ヨガをしていなくても、首まわりの問題は日々の生活の障害になるということに気づいています。たびたび、朝起きた時に「首凝り」や「首の痛み」に悩まされることもあるでしょう。赤ん坊はとても美しいラインで頭と首を支えています。では、成長するにしたがって、私たちはこのアライメントと心地よさをどのように失っているのでしょうか?
今度外出したら、周りの人たちの座っている姿勢を見てみましょう。赤ん坊の頭と首を長く伸ばしたような姿勢をしている人は、おそらく滅多にいないはずです。みんな、猫背で寄り掛かり、黒板やコンピューターのスクリーンを見るために見上げているでしょう。首の痛みがどのように悪化するかをよく知るため、そして防ぐため、首の解剖学をさっとみていきましょう。
首、つまり頸椎は7つの椎骨から成っていて、頭骨から肩の上までカーブを描いた構造で積み重なっています。それぞれの間、そして頭骨と第一頸椎の間には水分の多い結合組織厚いクッションである椎間板があり、椎骨を支持し正常な可動域を作り出しています。頸椎は椎骨のなかでも最も動きの大きい場所で、屈曲、伸展、回旋など驚くべき可動域を持っています。人間よりも大きな可動域を持つ動物はあまりいません。
おそらく、椎骨について忘れてはならない最も顕著なことは、その後方が凹にカーブした構造でしょう。首が休んでいる時は、ややカーブした形になっていて、これを生理的湾曲と言います。この湾曲した位置から離れるに従い、首の前方の椎骨、そして後方の面関節の両方で乖離するため、安定性が失われていきます。
もちろん、首や頭を動かしたり、普通の活動を行うために、この湾曲は変化します。そして、この湾曲を動かさなければ、ヨガ・アサナをすることもできないでしょう。しかし、椎骨の基本的な湾曲をできる限り尊重して維持する方法で動かすことを身につけることは、首の健康を取り戻しケガを防ぐのに最も効果的です。以下は、首に直接影響のある人気のアサナで、どのように首を守ればいいのかについてです。
ヘッドスタンドでの両腕と頭のバランスを探る
ヘッドスタンド(シルシャアサナ)は、おそらく、ヨガをしない人にとっては最もヨガっぽいと思うポーズでしょう。私がヨガを始めたころ、とうとう「本当」のヨガをしていると感じたものです。通常の禁忌(月経、妊娠、高血圧、裂孔ヘルニア、眼圧、網膜障害)で、ヘッドスタンドをおすすめできないのは、首に問題がある場合です。しかし、その他の人にとっては注意と気づきをもっていれば、行えるものです。
私がまず生徒にアドバイスするのは、ポーズの主な焦点がバランスにならないよう壁を使うことです。また、頭にはほとんど荷重をかけないことを勧めます。これは腕を強化するだけでなく、肩を天井に向かって引き上げる習慣を作ります。これが、荷重を首から肩甲帯へ移動するのに役立ちます。強い引き上げの動きで肩を使い続けることが重要なので、おかしな言い方をすれば、ヘッドスタンドもまた「ショルダースタンド」なのです。時間が経つにつれ、強化され自信がついてくれば、自然と荷重が頭へと移動していきます。最終的に洗練されたヘッドスタンドができるようになると、荷重は頭にあるのか腕にあるのかわからないほどに成っているはずです。それがヘッドスタンドです。
その他重要なことは、シルシャアサナでは頭は体の真下にくるということです。友達や先生に横から見てもらい、次の2点をチェックしてもらいます。まず、上腕が垂直担っているかどうか。垂直から遠ざかるほど、より大きな圧迫が首にかかります。2番目は、耳が上腕で隠れているかどうかです。
もし、横から見て、耳が完全に見えていたら、頭が手よりもずっと前にあるためで、体の真下ではないということです。もしそうなっていたら、首は荷重を平均して支持していないことになり、怪我や不快感の原因となります。もし、耳が見えていると言われたら、下りて数呼吸して、頭を数センチ肘の方へ移動してから、再度試してみましょう。新しい位置でバランスを取りにくい場合は、壁を使いましょう。バランスよりアライメントが重要だということを忘れないでください。バランスはいずれすぐに戻ります。
最後に、ヘッドスタンドでは、視線は部屋の方を真っ直ぐ見て、床や天井を見ないようにします。床を見ているなら首は湾曲しすぎています。天井を見ているなら首は真っ直ぐになりすぎています。どちらの場合も、首の安定性が悪くなり、頸椎周りの、特に腱や筋肉など軟組織へ必要以上の負荷がかかります。
ショルダースタンドは首のバランスではない
伝統的なヘッドスタンドのカウンターポーズはサルヴァンガサナ(ショルダースタンド)です。ヘッドスタンドで首が自然な湾曲(最も安定した位置)にある一方、ショルダースタンドでは、首が完全に屈曲しているためにその湾曲は平らになります。また、ショルダースタンドでは、荷重が最もかかる場所が首になります。頸椎が深く屈曲した状態では安定性がかなり下り、荷重のかかる場所は怪我の危険が増します。(ヘッドスタンドの禁忌はそのままショルダースタンドにも当てはまります)
怪我を防ぐため、ショルダースタンドでは、肩の下にブランケットを使うことをお勧めします。特にショルダースタンドでブランケットを使うことを躊躇う人が多いのはわかっていますが、ブランケットが有益なのには2つの理由があります。
まず、通常の頸椎の屈曲は、人が思い描くような90°ではなく最大で50°程度にすぎません。50°よりも深く顎先を胸に近づけるには、胸椎上部の屈曲が必要となります。この丸まりや屈曲は、理想的なショルダースタンドとは逆になってしまいます。
自然な首の屈曲角度になるよう、十分なブランケットを肩の下に置くことをお勧めします。まず、分厚いウールのブランケットを5枚置き、そこから必要ならば増やしたり減らしたりしていきます。ブランケットで肩が支えられ、首が自由になるようにします。(ブランケットに直角にボルスターを置いておくと、ポーズの出入りが楽になるでしょう)ブランケットを使っての練習の始めは、両足で壁を蹴りながら上がり、勢いをつけて足をあげないようにしましょう。
ショルダースタンドの間、首の後ろを先生に確認してもらってもいいでしょう。首の後ろが柔らかく最大にストレッチされていないようにします。ブランケットが十分かどうかは横からみてもらうとわかります。首の根本が頭骨の下端よりもやや高い位置にあれば、おそらく首が守られている高さにあります。
ショルダースタンドでブランケットを使う方がいい理由の二つ目は、首とは関係ありません。あなたが十分に高い位置にある時は、お腹が完全に開いて腹部の内臓が「上に動く」ように見えます。高さが足りなければ、腹部がやや凹んで内臓が落ち込んでいるように見えます。これでは、内臓や横隔膜の重みが心臓や肺を圧迫するのでよくありません。首を守り内臓を引き上げるため肩が高く持ち上下られていると、心臓や肺はより守られます。
ヨガの練習で首を安全に保つためのその他のコツ
首まわしをしない
ヨガで最も練習されているポーズの一つは首の回転です。体の回を実際的に360度回転させようとするものです。この動きを私はお勧めしません。
頸椎における脊椎関節構造(面関節と呼ばれます)の研究によると、頸椎は柔らかな平の表面で水平に対して45度傾いています。頸椎が実際に可能な動きというのは、面をすべらせる動きの「前と上」の「屈曲」(顎を胸に)、そして望遠鏡を閉じるような面のすべり「下と後ろ」の「伸展(後屈)」です。
回転と横曲げは、これらのふたつの動きの組み合わせです。例えば、右に頭を向ける時、首の左側の面が前と上に動き、右側の面が下と後ろに動き、それぞれがお互いに落ち込みます。飛行機が右へ旋回するところを思い浮かべてみましょう。左翼が持ち上がって右翼が下がります。頸椎は、股関節のように構造的に球関節ではないのでこのように動きます。ですから、360度の動きである首の回転は首にとっては非生理的な動きなのです。
椎骨の本来の構造を尊重した動きになるので、一度に一方向にストレッチをする動きの方が首にとって、より健康的です。特注:横に首を倒す時(耳を肩の方向に近づける)、顎は上ではなくやや下を向くようにします。椎骨の構造を頭に入れて動くと、怪我の防止になるだけでなく、椎骨関節を動かした時に聞こえる「ギリギリ」を減らす可能性もあります。
最後に
最後に、首にとっても最もいいことは、できるだけ後方への小さな湾曲を保ったままニュートラルの位置に維持することです。この湾曲を保ったまま、座り、運転し、アサナを練習し、歩き、そして眠ることができれば、痛みのない健康的な首への可能性を最大限まで広げることができるのです。