肩甲骨を解放する
まず、ウォリアーIIのポーズで両腕を両サイドに伸ばしましょう。両腕は肩と同じ面か、やや前に来るように気をつけましょう。「すくめ」を体験するために、手の親指が下向きになるよう手と腕を回転させましょう。首の両サイドが持ち上がって、三角筋が緊張し、肩が固まるのを感じましょう。
緊張したウォリアー II: 三角筋が緊張していると肩が持ち上がる
次に掌が上向くように手と腕を回転させ、手の小指を上に伸ばしましょう。背中の丸みがなくなります。肩甲骨の内側上部が開放されて後ろに下がり、首の横が柔らかくなります。肩甲骨が背中に安定して支えられ、腕の重みが首ではなく肩甲骨に支えられていることを感じましょう。特に肩甲骨の外側の筋肉が硬くなると同時に三角筋が柔らかく、肩関節がより開いて開放されるのを感じるでしょう。肩甲骨に支持を感じるために腕を小さく回してみましょう。
リラックスしたウォリアー II: 肩がリラックすると
肩甲骨の上部内側が下がり首が柔らかくなる
肩甲骨の上部内側が下がり首が柔らかくなる
同じすくみがパールシュヴァコナサナで上の腕を頭上に伸ばした時にも起こります。腕を伸ばすのが難しい生徒が多くいます。三角筋が硬く、肩がすくんで首が詰まって頭を回すのを不快にさせています。これも肩甲骨から始まっていて、腕が肩関節にうまく入り込むため後ろへ下げることができていないのです。
パールシュヴァコナサナ:腕をやや前にC字の形で伸ばし、
肩の挟み込みを防ぐ。腕が回転して肩甲骨が開放されるのを感じよう。
パールシュヴァコナサナで肩を開放するには、上の腕を少し体の前にして、小指の方向へ伸ばしながら小さな円弧を描くように腕を回し、小指でアイスクリームを救うかのように手でCの字を作ります。肩甲骨が解放され耳から遠ざかって後方へ下がり、上腕骨が耳の横で正しい場所に嵌まり込んで、頭の回転するスペースを作ります。これは簡単ですがとてもエレガントな肩甲骨の動きで、肩を開くと同時に、背中と肩の深層筋を微細に下へ下げることで回旋腱板の締め付けを防ぎます。
肩関節を保護する
肩甲骨を感じるというのは、まだ始まりに過ぎません。回旋腱板(特に棘上筋)を保護し治癒するには、骨の位置を直すだけでなく、三角筋の情報への引きに対抗する筋肉群を活性化し強化しなければなりません。ダウンドッグやハンドスタンドなど腕を伸ばしたポーズでは、こうした筋肉を使いますが、この位置では肩もまた最も動きやすく脆弱な状態にあります。シルシャーサナ(ハンドスタンド)のバリエーションから安全に始めましょう。このポジションでは腕と肩がより安定しています。そして、このヘッドスタンドの準備練習の目的は腕をより荷重に耐えられるようにし、もし少しでも頭に荷重がかかるとしても首は安全なままです。
壁に向かったダウンドッグ
この練習法では、腕に荷重をかけずに肩の正しいアライメントを築くことができます。壁に向かって立ち、指を組んで両肘を肩幅に開き、前腕をヘッドスタンドの位置で壁に置きましょう。両掌は離しておき、腕が、V字ではなく逆さになったU字になるようにします。股関節から前屈しながら後ろへ歩きましょう。U字を保ったまま、体が直角くらいになり(必要なら膝を曲げます)頭が上腕と同じ高さになるまで腕を壁に沿って下げましょう。頭頂は壁につかなくても構いません。
上腕二頭筋の外側に軽く力を入れて、肘の内側から腋に向かってエネルギーを引き寄せましょう。この動きは肩を安定させ保護します。上腕二頭筋は力を入れると腕骨を肩関節に引き寄せるからです。肩を開いて関節内の挟み込みを防ぐために、両肘の間にビーチボールをギュッと挟むように、二頭筋を硬くして肘同士をアイソメトリックで寄せます。ウォリアーIIで小指を上に回した時のように、上背部が広がるのを感じましょう。
前腕を壁に押し付けて肩から上体をストレッチし、壁から離れます。肩に怪我がある時は、肩に痛みや詰まりを感じないところに止まりましょう。最初は頭と壁の距離は3-6センチくらいしか離れないかもしれません。それで大丈夫です。肘を押すと、肩甲骨がどのように背中で力強くなるか、肩の内部でより大きなスペースを作り出すかに気付きましょう。比較するために、手首で押してみて、どのように三頭筋や三角筋が働き肩が硬く丸くなるかを見てみましょう。腕に荷重がかかっている時に肘で押すとより深層の筋肉が活性化します。広背筋、肩甲下筋や大円筋です。これらは腕骨頭を後下方に引き、肩峰突起から遠ざけます。これが棘上筋の挟み込みを防ぐのです。壁に前腕を押して背中を伸ばす一方で、上背部が丸くなり過ぎないようにします。肩甲骨の間から床に向かって背骨を下ろし、腕を使い続けます。このストレッチを30秒程度ホールドしましょう。
椅子を使ったヘッドスタンド
次のバリエーションでは、腕により荷重がかかります。ここで補助が役に立ちます。安定した椅子を、滑らないように壁に向けて置きましょう。椅子に背を向けて前に座り、両脚を伸ばして椅子から脚の長さ分の距離を測ります。ここでかかとがある場所に肘を置くことになります。
さて、椅子から離れて、腕をヘッドスタンドの形にして肘を測った場所に置きましょう。両足を床につけたまま爪先を立て、ダウンドッグをする時のように腰を持ち上げます。二頭筋の内側に軽く力を入れ、前腕を下方へ体から離すように押し腰を後ろにストレッチ、肘から腰にかけてをまっすぐにしましょう。頭頂部を手の間の床に置き、頭ではなく腕にほとんどの荷重がかかるように、腕を強く押しましょう。このストレッチを腕を押しながら30秒程度ホールドします。
もし、ほとんどの荷重を腕に載せた続けることができ、そして肩関節に詰まりが無いようであれば、片足ずつ椅子の上に置いて腰を持ち上げ、より腕に荷重をかけます。(首を保護し肩を強化するために、頭が前腕のラインに来るように床から頭を完全に持ち上げてもよいでしょう)前腕全体を床に押し、特に肘を強くしましょう。
ヘッドスタンドのバリエーション:床に前腕全体を押して肩を強化し首を保護する
ヘッドスタンドのバリエーション
次の練習では、椅子を移動させて壁から脚の距離を測ります。両手の指を組んで頭を両手の間に置き、両手で後頭部を囲み、手首の骨が床と直角になるようにします。もし首に問題があるようであれば、ここでも頭を床から浮かせても良いですが、かなり努力が必要となるでしょう。まずダウンドッグ・バージョンをしてから、片足ずつ壁に移動させ体が直角になるようにしましょう。最初にやった練習の逆さバージョンです。このポーズはウルドヴァ・ダンダーサナ(下向きの杖のポーズ)と呼ばれることもあります。両腕を押して首の荷重を減らし、両肩を耳から腰の方へ引き上げましょう。この動きが肩峰突起から腕骨を遠ざけ、棘上筋を安全に保ちかつ治癒するのを助けてくれる筋肉群に力が入り強化します。
この練習は回旋腱板の怪我にどれほど効果があるのでしょう?2006年に the International Journal of Yoga Therapy で発表されたある研究では、10人の回旋腱板を負傷した人に、同様のヘッドスタンドのバリエーションを毎日30秒間6週間練習をしてもらい、その後6週間毎にフォローアップのセッションをし、平均で4.9ヶ月続けました。10人のうち9人が肩の可動域に向上がみられ、最初の30秒のセッションの後すぐに肩の痛みが減少しました。最後のフォローアップでは、8人に著しい可動域の向上、痛みの75パーセント減少がみられました。手術に至ったものは誰もおらず、これは激しい痛みを伴う回旋腱板負傷患者には珍しいことです。
すでに完全なヘッドスタンドの練習をしていて、アライメントや予防策に気づいているなら、肩を強化しながら治療するルーチンにこのアサナを取り入れても良いでしょう。ポーズの間は、前腕全体を床にしっかり押して体重を分散させる必要があります。
ヘッドスタンドでは、肩は耳の方へ丸まる傾向があります。結果として、体が「バナナ」になってしまいます。もし腰や首に圧迫を感じるなら、バナナ形になっているサインです。もう少し肘を押しましょう。同時に、腿を強く安定させて腰を少し後ろへ下げて肩の真上に来るようにし、両足を前に、かかとの内側と母指球を高く伸ばします。下腹部を強くして体を安定させましょう。頭頂に向かってのびながら首が長くなっているように感じなければなりません。
肘をもっと床に押すと、肩を広げることができ、耳から腰の方へ持ち上げることもできます。肩甲骨の外側がどのように使われているかを感じましょう。今使っている筋肉こそが、練習を通して目覚めさせ強化させている時に、肩のバランスの取れた動きを作り出し回旋腱板の怪我を保護してくれる筋肉なのです。
肩は、毎日のとても多くの活動で重要な役割を果たしています。楽器を弾いたり、タイプしたり、運転したり、もちろんヨガやスポーツでもそうです。毎日の練習に逆立ちを肩強化の練習を含めることはとても意味のあることです。そして最後に、世界の負担があなたの肩にやや重過ぎると感じたら、逆さになることでちょっとした解放感を得られるでしょう。アトラス神(訳注:ゼウス神から双肩に天を担わされた巨人)もまた、ヘッドスタンドをよくしたはずです。
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