2023年12月18日月曜日

ヨガの生命の樹
The Yogic Tree of Life



ほとんどの人にとって、樹木というのは地面から育つのが普通ですが、ヨガ的には樹木は逆さに成長します。「アシュワッタという永遠の木がある。その根は上にあり、枝は下にある」と、死の神秘を明かすヨガの書物であるカタ・ウパニシャッドでそう語られています。ヨガマスターや、シベリアのシャーマン、ペルシャの司祭、古代ケルト族、そしてバイキングたちもこの木のことをよく知っていました。


私の祖父母がイッグドラシルと呼ぶこの驚くべき木は、ノルウェーでは空から地面に向かって育つといいます。オーディンやトールなどの北欧の神は、私たちとは異なる枝に住んでしました。実際に古代のイギリス人たちは、自分たちのことを「ドルイド」つまり「その木を知る者」と呼んでいました。しかし、私がヨガを学び始めるまで、この逆さの木がいったい何なのか知りませんでした。


私が知る限りアシュワッタについて語る最古のものは、5000年以上前にインドで編纂されたリグ・ヴェーダです。「その木とは何か?何でできた木なのか?それが形作られているのは地なのか天なのか?」インド古代聖者たちは、文字通りその木を空に置きました。夜に外に出て、黄道(太陽や惑星の通り道)が天の川と交差するあたりの蠍座を探してみましょう。そこには、ヨギがムーラ「根」と呼ぶ空の蠍の尻尾に小さな星座が見えるでしょう。これが、世界の木が育つ天界の根です。ここはまた銀河の中心でもあるという驚くべき偶然が、もしあなたが偶然を信じるならですが、起こっています。


空に散らばる星たちを十二宮を逆さに辿っていくと、蠍座にアシュワッタの幹が生えていて、天秤座の方へ腕を伸ばしていて(インド星座では「分かれた枝」という意味のヴィシャカ)、そして獅子座や乙女座にある枝に実をつけています(「木の実」という意味のファルグニと呼ばれます)。古代聖者はここにカニャという若い女性を置きます(乙女座)。彼女は、木の実に片手を伸ばしています(からす座はハスタと呼ばれ「手」を意味します)。そしてそこで彼女の隣で木に巻きついた長い蛇がうみへび座で、古代インドではアシュレシャ「蛇の王」と言いました。インドの伝説によれば、この木の実はヨギ以外は食べてはいけませんでした。そのすざましい力は彼らにしか扱えなかったからです。


さて、ここでびっくりです。古代のインドやイランでは、天空の木は一本ではなく二本あったというのです。一方は金の実をつけ、もう一方は銀の実をつけます。これらは、蛇がイブに食べるよう誘惑した、聖書の知識の木やエデンの園の生命の樹を思い出させませんか?モヘンジョダロ(パキスタンの遺跡)で発見された粘土版の記述から、聖書の最古の部分がが編纂された1000年以上も前にインドではアシュワッタの木が崇められていたことがわかっています。古代アッシリア人もまた、女神イシュタル(乙女座)が世界の木のかたわらでライオン(獅子座)の上に立つ絵を残しています。これら星座の神話は、おそらく聖書のアダムとイブの物語の原型なのでしょう。イブは、黄道に沿ってなる木の実に手を伸ばしています。インドでは、ヨガの書物の中で十二宮のある黄道をアディチャスと呼び、木の実を食べたアダムとイブがとらわれてしまった死と再生の車輪、つまりサムサラ(輪廻転生)を表します。


ヨガの伝統では、行動の結果(木の実)への執着をなくすよう学びます。それはカルマをより複雑にするだけだからです。


ノルウェー神話では、木の世話をする三人の庭師が出てきます。一人目は過去を知るウルドという老婆で、二人目は現在を知るヴェルダンディという若い女性、最後は未来を知るロヒニという無垢な女の子で牡牛座の星アルデバランに関係があります。若いヴェルダンディはインドではチトラと呼ばれますが、西洋の天文学者からは乙女座のスピカとして知られます。運命をコントロールするとバイキングが信じている恐ろしい老婆のウルドは、インドの人がジェスタと呼ぶ赤く輝く星、蠍座のアンタレスです。この3つの星はそれぞれがほとんど同じ距離で離れていて、4方角を示す伝統的な天空の指標のうちの3つです。


古代インドで最も重要な儀式、馬の供犠で、この3つの星を表す3人の女性が儀式の頂点で午に手を置きます。この馬の供犠との関係が特に興味深いところは、世界の木の意味を持つアシュワッタは、実は「馬が立っている場所」という意味だということです。天空の馬とはもちろんペガサス座で、サンスクリットではダディクラス、4つ目の指標です。ペガサスは、天の北極の周りを永遠に駆け続けます。天の北極は、動くことのない北の空の一つの点です。それ以外の天空の全ては、周りを動きます。それは、時や変化の外にある魂を表します。私たちの内なる魂は完全な静寂の場所から、まるで回転する独楽の動かない車軸のように、周りで起こる物事を観察しているのです。


ノルウェーの天の北極はふたつめの木で、黄道の周りを回っている善悪の知識の木と直角に立っています。この北の木の銀の実は、有名なヨギの不死の蜜であるソーマの源です。これが、アダムとイブが食べることを禁じられた生命の樹です。カタ・ウパニシャッドは、わかりやすく暗示しています。「アシュワッタと呼ばれる永遠の木がある。その根は上に、枝は下にある。その輝く根はブラフマン、至高の真実と呼ばれ、それのみで死を超える。この世に存在する全てはその一点に根ざしている。それを超えるものは何もない」ウパニシャッドは、アシュワッタの樹の輝く根、つまり動かぬ一点を自分自身の中に見つけなさいと伝えているのです。では、実際にはどうすればいいのでしょうか?


ヨガで馬が象徴するのはプラナ、生命の呼吸です。呼吸は、ペガサスが北極星に繋ぎ止められているように、私たちの心に繋ぎ止められています。呼吸の周期は、ペガサスが天空を終わることなく回り続けるように、何度も何度も巡ります。しかし、ヨギたちは、自分の存在の動かない中心に意識を統合し、呼吸をゆっくりに、そして最後には呼吸を止める方法を知っています。これがサマディの状態で、瞑想の最も深いレベルです。


深い瞑想の中で、木に登り始めることができます。あなたの中にあるアシュワッタは背骨です。背骨の最下部にあるムーラダーラ・チャクラのことを根のチャクラと言いますが、超自然の根は実際には頭頂にあるサハスララ・チャクラにあり、そこが聖なる意識のある中心です。それが目覚めるのは、自身の外にある実を欲するのをやめ、内側に意識を向ける時です。そして、意識の力であるクンダリニの蛇が背骨に対応する微細な経路を頭頂へと上り始めます。インドからスカンジナビアに渡る世界の樹にまつわる伝説はどちらも、蛇が辿り着こうとする樹のてっぺんの近くに鷲がいると伝えています。鷲とはアジナ・チャクラで、眉間の後方にある意識の中心です。蛇が鷲を過ぎて超自然的な神経樹の最高地点に達した時、悟りが開かれると言われています。


バガヴァッドギータで、最上のヨギであるクリシュナは言います。全ての樹の中で聖なる意識が最も存在しているのはアシュワッタであると。もうひとつの聖典バガヴァータ・プルナでは、クリシュナは死の間際、意識を内なる存在へと引き入れアシュワッタの樹に沈思したと伝えています。死の時にすべての意識を内なるアシュワッタの天空の根に向けることができれば、ヨガの実践において何か素晴らしいことを成し遂げたといえるでしょう。






ところで、アシュワッタの木は実際に存在します。植物学者はそれをインド菩提樹と呼びます。その木の下に座って、ブッダは悟りを開きました。バニヤンツリーの一種で、最初は地面から生えますがその後たくさんの根を枝から下に伸ばします。その先が地面に到達すると、それがまた根となり新しい樹となります。このように、ひとつのアシュワッタがアシュワッタの森となります。そこで「どれが元の木なんだろう」と自問した時、森に生えている全ての木が実は元の木なのだということに気づくのです。見た目はたくさんの木が生えているようですが、本当はたったの一本なのです。古代のヨギが世界を象徴するためにアシュワッタを選んだのは、それを完璧に表すからです。この世の全ては別々のものに見えるけれど、真実は、全てのものは同じ永遠の源を共有しているのです。










2023年11月28日火曜日

アーユルヴェーダのスパイスミックス:チュルナ 
The Wonders of Ayurvedic Spice Mixtures: Churnas



ホリスティックなウェルネスとして、アーユルヴェーダは、古くから心や体、精神のバランスに重点をおいています。この古代の知恵の中心にあるのは、ハーブ療法や実践における知識の宝庫で、その中でもチュルナとして知られるアーユルヴェーダのスパイスミックスは特別な存在です。これら細心の注意を払って組み合わせ作られたハーブとスパイスには、味覚を刺激するだけでなく、多くの健康上の利点があります。


この記事では、チュルナの世界を掘り下げ、その重要性、アーユルヴェーダのスパイスの深い効果、ドーシャの調和における役割、そしてこれらのスパイスミックスの魅力的なレシピをのぞいてみましょう。




チュルナとは?


チュルナはサンスクリット語に由来する言葉で、「粉末」を意味します。アーユルヴェーダでは、チュルナとは、特定の健康上の問題に対処するために配合された、細かく粉砕したハーブミックスのことです。これらは、さまざまなスパイス、ハーブ、その他植物の成分を正確な割合でブレンドすることによって作られています。その結果、料理の風味を高めるだけでなく、無数の治療効果ももたらす調和のとれたブレンドが生まれます。




アーユルヴェーダのスパイスの健康上の利点


チュルナでよく使用されるアーユルヴェーダのスパイスは、この古代の実践法の中心であり真髄です。これらの高い効果を持つ植物は、その健康上の深淵な利点で知られています。

  • ターメリック: 金色に輝くターメリックは、その抗炎症作用と抗酸化作用で有名です。その活性化合物であるクルクミンは、消化の促進から関節の健康のサポートまで、さまざまな健康上の利点と関連付けられています。

  • クミン: 消化を促進する性質を持つクミンは、膨満感や消化不良を軽減します。また、ドーシャのバランスを整える効果もあると考えられています。

  • コリアンダー: コリアンダーは冷やす性質があることで珍重されています。消化と解毒を助け、健康な肌を促進します。

  • シナモン: この体を温めるスパイスは、血液循環と新陳代謝を刺激すると考えられています。血糖値のバランスを整えるのにも有益であると考えられています。

  • フェンネル: フェンネルシードは、腹部のガスを緩和し、消化の促進するためによく使用されます。

  • ショウガ: 燃えるような風味と消化能力の高さで知られるショウガは、吐き気に効き、消化を改善し、免疫力を高めるために使用されます。



スパイスを使ってドーシャのバランスを整える


アーユルヴェーダの中心となるのは、体内に存在するさまざまな元素エネルギーを表すドーシャ (ヴァータ、ピッタ、カパ) の概念です。これらのドーシャの乱れが、さまざまな健康上の問題を引き起こすと考えられています。チュルナでミックスされたアーユルヴェーダのスパイスは、これらのドーシャを調和させる上で極めて重要な役割を果たします。


ヴァータの乱れ

風と空間を表すヴァータは、バランスが崩れると不安、落ち着きのなさ、消化器系の問題を引き起こす可能性があります。生姜、シナモン、ターメリックなどの体を温めるスパイスは、過剰なヴァータを鎮めるのに役立ちます。


ピッタの乱れ

火と水に関連するピッタは、過剰になると炎症、酸性度、過敏症を引き起こす可能性があります。コリアンダーやフェンネルなどの冷やすスパイスは、ピッタのアンバランスを軽減するのに役立ちます。


カパの乱れ

土と水を体現するカパは、バランスが崩れると、だるさ、うっ血、体重増加を引き起こす可能性があります。黒胡椒や生姜などの刺激作用のあるスパイスは、カパのバランスを整えるのに役立ちます。




スパイスミックスのレシピ (チュルナ)


チュルナを作るには、風味、エネルギー、健康上の利点のバランスをとる技術が必要です。
まずは伝統的なチュルナのレシピをいくつかご紹介しましょう。


3ドーシャのためのチュルナの割合
フェンネル シード 6 
コリアンダー シード 2
クミン シード 2
ターメリック粉末 1 


ヴァータためのチャーナ
フェンネル シード 6
コリアンダー 2
クミンシード 3
ターメリック粉末 1
ショウガ粉末 1
ヒング (アサフェティダ) 1


ピッタのためのチュルナ
フェンネル 10
コリアンダー 4
クミン 2
ターメリック粉末 1
フレッシュまたはドライミント 1


カパのためのチュルナ
フェンネルシード 6
コリアンダー 3 
クミン 3
ターメリック粉末 1
ショウガ粉末 1
黒コショウ 1/4
シナモン粉末 1/2


各レシピのすべての材料を清潔なコーヒーグラインダーに入れて挽きます。




最後に


アーユルヴェーダのチュルナは、単なるスパイスミックスではありません。健康とウェルネスへの総合的なアプローチを体現したものです。強力な健康効果、ドーシャを調和させる効果、そして風味豊かな側面をも備えたこれらのスパイスミックスは、アーユルヴェーダの知恵と伝統の証です。チュルナを日常生活に取り入れて、アーユルヴェーダで証明された原則のエッセンスを取り入れることで、最適な健康状態を得ることができるのです。






2023年10月18日水曜日

心臓病の原因は高コレステロールでなく炎症かも Vol.2
Inflammation, Not High Cholesterol, May Cause Heart Disease

前回からの続きです。

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心臓発作の警告サイン


心臓発作は突然で強いものもあります。「映画の心臓発作」と呼ばれ、誰の目にも明らかなものです。しかし、ほとんどの心臓発作はゆっくりと始まり、軽い痛みや不快感を伴います。発作に見舞われた人は多くの場合、何があったのかわからず、長い間助けを呼びません。心臓発作が起きていることを示すサインは以下です。


胸の痛み
ほとんどの心臓発作で、胸の中心に痛みを感じ数分間続きます。あるいは、痛みが消えたり戻ってきたりします。不快な圧迫感、締め付け、膨満感、痛みとして感じられます。


上半身の他の部分の痛み
腕や背中、首、顎、胃の痛みや不快感という症状もあります。


胸の痛みを伴うまたは伴わない息切れ


その他サインの可能性として、冷や汗やめまい、立ちくらみなどがあります。男性に比べて女性はやや、息切れやめまい、吐き気、背中痛や顎の痛みを感じる場合が多いです。



より複雑なことに・・・


もしあなたが中年男性で、高コレステロールというリスク要素があるなら、あるいはLDL値が高いことを知っているなら、注目してください。最近、「悪玉」コレステロールには、パターンAとパターンBの二つの味があることが発見されました。軽く、ふわふわして完全に大丈夫なLDL-Aは心臓疾患に全く危険を及ぼさないが、小さく硬いBは「悪い奴」だと、心臓科の専門であるジョニー・ボウデン博士は言います。パターンBのLDLは、内皮に留まって酸化し動脈プラークとなります。ですから、AとBの割合を知ることが心臓疾患のリスクを明らかにすることに役立ち、パターンBのLDLを減らす必要があるシグナルかもしれません。もちろん、LDL酸化に繋がり、動脈プラーク形成を起こす炎症を促すリスク要素を最低限にする必要はあります。




何ができるのか


医師や研究者らが心臓疾患の複雑な原因について明らかにできることは今後もないかもしれませんが、あなたの心臓を守るために今すぐ行動するのを止めるべきではありません。それが大きな変化を伴う人もいるでしょうが、すでに健康的なライフスタイルを送っている私たちにとっては少しだけ付け加えるだけで良いでしょう。



リスク要因を減らす


私たちの健康を損ねる慢性疾患と同様、心臓病は食事や運動の良くない選択、喫煙や過度な飲酒など疑問のある習慣などが原因で発症します。ほとんどの人はそれを既に知っているというでしょうが、この知識に基づいて食事を改善し、心臓病のリスク要因を減らすために行動するのがまず第一歩です。そして、あなたの心臓に闘うチャンスを与えるあまり知られていない手段に講じることも考えてみましょう。


1. インシュリン・レベルを下げる
医師らは糖尿病予防のためこれをしろと言いますが、高インシュリンはまた、動脈の炎症に繋がる生化学的連鎖反応を引き起こし心臓疾患の原因にもなり得ます。高インシュリンはまた、腹部の脂肪蓄積を(例のスペア・タイヤですね)促します。インシュリンを下げるには、食べる糖分を制限します。栄養士のボウデンが「脂肪よりもっと大きなダメージを与え炎症させる物質」と呼ぶところの、精製粉のパン、パスタ、短粒米、じゃがいも、インスタントのオートミールなど高血糖の炭水化物を避けなければなりません。


2. 口内環境を整える
習慣的な歯磨きやフロスは単に歯を守ったり息をきれいにするだけではありません。数多くの研究で、不健康な歯茎と心臓疾患の関係性がわかってきています。もっとも深刻な歯茎の疾患である歯周炎は、循環器疾患のリスクを30%以上も増加させます。



3. ストレスレベルを下げる
体内の慢性的なストレスが、自然な闘争逃走症候群として副腎からのコルチゾールを絶え間なく分泌させます。このコルチゾールや他の関連したホルモンが、動脈を収縮させ血圧を上げ、心拍を上げ、血中の凝固を促します。研究では、瞑想や祈り、ヨガ、バイオフィードバックなど心身のテクニックがストレスレベルを下げ心臓発作リスクを軽減すると示しています。

 

サプリメントを使う


心臓に良くない炎症性の食べ物や、フリーラジカルを誘発する環境的な毒素、汚染物質などに対抗するため、抗酸化物質のビタミンや抗炎症性のサプリを取り入れましょう。


ビタミンC、E
これらの強力な抗酸化物質はまた、動脈硬化を軽減しプラーク形成を防ぎます。


CoQ10
すべての細胞に存在する油性の栄養素コエンザイムQ10は、フリーラジカルを強力に排除し、LDL酸化を防ぎます。


NAC
正式な名前は「NアセチルLシステイン」です。NACはシステインの一種で、体内で最も重要な抗酸化物質のひとつであるグルタチオンを増加させます。


ALA
ALA(アルファ脂肪酸)は、それ自体が抗酸化物質であるだけなく、体内のビタミンCやE、グルタチオンをリサイクルするのに役立ちます。ALAはまた、亜麻仁や亜麻仁油にも含まれます。


オメガ3 
これらの重要な脂肪酸は炎症を抑え、血栓の防ぎ、心臓発作の死亡率をも下げるとされています。


ヨガを続ける
オハイオとジョージアの州立大学での研究で、ヨガで、慢性炎症のマーカーとなるサイトカイン・インターロイキン6のレベルが下がることがわかりました。また数多くの研究で、ヨガが主にコルチゾールを下げ中枢神経のバランスをとることにより、血圧(心臓疾患のもう一つのリスク要素)を下げることが示されています。



もちろんヨガの専門家が信じるのは、心臓疾患とは検査結果だけではありません。自分の体、心、精神とのつながりが切れた状態だとみなしています。そして、心臓によい環境を作るには、アサナ、プラナヤマ、瞑想、無私の奉仕といった実践要素をすべてを組み合わせるべきだとしています。その方法が以下です。



体の全可動域まで動かす様々なポーズを含んだ継続的な練習に取り組みましょう。後屈は胸郭を開いて心配機能を高め、立位ポーズは脚を強化し全身をストレッチします。前屈では安定感を得られエネルギーを取り戻し自律神経を落ち着かせます。ツイストは内臓をマッサージし全身の血流を高めます。


感情や心の状態をよく観察しましょう。血圧は、当然ながら勝手に上がるものではありません。20年以上前、ディーン・オーニッシュ医学博士と彼の研究チームが、感情的なストレスや孤立感、敵対心、自己批判などが、高コレステロールや酸化LDL、トリグリセリドレベルやニコチンと同様に心臓疾患に関係があると世界に証明しました。彼らはまた、ヨガや瞑想、グループサポートなどのライフスタイルの変化が病気を緩和することを示し、医療関係者を驚かせました。


ウッジャイ呼吸(勝利の呼吸)やナディ・ショーダナ(片鼻呼吸)などのプラナヤマを日課に取り入れて不安や動揺を減らしましょう。ただし、高血圧の人はクンバカ(呼吸を止めること)はやめておきましょう。


高血圧の緩和になるレストラティブヨガやチャンティング、マントラ瞑想などを実践しましょう。肉体としての心臓を落ち着かせ、感情的な心も落ち着かせられます。



心臓の健康に良いレストラティブヨガ


神経を落ち着かせ平衡状態を取り戻すため、以下のポーズを日課に取り入れましょう。高血圧のばあいは、頭立ちなど支持のない逆転ポーズは避けましょう。もし時間がなくてひとつのポーズだけをするなら、シャヴァアーサナ(屍のポーズ)やヴィパリタカラニ(両脚を壁に立てかけるポーズ)で、最大の効果を得ることができます。

  1. 頭を支えたアドムカ・シュヴァナーサナ(ダウンドッグ)
  2. 支えに体を沈み込ませるバラアサナ(子供のポーズ)
  3. たくさんの支えを使ったスプタ・バッダコナアサナ(仰向きの合蹠のポーズ)
  4. 仙骨を上げたヴィパリタ・カラニ(両足を壁に立てかけるポーズ)



必須脂肪酸を摂る3つの方法


ヴェジタリアン(あるいは単に水銀汚染や持続可能性を懸念する人)は、植物からだけでも必須脂肪酸を摂ることができます。


  • 大麻油や亜麻仁油にはアルファ・リノレン酸(ALA)が含まれており、体内で魚油にある必須脂肪酸に変化します。大麻油は亜麻仁油よりも味が良く、オメガ6とオメガ3の比率が3対1と理想的です。また、大麻油にはガンマ・リノレン酸(GLA)も含まれており、炎症を抑え肌の健康を向上させます。どちらのオイルも熱が加わると分解されてすぐに異臭がするので、開封後は冷蔵し1-3ヶ月内に消費しましょう。

  • くるみは、オメガ3に加えて心臓によい一価不飽和脂肪、また特に心臓によい小麦由来でないビタミンEを含んでいます。くるみの薄皮にも重要なフェノール酸、タンニン、フラボノイドが含まれているので、やや苦味はありますが一緒に食べましょう。

  • 微細藻類には、ALAとともにDHAやEPAが豊富に含まれており、オメガ3の必須脂肪酸が摂れます。魚は藻類を食べて脂肪内にオメガ3を蓄えます。微細藻類は今、魚油と同様に心臓に効果(英国栄養ジャーナルより)のあるサプリとして販売されています。




食べるべきもの


伝統的に、地中海周辺国であるスペインやギリシャ、イタリアの人々、特に中国や日本のアジア圏の人々は、欧米よりも心臓疾患の数が少なく、また寿命も長い傾向にあります。なぜでしょう?それは、伝統的な食事にあります。マリナーラソースに大豆は入っていませんし、中華鍋にオリーブ油は使われませんが、どちらの食事にも飽和脂肪や硬化脂肪が少なく健康的なオイルが多く含まれており、魚や野菜が中心です。心臓疾患の予防前線の共同著者である心臓病学者スティーブン・T・シナトラ医学博士とジェームス・C・ロバーツ医学博士は、アジア圏と地中海圏の食事を組み合わせた食事法(PAM diet)を提案しています。




抗酸化物質が豊富な果物や野菜

これらは、LDLコレステロール分子を酸化させ体内の炎症を引き起こすフリーラジカルと戦います。ここでのヒントは、自分の好きなものを食べるということです。


食べるべきもの:ブルベリーやブラックベリー、チェリー、赤い葡萄、いちごなど鮮やかな色の果物、ケールやほうれん草、芽キャベツ、ブロッコリーなどの緑の濃い野菜、ビーツや赤パプリカなどイキイキとした赤い野菜は抗酸化物質が高濃度で含んでいます。また玉ねぎは、LDLを酸化を防ぐケルセチンという特別なフラボノイドが豊富です。抗酸化飲料はないのかって?適量の赤ワイン(レスベラトールを含みます)や、炎症に関係する酵素をブロックする緑茶はどうでしょうか?



ナッツや種など

良質の必須脂肪酸、タンパク質、食物繊維が豊富で、狩猟採集時代の主食であったこれらには、吸収した食物コレステロールを減少させるのに役立つ植物ステロール(植物油)も含まれています。

食べるべきもの:生のアーモンド、くるみ、ピーカンナッツ、ブラジルナッツ、ひまわりの種。



低GIの穀物

これらの食物には、高GIの穀物に比べて多くの食物繊維が含まれおり、消化に時間がかかるため、血糖値を安定させインシュリンの劇的な増加を起こしにくくします。食物繊維はまた、消化器官を浄化し過剰なコレステロールを吸い取ります。実際に、1日に食物繊維を10g多く摂取すると心臓病リスクが29%下がるという研究があります。


食べるべきもの:黒パンやスペルと麦のパン、バルガー(トルコの麦料理)、玄米やワイルドライス、大麦、オーツ麦、キノア、ひえ、そば。



オメガ3脂肪酸

コーン油、サフラワー油、サンフラワー油での加工食品には炎症の原因となるオメガ6脂肪酸が過剰に含まれており、こうした商品を好んで摂取することで体内のオメガ6とオメガ3の比率が悪くなります。健康となる3対1から、20対1にまでなることもあります。オメガ6の多いポリ不飽和植物油や加工食品を避け、オメガ3を増やしましょう。


食べるべきもの:冷たい海にいる魚(サーモン、サバ、鰯など)、大麻油や亜麻仁油、大豆、海藻など。



ビールや乳製品を飲むのなら少しに

この食品が含む不飽和脂肪は、毎日消費するには多すぎます。また、動脈の損傷を促すホモシステインとなるメチオニンが多く含まれています。

食べるべきもの:代わりに魚を摂取することで脂肪の少ないタンパク質が得られ、炎症を抑えるオメガ3を摂取、また動物性の食物を全く摂らないことで問題を排除することができます。



にんにく

地中海料理やアジア料理で多く使われるニンニクには、長い薬効の歴史があります。植物栄養素の中でも、LDLを下げて良いコレステロールを増やすアリシンを含んでいます。また血圧を下げ血小板の粘性を下げます。


使い方:生のニンニクをみじん切りにして15分置き、栄養分を放出させます。最大の効果を得るには、1日に5房ほど食べる必要があります。



オリーブ油をたくさん

古代ギリシャでは、オリーブの木は素晴らしい癒しの力があると考えられており、オリーブの実から採れるオメガ9脂肪酸が豊富な一課不飽和油は、心臓発作リスクを減らし血圧を下げます。


使い方:エキストラ・バージンオイルを使いましょう。加工が最低限で、精製されておらず、酸化していません。



大豆

どんな形状であっても、大豆はHDLを増やしてLDLや血圧を下げます。

食べるべきもの:枝豆など丸大豆や、テンペなど発酵した大豆、たまり醤油、豆乳、豆乳ヨーグルト。









2023年10月16日月曜日

心臓病の原因は高コレステロールでなく炎症かも Vol.1
Inflammation, Not High Cholesterol, May Cause Heart Disease


今回の記事は、コレステロールと心臓疾患についてです。
予防のために何を理解すべきなのか、何ができるのかをみていきましょう。
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一般的に、ヨガの実践者は心臓が健康なグループに入ります。ヨガは、体への習慣的な運動と心へのストレス緩和のテクニックを与えてくれます。喫煙する人は少なく、アルコールを飲む人でもその量は適度です。そしてほとんどの人は、マイケル・ポランが彼の著書「食べ物が守る力」で述べている率直なアドバイスに従っているでしょう。「食べ物を食べよう。食べ過ぎないで。主に植物を」


では、どうして心臓病について心配しなければならないのでしょう?第一には、病気にならない人は誰もいないし、米国で多い死因は心臓病だからです。第二に、健康診断に行ってコレステロールが高いとスタチンを処方されてしまった知り合いが誰にでも一人はいるからです。そして最後に、コレステロールが心臓病の主な原因ではないかもしれない(現在、研究者らは炎症が原因としている)ことを知る必要があるからです。つまり、私たちは長い間間違ったボールに目を向けていたということです。


コレステロールに注目し始めたのは約60年前、米国心臓協会が冠動脈疾患の原因が「バターとラード、牛肉、卵」だと宣言した時です。医療界が、血液のコレステロール・レベルを上げる食べ物に含まれる高レベルの飽和脂肪であり、過剰なコレステロールが動脈を閉塞させるという考え方を取り入れたのは間も無くでした。低脂肪の食事とコレステロールを低下させる投薬が劇的に増加した50年がすぎた現在、その概念は、ほとんどの医療関係者や消費者の頭の中にしっかりと確立されたのです。


そろそろ、それを見直す時期ではないでしょうか?「コレステロールの重大な俗説:コレステロール値低下が心臓病を予防できない訳(スタチンフリーに効果)」の共同著者(スティーブン・シナトラ医学博士著)で栄養士のジョニー・ボウデン博士は、「コレステロール値を下げて心臓病を予防しようとするのは、マクドナルドの巨大な食事からピクルスを取り除いてカロリーを減らそうとしているようなものだ」と述べています。65歳以上の男性、そして全年齢の女性で、冠動脈疾患を判断するのにコレステロール値を見るのは事実上意味がありません。そして、おかしなことに、ちょっと下がって大局をみれば、低いコレステロールは、予防どころかより病気の原因となる可能性があります。



敵を知る


医師らはめったに認めないのですが、高コレステロールの人は実のところ長生きです。少なくとも6つの研究で、コレステロール値が低いほど死亡率が高いことがわかっています。実際、米国の死因の全てを見ると、コレステロール値の高い人には癌が少なく、消化器官や呼吸器官の疾患で亡くなるリスクが低く、自動車事故や自殺も少ないのです。驚くことに、コレステロールによる防御は、深刻な心臓病にまで及びます。米国と欧州での研究では、心臓病患者でコレステロールレベルが高い人は、低レベルの人たちよりも長寿でした。


私たちの体がコレステロールを必要としているのは、脳細胞生成という何よりも重要な役割があるからであり、研究では低すぎる値(160以下)が鬱や攻撃性、脳出血、認知障害などと関係があるとされており、これらは全て事故や自殺の死亡率が高いことを説明しているのではないでしょうか。



高コレステロールの悪評


コレステロールを議論するには、まず肝臓が1日に約800ー1000mgのコレステロールを生成していることを知ることから始めるべきでしょう。これらは体が健康を保つために必要な量です。しかし、食べるものからコレステロールを追加摂取すると(動物由来の食物には全てコレステロールが含まれます)、体はその余分に対処するまで生成を抑えます。また、脂肪を消化し、細胞粘膜を強化・修復し、神経を隔離し、ビタミンDを合成し、性生活を制御するものの含めたホルモンを生成するのを助けるため体はこの柔らかでドロッとしたステロールを必要としています。


コレステロールは脂肪のような物質なので、水性の血液に溶けたり細胞に直接流れ込んだりはできません。そのかわりに、リポタンパク質という特別な乗り物に乗せてもらう必要があります。おそらく私たちが良く聞くのはLDL(低比重リポタンパク)とHDL(高比重リポタンパク)の2つでしょう。科学者らが発見しているのは、LDLが必要な場所にコレステロールを運び、より重いHDLが動脈壁をもすくい取って余分なコレステロールの掃除係として働き、それらを処理し排出するため肝臓に戻すということです。


この文脈からみれば、HDLもLDLも体の日々の活動で重要な機能を果たしているため、どちらも「善玉」コレステロールと呼べます。しかしながら、コレステロールが心臓疾患の原因だという議論の初期では、HDLだけが血中コレステロール・レベルを下げるため善玉だという扱いを受けました。一方LDLは、フラミンガム心臓研究の研究者らが心臓疾患の「限界危険要素」だと位置付けたため「悪玉」と烙印を押されました。


体が作る極めて重要な物質が死をもたらす可能性があるというのは想像し難いのですが、「悪玉コレステロール」という烙印はそう言及しており、LDLレベルをできるだけ下げる意図でのLDLコレステロール薬の全面戦争が勃発しました。この前提は、体がLDLを不可欠としていることを見落としているだけでなく(LDL無しでは細胞は必要なコレステロールを得られない)、重要な事実を見ぬふりをしています。LDLが「悪玉」になるのは、電子のひとつが放たれることでフリーラジカルが酸化(本質的に不安定化)した時だけです。それは動脈壁にくっついて炎症連鎖を起こし心臓発作の原因となる血栓につながるのです。



おそらくは、まだ他にも


高コレステロール論理(脂質仮説と呼ばれます)への最も的を得た乖離は、おそらく心臓発作を起こした人すべてのうち半分になる人のコレステロールが正常値だという不都合な真実です。ほとんどの人は、50%というその数字に注目し、コレステロール以外の何かがこの明らかな矛盾の原因となるのではないかと思うでしょう。


数えきれない研究によって、脂肪仮説が心臓疾患を深刻に単純化しすぎていること、心臓疾患の予防には抗酸化物質の果す役割を完全に軽視していることがわかっています。1990年代のリヨン食事心臓研究では、心臓発作で回復した人1グループを米国心臓協会認定の低脂肪、高炭水化物、抗コレステロールの食環境におき、他のグループを野菜、果物、ナッツ類、魚、オリーブ油を主にしたいわゆる地中海ダイエットとよばれる食環境に置きました。研究の結果、どちらのグループも同等のコレステロール値でしたが、地中海ダイエットのグループは2度目の心臓発作を起こした人が大幅に少なく、胸の痛み(不安定性狭心症)や心臓疾患を起こした人もかなり少数でした。どうしてでしょうか?果物や野菜に見られる抗酸化物質や魚に含まれるオメガ3脂肪酸の抗酸化作用に関係があるのではないかと研究者らは考えています。


そして、フランスのパラドックスがあります。フランス人はリッチで高コレステロールの食事を大胆に奔放に食べている様子ですが平均的な全コレステロールのレベルはおよそ250のあたりにとどまり、先進国では最も心臓疾患の件数が少ない国だという不思議な事実のことです。このパラドックスを研究している研究者たちはまた、新鮮な野菜や果物の摂取、そして特にレスヴェラトロールなど赤ワインの強力な抗酸化物質に注意を向けています。


それでは、抗酸化物質は体内でどんな役割をしているのでしょう?抗酸化物質は炎症を抑えます。そして、最近の研究などでは、炎症が心臓疾患の発症や心臓発作に重要な役割を果たしていることが確認されたようです。それはどのようにでしょうか?では動脈の中を覗いてみましょう。高血圧や高血糖の食事からくる血糖スパイク、喫煙の毒素、環境汚染や殺虫剤などの何らかが、動脈の表面を覆う細胞一枚の厚さである内皮を傷つけます。LDLは、おそらくは傷ついた細胞を修復しようとその傷にとどまり、そして血中のフリーラジカルによって酸化します。免疫細胞が傷を治そうと集まり、炎症はさらに悪化します。指を切った場所の周りが赤くなるのを考えてみてください。体は大きくなる「汚染」を止めようと、硬く繊維質の蓋をしますが、この蓋が動脈プラークです。このプラークが安定している時、炎症は治まって蓋はそのまま残りますが、このプラークが悪さをするのは動脈を狭めることだけです。一方で、不安定なプラークは、破裂して血栓を作り出すことがあり、結果的に狭まった動脈を堰き止めて心臓発作を引き起こすのです。


炎症のある心臓障害なのかを調べるため、医師らは数多くの血液検査に頼ります。こうした安価の検査は、症状が起こる前であっても心臓疾患の見つけるのに重要な役割を果たしています。


では、こぞって検査に行くべきなのでしょうか?おそらく、心臓疾患のリスク要因をいくつか持っていない限りは必要ないでしょう。特にストレスの多いライフスタイルや、過剰な体重、高血糖などです。簡単に言えば、炎症を引き起こすライフスタイルを送っているなら必要でしょう。しかし、まずは気持ちを新たにして、心臓の健康のために何をするべきか、何を食べるべきかをみていきましょう。






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次回に続きます。


2023年10月12日木曜日

スーリヤ・ナマスカラの古い起源:太陽礼拝 
The Ancient Origins of Surya Namaskar: Sun Salutation

では前回に続き、ハヌマンのお話です。
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先生と生徒の関係性は、ヨガの中心にあります。心の解放、解脱の道は先生を通して学ぶものです。ヴェーダの時代、グルとシシャ(先生と生徒)の関係はとても近く、まるで家族のようでした。生徒がオンラインでトレーニングの申し込みができたり、ペイパルやクレジットカードで支払ったり、決められた時間でトレーニングを終えたりできる現代とは全く異なります。その昔は、選んだ先生に受け入れられた幸運な生徒は、修了したと言われるまで先生のアシュラムに住み込みました。その間、生徒は実際の生活でも先生に仕えなければなりませんでした。木を切ったり、水を汲んだり、先生の動物や穀物の世話をしたりと、基本的に頼まれたことは何でもしました。先生と生徒の関係性は文字通りお金で買えるものではありませんでしたが、修行が終わる時、生徒は謝礼(グル・ダクシナ)をする必要がありました。それはお金でもいいのですが、大抵はそうではありません。多くの場合それは奉仕であり、先生が頼んだものは何でもするものでした。



ヨガ・スートラ(第1章24-26節)においてパタンジャリは、古代から指導者の指導者、根元的グルとしてイシュワラについて言及しています。イシュワラとはもちろん一個人ではなく、高い状態の意識であり、普通の、抑制された、エゴに基づいた状態の私たちを、超越した無限の状態へと変容させるものです。


古代から、人間はそうした究極の指導者に象徴を用いてきました。最も長く用いられてきたものの一つが太陽、スーリヤです。ガヤトリ・マントラという美しいヴェーダのお祈りでは、太陽は「私たちの心を照らす」と唱えられています。


ラーマーヤナの偉大なる猿のヒーロー、ハヌマンは、生まれてまもなくスーリヤに魅了されました。赤ん坊の彼は、空の太陽を見て大きく育った甘いマンゴーだと勘違いしたのです。その力強い猿の脚で地面を蹴り、長い猿の腕を伸ばし、高く跳び上がって太陽を・・掴んでしまったのです(ハヌマンには赤ん坊の頃から超自然の強さがありました)。ハヌマンが太陽を口にポンと入れて食べ始めると、世界は暗くなり、何か悪いことが起こったことにもちろん神々も気づきます。太陽はハヌマンの口を焦がしましたが、強情な猿は離しません。とうとうインドラ神がダイアモンドの雷電(ヴァジュラ)をハヌマンの顎にまっすぐ放ちました。


そこでやっとハヌマンは口を開けて太陽を吐き出し、世界の光は元に戻りました。けれど、彼はヴァジュラで怪我をしてしまいました。実際、彼の顎(ハヌ)は潰れてしまい、今日知られる名前「つぶれた顎を持った者」が付けられたのです。神々はハヌマンの力を一時的に取り上げましたが、あまりにも顎がかわいそうだったので(太陽を助けるためではなく)特別な力を与えることにしました。強さ、速さ、姿を変える能力、禁欲する能力、並外れた記憶力、そして神を真に愛することのできる能力を。それらは全て、その後ラーマ王に出会い仕える時に取り戻すことになるのです。






それまでの間、ハヌマンには教えが必要でした。「スーリヤにお願いしてはどうですか?」彼の母親であるアンジャナは提案しました。「彼は毎日馬車で世界中を駆け、全てのものすべての場所を見ています。全ての聖典を知り、あなたよりも高く遠くまで跳びます。あなたが赤ん坊の頃の果物のささいな事件のことなど忘れておられるに違いない」


そこでハヌマンはスーリヤに先生になって欲しいとお願いしますが、スーリヤは断ります。ハヌマンが彼を食べようとしたことは許しているのですが、こう言いました。「予定が詰まっていて、全く空いた時間がないのだ。動き続けねばならぬ。立ち止まってお前に教えを与えることはできない。そもそも私が動き続けているのにどうやって学べるというのだ」


「一緒に動いたらどうでしょう?」ハヌマンは訊ねました。「そうしたら生徒にしてくれますか?」
「お前には無理であろう。だがそれなら構わない」スーリヤは答えました。


ハヌマンは跳び上がりスーリヤの方に向かって位置を定めました。そしてスーリヤは、この生徒の粘り強さを認め、空を駆け始めながら聖典を説きました。これで当然、ハヌマンは常に後ろ向きに動くことになりましたが、そうする以外にあったでしょうか?先生に背中を向けるなど失礼です。


このハヌマンが後ろ向きに動く道筋が、スーリヤナマスカラ、太陽礼拝の始まりだと言う人もいます。考えてみれば、太陽礼拝の動きをすると、マットの後ろの方で終わるので続けて動くためにはまた前に戻らなければならないことに気づくでしょう。



ハヌマンはとても熱心な生徒だったので、ヴェーダを1週間でマスターしました。そして、スーリヤへの謝礼は何だったのでしょう?おそらくハヌマンが去って少しホッとしたであろうスーリヤは、全てを断りました。「熱心な生徒が学ぶのを見ていたのが、私への報酬であった」



「それでは」ハヌマンは言いました。「私の感謝とナマスカラ(敬意を表す挨拶)のみを捧げましょう」そうして、ハヌマンのグル・ダクシナとして太陽礼拝が生まれたのです。





練習法



歴史的に見ると、スーリヤナマスカラとしてしられる一連のポーズは、世界のエネルギーと光の源であるスーリヤを讃えて早朝の日の出に行なわれた実践から発展したと考えられます。1920年台、アウンドの王が彼の小さな王国(現在のマハラシュトラの一部)の学校に、全ての男女や子供が心身の健康のためにこの実践を取り入れてほしいと、決められた太陽礼拝の動きを導入し、小さな本を出版しました。


現在、ほとんどのヨガの生徒が、いずれかのバージョンのこの実践を早い段階で学びます(動きに合わせてマントラを唱える場合も)。この実践にははっきりとした「正しい」方法はなく、おおよそ12ポーズの流れから成ります。左右対照の立位のポーズ(タダアサナ)、両腕を挙げ、前屈して地面に触れ、ランジになり、下向きの犬のポーズでよく知られるV字のアサナ(他の名前もあります)、うつむきから胸を引き上げる上向きの犬へと流れ、下向きの犬へと戻り、もう一度ランジ、そしてまた地面に触れて前屈、両腕をあげ、そして最初の立位ポーズに戻ります。それぞれの流れを通して、後ろ向きに動き、そして前に戻ります。
  

スーリヤナマスカラで動く時、先生、つまり他でもない世界を導き照らすスーリヤのようにあなたの人生を導き照らす理想の先生イシュワラと向き合っていることをイメージしましょう。動きに合わせて愛と感謝を捧げましょう。




考察


赤ん坊のハヌマンが太陽にしたように、あなたも状況や人に対して誤った判断をしたことはありますか?思い違っていたゴールに向かって衝動的に飛びついた時に何が起きましたか?大切な何かに進もうと決意した時のことを考えてみましょう。甘いマンゴーのように魅力的に見えた仕事や関係が、実は想像していたよりもっと大きく熱く受け入れ難いものだとわかったら。あなたの過ちを思いとどまらそうとしてくれた人はいましたか?それを聞き入れたでしょうか?あなたの想像の中で「果物」だったと思っていたものを手放すのに何が必要だったでしょう?その過程は辛いものでしたか?その結果何か期待していなかったご褒美があったでしょうか?あなたの過ちは霊的に重要なものだったと思いますか?










2023年10月6日金曜日

ハヌマナサナの神話 
The Mythology Behind Hanumanasana

この夏、久しぶりにシンガポールに行った時、インディアン・ヘリテージ博物館や何箇所かのヒンズー寺院を訪れました。久しぶりに直接見るヒンズーの神様たちに、懐かしさとワクワクした刺激を感じました。
ヨガでは、ポーズの中で実は何度もヒンズーの神様に出会います。今回は、その中でも見た目の個性が強いハヌマンについてみていきましょう。

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ハヌマンは、猿族ヴァナラのスーパーヒーローで、風の神ヴァーユと猿族のアンジャナの息子だと言われています。この類稀な生まれから、ハヌマンには霊界と俗界のどちらにも特別なつながりがあります。南アジア文化全てにおいて、肉体的な強靭さ、勇敢さ、霊的な忠誠心といった特性を具現化しています。ハヌマンとヴァナラの人々は、古代インド叙事詩ラーマーヤナにおいて、王女シータと愛するラーマとを再会させるというきわめて重要な役割を果たしています。


風の神の息子であるハヌマンは、その力強い跳躍力で知られています。最も有名な跳躍のうち、2つはランカ島の戦いに関係しています。1度目にハヌマンは、囚われたシータを慰めるため、インドからランカ島まで海岸の間を100ヨージャナ(1ヨージャナは、伝統的に高地から呼び声が聞こえる最も遠い距離だと定義されています。諸説あり)の距離を跳びました。砂を巻き上げ波を後ろへ流す力で、彼の強い脚を伸ばしたのです。


ハヌマンは、後ろの脚の力で空へ舞い上がり、前の脚で遠ぉーいランカ島の海岸へと降りたちました。お祈りのように胸の前で合掌した手には、ラーマの指輪を携えていました。シータが番兵たちに見張られた木の下で悲しそうに座っているのを見つけると、こっそり指輪を渡してラーマがこっちに向かっていることを伝えました。


その後、ラーマの弟ラクシュマナが戦に倒れ、瀕死の状態になります。その傷を治す薬草は遠いヒマラヤに生えています。「行け、ハヌマン!お前の跳躍がもう一度必要なのだ。薬草は、ヒマラヤの・・」とラーマが話し始めるとハヌマンはもう居ませんでした。ヴァナラのスーパーヒーローは、ラーマが言い終える前に薬草がいっぱいの山上に立っていました。ああ、どの草なんだ?ラーマはどこを探せと言った?ハヌマンは植物から植物へと走り回りましたが、すぐに気づきます。「わからない!俺は猿だ、医者じゃ無い!ああ、全部持って帰って先生に選んでもろおう」そして山を根こそぎ引き抜いた彼は、何も落とさないように注意深く頭にのせ、医者の待つ戦場まで跳んで帰ったのです。「ありがとう!」彼らはハヌマンに言いました。「今度は、山を元の場所に戻しておくれ」そうして、また並外れた距離を跳んでいる間に医者たちはラクシュマナの傷を治したのでした。






ハヌマナサナの完成形


ハヌマナサナ(猿のポーズ)は、前後開脚のポーズです。このポーズには練習が必要で、安定性を得るには何かサポートが必要かもしれません。(パタンジャリがヨガスートラで述べた「アサナは安定して快適であるべき、Sthira sukham asanam」という戒めを思い出しましょう)また、股関節や肩、鼠蹊部がしっかりと開くようになって初めてできるポーズです。


まずは犬のポーズになる前のように四つ這いになります。両手は床かブロックに置きましょう。右足を両手の間に出して、一度止まります。右脚を前にのばして、左脚を後ろに下げます。両脚で床を押しながら、腕や両手で体重を支えましょう。ポーズの完成形は、右腿の後ろ(ハムストリングス付着部の上部)が床に着き、左脚の前部(鼠蹊の上部)が床に着いた状態です。後ろの足の甲を床に押し付け、前の足の指をしっかりと開き、両脚を均等に伸ばしましょう。胸郭を持ち上げます。息を吐いて、胸の前で「ナマステ(お祈り)」の手をします。


胸郭全体を引き上げ続けながら、両腕を頭上に上げます。肩甲骨の上部を広げましょう。鎖骨の外側を腕の内側の方へと伸ばし、みぞおちを引き上げます。腕を上へと伸ばし続けながら頭の上で合掌しましょう。


では、尻尾が背骨の下から伸びているのを想像してみましょう。(全ての猿に尻尾があるわけではありませんが、ハヌマンにはあります)跳躍の力で後ろにたなびかせるように、尻尾を長く尾骨を先の方へと伸ばしましょう。頭の頂点へと引き上げます、背骨をできるだけ長く伸ばしましょう。


ハヌマナサナは難しいポーズです。ヤマのアヒムサ(ヨガスートラ2.35 非暴力)、サティヤ(ヨガスートラ2.36 誠実)、アステヤ(ヨガスートラ2.37 不盗)を思い出しましょう。正直なところ、自分の股関節はどれくらい開いているのでしょうか?バガヴァド・ギータのクリシュナの助言を思い返しましょう。自分のダルマ(この場合は自分のアサナ)を不完全に行う方が、他の誰かのものをやろうとするよりも良い(バガヴァド・ギータ 18.47)。アイアンガーや前の列の誰かがやっているのが格好良く見えるからと言うだけで、サポートのない完成系を試そうとして自分を傷つけるのはやめましょう。




猿のポーズのバリエーション


床にマットを置き、マットに対し交差させてボルスターを横にして置きましょう。マットの前の床(マットの上でなく)に、二つに折ったブランケットを置きます。ボルスターの後ろに左膝をつきます。右足をボルスターの前のブランケットに乗せます。かかとはボルスターに接しているかもしれませんが、足の裏はブランケットの上です。このブランケットは、あとで右脚を前にスライドさせるのに役に立ちます。両手はボルスターのそれぞれの両端に。より高くしたい場合はブロックを使いましょう。


左脚を後ろへ伸ばし、膝頭をマットに近づけ(着けないで)ましょう。(後ろの膝はローランジと同様に曲がります)。左腿をボルスターの後ろ端に下ろします。では、右脚を前にスライドしましょう。動かしながら足指は顔に向かって引きます。脚がまっすぐになるまで踵をスライドさせるのに、ブランケットが役立つはずです。今度は、右腿の裏がボルスターの前端についています。左ひざは後ろ端につきます。両方の腿を下へ押し下げましょう。ナマステの形に合掌します。数呼吸ホールドしましょう。そして、両腕を頭の上へ挙げ、両手を離します。


両脚を均等に使いましょう。左腰を前に右腰を後ろに引いて骨盤を揃えます。胸郭と胸の中心を引き上げます。首の後ろを長く保ったまま上を見上げましょう。


ポーズから出るには、腕を下ろし、両手に体重を戻します。左右を替えて行いましょう。   





考察


猿のポーズで努力が要るのはどこですか?目?舌?首?呼吸?脚?楽な場所はどこですか?ポーズが完璧でなくてもかまいませんか?



この努力に自分自身を全て差し出して心を開くことができますか?バガヴァド・ギータは、最善の努力を尽くし、その結果は神に託すよう、私たちに伝えています(2.47)。ハヌマンは、薬草を探すのをやめて代わりに山全体を持って帰ることでこれを体現しています。彼はできることとできないことを認識し、その結果ラクシュマナを助けることができました。自分にできることをやり遂げた時、そして神の手に結果を委ねる時だとどうすれば知ることができるのでしょう?


ハヌマンはラーマのためなら何でもしますが、何でもできるわけではありません。「正しくやる」ことはどれくらい重要なのでしょうか?最善を尽くしたいという欲求が完璧主義になっていませんか?完璧主義モードの時は、おそらく自分に暴力を与えているのではないでしょうか?



ハヌマンが跳躍するのは、シータを慰めたり、ラクシュマナの薬を届けたり、誰かを助けるためです。彼は早まって山へと跳びますが、正しい薬草を誰かが見極められるよう山全体を取ってこなければなりませんでした。役に立とうと躍起になって、実際にはことを複雑にしてしまった経験はありませんか?



ハヌマンはスーパーヒーローですが、あがめられるのは彼の献身と奉仕のためです。ハヌマンを見習うとすれば、私たちの最大の努力と最高の才能を最高に理想的な奉仕に用いることです。ハヌマンの跳躍は、あなたの何に当たりますか?彼がラーマを愛したように、あなたは何を愛しますか?











(出典)https://yogainternational.com/article/view/the-mythology-behind-hanumanasana/

2023年9月15日金曜日

<日記>秋のデトックス



今年は9月も半ばに差し掛かったというのに、
まだまだ真夏のような気温が続いています。

それでも、夕方は「ツルベ落とし」ですぐ暗くなるようになり
夜になれば少しは涼しくなって、秋の虫たちも鳴いています。

確実に季節は進んでいますね。

さて、アーユルヴェーダでは、季節の変わり目にデトックスをすると良いと言われます。
暑さに慣れた体から、今度は冬の寒さの準備をするというわけです。




というわけで、
久しぶりに Virechana (腸洗浄)をしました。
少し強めの塩分のお湯を2Lほど作って、1時間くらいかけてちびちび飲むと
浸透圧によって体内で吸収されずに(逆に壁から吸い出して)
そのまま消化管を通り過ぎます。
(塩分が薄かったり一緒に水を飲むと
体内で吸収されてしまうので体調を崩す危険があります)


早い人では1時間後くらいに、私はたいてい2時間後くらいに「それ」がやってきます。
そして何度も排出し、出てくるものが無色になったら終わりです。




もっとすっきりしたい時は、Vaman Dhauti (胃洗浄)も行うと胃壁の汚れも取れます。
胃の場合は、同じく濃い目の塩分の「ぬるま湯」を一気に飲みます。
お腹がたぷたぷになるので、体の反射反応で自然に吐くか
あるいは指を喉に入れて吐きます(私はこっち)。
この吐いた水の色が薄いピンクだったり緑っぽかったりするんですが、
消化管の余分な分泌液の色だそうです。



そしてこれはとてもとても大事なことですが、
浄化の後は、良質の油分であるギーあるいはココナツ油を入れたお粥を食べて、
疲れて乾いた消化器官を鎮めます。
水分もたっぷり補給しながら、その日はゆっくり過ごします。
準備から休息するまでを考慮すると、だいたい5時間くらいは必要です。


少し疲労感もありますが、すっきりします。
心なしか感覚が鋭くなって味も濃く感じるので薄味で満足できたり
肌の調子がすこぶる良くなったり。


翌日からは食事も含めて普通に生活できます。


これまでの経験から言うと
塩からすぎて飲めないという人、ダメだと言っても水を飲んでしまう人、
溺れるような恐怖感を感じる人などもいます。
やってみようかなという方は、初めは必ず知識の豊富な方と一緒にやってくださいね。



ちなみに私のルーティンは
朝起きたら、口を水ですすいでから舌をスクレーピング、レモン水を飲む、植物に水をやることから1日を始めます。
Vata体質なので乾燥ぎみだと思う時は
オイルプリング(オイルで口をクチュクチュ)もします。
日中にアサナと瞑想をして
夜はお風呂でオイルマッサージ。毎日だと大変なので、コンディションによって
顔だけとか頭皮だけとか足裏だけとかの日もあります。
劇的な変化!というのは無いかもしれませんが、
アトピー持ちのアレルギー体質な私ですが
肌荒れや痒みも随分減りましたし、ひどかった花粉症の症状がほとんどなくなりました。




ああ、またインド行って毎日デトックスの日々を送りたーい。






2023年9月5日火曜日

健康な食事のための栄養豊かなキチュリのレシピ 
A Nourishing Kitchari Recipe for a Wholesome Meal


アーユルヴェーダの定番、キチュリ


キチュリ(訳注:地方によってケチャディとも呼ばれます)は、アーユルヴェーダで大切にされている料理で、何世紀も食べられてきた味わい深く栄養価の高い食事です。このシンプルかつ用途の広い料理には多くの利点があり、美味しくて栄養のある食事をしたいという人に人気があります。この記事では、キチュリとは何なのかを探り、数多くの利点を掘り下げ、主な材料に注目して簡単に作れるキチュリのレシピをご紹介します。



キチュリって何?


キチュリは、その調和を取りもどす癒しの性質でよく知られる伝統的なインドの料理です。一般的に、お米とひいたムング豆、そして様々なスパイスや野菜をバランスよく組み合わせて作られます。キチュリの柔らかさは様々で、お粥のような食感からもっと乾いたピラフのようなものもあります。多くの場合、アーユルヴェーダの浄化の間や、消化や健康全般を支持する軽い食事として食べられています。






キチュリの利点


消化を助ける:
キチュリは、消化器官に優しいことで大切にされています。お米とムング豆の組み合わせは、食物繊維やタンパク質のバランスが良く、不快感なく正常な消化を助けます。


解毒作用:
キチュリに使われるターメリック、クミン、コリアンダーなどのスパイスには解毒作用があり、体の浄化や毒素の排出を助けます。


ドーシャのバランスを取る:
キチュリは、アーユルヴェーダにおいてトリドーシャの食べ物と考えられています。つまり、ヴァータ、ピッタ、カパの3つのドーシャのバランスを取ると考えられており、全ての体質の人に適しています。


栄養価が高い:
キチュリは、その材料に欠かせない栄養が多く含まれている完全食です。複合炭水化物、タンパク質、さまざまなビタミンやミネラルを含みます。




キチュリの主な材料


米: その香りと軽さからキチュリには、一般的にバスマティライスが使用されます。


ムング豆: ひいたムング豆はキチュリの主なタンパク質源で、胃にもたれない栄養になります。


アーユルヴェーダのスパイス: ターメリックやクミン、コリアンダー、マスタードシード、ヒングなどが、キチュリの香り付けや薬効のために使われます。


野菜: ニンジン、豆、ズッキーニ、ほうれん草など様々な季節の野菜を追加の栄養として加えます。あなたのドーシャにはどの野菜が適しているでしょうか?




キチュリのシンプルなレシピ


材料:

バスマティライス(白米):1 カップ
ひきわりしたムング豆:1 カップ
黄玉ねぎ:中一個
生の生姜:3ー5センチ
ターメリック・パウダー:大さじ 1
クミンシード:大さじ1 
黒マスタードシード:大さじ1 
ヒング:ひとつまみ
ギー(ココナツオイルでも):大さじ1 ½-2 
ドライチリ:1 本
クローブ:3-4 本
生のカレーリーフ:4-5 枚
好みでひいた黒胡椒と塩



付け合わせ:

生のコリアンダーの葉
レモン
ネギ



作り方:

  1. お米とムング豆をよく洗い、30分程度水に浸けておく。

  2. 鍋でギーかココナツオイルを火にかける。玉ねぎ、生姜を加え透明になるまで炒める。クミンシード、マスタードシード、ヒングをかき混ぜながら入れる。

  3. スパイスが弾け始めたら、ターメリック、カレーリーフを入れて素早くかき混ぜる。

  4. 水に浸けたお米とムング豆の水を切って、鍋の中に加える。2分間炒める。

  5. 水、クローブ、レッドチリを加える。塩胡椒で味を整える。

  6. 火を弱めて蓋をし、お米と豆が柔らかくなるまで煮る(約25ー30分)。

  7. 好みの柔らかさになるよう水量を調整する。

  8. お好みで、レモン果汁や他の付け合わせを加える。




ドーシャに合わせたキチュリレシピのカスタマイズ


キチュリに以下の季節の野菜をとり入れることは、単においしさが増すだけでなく、特にアーユルヴェーダの浄化をしていて一日中キチュリを食べている時には、素晴らしい選択となります。以下は、各ドーシャ別に合わせた野菜です。

  • ヴァータを鎮める野菜
    カボチャ、スクワッシュ、アスパラガス、ビーツ、ニンジン、緑豆、グリーンチリ、ネギ、ソテーした玉ねぎ、せり、かぶ、さつまいも、ズッキーニ

  • ピッタを鎮める野菜
    アスパラガス、ビーツ、せり、ブロッコリ、芽キャベツ、キャベツ、ニンジン、カリフラワー、緑豆、フェンネル、緑の葉野菜、火を通した玉ねぎ、パセリ、豆、かぶ、スクワッシュ、さつまいも、ズッキーニ、ルッコラ、コラード、アーティチョーク、ケール、そうめんカボチャ

  • カパを鎮める野菜
    アーティチョーク、ルッコラ、ピーマン、ブロッコリ、セロリ、ニンジン、チャイブ、パクチー、コラード、とうもろこし、ほうれん草、もやしなど芽類、パセリ、ネギ



キチュリの保存


キチュリは、密閉容器に入れ冷蔵庫で3、4日間保存できます。たくさん作るなら、冷凍庫保存も可能です。温め直すときは、水かスープを少し足してから、ゆっくり火にかけるか電子レンジで温めましょう。


 

最後に


キチュリは単なる食事ではありません。香りや食感、健康的な効能など調和の取れた融合です。この伝統的なアーユルヴェーダの料理を食事に取り入れると、バランスや滋養の感覚がもたらされ、全体的な健康を促進します。そのシンプルなレシピと万能な性質によって、キチュリは、体へのプラスの効果と味覚の両方を堪能できる料理の宝石といえるでしょう。





2023年8月31日木曜日

クンダリニとは?どう使えば豊かな人生を過ごせるか? 
What is Kundalini & How to Use it to Meet the Fullness of Life



ずっと長くヨガを実践している人も、ヨガを始めたばかりの人も、「クンダリニ」という言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか?クンダリニといえば大抵は、呼吸法やチャンティング、同じ動きを繰り返す、そして最も特徴的である白い装束を着て行う現代のクンダリニ・ヨガを思い浮かべるでしょう。しかし、ヨガにおけるクンダリニの概念は、いわゆるクンダリニ・ヨガのスタイルのはるか昔から存在しています。


以下の記事では、クンダリニの歴史やそれが何なのか、そのユニークな質や効果、また現代のクンダリニ・ヨガとクンダリニ・シャクティの違いを探りましょう。クンダリニに関しては、さまざまな考え方や観点があり、ここに書かれた情報は、クンダリニに関してほんの表面に触れているに過ぎないということを念頭に置いておくようにしてください。





クンダリニの歴史


クンダリニが初めて言及されたのは、紀元前1000ー500年のウパニシャッドの中と言われており、身体的なアサナが書かれたハタヨガ・プラディピカのずっと前です。クンダリニ・エネルギーの概念は、ヴェーダやタントラ、ヒンズーのシステムにまでわたり、しばしば聖なる無限の力という意味のクンダリニ・シャクティと言われます。ヒンズー教ではクンダリニは女神とされ、その力は、背骨の根本にあるムーラダーラ・チャクラでとぐろを巻いて眠っているとされます。クンダリニはまた、15世紀にサンスクリット語で書かれたハタヨガ・プラディピカで、全てのヨガの目標となる最も重要なものとされています。
 
 

『扉が鍵によって開くが如く、ヨギは解脱への扉をクンダリニによって開く』 
(第3章105節)



現代のヨガが発展しても、クンダリニの概念はヨガの多くの流派で中心的なテーマとなり続け、1968年には、シーク教の伝道師であるヨギ・バージャンによって「クンダリニ・ヨガ」と名付けられ、ヨガのスタイルのひとつとして広まるまでとなりました。







クンダリニとは?


クンダリニは、内に秘めた見えない力を表している最も需要で力強いエネルギーだと言われ、精神の限界を超えたところに存在する知られざる偉大な領域のことを示します。「クンダル」とは「とぐろを巻いた」、「イニ」は「力」の意味であるので、つまりクンダリニとは「背骨の根本でとぐろを巻く眠れるエネルギー」という意味になります。クンダリニ・シャクティは、私たちひとりひとりが内に持っている全ての意識のエネルギーそのものとして見ることができます。多くの場合、3.5周巻いた蛇として描かれるこのパワフルなエネルギーは、マントラやムードラ、アサナ、プラナヤマなど肉体的、精神的なヨガの実践によって目覚めさせることができます。クンダリニ・シャクティが目覚めると、エネルギー体のチャクラ(エネルギーの渦)を通して上って精神の目覚めに至り、選択や気づき、豊な人生を生きるより大きな機会として現れます。








クンダリニのもつ5つの質


クンダリニ・シャクティに触れ始めると、より無限のエネルギー源へと近づきます。これによって、見えない力の完全性や広大さなど特別な性質を体現するのです。その性質とは以下の通りです。


1.ギヤナ・シャクティ:無限の知識と洞察
 これを体現すると、困難への解決策がより多く得られ、楽に生きられる。


2.イッチャ・シャクティ:意志と決意
 これを体現すると、物事を最後まで見通す意志が持てる。


3.アーナンダ・シャクティ:自己実現と真の喜び
 これを体現すると、より多くの喜びや満足感が日々の生活にもたらされる。


4.チット・シャクティ:全体性への気づき
 これを体現すると、より広い洞察と自己認識を得られる。


5.クリヤ・シャクティ:自発的な正しい行動
 これを体現すると、正しい時に正しい行いをすることで、
 自然に欠陥なく流れるための行動が可能になる。



クンダリニに重点を置いたヨガを実践することで、より多くの可能性やより大きな潜在的な力、そしてより多くの能力を包括した人生への扉を開くことができます。ハタヨガ・プラディピカには、幸せになるための可能性を大きくする、そして人生の真の目的により気づくためにクンダリニ・シャクティを目覚めさせることがすべてのヨガのゴールであると書かれています。




以下は、内なるクンダリニ・シャクティに近づくためのいくつかの実践法です。




クンダリニを目覚めさせる4つのヒント


  • 力強いハタヨガで、腹部にあり火(アグニ)をおこしましょう。おへその中心は下位のチャクラを司るので、ここから始めてクンダリニが上昇する流れを妨げるすべての障害を取り除きます。

  • 片鼻の呼吸などプラナヤマの実践を通して、プラナへの感覚を養い中心にあるエネルギー経路(シュシュムナ・ナディ)を浄化しましょう。

  • 忘我、謙遜、感謝などバクティ、つまり祈りの要素を練習に取り入れましょう。日記を書いたり、ただ落ち着いて自分が大きな存在の一部であることを思い出す時間を毎日取りましょう。

  • 瞑想や自問を通して精神の明晰さや気づきを養いましょう。


クンダリニの覚醒について覚えておくべきことは、クンダリニ・シャクティを目覚めさせるために特別にクンダリニ・ヨガを練習する必要はないということです。どんなヨガを選んだとしても、クンダリニのエネルギーの目覚めを促すヨガには様々な形があります。





クンダリニ・シャクティとクンダリニ・ヨガ


クンダリニ・シャクティがヨガ哲学に組み込まれた概念であるとともに、クンダリニ・ヨガは大変人気のある練習法ですが、この二つを区別し大きく異なる点を理解することは重要です。


クンダリニ・シャクティは、私たちがそれぞれ内に持つ意識の本質であり、より高度な気づきの入り口である一方で、クンダリニ・ヨガは、そのエネルギーを覚醒させる様々なテクニックを用いた組織だった実践法です。指導者から指導者へと伝えられてきたシーケンスやクリヤを使います。クンダリニ・シャクティは、クンダリニ・ヨガの上にある傘のようなものだと見ると良いでしょう。伝統的ハタヨガとその主題を共有してはいますが、自身の科学やテクニックに従っています。サンスクリット語を用いた伝統的なヨガとは異なり、現代のクンダリニ・ヨガのマントラはグルムキ(シーク教の聖典にある言葉)で唱えられます。クンダリニ・ヨガは独特の体験と豊かな教養をもたらし、現代の西洋社会でとても人気のあるヨガスタイルのひとつとなっています。




結論


この記事でお伝えした内容は、その奥深く豊かな歴史とヨガの実践と哲学全体に対するクンダリニ・シャクティの重要性についてのほんの一部にすぎません。心に留めていただきたいのは、習慣的なアサナや瞑想、プラナヤマ、そして自問が、自身の幸福感や気づき、人生の充実感を高める最も有効なツールのひとつとなり得るということです。つまり、クンダリニの覚醒のために試みていることや他の精神的実践などは、過去の聖者らが昔々に共有してくれたものと等しいのです。この地球、この宇宙、そして皆それぞれとの命の調和を真に理解することです。クンダリニを目覚めさせるということは、自身と生きとし生けるもの全てへの無償の愛を目覚めさせるということなのです。



2023年8月24日木曜日

歳をとるとなぜ背が低くなるのか 
Why We Get Shorter As We Age

ヨガのストレッチが背すじを伸ばして立つのに役立つ




40歳から始まる椎間板の変形




加齢と椎間板の変形


椎間板の水分や弾力性が失われるにつれ、脊柱の長さは3センチ以上も縮むことがあります。そのように、多くの人は歳をとると背が縮みます。この重力の圧力に抵抗するため、段階的なストレッチを行うと、反重力の筋肉を神経的に目覚めさせ縮んだ身長を元に戻すのに役立ちます。


テント状のテンセグレティ構造が
脊柱の主な緩衝材として働く



オックスフォード大学の研究者チームによる「椎間板の栄養状態」という研究では、栄養供給の減少が細胞の死につながり、基質の分解や椎間板の変形の増加も見られました。


椎間板は、人体の中でも、それ自身の独立した血液供給をもたないというあまりない組織です。歯や爪、髪の毛にさえ栄養供給の血管がそれぞれありますが、椎間板にはありません。環状繊維は生存するためにグルコースを必要とし、中心部は液体を取り込み、同化という複雑なプロセスを経て老廃物(主に乳酸)を排出します。通常の日中活動では、水分の同化が脊柱の個々の部分の収縮、伸展、回転、屈曲として起こります。


一般に受け入れられているのとは異なり、椎間板は、脊柱の主な緩衝材として作られてはいません。この役目は、素晴らしく設計された筋膜のバネ構造が担っています。上の画像では、筋肉や靭帯を示す柔軟性のあるカラーバンドがテント状のテンセグレティ配列になっています。健康であれば、椎間板が完全に取り除かれたとしても、これらの軟組織が椎骨の間隔を保つことができます。この事実を鑑みると、こうした質問が出てきます。反重力機能を取り戻すことが椎間板の老化を遅らせる鍵ならば、椎間板を鍛える最善の方法は何なのか?





胎児の姿勢と同化


椎間板と聞いてほとんどの人が思い浮かべるのは、ホイールキャップを支えるラジアル・タイヤのような、ジェルが詰まった中心部を支える丸くつながった輪の形の環状繊維かもしれません。しかし、椎間板の同心の年輪状繊維は繋がってもおらず、丸くもありません。







母なる自然は、如才なく前方と側方を厚くし、後方の薄い繊維が日中の活動中も寝ている間も滑りを良くする液体を吸収できるように作ったのです。この液体同化の80%は、就寝の最初の1時間に行われます。そのため、椎間板の水分補給には、ひざを曲げて顎をひき腰椎湾曲がない胎児の姿勢で横向きに寝るのが最も適していると研究者は考えているのです。この胴体と股関節を曲げた胎児の姿勢では、後ろ側が開くので、椎間板の薄い方が水分を吸収しやすくなります。


この椎間板の形状の短所は、後方の繊維構造が弱いためヘルニアの危険が高いことです。それでも、傷ついた椎間板にも希望があります。2017年の研究では、保守的な治療に突出部分の引き戻しを促進させることができ、坐骨神経の圧迫を解消するのに役立つ可能性があることがわかりました。穏やかな無痛の超伸展運動(たとえばブジャンガサナ、コブラのポーズなど)は、脊柱中心部を前方に動かすことで後方の圧迫を緩和するために用いられています。


2023年8月1日火曜日

ヨガで自身の「エッジ」を探るもう一つの方法 
An Alternative to Exploring Your "Edge" in Yoga



「エッジ」:深く確かめるようよく促される(あるいは生徒を促す)、ヨガポーズのほんの一部

 

探求することには、その価値があります。私たちを強くしてくれる挑戦と、器用さを証明するための過ぎた挑戦との違いの見極め方を身につけることは、私たちのヨガの実践や人生をより賢明なものにしてくれる終わりのない課題です。そして多くの場合、そのエッジ(限界、制限)は、感覚の強弱はもちろん、気づきの中にも豊かさに満ちています。意識が明確になっていくのは、私たちの生理的能力の限界に近づく中で危険だと感じるせいかもしれません。


上向きの鳩のポーズで脚をできるだけ胸に近く引き寄せている時、前後開脚で最大域まで脚をストレッチしている時、またはプランクポーズを長い時間ホールドして体力の限界に近づいている時、練習へ最も判断力が必要となるこんな質問を自身に投げかけているかもしれません。「これで大丈夫?」「呼吸は、一番キツイと感じているる体の部分にどう影響するんだろう?」


こうした質問はもう十分だと言う考えに行き着くでしょう。ここでもう十分な感覚を感じている、それとももっとやりたい(そして安全にできそう)? けれど、この同じ判断をポーズの他の段階に応用したら何が起こるでしょうか?


もしいつも全速力で走っていたら、目的地だけに集中している旅人のように、貴重な情報や機会を途中で見逃すかもしれません。そして時には、さまざまな理由からポーズの限界は避けたいと思うでしょう。


例えば、気楽にやりたい時や脆弱な部分にマインドフルである時、感覚が快適な範囲内に収まっている必要があるでしょう。アライメントに集中している時、そのアサナでの能力の限界にいれば、姿勢を直すことは難しくなると気づくでしょう。また、筋肉をできるだけ深くストレッチすることは必ずしも柔軟性を証明するわけではないと気づくかもしれません。どんなに努力しても執拗に硬いままかもしれません。あるポーズでエッジに近づいている時、壁に向かって全力で走っているかのように感じるかもしれません。そしてその壁は消えるどころか少しも遠ざからないと。


こうしたことに見覚えがあるなら、ポーズのエッジに向ける興味と同様の好奇心を、ポーズでストレッチを感じ始める最初の地点に向けてみるアプローチがいいかもしれません。ポーズの最初をより意識すれば、全体としてのアサナにまた関心を持てたり、最もきつい地点に着く前に先に気づいたり先に調整したり、安定させたりできるでしょう。このアプローチ法はおそらくは、長期間にわたる緊張をほぐしたり、エッジを少しだけ広げるのに役立ったり、同じエッジだけれどより楽に到達できるようになるかもしれません。


感覚の始まりに意識を向けることのもうひとつの効果は、ポーズでできるだけ深く遠くへ行きたいという欲を無くすこともできるかもしれないということです。早い段階に長く留まるのに十分なほど豊かだとかも確認できるかもしれません。それも構わないのです。いつもエッジまで行く必要はありません。ポーズそのものでない時もあるかもしれませんが、それは深めるよう促された自分への気づきです。


この意識の変化を探りたいなら、いくつかの提案があります。ポーズを普段通りやってみて、どれくらい深めているか何を感じるかに気づきましょう。そして元に戻ってからもう一度やってみます。アライメントや筋肉の動きだけでなく呼吸にも、詳細にポーズを意識しながらもう一度始めましょう。本当にゆっくりとポーズに入っていき、そしてストレッチの兆しをかんじたらすぐに止まってそこに留まります。そこで2回呼吸したら、もっと深めたいのかもう十分感じているのか判断しましょう。


下記は、このアプローチを座位の開脚の前屈に当てはめたものです。例えば焚き木のポーズやパスチモッターサナなど好きなポーズでやってもいいし、どんなポーズ、どんなシーケンスでも構いません。最後の我慢できる地点ではなく最初に感じる地点を探るようにしてみましょう。


始める前に、より自由にハムストリングスを動かせるけるように、心地が良いと感じられる動きのある練習でウォームアップしておきましょう。










ウパヴィシュタコナサナ(座位の開脚の前屈)


Step 1:  いつものエッジに気づく


脚を大きく開いて座り、両手は腰の近くに、背骨を頭頂に向かって引き上げながら伸ばします(背中が丸まるなら、伸ばせるように、ブランケット1、2枚の上に座り、両手は腰より後ろにしてやや後方に傾きましょう)。そして、心地よい範囲で深く前屈し、両手は腰の横か両脚の間の床に置きます。(前腕を下ろすのは、自分でコントロールできる時だけにしましょう)


エッジに直面した時、何を感じるか、そしてどんな質問があなたにとって適切かに気づきましょう。「これで大丈夫?」「思った通りの姿勢になっている?」「正確にはどこで何を感じている?」「まだ呼吸できている?」「呼吸は、一番キツイと感じているる体の部分にどう影響するんだろう?」「ここで十分だと感じているのか、もっとやりたいと思っている?」



数呼吸の後、上半身を起こして両脚を閉じ、小さく動かしましょう。



Step 2: マインドフルにもう一度


ではもう一度始めます。座位から両足を開きますが、今度はあまり広くせずストレッチをまだ感じない程度に開きます。ストレッチ感を少なくするため、そして背骨を伸ばすため、両手を腰の数センチ(それ以上でも)後ろに置きます。坐骨を根付かせ、両掌か指先、拳で押し下げて、背骨を伸ばして胸を持ち上げましょう。


両脚に普段よりも意識を向けましょう。足首を曲げ、踵で押し下げ、つま先を天井に向けます。膝関節も天井に向けられるかみてみましょう。踵は遠くへ、足の甲は股関節の方向へ伸ばします。



こうした動きを丁寧に行うとどう感じるかに気づきます。使っていると感じる部分に気づきます。呼吸に気づき、息を深くかつ楽に吸い込んだり吐き出したりし、呼吸が筋肉の動きや背骨の長さにどう変化をもたらすのかを見守ります。



Step 3: 感覚の始まりを見つける


ゆっくりと動いて、呼吸にしっかりと寄り添い続け、ストレッチがまさに始まる気配を見出します。脚や足のアライメントや力を保ったまま、両手を歩かせて少し腰へ近づけるか傍へ移動し、より直立の姿勢になります。




まだストレッチを感じなければ(内腿、脚の背中側、背中など)、両手を今ある場所で押し下げて胸をもう一度持ち上げ、体をやや前に傾けてもいいでしょう。





(ここでストレッチを感じない場合だけ、両脚の間のマットへ両手を歩かせましょう。)
釣り人の我慢強さで、感覚の方へと急がずどんな感覚がやってくるかを見て、それを待ちながら景色の美しさを楽しみましょう。
  

ストレッチの始まりを見つけたら、一旦停止します。そこに感じられる全てを感じます。脚と足の動きをもう一度確かめて、もう一度坐骨を根付かせもう一度背骨を伸ばしましょう。呼吸します。


エッジで必要だとわかった質問を自分に投げかけましょう。「これで大丈夫?」「思った通りの姿勢になっている?」「正確にはどこで何を感じている?」「まだ呼吸できている?」「呼吸は、一番キツイと感じているる体の部分にどう影響するんだろう?」「ここで十分だと感じているのか、もっとやりたいと思っている?」



Step 4: 新しいエッジに気づく


さて、どこへ向かえば良いのでしょう?


意識を十分に呼び起こしていれば、もっと早い段階でポーズのここでいいと感じられるかもしれませんし、なんとなく過ぎていた場所も興味深く感じるようになるかもしれません。もしそうなら、その場所にとどまって、呼吸やそこにある感覚を味わいましょう。


けれど、1、2回呼吸をした後にストレッチの感覚が消えていき、もう少し先にいきたいと思ったら、もっと背骨を前に傾けましょう(前屈時に胴体を長く保ちつづけるために体の横においた両手を押してもいいですし、両手や前腕を両脚の間の床に下ろしても良いでしょう)。前回と同じエッジが見つかりましたか?同じ感覚がしますか?何か新しいものはあるでしょか?


準備ができたら、両手を使って上半身を起こし両脚を揃えます。シャヴァサナやあなたの好きなポーズでリラックスしましょう。





ポーズを深く探ると、まだまだいろんな段階があることに気づくかもしれません。エッジでもなく、感覚の始まりでもないけれど、少し立ち止まってみたい場所。どんなポーズにも、エッジに向かう途中の楽に動ける場所など数えきれないほどの側面があって、その全てに意識を向ける価値があります。



この練習を、何か目標に向かっている時にいつも立ちはだかる人生の壁のようだと感じるかもしれません。次回は、そこへとまっすぐ走り出す前に、少し下がってよく見極めたいと思うかもしれません。それは誰にもわかりません。あなたが壁だと思っていたのは、広い地平線のほんの小さな場所にすぎないとわかるかもしれません。そこはあなたが楽しんでダンスできる大きく開けた場所に囲まれているのかもしれません。

 



2023年7月28日金曜日

視力のための7つのヒント 
7 Tips for Better Vision


メガネやコンタクトレンズ、そしてレーザー手術など、現代の科学によって視力低下に対するさまざまな治療が可能です。けれど、これまでの常識やヨギが持つヒントもまた効果がありのです。



以下のいくつか、あるいは全てをやってみて、視力が強化されたり視界が明瞭になるか試してみましょう。

1. 目の筋肉をリラックスさせる

見ることは無理なく行うものです。じっと見つめないで、画像が目に入ってくるままにしてみましょう。目と目の周りの筋肉を緩めます。緊張させないで、ただ見ましょう。


2. まばたきを多くする

見つめていることに気づいたら、何度か素早くリズミカルにまばたきしましょう。実際、特に読書している時やコンピューターで作業している時は、よくまばたきをしています。まばたきは目を休ませて潤いを与え、視線を和らげることを思い出させてくれます。


3.「手のひら」エクササイズを試す

1日に何度か、手のひらを素早く擦り合わせて、閉じた両目の上に被せます。数分の間、完全な闇の中で、手の暖かさが目に染み込んでいく感覚を味わいましょう。


4. 日光浴

日の当たる心地よい場所に座って目を閉じ、頭を優しく左右に動かしましょう。10分間、日光の暖かさをまぶたに染み込せます。特に暑い時期は、これを早朝か午後の早い時間に行うと良いです。


5. キャンドルをみつめる

暗い部屋に灯したキャンドルを、腕の長さ以上離れたところに置きます。キャンドルの炎をそっと見ながらリラックスした呼吸を100回数えましょう。見つめてしまう癖がある人は、キャンドルを2つ使います。30cm離して置き、吸う息と吐く息のリズムで2つのキャンドルを交互に見ましょう。


6. 夜明けに呼吸の練習をする

夜明け前に外に出て、東の地平線がよく見える場所を見つけます。舌を突き出して管のように丸めたら、地平線の少し上にある赤いラインを見ながら息を吸いましょう(鼻から吐きます)。息を吸うたびに、涼やかな夜明けの空気が赤い光と混ざり合って、目の上に流れるのをイメージしてみましょう。


7. 露ウォーキング

草が露に濡れる早朝に、裸足で草の中をお散歩しましょう。これが視力を強化するとは思えないかもしれませんが、ヨギはそうだと主張します。数ヶ月試して、確かめてみましょう。





(出典)https://yogainternational.com/article/view/7-tips-for-better-vision/

2023年7月20日木曜日

記憶力を自然に高める方法
Boost Your Memory Naturally


誰かと会う約束を忘れてしまっていた?鍵を無くした?顔は覚えているけれど名前は思い出せない?こうした物忘れは、特に40歳をすぎればよくあることです。けれど、そうである必要はありません。アーユルヴェーダによれば、何歳になっても記憶力を高めることはできます。以下のヒントが、あなたに合うかどうか試してみましょう。



活動的でいる


週に5回以上、新鮮な空気の中を30分歩くか、ハタヨガの太陽礼拝を12回繰り返しましょう。肩立ちや鋤のポーズなどの逆転ポーズで、脳への血流を増やしましょう。



呼吸する!


ヨガの実践である、片鼻ずつの呼吸や「アヌロマ・ヴィロマ」は、左右の脳を活性化し記憶力を高めます。あるいは以下を試してみましょう。前を見てまっすぐ立ちます。そっと息を吸い込んで、頭を後ろに倒しながら喉頭蓋(舌の根本のすぐ後ろにあります)を締め付けて、吸い込む息の最後で空を見上げましょう。息を吐き出しながら、喉を締めたままゆっくりを顎を胸に引いて、地面をみます。貝殻を耳に押し付けた時に聞こえる海のような音がしたら、正しくできています。これを7回繰り返しましょう。



学ぶ


記憶は筋肉のようなものです。使わなければ弱くなります。新しいマントラや詩、サンスクリットの書物などを練習して、そらで唱えられるまで毎朝繰り返し頭を鍛えましょう。そしてまた新しいものを覚えていきます。



脳に栄養を


アーユルヴェーダによれば、記憶力を上げる食べ物はサツマイモ、オクラ、ほうれん草、オレンジ、にんじん、牛乳、ギー、タピオカ、アーモンドなどです。



体と心を解毒する



アーユルヴェーダのお米と豆の料理であるキチャリだけを5日間食べると、記憶力を弱めたり病気の原因となるアーマ(毒素)が体から取り除かれます。
キチャリの作り方です。バスマティ米1カップと黄色のひいたムング豆1カップを2度洗いましょう。お米と豆に刻んだコリアンダーの葉を少し足して、6カップの水に入れ、時々かきまぜながら5分間煮ます。弱火にしたら蓋を少し開けたまま25ー30分火にかけましょう。生の刻んだコリアンダーの葉と小さじ1のギーをかけて、1日3回5日間キチャリを食べると心身ともに浄化されます。



ハーブ


アーユルヴェーダの書物の中には、「メディャ(記憶力を高めるという意味です)」と四バレル記憶力を高めるとされる特別なハーブ類が書かれています。これらの中で最良のものは、ブラフミ、ジャタマムシ、ブリンガラジ、シャンカ・プシュピで、オンラインやインド食品店などで購入できます。こうしたハーブの摂り方は以下です。


記憶力向上ハーブティーを作りましょう。上記の4つのハーブを足した小さじ一杯分を、1カップのお湯に10分間浸します。1日2回、濾したお茶を空腹時に飲みます。


鼻腔にオイルを塗布しましょう。アーユルヴェーダでは鼻は脳、つまり記憶の入口とされています。そのため、ある花の香りでニューヨークのセントラルパークを散歩した日を思い出したり、マリナラソースの香りで家族のパーティを思い出したりするのです。嗅球(嗅覚に関連する脳の神経中枢)を刺激するには、温めたブラフミのギーを両方の鼻に5滴(オンラインで購入できます)、就寝時に横たわって天井の方に頭を傾けて垂らします。そしてそっと数回吸い込んで副鼻腔のほうへオイルを吸い込みましょう。


ブラフミのミルクを飲みましょう。小さじ1/2のブラフミとサフラン少々を1カップの牛乳で煮ます。牛乳が3回沸いたら濾し、少し冷まして飲みましょう。

2023年7月6日木曜日

ヨガニードラと5つのコーシャ
Yoga Nidra and the Five Koshas


ヨギの眠りと言われるヨガニードラの瞑想は、コーシャという5つの大きな部分に基づいていていることが、ヨガの経典で述べられています。これらの層は「鞘」とも呼ばれ、肉体、エネルギー、精神・感情、より高度な知性、そして至福のかたまりがあります。ヨガニードラの聖典にあるように、各層はそれぞれに重要であり、瞑想中の実践者がその場に落ち着いて気が乱れないように働きます。


では、想像してみましょう。今、大好きなセレブに会うために、4人の友達と行列に並んでいます。そのセレブに挨拶してもらった友人Aは嬉しそうに興奮し、会えたことに満足しました。次に友人Bがセレブと会うと、興奮のためにすぐに座り込んで休まなければなりませんでしたが、その後はやはり満足しました。そして他の2人の友達もまたセレブに会って挨拶し満足感を得たあと、心を整理するために立ち去りました。けれど、セレブはあなたに会う前に立ち去らなけれななりませんでした。この出来事であなたは、気を揉んでがっかりしました。もしセレブが5人全員と時間を過ごせたら、あなたも満足してこの体験を分かち合いながらおしゃべりできたことでしょう。けれど、あなただけが会えなくて、もやもやして何かが間違っていると感じるでしょう。


これと同じことがコーシャにもいえます。もし、あるコーシャが見過ごされたり満足できなければ、そこに調和はありません。ですから、私はヨガニードラの指導者として、ヨガニードラから目覚める時にまとまったひとつの自分自身を感じられるように、各層を味わえるよう気を配ります。


では5つのコーシャを知り、ヨガニードラにどう関連するかを探りましょう。



1. 肉体の層


第一の層は、おそらく最も認知しやすい肉体的な層、アンナマヤ・コーシャです。文字通りに言えば「食物鞘」であるアンナマヤ・コーシャには、すべての筋肉、骨、腱、靭帯が含まれます。このコーシャは直接体験することができます。あなたの体ですから、あなたが見て感じることができます。


ヨガニードラの練習において、この層へはボディスキャンのように肉体的な体験とともに注意を向けます。「頭をリラックスさせて、腕、脚、上半身、下半身を緩めましょう」などのインストラクションを聞いたことがあるでしょう。体は直接話しかけられますし、観察できます。次の層へと移るに従って、ある意味では肉体への直接的な気づきが消えていきます。



2. エネルギーの層


第二の層はプラナマヤ・コーシャ、エネルギー体です。この層は知覚できますが、アンナマヤ・コーシャよりもかなり微細です。ヨガ哲学では、私たちのエネルギーであるプラナはナディと呼ばれる内部のエネルギー経路に沿って、呼吸とともに動きます。プラナは「呼吸」と訳される場合もありますが、呼吸そのものではありません。呼吸とともに働きますが、呼吸よりも微細です。


ヨガニードラでは、呼吸を観察することでプラナマヤ・コーシャと繋がります。息を吸ったり吐いたりするのをただ観察するように言われるかもしれませんし、指を使わないナディショーダナのような呼吸の練習をするかもしれません。「息を右の鼻から吸い込んで、少し止めます。左の鼻から吐き出して、止めます。左の鼻から吸い込んで、止まります。右の鼻から吸い込みましょう」などなど。呼吸に集中することで、体内のエネルギーの制限を緩めることが目的です。そしてこの層は、肉体の層と同様に消え去っていきます。



3. 精神・感情の層


第3の鞘はマノマヤ・コーシャ、精神の体です。これは、最も魅力的な層で感情のある場所だと言われています。怒りや恐怖に我を忘れたと感じる時(または上記の友達Bのようにスターに夢中な時)、私たちはこのコーシャにいます。マノマヤ・コーシャは、全ての状況における直感的な心の状態と関連していて、意識的にも無意識的にも自分自身や他者との関わり方をあらわにします。この層を押し殺し無視してなんとかしようとしても、感情は表層に(あるいはそれ以上に)突然湧き上がって、そんな感情や体の反応を抑えられない「限界点」に達してしまうこともあります。ですからこの層は、感情に操られることなく感情を体験できるヨガニードラで働きかけることができるのです。


ヨガニードラでは、全身の重さ軽さの感覚に気づいてください、心の中を感じとって、あるいはリラックスした時(またはそうでない時)のことを思い出してくださいと促されるかもしれません。この体験のすごいところは、マノマヤ・コーシャはまさに別の層だと感じられること、そして不安や幸福感や怒りはあなた自身ではないこと、ただ反応や内側で起こった感情にすぎないと気づくことです。


一度この層に触れられれば、この層もまた背後へと隠れていきます。



4. より高度な知性の層


この層はヴィジュナーナマヤ・コーシャ「理知体」で、より直感的なマノマヤ・コーシャよりも知的です。時々、思いがけなく洞察に富んだことが口から出てきて、「どこから出てきたの?」と自問することがあります。それがヴィジュナーナマヤ・コーシャの現れです。その他の例は、本能的な反応です。例えば、左右を見て確かめて何もなかったのに、毎日渡っている道を渡らなかったのがなぜだかわからない時などです。あなたの中の何かがその日は渡らないでと言ったのです。そしてその直後に急に車が飛び出てきたというような。違う道を選んだことで命が助かったのかもしれません。これは、ヴィジュナーナマヤ・コーシャが働いている時です。


ヨガニードラでは多くの場合、何かを想像するか、物語を使ってヴィジュナーナマヤ・コーシャに働きかけます。それはあなたを観察しているあなたです。よくわかりませんよね?高度な存在から見れば、あなたと私がいる場所に違いはなく分かれてもいません。熱帯雨林を歩いている自分を見ているとしましょう。深緑の葉を見ていると、明るいピンク色の花がどんどん大きく育って黄色い中心があなたの全身に光を投げかけます。聞くこと、見ること、感じることは深い内部から現れます。そしてこの層もまた背後へと落ちていきます。



5. 至福の層


第五の鞘はアーナンダマヤ・コーシャ「歓喜体」で、至福へと完全に浸った状態と表現できます。これは5つのコーシャで最も微細で、そこではあなたと神聖なものとの間にはほんの僅かな差があるだけです。


ヨガニードラでは、他の層のすべての練習においてこの層が存在しており、また旅の終わりの短い静寂や瞑想から出る前にも存在します。私は多くの場合、ここで1-5分間の静寂の時間をとります。そこには、主に実践の中でしっかりと受け止められている自分自身をただ感じるなど、探求するべきものが多く存在するからです。


ヨギの眠りから覚める時には多くの場合、体と呼吸、心との一体感を感じます。完全であること、そして穏やかな気持ち、完全な静けさのなかの心地よさなどを感じるのです。こんな感覚が持てれば、それはすべての層に働きかけられた証拠です。セレブがみんなを満足させようと会って挨拶し、みんなが穏やで落ち着いた状態で去っていったのです。


2023年7月3日月曜日

コーシャとは:人の存在の5層 Vol.2
The Koshas: 5 Layers of Being

 

第5の体


圧倒的多数の人では、第5鞘がほとんど成熟していません。この鞘はアーナンダマヤ・コーシャといい、霊的な至福である「アーナンダ」として体験される最も微細な部分です。一般的に、聖者や賢者、真の神秘家だけが日々の生きた一部としてアナンダを体験するために心の鍛錬をしているものであり、このレベルの意識が自身の中にあることすら気づけない人が多いのです。


アーナンダマヤ・コーシャは、普通の意識とより高みにある自分自身との間にある最も薄い最後のヴェールであるため、ヨガにおいては極めて重要です。臨死体験をした人の多くは、明るく白い光が放たれて、知性や無条件の愛に包まれた体験をしたと証言しています。これがアナンダマヤ・コーシャの体験です。聖者や神秘家は心を清めることで、死の一瞬だけでなく人生を通してこれを体験するようになるのです。


タントラの伝統では多くの場合、精神は常に聖なる意識に身を沈めている超越的な神シヴァ神を象徴としています。物質やエネルギーは至高の女神シャクティと呼ばれ、この世界全てはこの女神の聖なる体です。シヴァとシャクティは言葉にできないほどの強く愛し合っていると言われています。この最高の愛は、アーナンダマヤ・コーシャで体験され、そこでは精神と物質は情熱的に結びついています。


私たちはこの至福の鞘を三つの実践によって覚醒させることができます。一つめは無私の奉仕、セヴァです。これによって他者と自身の内なる結びつきに心を開きます。二つめは神への献身、バクティ・ヨガです。これによってすべてに宿る聖なる存在と内なる結びつきに心を開きます。三つめはサマディです。非常に集中した瞑想で、自身の聖なる存在へ心を開きます。




輝く健康


あなたは多次元の生き物です。あなたの意識は、多くのさまざまなレベルに現れます。ヨガは、あなた自身へと導き、あなたという存在のすべてのレベルにおいて完全に優美に生きられるよう訓練してくれます。肉体の強化し調子を整えるハタポーズから生命力のバランスをとって活性化する呼吸法に至るまで、心をクリアに鎮める瞑想の実践から知恵と調和の内なる世界を開く自身の探求と無我の愛に至るまで、ヨガは人格の全ての部分を養い統合する総合的なシステムなのです。5つの体と内なる真我(その意識は全てを照らします)を知ることにより、健康と賢明な人生の満足感を体験できるのです。




5つの鞘を体験する


5つの鞘は空想的な概念ではありません。実際に体験できるあなたの存在の実在する部分です。以下の8段階の実践で、あなたの人格の内なる側面をより掴めるようになるでしょう。


心地よく座って、頭や首、胴体を直線上に置きましょう。無理をしないでまっすぐに座ります。気を配りつつ、もリラックスしていると感じるはずです。


両目を閉じて、視覚と周りの音から意識を離していきます。意識の全てをあなたの体に集中しましょう。気づきを頭、肩、胸、腰、背中、お腹、腕、脚へと向けます。これがあなたのアンナマヤ・コーシャです。


意識を鼻腔の間の一点に集中し、呼吸していることを感じます。徐々に呼吸がゆっくりと、スムーズにそして静かになります。体の中に脈うつエネルギーに意識を向けましょう。そのエネルギーのおかげで、心臓が脈打ち、肺が膨らんだり萎んだりし、血液が血管の中を流れ、お腹がグゥグゥと鳴ります。この動き(肉体そのものではなく)を統合している力がプラナマヤ・コーシャです。


意識を頭に移します。感覚のインプットと動作のアウトプットを調整している意識の部分に注意を向けましょう。この部分が、鼻が痒いと気づき、手に鼻を掻くよう命令する部分です。ここで、同じ姿勢で長い間座り続けたため不快だと、脚を動かしたいと気づきます。絶え間ななく心の中に湧き起こる反射的な心のおしゃべりが作られるところです。これがマノマヤ・コーシャです。


意識を、頭の中の高いところへと引き上げましょう。意識のこの部分が、意志を持ってこの練習をすると決めて、今も終わりまでじっと座っているよう命令しています。ここが自己認識を広げる価値を認識し、ベッドの中で微睡むほうが気持ちがいいとしても、朝早く起きてハタポーズや瞑想をするように言うのです。これがヴィジュナーナマヤ・コーシャです。


意識を胸の中心へと向けます。深くリラックスして、スムーズで均等な呼吸を続けます。それでは、必要なだけ時間をとって、深い静けさの中へと落ち着いていきましょう。その心の平穏に深く沈んだ状態が、純粋な幸福感です。これは感情的な幸福感ではありません。この状態を離れても、大きな喜びや感謝という感覚として内から流れ出してくるものです。完全な満足感、完全な調和、そして普遍の穏やかさの場所です。欠陥、恐れ、欲望の感覚はありません。これがアーナンダマヤ・コーシャです。


それでは、自身の意識へただ気づいてみます。この体験をした純粋な意識が、この体験を超えて存在します。それがあなたの本当の真我で、あなたの不死の存在です。そこに意識をおいたままできるだけ長く自分自身の中で安らぎを感じましょう。


意識を呼吸に戻します。ゆっくりとスムーズにそして均等に呼吸します。目を開けて。リラックスしてこの体験に浸る時間をかけてから立ち上がりましょう。




死から生へ、そしてその向こうへ


ヨガの書物の多くで、この5つの鞘が3つに分類されているのを見つけるかもしれません。肉体と生命力はシュトゥラ・シャリラ「粗大体」と呼ばれます。精神と知性はシュクシュマ・シャリラ「微細体、霊体」と呼ばれます。歓喜鞘はカラナ・シャリラ「因果体」と言います。これらはさまざまな霊的な伝統のなかで認識されています。1世紀にデルフィ神殿で最高神官を務めたギリシャのプルタルコスは、それらをそれぞれソーマ、プシュケー、ヌースと呼んでいました。


肉体は死とともに崩壊します。霊体は転生とともに崩壊し、次の人生の新しい人格を作ることができます。因果体は何度も何度も生まれ変わり、荷物のようにカルマを運び続けます。それは解脱、高度な真我が生と死のサイクルから自由になる時に最後に崩壊するのです。




(出典)https://yogainternational.com/article/view/the-koshas-5-layers-of-being/





2023年6月27日火曜日

コーシャとは:人の存在の5層 Vol.1
The Koshas: 5 Layers of Being


健康を意識している人なら、今日もおそらくエクササイズをしたのではないでしょうか。ウォーキングやテニス、ジムのワークアウトなど、体の調子を維持する大切さを理解していることでしょう。それでは、微細な部分のエクササイズはしましたか?また因果的な部分は?ヨガの伝統では、私たちはみんな5つの層を持って、それぞれがより純度の高いエネルギーから作られているとされていてます。完全に調和のとれた健康的な生き方をするなら、全ての部分がよい状態に保たれなければなりません。


この段階的に微細になっていく5つの部分は私たちの個性を作っていると、タイッティリヤ・ウパニシャッドというヨガの古典に書かれています。


「人間は、食べる食べ物から作られる物質的な体で成っている。この体を大事に扱うのもは宇宙そのものから栄養を授かる」

「これの内側には性目力でできたもうひとつの体がある。それは肉体的な体を満たし、具現化する。この生命力を聖なる体験と扱うものは、素晴らしい健康と長寿を得る。なぜならこのエネルギーは肉体的な命の源であるからだ」

「この生命力の内側にはもうひとつの体があり、これは思考エネルギーからできている。これは2つのより高密度な体を満たし、同じ形をしている。この精神的な体を理解しコントロールするものは、もはや恐怖に苦しむことはない」

「その奥には、知性で成るもうひとつの体が存在する。それはより高密度な3つの体に充満し、同じ形を取る。ここに意識を確立するものは、健康的で無い思考や行動から自由となり、自身の目標を達成するのに必要な自己制御を養う」

「その内側には、純粋な喜びで成る微細な体が隠れている。それは他のその他の体に充満し同じ形を共有する。それは幸福、歓喜、至福として体験される」


これらの5つの体はサンスクリット語で「コーシャ」または「鞘」と呼ばれます。刀が鞘に収まるようにそれぞれが次のものに収まっているからです。私たちが知っている物質でできているのは最も高密度のものだけで、他の4つは目では見えない状態ですが、意識して注意深く内側を意識すればその存在を容易に感じることができます。内側の体は生きている間の健康の源であり、死後に旅するための乗り物なので、インドの古代のヨギたちは、それぞれを強化して整える特別な実践を順に行う方法を作り上げました。





第二の体


肉体的な体についてはもうよくご存知でしょう。ヨガでは「アンナマヤ・コーシャ」(アンナは『食べ物』あるいは『物理的物質』、マヤは『〜で作られた』という意味)と呼ばれます。ヨガでは、第二の体、つまり物質的な体を一つにまとめている統括領域を意識させてくれます。これは、呼吸から消化、血流まで生物学的なプロセスを統括する生命力です。これを中医学では「気」、ヨガでは「プラナ」と呼びます。古代エジプト人たちは「カ」と呼びました。


鍼療法やホメオパシーは、肉体的な体に直接行うものではありません。生命力に働きかけて活性化し持続させるのです。西洋において、19世紀まで従来の医師は、生命力を上げる十四世を認識していましたが、サルファ剤や抗生物質の開発にともない、人間の生物学の基本となるエネルギー状態から肉体そのものだけに意識が移りました。


エネルギー体は、ヨガでは「プラナマヤ・コーシャ」と呼ばれます。これが機能しなくなると、肉体も機能できなくなります。心臓や肺がその働きを止めて細胞が崩壊し始めます。西洋文化では肉体を強く意識しますが、プラナの支えと働きがなければ私たちは数分さえも生きられないのです。


ヨガには、プラナマヤ・コーシャの生命力を補充するためのプラナヤマという練習だけをするクラスがあります。腹式呼吸や、ヨガ呼吸、片鼻ごとの呼吸などは、第二の鞘を正しく機能させるために特別に作られたものです。


また、生命力の健康を維持するには、新鮮な空気と日光をたくさん得ることが不可欠です。ヨガの書物では、太陽はプラナの究極の源であり、太陽から降り注ぐプラナを吸収するだけで何も食べずに何年も生きる上級のヨギも居たと伝えています。けれど、私たちのほとんどにとってのプラナの主な源は、新鮮な自然食品です。



第三の体


第3の鞘である精神的な体は、五感や運動、あるいは「自動的に」機能する毎日の意識の働きを担う部分です。五感からの情報を処理し反射的に反応します。周囲の環境を積極的に形作るのでなく、環境に反応して消極的に人生を歩む時、意識はここに集中します。多くの人、そしてほとんどの動物は、このレベルで習慣的に反応します。


この部分は「マノマヤ・コーシャ」(『思考プロセスで成る体』という意味)と呼ばれます。西洋では習慣的な精神状態は脳に関連付けますが、ヨガでは脳を含む全ての神経系はマノマヤ・コーシャの活動の影響を受けているだけであり、このより高いエネルギー状態の指令を肉体を通して表れていると考えられています。


昏睡状態の患者を観察すると、精神的な体が何なのかを掴めるかもしれません。昏睡者の第二鞘はまだ機能しているので、心臓は打ち続け肺は拡縮しています。しかし、外の世界に意識はなく動くことはできません。精神体の活動が停止しているからです。プラナマヤ・コーシャは生まれてから最後まで働き続けますが、マノマヤ・コーシャは日々一時的に停止することがあり、深い睡眠の中で再生します。


マノマヤ・コーシャの健康は、マントラ瞑想の実践を通して非常に強化されます。この内なる
体を鎮めてバランスをとり、心の否定的な観念や脅迫的な思考に縛られたエネルギーの「もつれ」を解くのに役立ちます。瞑想を長時間行ってきたヨギがあまり睡眠を必要としないのは、ひとつには、調整し終わったばかりの自動車のように理想的に機能する心の乗り物のおかげなのです。


精神体は、感覚印象をエネルギー源とします。たとえば、この第三の鞘に絶え間なく暴力的なテレビ番組やビデオゲームを与え続けると、より攻撃的な刺激を欲するようになり、取り乱しやすくなったり他者の苦しみを感じにくくなるかもしれません。仕事や遊びをあまりにも多く詰め込みすぎると心の「消化不良」を起こして、焦燥感や疲労感を感じるかもしれません。調和の取れた環境、興味深い仕事のチャレンジ、楽しく協力的な人間関係などは、心のための理想的な食事となるでしょう。プラティヤハラ(五感の抑制)の毎日の瞑想で、すばらしく心が調います。



第四の体


より微細なのが「ヴィジュナーナマヤ・コーシャ」(『判断力、洞察力』)です。多くの場合「知性」と訳されますが、実際の意味はもっと広く、良心や意志などより高度な心の機能全てを含みます。第三鞘である精神体と第四鞘の知性体の違いは、ヴィジュナーナマヤ・コーシャがまだ身についていない人を見ると容易に理解できるでしょう。


そういったタイプの人は、人生をコントロールできていないと見える人で、決意したり前向きに反応するというよりは、常に周りの出来事に反応している人です。こういう人は決心したり、自分のことを考えたり、創造的になることが苦手です。意志力がほとんどなく、いつも自分の誤った判断の被害者です。


不完全な第4鞘のもう一つの例は、強い個人の倫理に欠けた人です。宗教的な集会に参加して倫理の価値を敬虔に語っていても、他者を犠牲にしながら利益を得られるという機会が訪れたときには躊躇なく行動します。善悪の区別をする能力が弱く、その人にとっての良心とは生きた経験というより陳腐な言葉に過ぎません。


第4鞘が目覚めると、人間は動物とは異なっていきます。人生を思うままに生きることができるのは人間だけで、その場の本能から自由に倫理的選択をすることができます。聖者らは、健康的なヴィジュナーナマヤ・コーシャを身につけることをとても重要だと考えていたため、そのための練習をヨガというシステムの始まりから組み入れてきました。これらはヤマとニヤマと呼ばれ、全てのヨガの生徒たちに取り組むことを求めています。暴力をしない、嘘をつかない、盗まない、快楽に溺れない、必要以上に求めないこと。そうではなく、足ることを知る、清くある、自己鍛錬する、勉強する、献身すること。


ジュナーナ・ヨガもまた、このコーシャに働きかけています。これは霊的な真実を学び、深く考察し、最後には自身の個性のまさに中心へと組み入れることを勧められる思考的過程です。この過程においては、霊的な理解が自身の知性を養う「栄養」となります。


何ヶ月、何年と瞑想を深めていくと、内なる導きに繋がる能力が強まります。人生の出来事、それが辛いものであっても、穏やかに客観的に捉え始めます。ヨガ的なライフスタイル、深い考察そして瞑想によって、明快な判断へ、より良い直感、そして強い意志力へと導かれていき、ヴィジュナーナマヤ・コーシャがより強くより調和の取れたものになっていくのです。


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次回に続きます。