2020年12月31日木曜日

臀筋を使う Vol.2
Recruit the Glutes

 

ヨガポーズで臀筋群を活性化する


ただ裸足で歩くというだけで、臀筋の最善で最も効果的なエクササイズのひとつとなり、ヨガの練習は裸足での運動の効果を拡大し大幅に増加させてくれます。臀筋群は、両脚に荷重がかかっている時に本領を発揮するので、臀筋のためのヨガは主に立位やバランスのポーズとなります(臀筋は後屈ポーズでも重要な役割を持ちます)。



ウトゥカタサナ(椅子のポーズ)




ウトゥカタサナは、大抵は大腿四頭筋を燃焼するポーズだと考えられていますが、臀筋にも効果的で、このポーズを練習することで上記にあるような相互収縮などを体験することができます。ウトゥカタサナは、全体的にスクワットより膝に優しいのですが、大腿四頭筋や臀筋の強化にも効果的です。


ポーズに入るには、ウッターナサナ(立位の前屈)で前屈します。足の親指同士をつけ、内踵を少しだけ離しておきます。両膝を深く曲げ、膝の内側をくっつけ、同時に両腕を前に伸ばして、古いスタイルでプールに飛び込むかのように手のひら同士をつけましょう。


足先を少し持ち上げて、体重が踵に移動するようにしましょう。四頭筋の中心がより強く働くのを感じるでしょう。膝頭に向かって疲れを感じないようにしましょう。より深く曲げるためには、内腿の上部を床に向かっておろします。


踵の中心を床に押し、臀筋が使われて腰がウエストラインから下方へ伸びるのを感じるまで、坐骨を踵に向かって引きましょう。臀筋群が働くと、内腿が硬くなるのを感じるでしょう(でも詰まりを感じてはいけません。もしそうなら、もう一度下方へおろしましょう)。四頭筋の中心もより強く働くはずです。両肩を後ろへ引き腕を頭上に挙げて完全なポーズに入りましょう。



このアライメントは全ての立位ポーズで確認することができます。どの場合も、体重を踵のより中心に移動しつま先の掴む力を緩めることで、臀筋や腿、腰の動きを感じるでしょう。臀筋にかかる効果がより大きくなるのは、特にアルダ・チャンドラサナ(半月のポーズ)などのバランスポーズです。



アルダチャンドラサナ(半月のポーズ)





このポーズは、あまり人気のあるポーズではありませんが、それはバランスを取るのが難しく、また軸足側の股関節に詰まりや不快を感じることが多いからです。股関節を安定させ、腰を伸ばし、ハムストリングスの付着部を保護するために臀筋が十分使われていないと、こうした問題が現れます。膝がロックされていたり腰が反りすぎていると気づいたら、アルダ・チャンドラサナで3つ全ての臀筋を活性化することに注目しましょう。



このポーズに入るには、左側のトリコナサナ(三角形のポーズ)から始めましょう。左膝を曲げて体重を前方の左足に移動し、右足を後方へスライドします。左膝を曲げたまま、床と平行になるまで右脚を持ち上げましょう。軸足を伸ばして膝をロックしたくなるのを我慢しましょう。その代わりに、左膝を曲げた状態でつま先をやや持ち上げ、体重を踵の中心、後方へ移動します。バランスを取るためにつま先を使っても構いませんが、ふくらはぎとハムストリングスを堅めるだけなので、つま先で床を掴まないでください。踵の中心で地面を押し、左脚をゆっくりと伸ばしながら腿、腰、臀筋の反応を感じましょう。坐骨周りの筋肉が硬くなって坐骨を踵に向かって下げ、四頭筋に力が入って腰へとエネルギーを引き上げます。腿そのものは、膝が足の中央に並んだ状態を保ち股関節の詰まりを防ぐために十分な幅で外旋するでしょう。ポーズを反対側で繰り返します。





最初は、特に膝をロックし膝頭が内側へ回転してしまうと、ポーズの中でバランスを崩すかもしれません。しかし、過伸展による大腿骨の内旋が癖になると、間違いなく股関節の痛みに繋がりポーズも不安定になることを覚えていてください。この新しい外旋を促進するため、母指球と内踵を地面にしっかりと付けたまま臀筋を働かせ、そして脚を真っ直ぐに伸ばしましょう。ポーズが軽く感じるようになり、土踏まずが強く、そして股関節が沈見込んだり詰まったりしなくなるはずです。



アルダ・チャンドラサナでは、実際に層になった臀筋群をさまざまな面で使うので、「全ての臀筋」のバランスをとるポーズになります。挙げた脚が適切に支持されれば、これは腰の痛みや疲労に悩む妊婦にも良いポーズです。腰の長さと臀筋が胸腰筋膜を引っ張っているという感覚は、赤ん坊という追加の重みを抱えていることから来る腰のストレスを緩和することができます。それ以上に、筋膜に対する大臀筋の引きが、腱が特に動きやすい妊娠の時期に仙骨を安定させることにも役立ちます。

  • アルダ・チャンドラサナは、臀筋群の全ての層を運動させることができる

  • 大臀筋は脚を挙げ、それを高く保つために腿を外転させる。また、股関節を開いてバランスを保つためにちょうど良い幅に軸脚の腿を外旋させる中心的な役割を担っており、それが腰の筋膜を伸ばして仙骨を安定させる。

  • 中臀筋は、軸足の股関節を安定させる中心的な役割を担い、大臀筋とともに挙げた脚の股関節の前を長く伸ばす。中臀筋は、軸足の股関節で最も働き、ポーズに安定を軽さを与える。

  • 小臀筋は最も深い層であり、股関節を覆い大腿骨頭の全面に付着している。軸足の股関節を曲げて腿を外旋させ、股関節で感じやすい詰まりを防ぐのを助けている。

踵の中心で地面に根付き、臀筋群を働かせれば、アルダ・チャンドラサナのようなバランス・ポーズはアライメントが整った姿勢を促進します。そして臀筋だけでなく体全体で感じられる多くの恩恵を受けることができるのです。



(出典)https://yogainternational.com/article/view/recruit-the-glutes




2020年12月28日月曜日

臀筋を使う Vol.1
Recruit the Glutes




あなたは知っていましたか?姿勢の改善、膝関節や股関節の安定、腰痛の緩和が、臀筋を構成する3つの筋肉を使うことで同時に可能だということを。これらの筋肉の主なものが、あまり評価されていない完全な姿勢のための「皇帝」である大臀筋、そして彼の従者である深層筋の中臀筋と小臀筋。これらの臀筋は、正しく使えていれば、腰椎や仙骨、股関節、膝などの健康に不可欠な役目を担っています。使い方が正しくない場合は(大抵はそうなのですが)、関節に問題が生じたり、ハムストリングスが過剰に発達したり硬くなります。まず、臀筋の解剖学をみていきましょう。そして、これらの筋肉がヨガポーズの中でどのように役立つのかを学びます。




臀筋の解剖学


臀筋には3つの層があり、それぞれが機能的に様々に補完し合っています。臀筋の主な機能は、最も外側にある大臀筋によって行われます。大臀筋は股関節伸展、すなわち腿を後方へ伸ばし、股関節の前をストレッチします。また、水平方向へ股関節を回転させ、腿を外へ回します。これらの動きは、単純な歩くという動きには不可欠で、もし大臀筋がうまく働かなければ他の筋肉(特にハムストリングス)が補完しなければならなくなり、その過程で硬くなり過剰に発達します。

 
中臀筋は、脚に体重をかけている時に大腿骨を寛骨臼内で安定させる働きをします。例えば、ヴリクシャサナ(木のポーズ)やパダングシュタサナ(足先を持つポーズ)などで、片足でバランスを取る際、中臀筋が股関節を水平に保ち、側方に揺れたり倒れたりするのを防ぎます。これは、上げた脚の方向へ骨盤が倒れるのを防ぐため、腰の外側が収縮し(腿の外転)ているのです。より重要なのは、単純に歩く動きで不可欠な役割を担っており、この筋肉がなければ、前へ進もうと片脚を挙げる毎に側方へ倒れてしまうでしょう。中臀筋は三日月か半月の形をしており、腰骨の外端に沿って着いており、骨盤の後ろの仙骨から大腿骨頭の前に向かって伸びています。


最も深い層では、小臀筋が股関節を内旋、屈曲させます。基本的には大臀筋と逆の働きをしており、大臀筋を補完して動きのバランスを作ります。また小臀筋は股関節を外転させ、パダングシュタサナなどのポーズで脚を挙げ、股関節を屈曲するときに、大腿骨が関節内で摩擦を起こさないようにします。









完璧な姿勢のための鍵




臀筋はそれぞれ「使わなければ無くなる」タイプの筋肉で、残念ながら私たちの多くには臀筋を使わない姿勢をする癖があり、臀筋が発達しません。よくある姿勢が後傾姿勢で、股関節が脚を通って走っている重力ラインよりも前に傾いている状態です。このミスアライメントを補完するため、大抵の場合、膝は後方へロックされ腰は前傾して上体が丸まります。これらは全て臀筋が正しく働くのを妨げています。臀筋が平たく発達しなくなり、ハムストリングス(股関節と膝をこの位置で支えるのを助けています)が硬くなって過剰に発達します。つまり問題は2つの要素からなります。


臀筋は脚に荷重がかかった時に働きますが、本当に正しく荷重がかかった時にだけ、正しく働くのです。臀筋や脚の筋肉の使い方が理想に最も近づくのは裸足で歩く時なのですが、これは歩くたびに体重が踵の中心にくることに大きな理由があります。靴を履いて歩く時には異なることが起こります。靴そのものが、臀筋を正しく使えているかどうかを教えてくれます。靴の踵を調べてみましょう。特に踵の後ろ外側がすり減っていることがわかるかもしれませんが、これは踵の外側が一番先に地面に着いているというサインです。実際、ほとんどの靴が、高く柔らかい踵のおかげで、このような歩き方をするようになっています。


では踵の後ろ外側に体重をかけると何が起こるのでしょうか?脛や足首が硬くなるほどに足首を曲げて足を下ろすと、下の脚がまだ後方へ倒れたまま土踏まずが潰れて内側に回転します。これが足首を硬くし、脛骨過労性骨膜炎になりやすく(特にランナー)、土踏まずを弱くするあるいは平たくする、そして足底筋膜炎による足の裏の痛みへと繋がっていきます。膝にも影響があります。下の脚の角度によって膝が過伸展しやすくなります。ハムストリングスは硬くなり、股関節の前傾により股関節の前部がストレスを受けて弱まります。


裸足で歩くと、これは変わります。足首をあまり曲げず踵の中心から下ろすことが多くなり、足指の付け根がすでに床に近い状態になります。踵からつま先へと一歩の間により自然に荷重が移動し、足首は土踏まずの強さを維持できる位置にあります。これが上記の問題を少なくし、臀筋を正しく使えるというおまけもあるのです。


自分の姿勢をチェックするのは簡単です。臀筋の動きを観察しながら、上記の様々な歩き方を試してみましょう。親指と人差し指で大臀筋をつまんで、それぞれの場合でどのように働いているかを観察します。まずは靴を履いてやや大袈裟に後傾姿勢をとってみましょう。上体を後方に倒し、腰を前に出して膝をロック、歩き始めましょう。おそらく、臀筋の動きはとても小さく、前に体を出すためにハムストリングスに重みを感じるかもしれません。では、膝のロックを外してやや「マイクロベンド」し、腰を後方へ動かして体重が踵の中央へ乗るようにしてから、歩きます。臀筋群の動きを比較してみましょう。臀筋がより働くのを感じたら、それは改善のサインです。


最後に、靴を脱いでもう一度歩きましょう。床が硬ければ硬いほど、足首の屈曲を小さくして踵の中心からおろしたくなるはずです。そして踵を下ろすときに特に、臀筋をより強く働かしていると感じるでしょう。つまり、踵の中心に体重をおき歩く時に臀筋を働かせることに集中することで姿勢を正すと、良いことが起こるのです。

  • 踵が地面を蹴る時にやや前傾することで(後傾姿勢で後ろに傾くよりも)胴部のアライメントがよくなる

  • 膝や股関節がややマイクロベンドになり、足首や脛の緊張を減少させて腱を保護し過伸展を防ぐ

  • 歩く際に踏み込む時踵から足先へと進み土踏まずが強く維持され、足裏の潰れを少なくし、足裏と足首の疲れを防ぐ

股関節を正しく調整すると、特に上記のポイントで臀筋を使うことができます。そして臀筋が働けば、腰や膝関節、股関節を安定させることができます。




臀筋を働かせる:体への影響

腰を安定させる


腰を覆っているのは、強靭な結合組織の膜で、腰、股関節、胴部、そして肩の筋肉に編み込まれています。胸腰筋膜として知られ、腰の「策具」を形作り、船のマストを支えるように脊椎を支持しています。大臀筋が収縮すると、下方へと交差する支持部分を緊張させ、特に歩行や前屈などの臀筋群が働いている場合に腰椎が長く仙骨が安定します。



健康的な膝と股関節


臀筋が使用されると多くの筋肉もまた相互に収縮し、それに沿って主に四頭筋が使われるのですが、それだけでなく内転筋(内腿の筋肉)が外転筋としての臀筋の動きを補完します。膝の健康を維持するには、特に四頭筋の内側広筋が重要です。臀筋を使うと内側広筋が同時に使われ、膝の健康維持の可能性が高まります。


結果として、こうした相互収縮(股関節の前部にある腸腰筋の小さな収縮も含みます)が起こり、大腿骨頭が寛骨臼のより中心へと保たれ、股関節の全体的な摩耗を減少させます。反対に、大臀筋が使われていないと、他の筋肉が腰のアライメントを支持しなくなり(特に関節の前部)、股関節そのものが摩耗し深刻な症状につながっていくのです。



(出典)https://yogainternational.com/article/view/recruit-the-glutes



2020年12月25日金曜日

股関節の痛み:対策と予防 Vol.2 
Hip Pain: Overcoming and Preventing It



内転筋と外転筋のバランスを見つける有用なツールはヨガブロックです。ヨガブロックを使うと、同時に大腿骨を回転することなく、鼠蹊部を和らげて内腿上部を坐骨に向かって引く方法がわかります。この過程で、中臀筋のバランスのよい動きができるようになります。


両方の腿の上部の間にブロックを置いて始めましょう。内転筋の動きがわかるはずです。両手を股関節の谷へ、そして人差し指を谷に沿って置いて鼠蹊の筋肉が感じられるようにします。

大腿骨を平行にしたまま、両膝を曲げます。これが回旋筋群をある程度中和し、内転筋の動きをよりわかりやすくします。体重を踵に少し移動し、つま先を和らげましょう。


 

股関節のバランスを取るーステップ1


では、硬くしないように、内転筋に優しく力を入れましょう。内腿の上部を坐骨の方向へ「溶かし」、ブロックを締め付けないように後ろへ引きます。この動きが内腿の後ろから来るのを感じましょう。腿の付け根の筋肉が人差し指がの下で、柔らかくなるのを感じるでしょう。柔らぐとともに、仙骨が前傾し腰のアーチが強くなります。


このように、大腿骨を内に大きく回転させたり緊張させたりしないで、中心に向かって内転筋を「螺旋状」に動かしましょう。最初、この動きは鼠蹊部の緊張を解き、和らぐように感じます。しかし続けていると、大腿骨を関節の中心に置くには、関節の中で大腿骨を横に動かして広げるという動きが必要となります。



ステップ1:ブロックを締め付けないで後ろへ引き、
鼠蹊部を緊張させず大腿骨を内旋させずに
中心に向かって螺旋状に動かす。
ステップ2:親指で筋肉の動きを観察しながら、
ブロックを後方、下方に動かす力と
尾骨を地面におろす力のバランスを取る。



そして次は、内腿を、指先の下にある鼠蹊ではなく深いところで硬くし、腿の内側全体を坐骨に向かって後方へ伸ばします。この深い内転筋は、すでに部分的に使われいるはずです。より強くして、それらの筋肉が大腿骨に対して外側へ押すようにしましょう。内腿が反発しあって(引きつけるのではなく)磁石の両極のほうに働きます。これが骨盤底を開きます。



股関節のバランスを取るーステップ2


次に、両脚を伸ばしていきましょう。ここで中臀筋が働きます。尾骨が重くなり床に向かって降りていくのをイメージしましょう。まるで尾骨が、やや前方に曲がりながら下りているしっぽであるかのようにこの重みを感じます。内腿を後方へ溶かし続けて、この尾骨の引き下げとバランスをとりましょう。


尾骨を下げながら、脚を伸ばし続け徐々に大腿四頭筋(腿の前)を硬くしていきます。ブロックを後方へ下げ続けるために内腿がより強く働き始め、強くブロックを締め付けているように感じるでしょう。ブロックを後方へ引く力、下げる力、そして尾骨に向かって下ろしていく力のバランスをとりましょう。


脚を長く伸ばしていくつれ、臀部の上部と腰の横の動きを感じるでしょう。これが中臀筋です。親指を臀筋の上に戻し、どの筋肉が働いているかを感じてみましょう。また、大きな臀筋(大臀筋)が、尾骨に向かって内側へ締め付け始めていないか、緊張しすぎていないか、両脚が外旋して腰が硬くなってしまっていないかをみましょう。脚をまっすぐに伸ばしながら、骨盤の中心部のスペースを感じ続けます。この場合、「中心を掴む」というのは、デリケートかつダイナミックなバランスで、地面と繋がりつつ広がっています。胸が引き上がって開き、腰はリラックスして(自然なカーブを維持しつつ)伸びているでしょう。



より深い練習:パリヴリッタ・トリコナサナで股関節痛を緩和する


他の立位ポーズ、特にツイストでは、同じ動きをしていますがより著しくなります。パリヴリッタ・トリコナサナやパリヴリッタ・アルダチャンドラサナは特によい例です。というのも、正しくやれば股関節痛や腰痛を緩和してくれますが、間違ってやると挟み込みや股関節の軋みの原因となるからです。


正しい動きを覚えるため、パリヴリッタ・トリコナサナをパートナーの助けを借りて試してみましょう。パートナーに後ろ足の踵の外側あたりに片足を置いて立ってもらいます。そこにしっかりと立っていてもらいましょう。ベルトを後ろ脚の内腿の周りにかけます。



パリヴリッタ・トリコナサナ
ベルトが腿上部を内側、坐骨に向かって後方へと螺旋状に動かす。
練習で、この動きを自分でできるようになる。




ツイストに入ったら、パートナーに股関節から斜めにとても優しく引いてもらいます。あなたの股関節の左右が並んで安定する程度の強さで引いてもらい、内腿の筋肉(大腿骨でなく)が内側そして坐骨に向かって後方へ螺旋状になるように内側をやさしく引いてもらいましょう。ベルトは、内腿の筋肉の強さであり支えの役割をします。ここでは、股関節を平行に保ちながら、この動きを自分で作り出すことを身につけましょう。


それから、前脚に注目します。アライメントを確実にしましょう。膝を少し曲げて必要なら腿を調整し、坐骨と膝、踵の3点を並べましょう。それから脚を伸ばし、腰の外側に力が入って硬く強くなるのを感じましょう。


次に、大腿四頭筋を強くして下腹部に引き上げ、脚を地面に向かって伸ばしましょう。先程の練習で親指を置いていた臀筋上部から脚を下ろします。そこから、お尻の中心、大腿骨を通るエネルギーの流れを感じ、腰の外側を後方へ引きましょう。


ストレッチと力が、腰の前で同時に起こっていることに注目しましょう。腰が固まって丸くなるので、脚を伸ばしすぎないようにします。同様に、しっかり伸ばさないと、腰が過剰に落ち込んで腰の外側(中臀筋)に不快な張力を感じ、内腿を締め付けます。バランスが取れていると、中臀筋が股関節前部から骨盤の重みを引き上げてくれます。後ろ脚の内腿(ベルトの力を借りて)の引き上げと広がり、そして中臀筋の動きによる前脚からの伸展とグラウンディングの組み合わせにより、股関節が左右平行になるのです。最終的には、股関節が広がり、強く、そして安定します。


これらの筋肉を使うのがより難しくなるのは、全体重が片足にのるバランスポーズで、特にパリヴリッタ・アルダチャンドラサナのようにツイストとバランスの組み合わせです。ここでは、後ろ脚の内腿はより強く働かなければならず、中臀筋のより力強い働きで前脚をグラウンディングしなければなりません。股関節を左右平行に安定させるため、腰の外側と臀筋が強く働きます。


パリヴリッタ・アルダチャンドラサナ
このポーズでは、解放され支持された内転筋が引き上がり、
中臀筋が長く伸展することでバランスが作られる。




このように股関節に働きかけることで、股関節痛や怪我を防止するのに役立つだけでなく、何世紀も前に市場でシャンカラチャリヤが学んだ教訓を思い出させてくれます。それは、ヨガマットの上だけでなく日々の生活にも当てはめることが重要な教訓です。私たちの中心を保つことで、精神的にも肉体的にも、強さ、広がり、そして内なる自由の感覚を得ることができるのです。

2020年12月22日火曜日

股関節の痛み:対策と予防 Vol.1 
Hip Pain: Overcoming and Preventing It


股関節痛 – 主な原因


聖人のシャンカラチャリヤは、まだ若い頃に人生の偉大なる教訓のひとつを見つけていました。内なる自己を早く持つことに失敗すれば、私たちは平凡な人生の石臼に粉々にされていまうだろう。この気付きは、子供だったシャンカラチャリヤが、市場で小麦を挽いている女性に出会った時でした。その後継があまりにも深く彼を動揺させたので、彼は先生のもとへ涙を流しながら走っていきました。「人生ってそうなんですね」と彼は泣きました。「毎日、時間の石臼で粉々に挽かれているんだ」先生は、市場に彼と一緒に戻って、石臼の上の石を持ち上げて言いました。「見なさい。中心軸に早く戻ったものはそのままだ。そういうものだけが失わなくて済むのだよ」シャンカラチャリヤは感動し、この教えを晩年も役立てました。私たちもまた役立てることができます、様々なレベルにおいて。


この教えは、私たちの精神的な生活と同様、身体の調子にも応用することができます。何年も使い続け、私たちの関節は荷重というストレスの下で、ギイギイ、パキパキ、ゼイゼイと「粉々に挽かれ」てしまいます。


単純な要素が組み合わせが、股関節に十分な大きさのストレス嵐を作り上げ、股関節痛へと繋がります。特に、ジョギングや散歩の好きな人、週末のアスリート、そしてもちろんアサナの練習をしている人(注意が足りない時には)など、活動的な生活を送っている人たちに多いのです。この問題と、それが原因で起こる股関節痛を理解するには、二つの重要な筋肉群を見ることが必要です。内転筋(内腿と鼠蹊部の筋肉で両脚を身体の中心線へ引く)と外転筋(股関節の外にあって、腿を中心線から離す)です。


 


鼠蹊部の筋肉(内転筋)は硬くなりがちで、大腿骨頭をソケットに引き込みます。大腿骨はソケットの中心で外転筋によって安定しなければならないのですが、これは鼠蹊部の筋肉とは逆になります。しかし、この外転筋が(大抵の場合はそうなのですが)弱くストレスを受けていると、結果として崩れたバランスがきしみや関節の悪化、股関節痛となる可能性があります。

しかし、必ずしもそうではありません。ヨガは、私たちの広がった中心「近くでホールドする」ことへの理解を与えてくれ、スピリチュアルな面だけでなく股関節の健康に保ちしなやかに歳を重ねていくツールとなります。ヨガは、人生のあらゆるレベルのバランスと調和を目的としており、股関節の痛みや怪我を防止しながら安定、活性化するのに役立ちます。



股関節痛と怪我


内転筋、または鼠蹊部の筋肉には2種類あります。短い方は、恥骨から内腿へと伸びており、よく負傷します。これらの筋肉は、長時間の座り続けや運転、姿勢のストレスなどから硬くなります。この硬さは、悪いフォームでのランニングや、片側のヒップの上で子供を抱える、左右非対称のヨガポーズを間違って行うなどの骨盤を捻ることで、より悪化します。また感情的ストレスによっても両腿をぎゅっと寄せることになるため、硬さが生じます。


その結果起こる怪我は、鼠蹊部の損傷です。突然の勢いのあるストレッチ、特に筋肉が温まっていない時には、筋繊維や腱が裂傷します。例えば、ランナーが中心線を超えて前脚を出して走ると、短い内転筋が硬くなり疲労します。そのストレスは、坂道を駈け上がる時(トレッドミルも含む)に増大するのです。






怪我はアサナの練習でも起こります。パリヴリッタ・トリコナサナやエーカ・パダ・ラジャカポタサナのようなポーズで、前脚の内腿を恥骨から離して引くときに、鼠蹊内転筋は強く引き込まれます。これらのポーズでは、「中心線を挟んで」と指示されることが多いのですが、実際には強く挟みすぎる可能性があり、股関節の中で骨が中心に来るために必要なスペースを作ることができなくなっているかもしれないのです。


主要な外転筋である中臀筋は、股関節内の大腿骨を安定させ、股関節を安全に保つのを助けます。腰骨を大腿骨頭に向かってひきこむことで、この外転筋は股関節を安全に、そして中心線に向かって内転筋が引かれる関節内のスペースを保ちます。私たちが一歩歩くたび、中臀筋は股関節が横に傾くのを防ぎ、関節内で大腿骨を中心に保つのです。






内転筋に関しては、中臀筋の損傷は、ランニングやピボットなど骨盤が捻れたり回転する動きで悪化します。この筋肉は、片足に全体重が乗るとき、ハーフムーン・ポーズ(アルダ・チャンドラサナ)やツリーポーズ(ヴルクシャサナ)などのバランスポーズなどで特に強く働きます。中臀筋が弱く鼠蹊が硬いと怪我をし、その怪我が関係痛となって腰痛を起こし、仙腸関節の機能不全による痛みと間違われることもあります。




股関節痛を防ぐためにバランスを取る



これらの2セットの筋肉群の調整をとることが、股関節の怪我を防ぐのに役立ちます。また、脚や股関節、骨盤の動体的な使い方を新たに理解するのにも役立つでしょう。深いレベルの気づきは、タダサナというシンプルな立位ポーズを意識することから始まります。
 




私たちが脚を伸ばして真っ直ぐ立つと、大臀筋とそのほかの骨盤深くにある回旋筋によって、腿の自然な外旋が起こります。過度の回旋は股関節に問題を起こす可能性があります。中臀筋は回旋筋ではなく、内転と外転、収縮と伸展のバランスを作り出し、内転筋とよい関係を持っています。この関係は、コアが軽く、開いていて引き上がっていると、保持されます。この正しい内側の動きにより、両脚が強く地面についていればいるほど、コアが引き上がるのです。


内転筋と外転筋の正しいバランスを見つけるためにはふたつの難しい問題があります。まず、立っている時に、鼠蹊部、つまり内腿の上部にある緊張をどのように解くかと身に付ける必要があります。次に、臀筋を使いすぎず、かつ鼠蹊部を固めず、どのように両脚を伸ばすのかを見つけなければいけません。どちらの動きも、坐骨から膝の内側に走る深く長い内転筋を正しく使う必要があるのです。


 
可能性のある怪我
ツイスト・ポーズで骨盤を回旋させるほど、
股関節へのストレスは大きくなる。
腰の後ろが下がると、腰の前が引き上がり、
中臀筋の固定と引き込みが同時に起こる。






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次回に続きます。



2020年12月18日金曜日

筋膜とヨガについて知っておくべきこと 
Everything You Need to Know About Fascia and Yoga



筋膜は、体の他の部分と同様に重要です。ヨガの練習は、筋膜を健康に保つことができ、柔軟性や安定性を高めるために作り替えることも可能です。


こんな感覚を感じたことがあるでしょう。脚をストレッチすると肩の凝りがほぐれる、股関節を開くと腰痛が緩和されるなど。これを起こしているのは、自然の意図なのです。私たちは皆、「筋膜」と呼ばれるコラーゲンの絡み合った網を体中に持っており、この網の一部で何かが起こると私たちは他の場所にその影響を感じることができるのです。


「前屈はハムストリングスのストレッチ?まあ、そうです。でもそれ以上です」と、アナトミートレインの著者であり「Fascial Release for Structural Balance」の共著者トム・マイヤーは説明します。「ヨガで筋膜を考慮しなければ、それが何なのかという全体像をみていないということです」







筋膜が重要な理由


筋膜要素とヨガ


ヨガのアサナを含む動きは、筋膜を活性し、みずみずしく耐性を維持することで筋膜を健康的に保ちます。ヨガは、筋膜の4つの重要な要素に影響します。

  1. 水。筋膜のほとんどは水です。筋肉を伸展、収縮する時やヨガポーズをホールドする時、あなたの筋膜から水が圧搾されます。動きを止めたり伸展をやめると組織は再び水分を取り戻し、より多くなります。科学的証拠が示しているのは、筋膜は動きを通して、絞り出した以上の水分を吸い上げるということです。「水は動いて場所を変えます。そして水は組織の様々な化学物質を出し入れしますが、それには神経ペプチドやホルモン、新しいタンパク質、ヒスタミンなどを含みます」ヨガのポーズは、体を組織的に全可動域で動かすため、ヨガはこうした再生を促進するのに特に長けているのです。


  2. ヒアルロン酸。ヒアルロン酸はスポンジ状構造をしていて、水分を吸い上げます。たっぷり水分を含んでいるときは、卵白のようなジェル状になっています。「このヒアルロン酸が水分を保っているときは、とても素晴らしい潤滑性があるので関節の中の抵抗はほとんどゼロに近い」とマイヤーは言います。しかし、ヒアルロン酸の水分が足りない時には粘りが出ます。動かさなかったり、あるいは自然な加齢により筋膜の潤滑性は失われ、関節はお互いに軋みあって関節炎へと向かってしまうのです・・。この関節内部の相互作用こそが関節炎へと、悪化への道を進ませるのです。また、使いすぎも問題になります。摩擦が多すぎると炎症が起こりヒアルロン酸の鎖を切ってしまい、組織をまとめて水分を保つことが困難になります。「水分が勢いよく入ってくる状態、それを腫れと呼んでいます」マイヤーは言います。


  3. グリコサミノグリカン。グリコサミノグリカンは水分をとらえます。水分が近くにあるときはシダのように広がって、その端に沿って水の分子を引き込みます。体を動かさないでいると、それらが丸まったままになります。「ヨガで行う動きによって、特に普段動かさない場所の、グリコサミノグリカンが割れて開くため、広がって水分を受け入れる」と、マイヤーは言います。


  4. コラーゲン。コラーゲン(肉の中に見える白い筋ばったもの)は、鉄よりも強靭です。その繊維がお互い寄り添うように並んでいます。「これをストレッチすると、この粘った分子が放たれます。これらの繊維間にある結合が解かれます。繊維がお互いに滑りあって、そして結合を長い形へと作り替えるのです」


筋膜の成長とヨガ


筋膜で働いている細胞は線維芽細胞です。これは、新しい筋膜を作り古い筋膜を取り除きます。新しい筋膜は、フェルトのようでどの方向にも動く組織されていない繊維です」マイヤーはいいます。「横になっているだけでは、筋膜を組織づくることのできる細胞はひとつもありません。あなたの動きが筋膜を作り組織立てている」ヨガなどの動きを通して、筋膜を組織立てはじめると、以下のような性質を認識し始めるでしょう。


  1. 弾力性。筋膜は、ゴムバンドのようではなく、スーパーボールのような弾力性を持っています。復元率にすぐれています。弾力性は良いことです。必要なのはバネのような腱(筋膜がたくさんあります)だとマイヤーは言います。筋肉ストレッチで弾力性をトレーニングすることができます。1秒間ほどの曲線の動きが、筋膜の素早いストレッチと反動を作ります。急な坂を自転車でこいで上がるよりは、ウッティタ・トリコナサナで30秒間ホールドしたり、エアロビクスで弾む動きを取り入れてみましょう。


  2. 可塑性。筋膜は粘着性と柔軟性があり、可塑性に優れています。例えば、ウッティタ・トリコナサナのように長いストレッチをすると、筋膜繊維の間の結合が溶けてお互いにスライドしあって長さをつくりますが、こういったときに可塑性が上がります。薄いプラスチックのバッグをゆっくり伸ばすところをイメージしましょう。あなたが引っ張っている箇所でプラスチックは長くなり、元の形には戻りません。柔軟性を通り越して可塑性へと移動したわけです。マイヤーによれば、あなたの筋膜でも同じことが起こります。柔軟性と可塑性を超えてストレッチし腱を無理に引っ張ったり、急に筋膜をストレッチすると、怪我をしてしまいます。


  3. 再形成する。筋膜は常に再形成されています(線維芽細胞が古い筋膜を取り除いて新しい筋膜を作り上げるのを思い出しましょう)。、例えば、腱を強く引っ張って筋膜を損傷した怪我を考えてみましょう。体を保護するため、線維芽細胞が新しい筋膜をどんどん作って瘢痕組織(きずあと)ができます。しかし、再形成にはよい面があります。激しいヨガや運動で筋膜に著しい負荷がかかったとき、筋膜はフィットネス業界がいうところの「ティア・アンド・リペア」で再形成されます。少し筋膜が引き裂かれるのですが、年齢や食事、健康状態、運動習慣などにより、1-2日間あるいはそれ以上の時間をかけて修復されていきます。




「マットの上で行っているのは刺激です」とマイヤーは言います。「マットから出た後に起こることの方が、あなたの体にとってはより興味深いのです」言い換えれば、より興味深いのは、再形成や編み直しです。時間が経つにつれ、再形成によって筋膜のより健全なパターンが作られ、例えば頭が前に突き出たような悪い姿勢を正してくれるのです。





2020年12月14日月曜日

肩の怪我を理解し防ぐ VOL.2
Understand and Prevent Shoulder Injuries



肩甲骨を解放する


まず、ウォリアーIIのポーズで両腕を両サイドに伸ばしましょう。両腕は肩と同じ面か、やや前に来るように気をつけましょう。「すくめ」を体験するために、手の親指が下向きになるよう手と腕を回転させましょう。首の両サイドが持ち上がって、三角筋が緊張し、肩が固まるのを感じましょう。



緊張したウォリアー II: 三角筋が緊張していると肩が持ち上がる



次に掌が上向くように手と腕を回転させ、手の小指を上に伸ばしましょう。背中の丸みがなくなります。肩甲骨の内側上部が開放されて後ろに下がり、首の横が柔らかくなります。肩甲骨が背中に安定して支えられ、腕の重みが首ではなく肩甲骨に支えられていることを感じましょう。特に肩甲骨の外側の筋肉が硬くなると同時に三角筋が柔らかく、肩関節がより開いて開放されるのを感じるでしょう。肩甲骨に支持を感じるために腕を小さく回してみましょう。


リラックスしたウォリアー II: 肩がリラックすると
肩甲骨の上部内側が下がり首が柔らかくなる




同じすくみがパールシュヴァコナサナで上の腕を頭上に伸ばした時にも起こります。腕を伸ばすのが難しい生徒が多くいます。三角筋が硬く、肩がすくんで首が詰まって頭を回すのを不快にさせています。これも肩甲骨から始まっていて、腕が肩関節にうまく入り込むため後ろへ下げることができていないのです。




パールシュヴァコナサナ:腕をやや前にC字の形で伸ばし、
肩の挟み込みを防ぐ。腕が回転して肩甲骨が開放されるのを感じよう。



パールシュヴァコナサナで肩を開放するには、上の腕を少し体の前にして、小指の方向へ伸ばしながら小さな円弧を描くように腕を回し、小指でアイスクリームを救うかのように手でCの字を作ります。肩甲骨が解放され耳から遠ざかって後方へ下がり、上腕骨が耳の横で正しい場所に嵌まり込んで、頭の回転するスペースを作ります。これは簡単ですがとてもエレガントな肩甲骨の動きで、肩を開くと同時に、背中と肩の深層筋を微細に下へ下げることで回旋腱板の締め付けを防ぎます。



肩関節を保護する


肩甲骨を感じるというのは、まだ始まりに過ぎません。回旋腱板(特に棘上筋)を保護し治癒するには、骨の位置を直すだけでなく、三角筋の情報への引きに対抗する筋肉群を活性化し強化しなければなりません。ダウンドッグやハンドスタンドなど腕を伸ばしたポーズでは、こうした筋肉を使いますが、この位置では肩もまた最も動きやすく脆弱な状態にあります。シルシャーサナ(ハンドスタンド)のバリエーションから安全に始めましょう。このポジションでは腕と肩がより安定しています。そして、このヘッドスタンドの準備練習の目的は腕をより荷重に耐えられるようにし、もし少しでも頭に荷重がかかるとしても首は安全なままです。


壁に向かったダウンドッグ


この練習法では、腕に荷重をかけずに肩の正しいアライメントを築くことができます。壁に向かって立ち、指を組んで両肘を肩幅に開き、前腕をヘッドスタンドの位置で壁に置きましょう。両掌は離しておき、腕が、V字ではなく逆さになったU字になるようにします。股関節から前屈しながら後ろへ歩きましょう。U字を保ったまま、体が直角くらいになり(必要なら膝を曲げます)頭が上腕と同じ高さになるまで腕を壁に沿って下げましょう。頭頂は壁につかなくても構いません。



上腕二頭筋の外側に軽く力を入れて、肘の内側から腋に向かってエネルギーを引き寄せましょう。この動きは肩を安定させ保護します。上腕二頭筋は力を入れると腕骨を肩関節に引き寄せるからです。肩を開いて関節内の挟み込みを防ぐために、両肘の間にビーチボールをギュッと挟むように、二頭筋を硬くして肘同士をアイソメトリックで寄せます。ウォリアーIIで小指を上に回した時のように、上背部が広がるのを感じましょう。


前腕を壁に押し付けて肩から上体をストレッチし、壁から離れます。肩に怪我がある時は、肩に痛みや詰まりを感じないところに止まりましょう。最初は頭と壁の距離は3-6センチくらいしか離れないかもしれません。それで大丈夫です。肘を押すと、肩甲骨がどのように背中で力強くなるか、肩の内部でより大きなスペースを作り出すかに気付きましょう。比較するために、手首で押してみて、どのように三頭筋や三角筋が働き肩が硬く丸くなるかを見てみましょう。腕に荷重がかかっている時に肘で押すとより深層の筋肉が活性化します。広背筋、肩甲下筋や大円筋です。これらは腕骨頭を後下方に引き、肩峰突起から遠ざけます。これが棘上筋の挟み込みを防ぐのです。壁に前腕を押して背中を伸ばす一方で、上背部が丸くなり過ぎないようにします。肩甲骨の間から床に向かって背骨を下ろし、腕を使い続けます。このストレッチを30秒程度ホールドしましょう。



椅子を使ったヘッドスタンド


次のバリエーションでは、腕により荷重がかかります。ここで補助が役に立ちます。安定した椅子を、滑らないように壁に向けて置きましょう。椅子に背を向けて前に座り、両脚を伸ばして椅子から脚の長さ分の距離を測ります。ここでかかとがある場所に肘を置くことになります。


さて、椅子から離れて、腕をヘッドスタンドの形にして肘を測った場所に置きましょう。両足を床につけたまま爪先を立て、ダウンドッグをする時のように腰を持ち上げます。二頭筋の内側に軽く力を入れ、前腕を下方へ体から離すように押し腰を後ろにストレッチ、肘から腰にかけてをまっすぐにしましょう。頭頂部を手の間の床に置き、頭ではなく腕にほとんどの荷重がかかるように、腕を強く押しましょう。このストレッチを腕を押しながら30秒程度ホールドします。


もし、ほとんどの荷重を腕に載せた続けることができ、そして肩関節に詰まりが無いようであれば、片足ずつ椅子の上に置いて腰を持ち上げ、より腕に荷重をかけます。(首を保護し肩を強化するために、頭が前腕のラインに来るように床から頭を完全に持ち上げてもよいでしょう)前腕全体を床に押し、特に肘を強くしましょう。



ヘッドスタンドのバリエーション:床に前腕全体を押して肩を強化し首を保護する




ヘッドスタンドのバリエーション


次の練習では、椅子を移動させて壁から脚の距離を測ります。両手の指を組んで頭を両手の間に置き、両手で後頭部を囲み、手首の骨が床と直角になるようにします。もし首に問題があるようであれば、ここでも頭を床から浮かせても良いですが、かなり努力が必要となるでしょう。まずダウンドッグ・バージョンをしてから、片足ずつ壁に移動させ体が直角になるようにしましょう。最初にやった練習の逆さバージョンです。このポーズはウルドヴァ・ダンダーサナ(下向きの杖のポーズ)と呼ばれることもあります。両腕を押して首の荷重を減らし、両肩を耳から腰の方へ引き上げましょう。この動きが肩峰突起から腕骨を遠ざけ、棘上筋を安全に保ちかつ治癒するのを助けてくれる筋肉群に力が入り強化します。


この練習は回旋腱板の怪我にどれほど効果があるのでしょう?2006年に the International Journal of Yoga Therapy で発表されたある研究では、10人の回旋腱板を負傷した人に、同様のヘッドスタンドのバリエーションを毎日30秒間6週間練習をしてもらい、その後6週間毎にフォローアップのセッションをし、平均で4.9ヶ月続けました。10人のうち9人が肩の可動域に向上がみられ、最初の30秒のセッションの後すぐに肩の痛みが減少しました。最後のフォローアップでは、8人に著しい可動域の向上、痛みの75パーセント減少がみられました。手術に至ったものは誰もおらず、これは激しい痛みを伴う回旋腱板負傷患者には珍しいことです。


すでに完全なヘッドスタンドの練習をしていて、アライメントや予防策に気づいているなら、肩を強化しながら治療するルーチンにこのアサナを取り入れても良いでしょう。ポーズの間は、前腕全体を床にしっかり押して体重を分散させる必要があります。



ヘッドスタンド:肩が落ち込むと体がバナナのようにアーチ形になり(左図)
回旋腱板に負荷を与えます。これを防ぐには、
首から肩を持ち上げるときに前腕をしっかり押します(右図)。




ヘッドスタンドでは、肩は耳の方へ丸まる傾向があります。結果として、体が「バナナ」になってしまいます。もし腰や首に圧迫を感じるなら、バナナ形になっているサインです。もう少し肘を押しましょう。同時に、腿を強く安定させて腰を少し後ろへ下げて肩の真上に来るようにし、両足を前に、かかとの内側と母指球を高く伸ばします。下腹部を強くして体を安定させましょう。頭頂に向かってのびながら首が長くなっているように感じなければなりません。


肘をもっと床に押すと、肩を広げることができ、耳から腰の方へ持ち上げることもできます。肩甲骨の外側がどのように使われているかを感じましょう。今使っている筋肉こそが、練習を通して目覚めさせ強化させている時に、肩のバランスの取れた動きを作り出し回旋腱板の怪我を保護してくれる筋肉なのです。


肩は、毎日のとても多くの活動で重要な役割を果たしています。楽器を弾いたり、タイプしたり、運転したり、もちろんヨガやスポーツでもそうです。毎日の練習に逆立ちを肩強化の練習を含めることはとても意味のあることです。そして最後に、世界の負担があなたの肩にやや重過ぎると感じたら、逆さになることでちょっとした解放感を得られるでしょう。アトラス神(訳注:ゼウス神から双肩に天を担わされた巨人)もまた、ヘッドスタンドをよくしたはずです。





2020年12月9日水曜日

肩の怪我を理解し防ぐ VOL.1
Understand and Prevent Shoulder Injuries

私は仕事上PCでタイピングすることが多く、また楽器を弾いたり料理を作るのが好きで、つまり腕を前にして作業をする時間がかなり長い方です。そんな私は、ヨガを始めてすぐの頃に無理なチャトゥランガで肩の怪我をしました。そして痛みがほとんどなくなるまで数年かかり、その間はアームバランスのポーズを試す度におかしな痛みを感じました。いまでも右肩は左肩と比べてかなり可動域が狭く、すぐに疲れて痛みを感じやすいのです。なかなか治らなくなる怪我。みなさんには経験してもらいたくないなーと思っています。

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あなたが両腕を上げる度、肩の筋肉は小さいものも大きいものも、微細なニュアンスで踊り始めます。これらの筋肉の複雑な相互作用は、肩関節の特別な構造に伴っており、両腕に大きな可動域を与えています。実際、肩は体の中で最も緩い関節のひとつなのです。しかし、この動きの自由にはよくない側面もあります。肩は、突然の転倒や野球のボールを投げるなど継続的な動きからの怪我に弱いのです。回旋筋腱板の筋肉は、肩で最もデリケートな部分ですが、特に敏感なところです。しかし、いいお知らせもあります。目的にあった定期的なアサナの練習は、回旋筋腱板を健康に保つ効果があります。アライメントに気付きを与え、肩の筋肉を強化し、胸を開きます。そして下記のポーズは、既に怪我をした回旋筋腱板をも治癒に向かわせる効果もあります。



肩の解剖学


肩関節の独特の性質を、特に肩甲骨との関係について見ていきましょう。肩関節は臼状関節とされていますが、上腕骨頭に丸い「球」はあってもそれに対するくぼみ(窩)はありません。そのかわりに、鎖骨の端と肩甲骨が一緒になって、その下から上腕がぶら下がっている棚を作っています。この棚は肩峰突起と呼ばれています。この下には丸いくぼみがありますが、肩甲骨の一部です。このおかげで肩関節は「窩」を持つことができ、上腕骨頭がこの表面を滑ることで回転し、そして回旋腱板の安定した収縮が関節をひとつにまとめています。


回旋腱板は、実は4つの分かれた筋肉からできていて(棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋)、上腕骨頭の前後で重なり合って関節を安定させています。これらの深層筋は肩峰突起に直接ついているより大きく強い筋肉群と重なり合っています。回旋腱板の筋肉は、上腕骨そのものの動きを導き、他の大きな筋肉群は、上腕骨と肩甲骨をひとつのユニットとして機能させながら肩全体の動きをコントロールします。





怪我の起こり方


回旋腱板の怪我で多いのは、肩の最も端にある三角筋(腕を上げるための大きな筋肉)の下です。怪我は、上腕骨頭に直接ついている小さな筋肉で腕を頭上に持ち上げる三角筋を助ける棘上筋に起こります。この三角筋の強さこそが棘上筋の怪我を引き起こすことが多いのです。腕を頭上に上げる時、三角筋は体から80度あたりまで腕を引き上げることができます。ここで、三角筋だけでは腕を上げることができなくなり、腕骨が肩の高さくらいに来ると、上に上げるのではなく腕骨を引くことしかできません。腕をひき上げ続けると、三角筋はやや弛緩して棘上筋が急いで助けに入ります。棘上筋はその後腕を30-40度上げますが、そのあとは三角筋はその仕事を終えることができます。


棘上筋が怪我をするのは、80ー120度の間です。大きなゴム輪くらいの大きさの棘上筋の腱は、筋肉の中で最も怪我をしやすい部分ですが、筋肉そのものもまた怪我をします。これは、特に激しいアド・ムカ・シュヴァナサナ(ダウンドッグ)や、最近人気の派手なヴァシスタサナ(サイドプランク)、そしてアドバンスのアームバランスポーズ、ティティバサナなどで起こります。


単純な事故もまた棘上筋腱を傷つけます。例えば、凍った駐車場で転倒して腕をついたりして、上腕骨が窩に入り込み棘上筋を肩峰突起との間に挟んだり、腱を切ってしまったりします。また単純な腕を上げるという反復する動作でも起こります。頭上にある棚の何かを取ろうと手を伸ばした時、三角筋が上腕骨を強く引きすぎて肩峰突起を押すので、棘上筋を挟んでしまいます。時間が経つにつれ、小さな怪我が積み重なってより深刻な問題になっていくのです。


肩はこうした挟み込みを防ぐように作られているのですが、使い方の癖や毎日の生活で、バランスが崩れたり痛くなったり、動かなくなったりします。この問題は姿勢の癖から始まります。私たちの多くは、腕の重みを支えるために肩の筋肉を使いすぎています。首に最も近い筋肉である菱形筋と肩甲骨上部から首に伸びる肩甲挙筋がその重さを担っています。これは、タイピングなど肩を長時間すくめた状態になるような活動の時には特に問題となります。慢性的な緊張が積み重なり、肩甲骨の内側が耳に近づき、背中や肩が丸くなります。これが悪いサイクルの始まりとなります。これらの筋肉が引っ張るので肩甲骨が背中を丸く持ち上げ、筋肉がより硬く収縮し、肩甲骨をさらに高く引き上げます。この姿勢と緊張の結果、三角筋が弛緩すべき時にも全く弛緩しなくなります。あなたの肩が前に巻いていて腕を80-120度上げる際に三角筋に力が入っているとしたら、上腕骨が肩峰突起に押し付けられて回旋腱板腱を挟みこんでいるかもしれません。


この悪循環を防止し肩筋肉の力とバランスを取り戻すためのヨガ・ポーズは、様々な方向へ腕を上げる簡単な立位のポーズから、体重を直接腕で支えるポーズまで様々あります。以下の立位ポーズは、腕を上げる際の肩甲骨の健康的な可動性を取り戻すのに役立ちます。また、菱形筋や肩甲挙筋の負荷を緩和するため他の筋肉を活性化することも可能です。逆立ち特にヘッドスタンドは、肩筋肉を強化しまた、より開いてストレスから解放してくれます。
 
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次回に続きます。