背筋を使って背骨を上方に伸ばしましょう。持ち上げる時は、腰の曲線を強めないよう、そして胸骨の前を前に突き出さないようにしましょう。肩甲骨は耳から遠ざけて降ろし背骨の方向に閉じないようにしながら、鎖骨をゆったり広げていきます。
背骨を上方にあげながら、頭は前に倒れないよう気をつけましょう。頭が前に出てしまう人の顎に指を当て頭を後ろに下げるのはお勧めしません。首の曲線がなくなり不快になるからです。多くの場合、後弯を緩めると頭が正常の位置に近づき、耳が肩の上にきます。また、指の平らな部分を首の後ろに当てて顎を下げることもできます。首の曲線が平らになって組織が固まるのを感じましょう。顎を上げて天井を見ると、首の後ろが大きく曲がり圧迫されるのを感じるでしょう。今度は真ん中に戻り、顎と視線を平行にしましょう。やや後ろに曲がる柔らかな曲線が感じられるはずです。
立位で良いアライメントを強化するには、ドア枠の前に戻りましょう。ヨガウェアを着てマットの上にいなくても、1日に何度もこれを行うことができます。垂直に立ち正常な曲線を維持する感覚を覚えましょう。
頭頂を天井に伸ばすことで背骨をドア枠で伸ばし、両肩は耳から離して溶かすように脱力します。後弯気味の人の中には、両膝を曲げることで腰の曲線を緩めることが容易になる人もいるでしょう。その場合は、おそらく股関節屈曲筋が硬く腹筋が弱い可能性があります。腹筋を強くするには、ドア枠に立ち、少し両膝を曲げ、尾骨を床の方向に下げて腰の後ろをドア枠に押し付けましょう。
胸が落ち込んで呼吸ができなくなるまで腹筋を縮めることはありません。目指すのは、腰に(過剰に、あるいは完全に平らではなく)柔らかな曲線を作り、胸を開き、顎を地面と平行にすることです。(ドア枠に後頭部を着けると顎と視線が上を向くなら、あなたの前弯はおそらく頭がまだ前に出ていることからきています。前弯を緩めるには時間がかかります。その間は、頭をドア枠につけようと無理しないでください。腰を反らしすぎないように胸骨を持ち上げ、顎と視線をキープし続けられる位置に止まります。)最後に、ドア枠から離れ、垂直に立っていた良い姿勢の体と心の感覚を記憶するようにします。これができれば、タダーサナ(山のポーズ)で立つことができるのです。
より良い姿勢のための家具
いつも使っている家具や、これから買おうとする家具を厳しい目で見ましょう。どんなにオシャレでも、座面の長いソファはやめましょう。サポートを探して体が後ろへ落ち込みます。もしすでにそんな家具がある場合は、腰の後ろとソファの背の間を埋めるようにクッションをおきましょう。ふくらはぎがシートの前に当たって背中に隙間があるときは、背中が垂直に支持されるように隙間を埋めていきます。
可能なら、床から浮いたヴィラサナに近い形になる膝をついた椅子を試しましょう。通常の椅子なら、背が低い人は、足がぶらぶらしないようスツールを使い腰に負担をかけないようにします。背が高く両足を床に置いたとき膝が腰よりも上に来る場合は、後ろに落ち込みがちになります。この問題は、椅子の座を上げることで解消しましょう。すでに最高の高さにあるときはクッションの上に座ります。やろうと思えば、座面の前端に座って両足を後ろへ引き、膝が腰よりも下に来るようにもできるでしょう。この形はヴィラサナに似ています。
コンピュータを使っているときは、まっすぐ前か少し下に見るよう画面の位置を整えます。キーボードを見なくていいようブラインドタッチを覚え、ブックホルダーや斜めになった机を使い目の高さに近い位置に読み物をおきましょう。キーボード・トレイなどを使って上腕が床と平行になるようキーボードをセットします。
正しい姿勢のための最適な就寝ポジション
多くの人にとって最適な就寝ポジションは、仰向きか横向きです。お腹を下に寝るのは絶対にダメです。(過剰な後弯がある場合、ベッドが柔らかい場合は特に、お腹を下に寝ることが後弯を強めます)仰向きに寝ている場合、頭の下に枕を重ねたりして頭が前にでる癖を強めないようにしましょう。頭と首の形に順応するダウンの枕を一つが最善ですが、首を支え後頭部の形にくぼんでいる気泡ゴムの枕も良いでしょう。
横向きに寝る場合は、頭を前に出さないよう気をつけましょう。
より良い姿勢のためのヨガを確立して繰り返そう
自分の立つ姿勢の癖がわかり家具を点検し、ポーズを練習に取り入れたら、たった一つ残っている大切なことは、練習、練習、練習です。何度も繰り返すことで、古い癖やパターンは新しい健康的な動きや立位、座位に置き換わっていきます。しかし、変化は時間がかかることを忘れてはなりません、新しいポーズや動きの習慣が無意識でできるようになるのには一年かかると、私は生徒やクライアントに伝えています。筋肉は一晩で伸びたり強くなったりしません。硬くなった場所を伸ばしたり弱いところを強くすると、体が徐々にさらにバランスのとれたアライメントを見つけ出すのです。
また、良いポーズがとれた時にどう感じるかに気づくことも大切です。体は楽ですか?気分は?エネルギーのレベルは?同じように、ポーズがよくない時にどう感じるかも大切です。気分が落ち込んだり、焦ったり疲れたりしていませんか?どんな時に悪い癖が出て来るのでしょう?
ここでは完璧を目指しているのではなく、ただ健康的なアライメントを探しているのです。あなたの体の構造に合った、力強いと同時に楽に感じさせるものです。これには時間と忍耐と努力が必要なのです。
体だけでなくあなたの精神もヨガは訓練してくれると知りましょう。練習に身を捧げ続ければ、もっと自分の体を感じアライメントに気づき、健康と生活の質を高める選択を自然に行えるようになります。時間が経って、気づきが増加し身体が訓練されると、改善されたアライメントが生活の他の部分にも広がってきます。知らないうちに、良いヨガのアライメントを楽に練習しながら、机に向かったりコピー機の前に立ったり、夕食の席についたりしています。起きている間ずっとヨガの練習をすることになるのです。
(出典)https://www.yogajournal.com/poses/better-posture-101