2020年12月9日水曜日

肩の怪我を理解し防ぐ VOL.1
Understand and Prevent Shoulder Injuries

私は仕事上PCでタイピングすることが多く、また楽器を弾いたり料理を作るのが好きで、つまり腕を前にして作業をする時間がかなり長い方です。そんな私は、ヨガを始めてすぐの頃に無理なチャトゥランガで肩の怪我をしました。そして痛みがほとんどなくなるまで数年かかり、その間はアームバランスのポーズを試す度におかしな痛みを感じました。いまでも右肩は左肩と比べてかなり可動域が狭く、すぐに疲れて痛みを感じやすいのです。なかなか治らなくなる怪我。みなさんには経験してもらいたくないなーと思っています。

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あなたが両腕を上げる度、肩の筋肉は小さいものも大きいものも、微細なニュアンスで踊り始めます。これらの筋肉の複雑な相互作用は、肩関節の特別な構造に伴っており、両腕に大きな可動域を与えています。実際、肩は体の中で最も緩い関節のひとつなのです。しかし、この動きの自由にはよくない側面もあります。肩は、突然の転倒や野球のボールを投げるなど継続的な動きからの怪我に弱いのです。回旋筋腱板の筋肉は、肩で最もデリケートな部分ですが、特に敏感なところです。しかし、いいお知らせもあります。目的にあった定期的なアサナの練習は、回旋筋腱板を健康に保つ効果があります。アライメントに気付きを与え、肩の筋肉を強化し、胸を開きます。そして下記のポーズは、既に怪我をした回旋筋腱板をも治癒に向かわせる効果もあります。



肩の解剖学


肩関節の独特の性質を、特に肩甲骨との関係について見ていきましょう。肩関節は臼状関節とされていますが、上腕骨頭に丸い「球」はあってもそれに対するくぼみ(窩)はありません。そのかわりに、鎖骨の端と肩甲骨が一緒になって、その下から上腕がぶら下がっている棚を作っています。この棚は肩峰突起と呼ばれています。この下には丸いくぼみがありますが、肩甲骨の一部です。このおかげで肩関節は「窩」を持つことができ、上腕骨頭がこの表面を滑ることで回転し、そして回旋腱板の安定した収縮が関節をひとつにまとめています。


回旋腱板は、実は4つの分かれた筋肉からできていて(棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋)、上腕骨頭の前後で重なり合って関節を安定させています。これらの深層筋は肩峰突起に直接ついているより大きく強い筋肉群と重なり合っています。回旋腱板の筋肉は、上腕骨そのものの動きを導き、他の大きな筋肉群は、上腕骨と肩甲骨をひとつのユニットとして機能させながら肩全体の動きをコントロールします。





怪我の起こり方


回旋腱板の怪我で多いのは、肩の最も端にある三角筋(腕を上げるための大きな筋肉)の下です。怪我は、上腕骨頭に直接ついている小さな筋肉で腕を頭上に持ち上げる三角筋を助ける棘上筋に起こります。この三角筋の強さこそが棘上筋の怪我を引き起こすことが多いのです。腕を頭上に上げる時、三角筋は体から80度あたりまで腕を引き上げることができます。ここで、三角筋だけでは腕を上げることができなくなり、腕骨が肩の高さくらいに来ると、上に上げるのではなく腕骨を引くことしかできません。腕をひき上げ続けると、三角筋はやや弛緩して棘上筋が急いで助けに入ります。棘上筋はその後腕を30-40度上げますが、そのあとは三角筋はその仕事を終えることができます。


棘上筋が怪我をするのは、80ー120度の間です。大きなゴム輪くらいの大きさの棘上筋の腱は、筋肉の中で最も怪我をしやすい部分ですが、筋肉そのものもまた怪我をします。これは、特に激しいアド・ムカ・シュヴァナサナ(ダウンドッグ)や、最近人気の派手なヴァシスタサナ(サイドプランク)、そしてアドバンスのアームバランスポーズ、ティティバサナなどで起こります。


単純な事故もまた棘上筋腱を傷つけます。例えば、凍った駐車場で転倒して腕をついたりして、上腕骨が窩に入り込み棘上筋を肩峰突起との間に挟んだり、腱を切ってしまったりします。また単純な腕を上げるという反復する動作でも起こります。頭上にある棚の何かを取ろうと手を伸ばした時、三角筋が上腕骨を強く引きすぎて肩峰突起を押すので、棘上筋を挟んでしまいます。時間が経つにつれ、小さな怪我が積み重なってより深刻な問題になっていくのです。


肩はこうした挟み込みを防ぐように作られているのですが、使い方の癖や毎日の生活で、バランスが崩れたり痛くなったり、動かなくなったりします。この問題は姿勢の癖から始まります。私たちの多くは、腕の重みを支えるために肩の筋肉を使いすぎています。首に最も近い筋肉である菱形筋と肩甲骨上部から首に伸びる肩甲挙筋がその重さを担っています。これは、タイピングなど肩を長時間すくめた状態になるような活動の時には特に問題となります。慢性的な緊張が積み重なり、肩甲骨の内側が耳に近づき、背中や肩が丸くなります。これが悪いサイクルの始まりとなります。これらの筋肉が引っ張るので肩甲骨が背中を丸く持ち上げ、筋肉がより硬く収縮し、肩甲骨をさらに高く引き上げます。この姿勢と緊張の結果、三角筋が弛緩すべき時にも全く弛緩しなくなります。あなたの肩が前に巻いていて腕を80-120度上げる際に三角筋に力が入っているとしたら、上腕骨が肩峰突起に押し付けられて回旋腱板腱を挟みこんでいるかもしれません。


この悪循環を防止し肩筋肉の力とバランスを取り戻すためのヨガ・ポーズは、様々な方向へ腕を上げる簡単な立位のポーズから、体重を直接腕で支えるポーズまで様々あります。以下の立位ポーズは、腕を上げる際の肩甲骨の健康的な可動性を取り戻すのに役立ちます。また、菱形筋や肩甲挙筋の負荷を緩和するため他の筋肉を活性化することも可能です。逆立ち特にヘッドスタンドは、肩筋肉を強化しまた、より開いてストレスから解放してくれます。
 
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次回に続きます。



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