2025年11月17日月曜日

股関節のためのヨガ Vol.1 
Help for the Hips

アサナの練習をすることで、理想的には心身のバランスと心の穏やかさを得られ、健康で幸せでいられるようなります。しかし練習を重ねていくと、体のある部分に「行き詰まり」を感じることもあります。そうした症状がよく現れるのが、特に瞑想やプラナヤマの座位の姿勢を練習する人にとっては、股関節や骨盤の辺りです。また股関節は、体重を支え全身を構造的に安定させている一方で、歩く、走る、ジャンプする、前屈みになる、座るを同時に可能にしていますが、それを考えればそこに問題が生じるのも不思議ではありません。骨盤は上半身全体の基盤であり、体内全てが健康的に機能するには骨盤を調整することが不可欠です。現状を評価して、股関節や骨盤周りのバランスと柔軟性を得られるよう練習を調整するために、少し解剖学を見てみましょう。






骨盤、脊椎下部、股関節は上半身の重みを支えており、胴体と両脚の関係を安定させ、歩く、走る、ねじる、あらゆる方向へ曲げるために必要な体系を形作っています。骨盤と脊椎下部は仙骨の左右にある仙腸関節で繋がっていて、比較的あまり動きません。この半固定された構造により、背骨の下端をしっかりと支え、多くの場合は脊椎下部と骨盤は一体で機能しています。


それに比べ、腿は骨盤と球関節で繋がっており、体の中で最も動く関節です。これによって股関節での広範囲の動きが可能になっています。腿は、前後左右に動かせることができ、また内外に回転させることもできます。そうした異なる機能を包含するこの場所に想像できるように、柔軟性と強度に多くの筋肉群が関係しています。腿裏のハムストリングス、前の大腿四頭筋、内腿の内転筋、後ろと横にある外転筋、回転筋、そして股関節屈筋(腸腰筋)、これらは骨盤の奥深くにあり、骨盤との関連で腿を動かせます。最後に、腹筋が体の前を支えて骨盤と脊椎下部の正しい位置関係を保っています。


股関節はあらゆる方向に定期的なエクササイズをしなければ、大抵は、凝り、痛み、慢性的な筋肉の短縮が起こります。以下のエクササイズは、この部分を強化して開くよう考えられています。股関節の動きにくさとともに、ハムストリングスや腰の凝りがある場合は、その辺りも一緒に動かす必要があるでしょう。筋肉が硬くなるのは多くの場合は弱い筋肉を補っていることを覚えておいてください。強化エクササイズを含んだ包括的なプログラムの方が、特定の一部分をストレッチするよりも、より早く筋肉バランスをとり戻し正常な可動域を得ることができます。


以下のポーズは、股関節の柔軟性制限への対処法です(ハムストリングス以外)。流れに沿う場所があるならば、これらのポーズのいくつか、あるいは全てを、毎日のアサナのどこかに取り入れてみてください。例えば、立位ポーズに体側を伸ばすポーズをする、あるいは三角形のポーズ(トリコナサナ)の代わりにするなど。腿の付け根のストレッチをうつ伏せのポーズに取り入れるなどです。いつも同様、定期的な練習は不可欠です。




体側を伸ばすポーズ (パールシュヴァコナサナ)


立位ポーズは、股関節や骨盤に良いポーズです。強さや柔軟性を養い、意識がポーズでの動きと統合するからです。このポーズでは、股関節の深い場所の可動域が高まり、四頭筋など脚や骨盤の筋肉が強化、体側全体に沿った筋肉がストレッチされ、胸が開きます。






両足を脚の長さ程度に開いて立ちます。右足を外に90度開き、左足はやや内側へ、股関節と胸は前に向けます。息を吸い込んで、両腕を手のひらを下にして肩からまっすぐ外に伸ばし、両肩を広げたまま耳から遠ざけるよう下げます。息を吐き出して、右膝をちょうど足首の真上にくるまで曲げます。ポーズを安定させて、呼吸をリラックスさせましょう。


胴部は前に向けたまま、息を吐き出し、背筋を伸ばして右へ曲げ、右前腕を膝にのせて、左手のひらを上に向けながら左腕を頭と並行に挙げます。そして、尾骨を少し引き込み肩甲骨を内側に引くことで胸と腹部をより開きます。両足をしっかりと床に押し付け、左かかとから左指先まで伸ばします。安定させるため、右膝は足首の真上に置き、左足の外側で床を押しましょう。


ポーズを深めるには、内腿どうしを遠ざけるように伸ばします。それから右腕を膝から離して、手を右足の外側の床に置きます。左腰を伸ばした脚や腕と一直線になるまで下げて、左側全体のストレッチを深めましょう。右腕と右脚を近づけたまま、胸郭と腹部を回して開き、胸を骨盤から離れるよう持ち上げます。左腕を伸ばし、左肩を開き、首を長く、まっすぐ前を見るか頭を回して上を見ます。そして、ポーズをしながら集中して安定した呼吸をし、そのまま3-5回呼吸するか、準備ができたと思ったらポーズを終えます。右足の指の付け根を押し、胴体を持ち上げ、脚を伸ばします。左右の足の位置を替えて、反対側で繰り返しましょう。



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次回に続きます。


2025年11月13日木曜日

2分で骨盤底筋を整える 
Tone Your Pelvic Floor (in 2 Minutes)



骨盤底筋は解剖学の中でも軽視されやすい場所です。調子よく活性されている時は、恥骨と尾骨の間を薄く覆っているこの筋肉は、おどろくほど様々な面で健康を支えています。膀胱機能の向上、規則正しい大腸の動き、痔の予防や緩和、生殖機能のバランスを整える、交感神経を鎮めるなどです。しかし、骨盤底筋が弱くなると、時と重力に負けて、次第に多くの問題が起こるようになります。






シンプルなエクササイズ



骨盤底の筋肉は、他の筋肉と同様、定期的に繰り返し使いながら、強化したり整える必要があります。以下のエクササイズはそうしたものです。

  1. 仰向きに横たわって、骨盤の近くに両足を置きます。身体と呼吸をリラックスさせて目を閉じます。

  2. 骨盤底に意識を向けます。恥骨と鼻骨の間にある筋肉を、尿道と肛門の括約筋、その間にある会陰も含めて全て収縮させます。(男性は会陰の中心を収縮、女性は子宮頸部も収縮しましょう)息を吸い込んでリラックスします。

  3. 息を吐き出し、エクササイズを繰り返します。できるだけ深く強く締めましょう。息を吸い込んで解放します。25回繰り返しましょう。呼吸が途切れないよう、そして顎や腹部、内腿など体の他の部分はリラックスし続けるよう確認します。

  4. できるだけ長く収縮を保ったまま普通の呼吸を続けて、終わります。

  5. もし疲れを感じたら可能な範囲で練習し、25回の収縮が楽にできるまで徐々に回数を増やしていきましょう。



練習する時間


筋力を維持するため、週に4回は練習しましょう。一度テクニックをマスターしたら、歯医者の待合室や、信号待ちの間、つまらない会議の間など、空いた時間に練習できます。やがては、ヨガポーズや呼吸法、瞑想を深めるために骨盤底筋を使うことができるようになるでしょう。



次の段階へ


強靭で柔軟な骨盤底は、霊的、精神的、肉体的にも生命力の貯蔵庫を支える基盤です。ヨガを練習している人は、このエクササイズがムーラ・バンダ(根元の鍵)の準備だと気づくでしょう。ムーラ・バンダはアーパナ(心身にある生命力の下向きの流れ)をコントロールするための微細な実践です。マスターすれば、心の安定が得られ直感や創造性が目覚めます。







https://yogainternational.com/article/view/tone-your-pelvic-floor-in-2-minutes/

2025年9月22日月曜日

ガルーダサナ(鷲のポーズ)の裏側にある神話 
The Mythology Behind Garudasana (Eagle Pose)



「鷲のポーズ」と呼ばれる「ガルーダサナ」は、神様の名前から来ています。南アジアではガルーダは大きな神話上の鳥で、体は人の形で金色、顔は白く、赤い翼とワシのクチバシを持っています。彼は鳥の世界の王様で、蛇の天敵、人間の友人です。ガルーダは、宇宙を維持し一人の人間として生まれ変わった神様、ヴィシュヌ神の乗り物です。ラーマーヤナのヒーローであるラーマもまたヴィシュヌ神の生まれ変わりです。


ガルーダによく似た「ジャタユ」は時に残忍なハゲワシと描写されますが、ハゲワシというよりワシ、ガルーダそのものです。ジャタユはガルーダとして、このお話のヒーローです。


ラーマーヤナでは、ラーマの妻のシータがどのように悪魔のラーヴァナによってさらわれ、空飛ぶ機械ヴィマナでランカ島へと連れ去られたのかが語られています。この出来事が起こったとき、ジャタユは樹の上で瞑想するように座り、鋭い眼で世界の果てを見渡していました。シータの叫び声を聞いた彼は、空をビュンと飛んでシータを連れ去っていくラーヴァナを見ました。彼はヴィマナに頭突きをして地面へと叩き落としました。彼は鋭い歯と引き裂く鉤爪、力強く羽ばたく翼でラーヴァナを猛烈に攻撃しましたが、魔王の10の頭と20本の腕には敵いませんでした。ラーヴァナの失った頭や腕は全て、最初のものが落ちてしまう前にどんどん生えてくるのです。ジャタユは勇敢に激しく戦いましたが、次第に形勢が悪くなっていきます。ついにラーヴァナはジャタユの2枚の翼を切り落とし、南のランカ島へと飛び去りました。シータは、美しく豪華な車の床の上でショックを受け静かにうずくまっていたのでした。





ジャタユが致命傷を負ったところに、シータを探していたラーマと弟のラクシュマナが歩いてきました。息も絶え絶えになった敗北の戦士は、細切れにこう言いました「シータ様、、ラーヴァナ、、、南へ、、ラーマ様、殺してください。ご主人の前でその手にかかって死ぬのは本望です」常に優く、けれど決して感傷的ではないラーマは、弓矢でジャタユの勇敢な心臓をサッと射抜きました。そしてラクシュマナと一緒に木を集めて薪の山を作り、家族を見送るときと同じように丁寧に葬儀を行ったのでした。




ガルーダサナに入る方法


まずはタダサナで、股関節幅に足を並行にして立ち、両腕は体の脇、頭頂は天井に向かって引き上げます。視野を広げましょう。


1. 息を吸い込んで、両腕を手のひらを上にして肩の高さに上げます。

2. 息を吐き出して、左腕を右腕の上にして、左肘が上になるように重ねます。

3. 両肘を曲げ、前腕の裏側が並行に、手の甲どうしが向きあうようにします。両手のひらが触れ合うまで前腕どうしをからめます。手首は前腕と一直線にしたまま手指を伸ばします。(手首を捻らなければ手のひらがつかなければ、手の甲どうしを着けておきましょう)前腕を反対方向へ押します。「翼(肩甲骨)」あたりのストレッチに気付きましょう。

4. 両膝を曲げ、体重を左足へと移します。

5. 右脚を左膝の上にクロスさせます。

6. 右足を左脚の下の方に巻き付け、左ふくらはぎや足首に引っ掛けられるかみてみましょう。上半身は、左側が右側に巻き付いています。下半身は、右側が左側に巻き付いています。(全体重が片足に乗せられなければ、脚を巻き付けないでおきましょう。そのかわり、両脚を並行にしたまま膝を曲げ、股関節を後ろ屁引いて椅子のポーズのように高い位置のスクワットをします)バランスをとります。骨盤の先どうしを引き寄せます。おへそを引いて持ち上げましょう。息をして。自分がまるで、外からは静かに見えていても内側は力強く動いて存在している、そんな空へ飛び立つワシであるかのように想像します。

7. スムーズに呼吸します。頭の付け根を持ち上げます。股関節の凹みから少し前へかがみますが、胸は引き上げます。前腕を反対方向へ押し続けながら、肩甲骨全体を広げます。視線は、急上昇して目を見張るワシのように、両手の内側へ集中させましょう。

呼吸や体、眼のやわらかさと硬さに注意を向けましょう。特に手に鋭く集中するとき、目が固くなって前へ動くかに気付きます。同時にやわらかく集中することはできますか?筋肉を働かせたまま呼吸を和らげられますか?吸い込む息とともに、肺の下の方へ呼吸を入れて胸郭を翼のように広げてみます。滑空する鳥のように呼吸しましょう。

このポーズを30ー60秒続けてから、タダサナに戻ります。

右腕と左脚を上にして繰り返しましょう。




ガルーダサナで内省する


ガルーダは、創造の番人・維持者・保護者であるヴィシュヌ神の乗り物です。ヴィシュヌの名前は「そこに入る」「行き渡る」という意味の「Vish」から来ています。ヴィシュヌは、宇宙の中に入ることで、ひと時も途切れることなく宇宙を維持、保存、保護しています。それは、選択した対象に意識を集中する瞑想の中で、瞑想を維持するために、何度も何度も同じ対象をどの瞬間も選び続けるのと同じです。保存し維持するとはどういう意味なのかを深く考えてみましょう。番人の乗り物であるために必要となる質とは何でしょうか?番人の乗り物としてどのように呼吸すればいいのでしょう?筋肉や骨に感じるエネルギーはどんなものですか?


もう一度ポーズを取ってみましょう。維持するとき、意識を体の全ての部分、呼吸、感覚器に行き渡らせましょう。全ての場所に均等に存在します。どこかで意識が揺れていることに気づいたら、もう一度そこに在ることに取り組みます。最も難しいと感じるのはどこでしょうか?


ジャタユやガルーダは、意識を維持した状態が自然の状態です。彼のダルマは無私無欲の奉仕で、全てが含まれる創造を保護することです。敵であるラーヴァナは自己中心主義を体現しています。ラーヴァナがシータをさらったとき、あなたの実践が湧き上がる欲望や自己主張に邪魔されるように、その行動は創造を崩壊させます。ジャタユはこの世と全ての生き物を守るという役目を果たそうとします。しかし、ジャタユが勇敢であるように、自我の頭はたくさんあって、どんな無知をも凌駕します。頭を切り落としても、すぐに次の頭が出てきます。自問してください「自我に関係した心配事が実践を邪魔しそうなとき、それを守るためにどのようにガルーダのエネルギーを集めればいいのか?」


この物語で、なぜラーマはジャタユを殺したのでしょう?それは哀れみです。ジャタユが言った通り「ご主人様の前でその手にかかって死ねるのは本望」なのです。インドの伝統では、そうした死は信者の解脱を実際に保証します。物語のこの部分は悲しいものですが、クリシュナ(ヴィシュヌのもうひとつの姿)の言葉「自身のダルマを全うすることは、それが不完全であっても、誰かのダルマを全うしようとするよりは良い(バガヴァッドギータ18:47)」ということを思い出させてくれます。ジャタユは徹底的にベストを尽くし、その結果、シータを助け出すという直近の志は叶いませんでしたが、主人その人によって苦しみから解放されたのです。ことわざ通り、戦闘で負けましたが戦争には勝ったのです。少しこのことについて考えてみましょう。あなたは困難な状況でベストを尽くし失敗したと思い、その結果は予定していたよりもずっとずっと良いものだったことはありますか?

2025年9月19日金曜日

骨関節炎を緩和するホリスティックなアプローチ Vol.2 
A Holistic Approach for Relieving Osteoarthritis

 それでは、実践編です。

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両手


手のストレッチで、関節にスペースができ血流が増えます。始める前に両手を温めておきましょう。ゆっくりと行い、湾曲した指や手のひらを正常な位置にもどすよう優しく動かすことに集中します。


レベル1:胸の前で合掌して(ナマステ、お祈りの形)山のポーズで立ちます。この位置で手首が痛むようなら、前腕どうしを近づけましょう。息を吐いて、左右の指や手のひらを優しく押し合います。息を吸って肩を後方へとリラックスして、指先を付けましょう。息を吐いてもう一度手指と手のひらを押し合います。この動きを、少しづつ押す力を強めながら1-2分間続けましょう。




レベル2:同じく合掌の位置から始めます。指先は天井に手首は床に向けるようにし、息を吸い込みます。息を吐いて、両手を押し合います。力を入れたまま、優しく両手を引いて手首をまっすぐ下げます。手のひらが徐々に床の方へ開いていきますが、指は押し合い続けたままにしておきましょう。力を少し抜いて息を吸い、力を入れて息を吐きます。関節に負担をかけないように、ゆっくりとストレッチしましょう。




背骨


血流を良くすることが、背骨の健康の鍵です。このネコのストレッチは、背骨全体の血流を増やすための素晴らしいポーズです。スムーズで楽な動きを続けましょう。動きが背骨本来の可動域の20%であろうが100%であろうが構いません。大切なのは、背骨の血流を増やすことだけです。


膝をついて、両手を肩の真下に、両膝は股関節の真下におきます。息を吸うたびに猫のように背中を丸め、天井に向かって押し上げましょう。息を吐くたびに背骨を床の方へ下ろし(凹の形)、尾骨と頭を上げます。呼吸とともに動きながら1-2分間続けます。必ず痛みや緊張を感じないようにしましょう。


注意:両手や手首、膝などに制限のある場合は、立ったまま、両手を椅子やテーブル、カウンターなどに置いてこの動きを練習してみてください。



股関節


全ての立位ポーズや緩和バージョンは股関節に健康に役立ちます。可能な場合は、毎日の運動にいくつかを取り入れて、筋肉を強化・リラックスさせたり関節を整えましょう。ヴィラバドラサナ1もランナーズ・ランジも股関節にとても良いポーズです。ここではランナーズ・ランジの緩和バージョンを2つご紹介しましょう。


レベル1:まずは、5段以上ある階段を見つけます。左足をしっかり床に着けます。前屈みになって左手を階段の4段目に置きます。できそうなら、右手を使って右足を3段目まで持ち上げます。そして両手を1段上に置いて、左脚と上半身を伸ばし、左臀部に力を入れながら、階段方向へ(右膝を曲げながら)左脚が着くまで一直線にのばしていきます。股関節の前を持ち上げて、腿の筋肉をもっとストレッチします。可能なら、左かかとを床につけたままにしましょう。呼吸をしてこの位置に留まります。ここまでと同じように姿勢を戻して、反対側も行いましょう。



メモ:この姿勢は、比較的荷重をかけずしっかり曲げることができるため、膝にも良いです。





レベル2:ソファが右側になるように立って、両手を肘掛けにおきます。右膝を曲げて右膝、脛、足をソファの座面にのせましょう。左足を数センチ前に出します。両手で肘掛けを押して、右膝をソファに沿って、右腿に心地よいストレッチが感じられるまで後方へすべらせます。股関節は前に向けたままで右脚をできるだけ伸ばしましょう。必要なら、左脚をもう少し前に出して、左脚を90度に曲げます。呼吸しながらストレッチしましょう。




反対側に移るには、右脚を曲げ、右足の上に座ります。左足を引き込んで左足の上に立ち上がりましょう。ソファの反対側を使って反対側の脚で繰り返します。




ヨガのアサナ全ては、体を柔らかく、強く、そして長く保つのに役立ちます。その鍵は、どんなポーズもやりすぎず、可能な範囲でしっかりと伸ばすことです。痛みや炎症、固まった関節とともに残りの人生を過ごす必要はありません。が、自身の体のケアはしなければなりません。現代の人はこれまでの歴史上で一番長く生きているのですから、体を優しく扱ってあげれば「痛み無く」より遠くへとあなたを運んでくれます。


ヨガのガイドライン


なんらかの関節炎がある場合は、練習する際の以下のガイドラインに従うことが重要です。

  • 練習前には必ずウオームアップし、セッションを通して温かくしておくこと。21〜23°C の部屋で行うか、体温を保てるよう厚着をすること

  • 関節を正しい位置に戻すためには、正しいアライメント(整列)が不可欠

  • 可能なときはいつも、各関節のスペースや可動式をできるだけ広くすること

  • ポーズを入るための時間はたっぷり取ること。ポーズがどう見えるかではなく、変化を作ることに集中する

  • 関節の脆さを減らすために強化することは必要ですが、ポーズを長い時間、維持しようとするのは賢明ではありません。そのかわり、緩和ポーズひとつひとつを短く繰り返しましょう

  • 呼吸は、滑らかで均等に、たっぷりと行うこと。呼吸が短くなったり乱れたら、もう少し楽な姿勢を試しましょう








2025年9月13日土曜日

骨関節炎を緩和するホリスティックなアプローチ Vol.1 
A Holistic Approach for Relieving Osteoarthritis


今回は、骨関節炎を患った著者の記事です。
痛みや腫れの緩和法やヨガポーズについて書かれています。
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振り返れば、あの腕の痛みを感じたのはラッキーだったと実感します。それはゆっくりではありましたが、最初の一年で容赦なく段々とひどくなっていき、とうとう水の入ったコップを持ち上げることもできなくなって病院へ行きました。検査をした医師は、同じ位置で繰り返し行う癖が原因で筋肉が緊張し続けてしまい、痙攣を起こしているのだと言いました。医師の説明では、筋肉が痙攣するのは普通の動きが摩擦となって関節が過度に摩耗してしまうとのことでした。そして今起こっていることは、骨関節炎の初期だと私に伝えたのです。



関節炎とは文字通り関節の炎症です。それにはさまざまなタイプがあります。私が直面している骨関節炎は摩耗する種類です。これまでのところ最もよくあるタイプの関節炎で、多くの場合は老化の自然な一部だと考えられています。アメリカの高齢者の85%が骨関節炎を患っています。大抵は、健診や患者情報で見つかったり、レントゲンで関節内の影、骨の劣化やカルシウムの堆積が見られて診断されることが多いです。骨に影響がある一方で、多くの場合は骨関節炎は筋肉から起こり始めます。


私たちの体が動けるのは、筋肉が収縮・弛緩して関節が屈曲・伸展するからです。この同じ収縮・弛緩が血流を作って関節機能の健康を維持します。弛緩するたびに、筋肉代謝に不可欠な栄養たっぷりの新鮮な血流が細胞に運ばれます。収縮のたびに、筋肉細胞から古い血液が押し出されて、細胞代謝の老廃物を取り除きます。筋肉が痙攣すると血流が減ってこうした老廃物が細胞内にとどまります。血流不足とその結果の毒素の蓄積こそが炎症を引き起こし、それが骨関節炎へとつながるのです。



よりはっきりした骨関節炎の兆しが現れると、筋肉の痙攣によって関節内が狭まって滑らかな軟骨に圧力がかかり、それが骨の末端を覆います。筋肉の痙攣と合わさって、関節が腫れて硬直、動きが制限され、この状況が改善されなければストレスと摩擦により滑らかだった軟骨がでこぼこになります。そして、その部分を強化しようとして、体はでこぼこ部分で脆くなった骨にカルシウムを溜めていきます。そうするうちに関節内は絶えず狭まって、続く摩擦で痛みが強くなり、関節の劣化によってより痛みが増します。長期の関節炎は、やがて関節の変形を引き起こし、永久的に動かせなくなります。ついには、我慢できない痛みが何年も続いた後、外科手術(骨の融合か関節のリプレイス)だけが痛みのない生活へ戻る最後の望みとなるかもしれません。



けれど、必ずしもそうなるというわけではありません。私の場合、私の骨関節炎は早期発見できたため治る可能性があると医師に伝えられ安心しました。そして、すぐに次の方法を始めるよう勧められました。筋肉の痙攣の原因となる習慣的な繰り返す動きや位置を見つけて止めること、腕や肩の筋肉をリラックスさせるため優しいストレッチをして血流を増やすこと、腫れと痛みを緩和するため抗炎症剤を2週間飲むこと。以前したヨガのケガで、やさしいストレッチも抗炎症剤のどちらもが、血流を増やして腫れを緩和し治癒を促すことがわかっていました。ですから、医師の3つの推奨と問題の原因を見つけて取り去ることが、私の1番の目的となりました。



シャーロック・ホームズの気持ちを着込んで、自分の毎日の日課や癖を入念に調べました。原因となる癖になっていた動きは小さく無意識で、とても普通だったので、見つけるまで時間がかかりました。けれどある日、電話をしている間、片方の腕でもう一方の腕を支えていることに気づきました。指を上に向けたまま手首をしっかりと曲げて、もう一方の肘を支えていたのです。また、この同じ姿勢でいろんな動作をしていることにも気付きました。そうして長い間手首を強く曲げた状態で1日を過ごしていること、これが犯人だと気づいたのです。



この繰り返す動きをただ止めれば原因を取り除くことができて、そのうち炎症も痛みも少なくなるとわかっていました。が、時間をかけずに早く治したかったので、体の治癒プロセスを強化する概念やテクニックを取り入れて、ホリスティックなアプローチをすることにしました。そうした結果、とてもよい結果を得ました。もし痛みがあったり、すでに骨関節炎だと診断されているのなら、こうした方法が役に立つことを願っています。





骨関節炎を緩和するコツ


自然の抗炎症剤で、腫れや痛みが緩和します。
プリムローズやサーモンオイルの錠剤、生の生姜やにんにくを食べるかカプセルで飲む、エキナセア、ゴールデンシール、レッドクローバー、ナツシロギク、ユッカなど。ターメリックやシナモン、生姜など抗炎症効果があり血流を促すスパイスを料理にふんだんに使う。



温めたゴマ油で辛い部分をマッサージします。特に関節の痛みを和らげてくれます。
お風呂に入る前に体にオイルを擦りこんでみましょう。そして睡眠中に関節に染み込んでいくように寝る前に少しオイルをつけます。温めたごま油やひまし油で10-20分パックすることでも、痛みを和らげるオイルが関節に染み込みやすくなります。


毎日食べるもの全てが、骨関節炎の状態に影響します。私たちの体は、健康を取り戻し維持するため定期的な水分補給が必要です。少なくともコップ8杯の水(できれば蒸留水)とジュースやハーブティを。私たちの体は、3-5人分の新鮮な果物(柑橘やトマトは避けましょう)、少なくとも3人分の生野菜(ピーマン、じゃがいも、ナス以外)が必要となります。毎日のカロリー摂取の40-55%を、体のエネルギーレベルを維持してくれる全粒の穀物で摂りましょう。特に重要な食べ物は、卵や玉ねぎ、アスパラガス、緑の葉野菜、玄米、魚などです。コーヒーなどのカフェイン、赤身の肉、砂糖を使用したもの、塩、コーラ類、漂白した小麦粉、タバコ、唐辛子、パプリカ、ジャンクフードは避けましょう。



サプリメントで治癒を早められる可能性もあります。コエンザイムQ10は、組織に送り込む酸素を増やし結合組織の修復に重要です。グルコサミンやコンドロイチン硫酸塩の組み合わせで、軟骨の再生に役立つ可能性もあります。



ビタミンのサプリメントもまた役立ちます。亜鉛とビタミンC、バイオフラボノイドは治癒を促し、炎症を制御、腫れを緩和します。ビタミンEは強い抗酸化物質で関節の動きを助けます。ビタミンBは治癒を助けます。鉄の入っていないビタミンのサプリメントを摂り、酵素やブロッコリ、芽キャベツやカリフラワー、魚、ライ豆、えんどう豆などを摂りましょう。



筋肉の痙攣の原因となっているであろう無意識で繰り返す動きや位置を、探偵のように探し出しましょう。体をどう使っているかを意識し、筋肉のあるグループをその反対のグループを犠牲にして、いつどこで使っているのかを特定しましょう。



血流は筋肉や関節の健康に不可欠です。数時間おきに症状のある関節を最大可動域の2割程度で回して血流を増やしましょう。こうした動きは小さすぎて効果がないように思うかもしれませんが、実際は強力な治癒力となります。



優しいストレッチは血流を増やし、疲れや筋肉にいつもある緊張を緩和します。また、長期間の筋肉痙攣の結果に失われた通常の可動域を取り戻します。覚えていてほしいのは、ストレッチの際に関節に負荷をかけすぎないこと、痛みを感じないことです。


ヨガポーズを練習しましょう。以下のポーズは、手や背骨、股関節の骨関節炎に対処するための一例です。こうした緩和したポーズは、関節の制限をやさしく取り除き、可動域を最大まで戻します。時間をかけて、優しいけれど根気よく、呼吸をしながら行いましょう。






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ポーズの練習法は、次回にご紹介します。







2025年8月29日金曜日

キルタン・クリヤ:ヨガとアルツハイマー予防としてのメディカルメディテーション Vol.2 
Yoga and Medical Meditation As Alzheimer's Prevention Medicine


キルタン・クリヤの実践法


キルタン・クリヤは何千年も実践されてきた12分間の歌うエクササイズです。呼吸、歌やチャンティング、指の動き(ムードラ)、心に思い浮かべるなどいくつかの動きが組み合わされています。ですので、多面性のある多感覚のエクササイズで、脳全体を使って脳内血流を増加します。


姿勢:椅子に心地よく座り、両足をぴったりと床につける
または、足を組んで床に座っても良いですが、高齢者は床に座りたがらないかもしれません。重要なのは心地よいこと、背骨が自然な湾曲のみを残してまっすぐにして座ることです。

両目:目は閉じます

チャントやマントラ:「さぁ」「たぁ」「なぁ」「まぁ」の音を使います。続けて言うと古代の言葉で「真我」あるいは「最高の自己」という意味になります。
メロディーは、みんなよく知っている「メリーさんの羊」の最初の4音で歌います。つまり「メーリさんの♪」までです。

指の動き、ムードラ:親指で他の指に順番に触れます。両手で同時に同じ形を作ります。
• 「さぁ」の時は、親指と人差し指をつけます
• 「たぁ」の時は、親指と中指をつけます
• 「なぁ」の時は、親指と薬指をつけます
• 「まぁ」の時は、親指と小指をつけます
常に人差し指から始めて、中指、薬指、小指と続けて逆行しません。





心に思い浮かべる:エネルギーが頭上から頭頂の中心に降りてきてくるのを思い浮かべます。そして、頭の中に真っ直ぐおりたら、方向が垂直に変わって眉間の鼻のちょうど上の一点(いわゆる第3の目)へと進むのをイメージします。つまり、エネルギーはL字にたどっていくのを思い浮かべるのです。まるでほうきのようにすうっと流れるのをイメージできるかもしれません。




順序:「さぁ」「たぁ」「なぁ」「まぁ」と歌いながら、両手の指でそれぞれムードラを作りましょう。同時に、その音が頭頂から流れてL字に額の中心から出ていくのを思い浮かべます。

1. 2分間、声を出して歌います

2. 次の2分間、ささやき声で歌います

3. 次の4分間、心の中で歌います

4. そしてささやき声で2分間、声を出して2分間、合計12分間歌いましょう

エクササイズを終えるには、とても深く息を吸って、両手を頭の上に伸ばし、弧を描くようにゆっくりとおろしながら息を吐きます。




脳全体を活性化


ヨギ・バジャンによるクンダリニ・ヨガの伝統では、キルタン・クリヤが持つ効果にはいくつかのメカニズムがあります。キルタン・クリヤのチャンティングで舌を使うことは、口蓋の84のツボを一定の順序と組み合わせで刺激し、視床下部や松果体、脳そのものに信号を送っていると考えられています。また、アセチルコリンやノルエピネフリン、ドーパミンなど脳の重要な化学物質が増加することで脳のシナプスを若返らせる可能性もあります。


また、指先や唇、舌にある密集した神経末端は、脳の運動野、感覚野での高レベルの表現に関連しています。ですから、音を組み合わせて指先を使うと、脳の特定の部分が活性化します。私たちの最新の発表では、キルタン・クリヤの各面で脳の異なる部分が刺激されていることがわかりました。キルタン・クリヤで思い描くことがどのような効果をもたらすのかが謎でした。今では、この思い浮かべるテクニックで、身体的レベルでもより大きな面においても、脳の後頭葉が実際に活性化していることがわかっています。そしてまた、目的を持つことがアルツハイマー病予防効果を持つことも示されてきているのです。



(出典)www.alzheimersprevention.org

キルタン・クリヤ:ヨガとアルツハイマー予防としてのメディカルメディテーション Vol.1 
Yoga and Medical Meditation As Alzheimer's Prevention Medicine


アルツハイマー病と予防財団(Alzheimer’s Research and Prevention Foundation (ARPF))が発表した白書からの抜粋です。
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アルツハイマー病予防の4つの柱


これまでのところ、アルツハイマー病に効果のある薬を発見するのは困難だと考えられています。そのため、ARPFの予防プログラムにある4つの柱が極めて重要となります。

4つの柱とは以下の4つで、それぞれが認知機能低下のリスクを下げるとされています。

(1)野菜中心の地中海ダイエット
(2)ストレスの管理、特にヨガや瞑想
(3)心身のエクササイズ
(4)精神的な健康


ここでは、「キルタン・クリヤ」という手法に注目していきます。



アルツハイマー病予防の新しい側面


我々のヨガ瞑想は、アルツハイマー病予防として素晴らしく「キルタン・クリヤ」という歌うエクササイズ、シンプルな12分間のヨガ瞑想は以下のような効果を持ちます。

• 記憶障害を逆転させる
• エネルギーレベルを上げる
• 睡眠の質を向上する
• 有益な遺伝子を上方調整する
• 炎症性の遺伝子を下方調整する
• 患者と介護者のストレスを軽減する
• 心理的、精神的な幸福感を向上する
• 脳の構造上重要な部分を活性化する
• 細胞老化を遅らせる若返り酵素であるテロメラーゼを43%増加させる(これまでの記録では最大)
• 副作用がなく費用もかからない




キルタン・クリヤで脳内血流が改善


キルタン・クリヤの正式な研究は2003年に始まりました。
当時、私たちはキルタン・クリヤの脳への影響を調べるため、脳のスキャン研究の準備をしました。


左:実践前、 右:実践後


上図はキルタン・クリヤの前後の脳画像です。左の脳は、容量が小さく上部に凹みがあるのが見えるでしょうか。この凹みは血流不足を意味します。健康な脳の画像とは言えません。ご覧の通り、実践後の画像の脳は左右対称で若々しく、エネルギーや血液が左右対称に流れています(血流増加は、脳内の関係性がより強いことを意味し、新しい脳細胞生産の可能性があります)。これは健康な脳です。


下の画像は、後帯状回(PCG)で、エピソード記憶検索に重要な構造です。PCGはアルツハイマー病が進行するなかで最初に機能低下が起こる場所です。キルタン・クリヤによってPCGへの血流が促されていること、それがリスク低下という議論では非常に重要な要素なのです。





研究によって、脳の改善、脳細胞間の連結の向上、そして新しい脳細胞の成長さえも可能であると示されてきました(神経可塑性、神経細胞形成)。では、キルタン・クリヤを毎日行えば、アルツハイマー病になるリスクは劇的に減らせるのでしょうか?


ヨガや瞑想は、精巧な身体運動や精神的刺激ですので、こうした効果を持つと考えるのは疑いなく無理なことではありません。


また、アルツハイマー病のリスクとその進行の速さの両方に、脳血流減少との関係があるという堅固なエビデンスがあります。






記憶障害を改善


次の研究群は、ペンシルベニア医科大学で行われました。
まずは、コントロールグループと比較し、8週間後の被験者に記憶障害の改善が見られました。この結果は2010年のアルツハイマー病ジャーナルで発表されています。
下のスキャン画像では、劇的な向上が見られます。


プログラム前後における前頭葉の変化
(実践前:左図および上図、実践後:右図および下図)



患者が初めてキルタンクリヤを行った時と比較して、8週間後には前頭葉の矢印部分の活動に大きな増加があり、注意力や集中力などに著しい向上がありました。

他に著しい変化が見られたのが前帯状回(ACG)で、ストレスのバランスをとるのに重要な脳の部分です。

このスキャンで前頭葉の強化が見られた部分は、前頭葉前野皮質(PFC)です。こうした向上は早期の記憶障害、または軽度認知障害(MCI)からアルツハイマー病への進行をくいとめる効果が期待されます。





気分や幸福感を高める


私たちの研究では、キルタン・クリヤの実践をした被験者において、以下のプラスの結果が見られました。

鬱の減少:鬱スケールにおいて65%の被験者に向上が見られた。鬱は認知機能低下のリスク要因の可能性があります。

• また、私たちの公表した研究では、気分やエネルギー、精神的な幸福感の上昇が示されました。

他の瞑想や精神的な幸福感の研究では、大幅なトレーニングと長い瞑想時間が必要としているため、これはとても重要と言えます。私たちの研究では、毎日たった12分間のキルタン・クリヤをするだけでよいからです。





脳や身体、遺伝子にアンチ・エイジングの効果


以上の研究だけでなく、キルタン・クリヤを長期間実践すれば、脳への深いアンチ・エイジング効果があるという研究もあります。



ストレス軽減、テロメラーゼ増加、鬱の軽減


ARPFはまた、UCLAにて認知症の家族の世話でストレスを抱えている39人を対象に、リラクゼーションのテープを使った12週間のキルタン・クリヤの効果において、コントロール・グループとの比較研究を終了しています。この研究の革新的な結果は以下のグラフで見て取れます。





私たちの研究では、キルタン・クリヤは以下の効果があると示されています。

• 記憶力を改善
• 炎症を軽減
• ストレスレベルを下げる
• 心理的、精神的な幸福感が深まる
• 鬱を軽減
• エネルギーを増加
• テロメラーゼを活性化

テロメラーゼの活動を劇的に増加


キルタン・クリヤを実践した被験者でみられたテロメラーゼの43%増加幅は、どの研究と比較しても最大でした。テロメラーゼが短いことは、アルツハイマー病(および寿命の短さ)と関連があります。





炎症性遺伝子を下方制御


キルタン・クリヤの12週間の実践後の被験者において、疾病の原因となる炎症遺伝子の下方制御、炎症誘発性核因子(NF)-kB の活動減少が見られました。慢性の炎症というのは、アルツハイマー病やその他の認知症、また記憶障害のリスク因子である循環器病など主な疾病でよく見られます。

19の健康促進遺伝子を上方調整


この有益な上方調整効果には、免疫グロブリン関係の転写が含まれ、それによって免疫機能が強化され、病気と戦う天然型インターフェロンが活性化されます。

この研究は、ライフスタイルで悪い遺伝子を打ち負かすことが可能だと私たちに伝えています。これは「エピジェネチックス、後成的遺伝学」と呼ばれています。「エピ」とは外部の意味で、ライフスタイルによって「悪い遺伝子」を書き換えることができ、つまりあなたのDNAに囚われているわけでないという事実を指摘しています。ライフスタイルで遺伝的な傾向を阻止することが可能なのです。



キルタン・クリヤによるストレス軽減が非常に重要


研究によれば、認知機能低下は急性・慢性両方のストレスによって引き起こされ、その結果、海馬の脳細胞を死滅するホルモンであるコルチゾールのレベルが上昇します。これまで見てきた通り、キルタン・クリヤはストレスを軽減しコルチゾールレベルを下げます。

認知機能低下においてあまり評価されていない原因のひとつは、「幼少期有害体験」とも言われる幼少期のストレスであり、中年期の記憶障害や不安症、鬱を増加させることがわかってきています。


極めて重要な神経伝達物質や脳内化学物質を補う


シナプスでの神経伝達機能の減少は、アルツハイマー病の特徴です。ヨガや瞑想、キルタン・クリヤは、明らかに神経伝達物質を自然に強化する方法であり、私たちの研究で見られた良い結果の多くで重要な役割を担っています。



睡眠を改善


睡眠障害はアルツハイマー病の危険因子です。キルタン・クリヤで、より深くより良質な眠りに入りやすくなります。





心理的、精神的な健康を高める


キルタン・クリヤは、精神的、心理的に健康な状態を促進し、それによって脳が健康になります。精神的に健康な状態とは、自立、個人の成長、良好な人間関係、人生の目的、などより良い質の生活に関係しています。



目的を明確にする


人生に目的を持つことは、アルツハイマー病予防につながります。瞑想者は、よりはっきりとした目的、そして心理的、精神的な健康という局面を喜んで探します。



精神的な健康が重要なわけ


精神的な健康は、心の平穏を得るための4つの特徴を持っています。

1.忍耐力は、習慣的なヨガや瞑想を根気強く実践することに繋がり、それによって個人の能力を養うことができます。忍耐力を養えば、自身が「流れ」の中にいて自身を世界に委ねることができるようになり、スピードを落としてより人生を楽しむことができます。

2.受容は、自己認知と自己賛美をもたらします。また、寛容さをももたらし、自身や他人の失敗を目にしながらも、そうした失敗の向こう側を見てそのままを受け入れることができます。これが許しにつながって、脳や免疫、細胞機能に毒となる怒りを解き放ちます。また、精神的な気付きをより高い状態へと引き上げます。

3. 哀れみは思いやりをもたらし、それが共感へとつながって、健康的な感情やコミュニケーションを促します。哀れみはまた、明確さや責任感、恐れることなく自身でいる勇気を養い、精神的な成長の次の段階である「身を委ねる」ための道筋となります。

4.身を委ねる:「ストレッチに身を委ねましょう」とヨガの練習で言われます。この場合、身を委ねているストレッチは私たちの魂であり精神です。自身の魂に身を委ねた時、自分への報酬など考えることなく、他者の役に立つため犠牲になれる強さを得ます。これはヨガでは「セーヴァ」といい、真の幸福と静穏をもたらします。静穏は心の平穏と、「それ(神)」はどこにでもあるという普遍の愛の感覚を与えてくれます。これは、脳寿命に究極に重要であり、多くの人が「悟り」と呼ぶものです。精神的な健康は、つまりは、命の最も純粋な局面であり、多くの場合初めて、心の平穏を見つけさせてくれるものなのです。






2025年7月27日日曜日

5元素をコブラのポーズで 
Align With the Five Elements in Cobra Pose


この記事は、トッド・ノリアン氏が築いたアシャヤ・ヨガの視点から見たコブラのポーズです。アシャヤ・ヨガは、実践者の身体の力を目覚めさせるよう、タントラの哲学と瞑想法をアライメントを重視した治癒的ヨガのテクニックに融合させたものです。




多くの偉大なるヨギたちは、悟りとは子どもの目で、全てをまるで初めて見たかのように、見る能力だと述べています。非二元性であるシャイヴァ・シャクタ・タントラの伝統では、アドブータ(「驚き」という意味)は9つのラサ(味、あるいは生命の本質)のひとつとみなされています。ラサは人間の感情をすべて包含していると言われています。
 

驚きを体験する時、心は開いて空のように広大に広がります。晴れた夜空の星々を見上げること以上に私をアドブータの状態にするものはありません。おそらく多くの人が同じことを体験しているでしょうが、それはなぜでしょうか?そのひとつは、星々が美しいからです。そして、この宇宙に存在する全ての起源は星々だからです。元素周期表にある92元素全ては星々で作られています。星が死ぬ時、内側へと崩壊し極限まで熱くなり加圧され、そして爆発して超新星となり、そこでより重い元素が作られます。その後、これらは宇宙へと飛び出して他の元素と結合し、惑星や星雲、様々な星を形作るのです。このように私たちの太陽系と私たちは作られました。地球上で生命に適した条件が整った時、私たちは単細胞となり、やがて水中から歩き出して今日の私たちへと進化しました。まさに「驚き」に満ちた歴史だと思いませんか?


ヨガ哲学によれば私たちは、パンチャ・マハブータスと呼ばれる地、水、火、風、空という偉大なる5つの元素からできています。これらの元素のバランスが内面で整った時、優れた生き方ができると言われています。バランスが崩れると、「収縮している(過度の地)」、「溺れて」感情的に疲れ切っている(過度の水)と感じたり、やる気がない(火の不足)、不安で怯えている(過度の風)、落ち着かない(過度の空)と感じたりします。


タントラヨガは、私たちとは時間と空間に凝縮された宇宙だといいます。それを知るための神の願望そのものの結晶です。命は偉大な意味を持っています。5元素を知ることは私たち地震を知ることです。



アシャヤ・ヨガとは


アシャヤ・ヨガの4つの基本要素は、全てのポーズや動きでのアライメントの設計図を示すためのものです。5元素とは、エネルギー的、質的に以下のように対応しています。


1. 開く — 空

2. 引き寄せる — 地

3. 整える — 水と火

4. 広げる — 風



アサナの練習に5元素を当てはめようとしたことはありますか?ありませんか?では、コブラのポーズの練習に当てはめてみましょう。それぞれの元素が体の動きに対応していて、最適なアライメントをサポートしてくれるでしょう。


• 第1の要素は、肋骨の横を伸ばし、肌を和らげ、胸の後ろの肩甲骨の間を解放することです。


• 身体の動きの第2の要素は、骨に向かって筋肉を引き寄せ、正中線へと引き込み、周囲から中心へと引くことです。


• 第3要素の身体の動きは、相補的な2つの対照運動です。その目標は、対照的な2つのエネルギーのバランスが取れている中心を見つけることです。これによって、最適なアライメントを見つけることができます。


• 第4要素の身体の動きは、中心軸から外へ広げ、体の中心から全方向へと放射状に広げ、エネルギーを中心から周辺へと動かすことです。まずポーズの基礎へと下ろしてから、空に向けて中心を持ち上げます。


要素の概念を説明したところで、以下の練習で直接探ってみましょう。ブジャンガアサナ(コブラのポーズ)のすべての側面に密接に関連しています。




ブジャンガアサナ:コブラのポーズ

ウォームアップ:キャット&カウ


1. 四つ這いになります(硬い床の上では膝にパッドを当てましょう)。両膝は股関節の下に置きます。両手は肩の下で、手首のシワがマットの前端と並行になるよう、手指は太陽光線のように均等に開き、手首の中心は肩の外側と直線上に置きます。


2. 少し時間をとって体を感じます。呼吸を深くして、胸の中心を和らげます。(この姿勢で胸の中心を和らげるとは、肩甲骨の間にある筋肉を和らげることです。背中で最も硬いのは、概して胸椎の真ん中周りの筋肉である胸の裏側です)4箇所の土台、つまり両手と両膝にバランスよく均等に体重をかけましょう。


3. 息を吸い込みながら、坐骨を上に持ち上げて、背中を反らして見上げます。


4. 息を吐き出しながら、尾骨を引き下げて、腹部を背骨に引き込み、胸の中心の方を見ます。


5. 数回繰り返します。動きと呼吸を合わせましょう。滑らかに均等に動きます。このフローを味わいしょう。



空を開く:驚きを感じる


1. 四つ這いからうつ伏せになり、両手は肩の下、額は床に下ろしましょう。右足をできるだけ遠くに伸ばします。そして左足も後ろへ伸ばします。呼吸を感じながらリラックして、肌を和らげましょう(つまり、皮膚が筋肉の上にふわりと掛かるように筋肉をリラックスさせる)。肌のすぐ下にある捉えにくいストレスを解放して、最も大きな臓器である肌への気づきを広げます。生命の神秘を思い起こしてみましょう。


2. 腰から腋の下へと肋骨の脇を伸ばします。プラナ体(5つのコーシャと呼ばれる鞘のうちのひとつ、エネルギー体)をふくらませるのをイメージして、息を胸の裏側とウエストラインに吸い入れます。宇宙全体があなたという形であなたの中にあることを思い出してください。驚きを持って、あなたの存在の果てしない広がりに心を開きましょう。



地を引き寄せる: 安全で安心で安定


1. 息を吸い込んで、脚の筋肉を骨に向かって引き寄せて優しく収縮させます。最愛の人がしっかりと素敵に抱き寄せてくれる時のように、筋肉で骨の周り360度を包みます。筋肉が引き寄せられると、関節の周りが支えられ安定します。これが脳に安全だと信号を送り、脳が反応して、リラックスしくつろげる能力である副交感神経脳が活性になります。逆説的に言えば、アシャヤ・ヨガではリラックスするために引き寄せるのです。


2. すねと踵をぴったりと付けて、つま先が鎌足にならないようまっすぐ後ろに向けます。踵どうしをより近づけて脛に力を入れることで、腰が守られ、コブラのような後屈で椎間板にかかる圧力を和らげてくれます。


3. 正中線(両脚の間から背骨を通って走るエネルギーの線)へと引き込みます。
 

4. 足の指からふくらはぎ、腿に沿って、骨盤の中心へとエネルギーを引き上げます(周辺から中心へ)。すべてのポーズは、地球と同様に、周辺から中心へとエネルギーを引く重力の中心があります。コブラのポーズでは、その核となるのが骨盤です。


5. 徐々に手の指で地面を掴みます。すべての指の腹と付け根で押し下げ、両手でアイソメトリックに(動かさないで)後方へ引きます。両脇を同じ長さで伸ばしたまま、両手でアイソメトリックに引きましょう。



水と火を整える:流れるように燃える


1. 両脚を正中線に引き寄せ続け、腿を内側に(空に向かって内腿を持ち上げながら)回転します。腿を床から離して内に回す際、腰が反ります。鼠蹊部の前部分が凹み、腰が「波型」にアーチができて大腿骨頭が骨盤のソケットに引き戻る様子に注目しましょう。これが水の元素で、ヨガの伝統によれば骨盤に存在します(シュワディシュタナ・チャクラに関連しています)。


2. 腿を後方に引いたまま、尾骨をすくい下げます(この二つの対照的な動きを作ります)。「すくう」とは、しまい込むような動作ですが、力は抜きます。この臀筋の優しい収縮によって、腰のカーブが伸びます。すくうと、下腹部が背骨向かって引かれる様子に注目します。これが火の元素で、揺るぎない献身と考えられており、ヨギとして自分の心に従い、変化の火の中を歩むのに必要となります。この動きで体幹に引き込まれ、力と熱という形のさらなる支えを加えてくれます。
 

この2つの動きが整うと、骨盤が最適な位置に置かれ、腰と仙腸関節の圧迫が解放されます。



広げる:体を伸ばし、より高みを目指す


1. 骨盤の動き全てを保ちながら、骨盤の中心から両足に向けて体を伸ばします。そして、骨盤の中心から上半身へと伸ばします。両手で後方へアイソメトリックに押しつつ肋骨の脇を長く保ちながら、息を吸い込んで頭、肩、胸を床から持ち上げます。前へと広げながら、背骨に沿って体を伸びましょう。高さよりも長さが重要です。というのも長さが背骨の椎骨の間にあるスペースを作るからです。これは風の元素で、広げて伸ばします。エッセンシャルオイルのディフューザーからの香りのように、風の元素は均衡する点を探し、空間全体に均等に広がるのです。


2. 腕の骨頭(肩の最上部)を後方へ下げて、肩甲骨を肋骨の背中側へと引き込みます。肩甲骨の下端を胸の裏の方へ丸めて、さらに胸を持ち上げます。前腕を内側へ、上腕を外側へ回転しましょう。次にその姿勢を保ったまま、胸の中心から外側の全ての方向に少し広げます。肩甲骨をひとつにまとめたまま、肋骨の背中側へと引き込み続けましょう。


3. 背骨全体を首や頭まで長く保ち続けます。首元の横側を後ろへ下げて、頭が後ろへ引枯れている感覚が首の横側から始まっているのを感じましょう。そして口蓋も下げます。口内の上側の4分の1が丸い円盤だとイメージします。その部分を後方へ動かせる、あるいは口の天井が後ろに引いて開けられる引き出しだと想像します。口蓋が後ろへいくと頭も後ろへと動き、頸椎に曲線ができます。それによってスペースが広がって神経の圧迫が解放されるため、椎間板のためになります。口蓋を後方へ、後頭部を持ち上げます。そこから持ちあげることで、首のカーブがながくなり、頸椎の椎間板のスペースがより広がります。背骨の自然な形状に従って、首と頭を上に伸ばしましょう。


4. 息を吐き出しながら、ポーズを終えて床に下ります。






少し時間をとって、コブラの体験を思い出しましょう。より不思議に満ちていることを感じているかに注目します。より広がって整ったと感じる体の部分すべてを観察します。練習前に感じていたかもしれないあらゆる不快感が小さくなっているか、あるいは完全に消えているかにも気づきましょう。


ポーズの中で5元素を体感し均衡がとれた時、空のような広がりを感じ、体の緊張が解かれ始め(地)、閉じ込められた感情が流れ始め(水)、エネルギーは輝き(火)、そしてその前にあった制限を超えて広がり手を伸ばす(風)力が大きくなるのを感じるでしょう。


シャイヴァ・シャクタ・タントラ哲学では、私たちの本質は至福であり喜びです。5元素に寄り添うことができれば、私たちはこの喜びを認識し感じている心に戻れます。最も深い命の不思議を垣間見ることができます。それこそが私たちの中に存在する宇宙すべてなのです。





(出典)https://yogainternational.com/article/view/align-with-the-five-elements-in-cobra-pose/

2025年7月14日月曜日

高齢者のためのヨガ:ヨガで転倒リスクが減少 
Yoga for Seniors: How Practice Can Reduce the Risk of Falling

今回は、医師でありヨガティーチャーである著者が指導者に向けて書いた記事です。
いくつかの研究結果についても書かれていますので、指導者でなくても、こんな効果があるんだ!ヨガって役立つんだ!という風に感じていただければ嬉しいです。

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「外傷病室1に患者、外傷病室1に患者、急行せよ!」私の仕事ではこんな緊急の知らせがいつでも起こります。


救急医として対応する患者は様々ですが、高齢の患者でとても多いのが転倒で怪我をしてくる人です。65歳を過ぎた3分の1以上の人が一年に一回以上転倒しています。


転倒は、筋力や姿勢への意識の低下、薬の副作用、認知力低下、鬱など様々なリスク要因よって起こります。


こうした患者らは、腰や長骨の骨折、脳の負傷による急激な精神状態の変化、皮膚の裂傷、その他命を脅かす怪我などをしてやってきます。


こうした転倒は多くの場合、患者らの体力や体の安定性、可動性、そして全体的な健康状態を維持するための基本的な介入がいくつかあれば防止できたであろうものです。


悲しいことに、骨折や頭の出血は転倒後にしばしば起こる症状の単なる始まりに過ぎません。転倒の結果、体の固定やストレス、転倒による心理的影響などが多くの場合、高齢者に数多くの問題をもたらすことになります。肺炎や創傷感染などの二次感染で治癒が遅れ、脳損傷や身体障害は患者の自立性の多くを失うことにつながります。この全体的な機能低下によって、何度も転倒を繰り返し、続く怪我、生活の質の低下、そして時には死をもたらすこともあります。


私たちはヨガの専門家として、あまりにもよく起こる高齢者の転倒の根本原因のいくつかに取り組むという類稀なポジションにあります。体力やバランスのトレーニングの効果は、もちろん、医学文献の中でも頻繁に言及されています。ヨガに特有の呼吸法やリラクゼーションにこうしたトレーニングを加えれば、身体的強さや安定性、また健康で幸福であるという感覚を与え、生活の質を高める方法を提供することが可能です。
  

特定の症状のある患者を治療する時、同職者たちが見つけた同様の患者に効果的な治療法を知るために最新の医学論文を調べることがしばしば役立っています。論文を吟味することは良いことだと考えてはいますが、研究によって効力や妥当性がとても様々で、医学論文を注意深く読むことに慣れていなければ、お粗末な研究方法で導かれた見せかけの「良い」結果に簡単に迷わされてしまうことになります。医師もヨガの指導者も、患者の治療プランを決める前に医療専門家が信頼する同様のエビデンスを利用して欲しいと思っています。


 

高齢者のためのヨガの効果


高齢者の転倒の防止法についての研究はかなり多く存在します。特にヨガを対象にした研究は比較的数が少なく、ざっと見たところ現段階では研究対象の人数がとても少ないという批判が大きいことがわかりました。それでも、高齢者にヨガを勧めるには、下記の論文がやくだつのではないかと思います。少なくとも、提供しているのはただのヨガクラス以上のものだということに気づいてください。実際に、次の転倒を防止する仲間に加わっているかもしれないのですから!


2013年の Journal of Gerontology (老人病学ジャーナル)掲載の Tiedemann らによる論文では、それまでヨガや太極拳をしたことのない平均年齢68歳「地域在住者(老人ホームなど施設に住んでいない人)」54人に任意のコントロールテストを行いました。対象者は、ポーズを説明した小冊子を受け取ったグループと、12週間週2回ヨガクラスに出席したグループとに分けられました。コントロールグループには教育用小冊子が配布されましたがクラスには参加しませんでした。12週間後の介入グループは、座位から立位への移動時に敏捷性がより上がり、片足のバランスがより良くなり、歩行もより速くより自信に満ちて歩けるようになりました。中心とされたヨガポーズは、タダアサナ(山のポーズ)、ヴィラバドラアサナ(戦士のポーズ)I、ヴィラバドラアサナ(戦士のポーズ)II、ヴィラバドラアサナ(戦士のポーズ)III、アルダチャンドラサナ(半月)、ヴルクシャサナ(木のポーズ)、アドムカシュヴァナサナ(下向きの犬のポーズ)、シャヴァサナ(尸のポーズ)です。


計画においてはややロバストではないものの同様の結果が出た研究は、2014年に Journal of Alternative and Complementary Medicine で発表されたケリー氏らによるもので、平均年齢72歳の地域在住者という同様の被験者の、週2回ハタヨガに参加させ12週間後の効果を分析しました。この研究は任意抽出でななく(従って前記のものよりはロバストではない)被験者グループの『ビフォアフター」効果を観察した事前事後テストスタイルの研究でした。ヨガポーズは、ウォームアップの肩回し、かかと上げ、そしてバッダコナサナ(合蹠のポーズ)です。結果は同様で、可動性、姿勢のコントロール、歩行速度が向上したと述べられています。


他のメタ分析(共通の結果を調べるために一連の同様の研究を評価するという研究)では、高齢者において特にヨガが他の身体活動関連の介入方法に比べ優れているという、より控えめな証拠を示しています。パテル氏らのメタ分析では、1950年から2010年までの研究を調べ、様々な状況における高齢者を対象した関連研究を18見つけ出しました。このメタ分析では、被験者の健康感、有酸素的な健康、体力などがヨガで向上したことが示唆されています。
 

ヨガの指導者の行動がこうした人々の転倒防止に役立っているのかを証明する完璧な研究はないと理解した上で、ヨガが高齢者の体力や安定性、調整力、そして幸福感を達成する助けとなるのではないかという論理的証拠がますます増えてきていると考えています。今まで聞いたことのあるどんな薬よりもいいと思っていますし、間違いなく、防止可能な転倒から起こる怪我や身体障害や死よりは良いと思っています。


この年齢層を対象にし続けて欲しいですし、高齢者に参加可能なヨガクラスを提供することで、高齢者の健康や幸福を向上させられることはとても重要な貢献であると気づいていて欲しいのです。最も意味のある変化をもたらすものは、新しい薬や即効性のある治療法ではなく、小さくても毎日の目的を持った誠意ある行動だと。これがヨガだと。



幸運を。ナマステ、美しきヨギたちよ!

2025年7月7日月曜日

腱膜瘤の予防・痛みを緩和する9つのポーズ Vol.2 
9 Poses to Prevent Bunions & Relieve Bunion Pain

前回の続きです。

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手術は必要?


特に前回やったような親指エクササイズをしている間、親指を持ち上げて伸ばす時にどんなふうに動くかを観察しましょう。左右の親指を持ち上げた時、おそらくそれぞれが反対の方向に向いているでしょう。親指を前に伸ばして下ろすと、母指内転筋が活性化してもっと並行になるはずです。左右の親指がどうしても離れる場合は、ゴムバンドで繋ぎ合わせて、持ち上げて伸ばします。腱膜瘤が痛まないよう親指の付け根の間に何か挟むと良いでしょう。


腱膜瘤が進行し、足指の屈筋と伸展筋がもはや交差するほど脇に引っ張られている場合は、エクササイズでゴムバンドを使っても、親指の反りが直せないこともあります。その結果、親指を持ち上げた時、こうした筋肉は弓矢を引くようにより横の方へとただ引かれるだけであまり効果がありません。その場合、特に足の筋肉を効果的にストレッチしたり働かせようとすると痛みが強くなる時は、手術が必要なのかもしれません。




立位ポーズを再認識する


足指エクササイズは、ハタヨガの立位ポーズの練習では特に効果的で重要です。ヴィラバドラサナ(戦士のポーズ)1、2やパールシュヴァコナサナ(体側を伸ばすポーズ)など前足の膝を曲げて足首をまっすぐにするアサナでは、効果的な動きをするとてもよい機会となります。





戦士のポーズのように前脚の膝を曲げた立位ポーズでは、前脚のすねを垂直に保ち(膝関節がかかとを通り越えない)、重心をかかとの中心に置いて、足の親指と小指をむかって伸ばしながら、引き上げて広げる練習をします。


これによって、足の内外の端でアーチが強化されて、足指が整います。膝をゆっくりと曲げたり伸ばしたりしながらこれを練習していると、足のこの動きによって膝が正しい軌道を通り、特に小指側に維持していると股関節の緊張が解放されるでしょう。


トリコナサナ(三角形のポーズ)やパールシュヴォッタナサナ(三角前屈)の前足など足首を伸展した立位ポーズでもまた、足指の付け根を地面に着けたまま親指に向かってより強く伸ばす必要があるため、親指を伸ばして床につけることが試されます。このポーズは、腱膜瘤への圧迫がかなり少なくなるので痛みが小さく、膝を曲げたポーズよりもかなり快適でしょう。そして、膝関節をロック(過伸展)しない限り、力強い動きが膝関節や足の親指の筋肉にも大きな効果があります。膝は小さな「マイクロベンド」を保ちながら、足を働かせましょう。





アルダ・チャンドラサナ(半月のポーズ)など片足でバランスを取るポーズは、最も難しいポーズです。腱膜瘤のある人にとって特別に難しいのは、膝をロックすることと土踏まずが潰れている傾向があるためです。腱膜瘤によって足の骨が安定しないため、足はとても不安定でぐらつき、ポーズを安定させようと膝をロックしてしまうことが多く必要な足の働きを妨げます。この癖に負けずに、膝関節を少しだけ曲げて、かかとに体重を移すために足指を持ち上げ続けるよう練習しましょう。これが土踏まずのアーチを強化して膝のロックを防ぎ、バランスを取るためにできるだけ足指を広げることにつながります。足の親指と小指を伸ばすエクササイズは特に難しいですが効果的です。片足でバランスを取る時、足をどう使うかが膝の健康にとても深く関わっているということに気づくでしょう。



ヨガポーズでの足の働かせ方


アドムカ・シュヴァアサナ(下向きの犬のポーズ)では、足指を指先に向かって伸ばしながらアーチを強く引き上げなければなりません。いつもの通り、膝がロックしないよう小さく曲げ続け、地面からかかとを浮かせておきます。これによって、ふくらはぎやハムストリングスをストレッチしたまま、足を強化することができます。





ウルドヴァムカ・シュヴァナアサナ(上向きの犬のポーズ)やブジャンガサナ(コブラのポーズ)などでは、特に足の親指に沿って後方へ伸ばし(鎌足にならないで、足の内側ラインを並行に)、床に向かって小指を下ろしをおろすことで、足首の前がストレッチされ足指の伸展筋が強化されます。足指の爪全てを(特に親指と小指)まっすぐそして軽く床に押し下げ足を側からせましょう。


セツバンダアサナ(橋のポーズ)は、腿と足を並行に保ったまま土踏まずを強く働かせるポーズです。ここに書かれた通り足を働かせた場合、ときおり生徒に指示されるように足を内側に回転させる必要はありません。土踏まずと足指を働かせながら足の内側を地面にしっかりつけていれば、足が外側に離れていくことはないからです。


最後に忘れてはいけないのは、座位の前屈が、腱膜瘤に体重がかかることで感じる痛みなしに足を働かせるよい機会であることです。ヨガブロックを足の裏につけてブロックのまわりにストラップをかけ、床に立っているように足が動かせるようにします。足指の付け根(特に親指)をブロックに押し付け、足指を働かせている間もブロックを並行に保ちます。









最後に、ハタヨガの基本的なポーズは、痛い腱膜瘤の進行を効果的に予防したり、遅くしたり、止めたりすることのできる、足の完全なワークアウトの機会を与えてくれます。それにはちょっとした努力や気づきが必要ですが、腱膜瘤の兆候が(まだ)現れていなくても、その練習には効果があります。ちょっとしたウォームアップと土踏まずと愛指のワークアウトによって、ヨガは足の健康と幸せを与えてくれるのです。







(出典)https://yogainternational.com/article/view/9-poses-to-prevent-bunions-relieve-bunion-pain/



2025年7月4日金曜日

腱膜瘤の予防・痛みを緩和する9つのポーズ Vol.1 
9 Poses to Prevent Bunions & Relieve Bunion Pain


腱膜瘤はよくみられる足の症状で、放置すると変形して痛みが生じることもあります。医療科学では、腱膜瘤を進行性の病気だと見做し、主な原因は遺伝にあるとしています。しかし、より大きな視点から見れば、窮屈な靴であったり、ストレッチやマッサージの不足、あるいは足を正しく使えていないことが原因です。幸いなことに、足のウォームアップやエクササイズ、適したヨガポーズなどにより、遺伝的要素で起こる腱膜瘤の進行を遅らせたり、放置したり合わない靴による腱膜瘤の形成を止めたり、その痛みの緩和を助けることは可能です。腱膜瘤が無い場合であっても、こうしのエクササイズにより痛みや疲労を減少させ、足を強く健康的に保つことができます。



腱膜瘤は どのように形成されるか


腱膜瘤(突き出た骨質のこぶ)の原因の多くは、母指球にある骨がジグザグになることです。親指が他の指の方向へ曲がる一方で、中足骨(足首と足指をつなぐ骨)が外へ向いて不快感が起こったり、中足骨頭が石灰化することもあります。これは多くの場合、足の土踏まずの崩れとともに起こります。それぞれの問題が他の問題をより増幅させます。土踏まずの崩れは腱膜瘤の形成を早めますし、腱膜瘤そのものも土踏まずを潰して中足骨をより変形させます。腱膜瘤は、歩くことでかかる圧迫による痛みや炎症を起こしたりと、より深刻な問題となりえます。


骨の形や足をひとつにまとめている靭帯の強さを決めるのは遺伝子であるため、原因のひとつは遺伝です。足の親指の中足骨頭が異常に丸まっていたり出っ張っていると、指がより内側に向きやすくなります。中足骨の反対側にはくさび状骨があり、中足骨が外側へ動く原因になるような形で付いていることもあります。


腱膜瘤が原因で、バランスポーズで足が不安定になったりぐらぐらしたりします。多くの場合、ポーズを安定させるために膝がロックされ、足の働きを阻害します。


しかし、遺伝だけが原因ではありません。きつい靴をはくと、足を外に回転させて歩く癖と相まって、親指の中足骨に圧迫がかかり土踏まずの靭帯が弱まる一方で、歩くたびに横へ押しやられた親指自体が内に向きます。その結果、足裏の内転筋(特に母指内転筋)が硬くなって親指が他の指の方へ引かれ、指がひとつにぶつかり合ってしまいます。引く力に抵抗して親指がまっすぐになるよう作られた母趾外転筋は弱くなって過伸展し、腱膜瘤がほとんど抑制されることなく進行していきます。


このように腱膜瘤(そして腱膜瘤形成を促す筋肉のアンバランス)で、親指が歪み足の構造が弱まって私たちを悩ませることになります。足の親指の力を支える役目を果たしている筋肉に注目し、親指をもとの場所に戻す方法を見ていきましょう。



土踏まずを働かせる


長母趾伸筋        前脛骨筋



前脛骨筋は、足の親指から土踏まずの前部分を通っています。この筋肉に運動をさせる方法のひとつは、足指をギュッと丸めて足でナプキンを摘み上げることです。ナプキンを持ち上げるために足首が屈曲し足が反転(横に返る)するとともに、親指の付け根にある筋肉が働くのを感じるでしょう。それが、前脛骨筋です。


また、親指の付け根を床につけたまま母指球の後ろから土踏まずを意図的に引き上げ、親指を持ち上げることで、前脛骨筋を働かせることができます。


土踏まずの引き上げは、足を反転させずに母趾急を床につけたまま、前脛骨筋からもたらされます。親指をもとに戻す筋肉を強化するためには、この筋肉を働かせたまま、母趾球を下ろしつづける必要があります。これをやり遂げるには、以下のエクササイズが役立つでしょう。



フットマッサージで自分にご褒美を


足裏の硬さは、腱膜瘤形成の一因であり足指がつる原因です。このようにくっついたままでは、土踏まずを強化したり足指を働かせたりするのは、不可能ではないにしても困難です。ですから、まずは内転筋を解くフット・マッサージから始めるべきです。







これらの筋肉を解くには、足指の付け根を手の親指を使ったり、テニスボールやゴルフボールを転がしましょう。足親指の付け根から始め、土踏まずの内側までマッサージします。足の小指側に沿って、そして足裏で硬さを感じる場所を全てマッサージしましょう。


次に、足指の可動性を取り戻すため、指の間にスペースを作る必要があります。足裏を手のひらで覆って、手の指を足指の間にできるだけ差し込んで、「ヨガの握手」で前後に動かし足指を緩めます。




これに慣れたら、上向きの握手(足指と手指を足裏から上向きに組ませる)と下向きの握手(足指と手指を足裏から下向きに組ませる)を交互に行なって、ストレッチの効果を高めましょう。


ウォームアップが終わったら、足指一本ずつ掴みかかとから優しく引き離します。足指をポキポキ言わせることが目的ではありませんが、ポキポキ音は解放されたことを示します。




鍵となる筋肉の強化


次に、床か椅子の上に両足を並行に膝を曲げて座ります。足指の付け根と内かかとを地面に付けたまま、すべての足指を持ち上げます。親指の付け根からだけでなく、かかとの前にある足裏の中心からも土踏まずがどの程度持ち上げられるかを見てみましょう。


もちろん、ただ足指を持ち上げること自体が大変だと気づくかもしれません。筋膜の覆いは、足首の前からすねの前へと上へ延びていて、足指をすねの方へ伸展する筋肉のための滑車のように働きます。足首が硬いと、筋膜がこうした伸展筋の動きを制限し、足指を持ち上げることを難しくしています。ヴァジュラサナ(稲妻のポーズ・正座)やヴィラーサナ(英雄のポーズ・くずした正座)などで、足首の前にあるこの筋膜をストレッチすることができ、伸展筋が解放され足指の可動性を取り戻すことができます。



足指が動くようになったら、こちらを試しましょう。全ての足指を持ち上げてから、小指を挙げたまま親指だけ伸ばして床に下ろします。この動きが最初のトレーニングとなり、腱膜瘤に対抗する鍵となります。そのためには・・・

  • 土踏まずを持ち上げ続けましょう。足の内側にある筋肉群を強化するのに必要な抵抗が得られます。親指の付け根と内かかとを床に下ろして土踏まずを強く保ち、足がめくれないようにしましょう。

  • 親指を前に伸ばしてボタンを押し下げるかのように、親指を伸ばしましょう。これは、つま先を丸めてただ床を押すのとは全く違います。何度か親指を持ち上げたり伸ばしたりすると、内かかとから土踏まずを通って親指に繋がる筋肉(母趾外転筋)が疲れ始めるのを感じるでしょう。そこが、対象となる筋肉です。




足全体を強化するためには、全ての足指を挙げてから、小指だけを伸ばして床に下ろします。


これによって、小指からすねの外そして腿の外側に沿って走る筋肉群に効き、足の小指側のアライメントを強化し、健康的な土踏まずを築き安定させることができます。小指側の足や足首が弱く硬いと、多くの場合、膝の過伸展、足の回内、土踏まずの崩れを伴います。足首やすねの外側をこうして強化することで、特に扁平足の人は、膝のために役立ちます。


最後のエクササイズとして、足指の中3本を持ち上げて広げ、親指と小指のみを伸ばして床に下ろします。




これによって、足の前にある横向きのアーチが作られ、また足の内外端が強く働き、内側と外側のアーチのバランスが取れて力強くなります。


この最後のエクササイズは、足の四隅(親指の付け根、小指の付け根、内かかと、外かかと)がしっかり元の位置に戻っていくように感じるかもしれません。かかとの骨と足指が四隅で正しく並んでいると、まるで四輪が正しく並んだ自動車を運転するように、歩くなど全身する動きにおいて足は正しく機能するのです。


こうした足指エクササイズは、ヨガポーズの多くに取り入れることができ、全身のアライメントをより良くし、足のアーチの弾性と土台の強さの両方を高めることができ、また膝や股関節にもさらに効果をもたらします。腱膜瘤のある人は、こうしたエクササイズによって進行を遅らせたり、止めることも可能です。腱膜瘤がなくても、これらの動きによって、足から膝、股関節へと全てをしっかりと使うことができ、関節の健康を高めることができます。


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2025年6月10日火曜日

関節に焦点を当てた関節炎のためのヨガ・シーケンス Vol.2
A Joint-Focused Yoga Sequence for Arthritis


前回からの続きです。
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7. 膝を胸につけるポーズ(アパナサナ)と膝の回転



このポーズは、腰まわりを優しくストレッチし股関節を動かしやすくします。


青向きで横たわり、両膝を胸に引き込んで数呼吸します。




それから、手を左右の膝に置き手を使ってお互いの膝が離れるように回しながら数呼吸します。そして、両膝が近づくように回しながら数呼吸しましょう。






8. ハムストリングスのストレッチ(スプタ・パダングシュタサナ)と
ヨガストラップを使った脚の回転


このポーズは、ハムストリングスやふくらはぎだけでなく、股関節内外転筋をストレッチし、足首や膝、腰の柔軟性を高めます。


もし床に置いた脚を伸ばすと腰に負担がかかるようなら、足の裏を床において脚を曲げたままにしておきましょう。


仰向けで横たわったまま、両脚を前に伸ばします。右膝を胸に引き込み、右足の裏の周り(土踏まずの先の方、指の付け根のあたり)にストラップをかけます。ストラップの端をそれぞれの手で持ち、つま先が右肩の方向に向くよう、右脚をかかとから天井に向けて伸ばします。何度か右脚を曲げ伸ばししてから、できるだけまっすぐ延ばして数呼吸しましょう。





それから、ストラップを右手で持ち、右脚を一方向へ回します。そして数呼吸反対に回して、もう一方の脚でも行います。






9. 橋のポーズ(セツバンダ・サルヴァンガサナ)





橋のポーズでは、ハムストリングスと臀筋を使いながら大腿四頭筋をストレッチし、股関節と膝の可動性を高めます。また、まっすぐな姿勢を保つ脊柱起立筋を強化します。全体重が股関節や膝を通して両足にかかる立位のポーズとは異なり、橋のポーズでは、体重のいくらかを支えるために肩を使います。


仰向けに横たわって両膝を曲げ、足の裏を床に向けてかかとを膝の真下か少し前に置きます。両肘を肋骨の横で直角に曲げて、前腕は床から垂直、手のひらを内に向けて指を天井の方へ向けておきましょう。息を吸い込みながら、両足(床につけたまま)、上腕、肩の背中側で下方へ押し、腰と胸を持ち上げます。息を吐き出しながら、背中をリラックスして床に下ろしましょう。橋のポーズを、さらに1、2回繰り返します。



10. 膝のワイパーと合蹠のポーズ(スプタ・バッダコナサナ)



これらのポーズは、次の座位瞑想の準備のため、腰を緩め股関節を動きやすくするのに役立ちます。


床に仰向けに横たわり、両腕を横に開いて、膝は曲げて両足を肩幅程度に開きます。ここで息を吸い込んでから、息を吐き出しながら、右足の外側と左足の内側を転がして両膝を右へと下ろします。


息を吸い込みながら、両膝を真ん中に戻します。息を吐き出しながら、膝を左に下ろします。息を吸って真ん中に戻し、この動きをさらに何度か繰り返しましょう。





そして、両足を閉じます。息を吸い込みながら、両膝を心地の良い範囲で開いて、足の裏どうしを付けます。息を吐き出しながら、膝を元通り合わせて、もう一度足の裏をマットに着けます。この動きを数回繰り返します。それから、膝を開いて足の裏どうしを付けたまま数呼吸の間時間をとりましょう。






11. 座位の瞑想




マインドフルネス瞑想は、物事に対処する技術を高め、リウマチ性関節炎に時として伴う鬱症状を改善すると考えられています。ここにご紹介する変更を加えた安楽座でより心地よく座れるかもしれませんが、椅子に座ったり横たわる方がより心地良いと感じる人もいるでしょう。


足首や膝、股関節にかかる重みを減らすため、折り畳んで壁ぎわに水平に置いた数枚のブランケット(あるいはボルスター)に座ります。ブランケットは高く重ねて膝が骨盤の前の骨よりも下になるようにし、壁が体を支えられる程度の距離に座ります。骨盤の後ろ側、背中全体、そして頭の後ろが全てリラックスできて心地よく壁にもたれられる位置です。(もし後頭部が壁に届かなければ、後ろに下げるのは心地よくできる範囲にします。)両手を膝の上に、手のひらを上あるいは下に向けて(または好きなムードラで)置きます。


目を閉じるかそっと視線を落とし、今の瞬間へ意識を向けて、まずは今の瞬間の周囲のことに気づきます。周りの音、時刻、温度など。それから、今の瞬間の内側へと意識を引き込みます。呼吸の動き、思考や感情の揺らぎなど。心地が悪い部分に気付き、それでも体の多くの部分が心地よいことにも気付きます。このリラックスしたマインドフルネスを数分間続けます。練習を重ねるごとに、徐々に瞑想の時間を長くしてみましょう。



12. 「スノー・エンジェル(雪の上に人型を作る)」





瞑想の静けさの後の気持ち良いこの動きは、肩と股関節の内外転の筋肉を強化します。手足を床でスライドさせて行うこともできますが、ここでは摩擦を減らすためにブランケットを使っています。このポーズで頭を床に下ろしたり次の仰向けのポーズになった時に、首の後ろ側が心地悪いほど詰まって顎が天井に持ち上がる場合は、頭の下にも折り畳んだブランケットをおきましょう。


マットの上で仰向けで横たわり、両脚を閉じてかかとを折り畳んだブランケットの上へ、両腕は手のひらを上にして(それぞれの手の甲の下に折り畳んだブランケットを置いて)体のわきに置いておきます。

息を吸い込みながら、まるで新雪に人型をつけるように動きます。両脚はつま先を上に向けたまま床で大きく開き、両腕は手のひらを上に向けたまま横に開いたり耳の横まで上げたりします。呼吸とともに動かしながら、これをゆっくりと数呼吸行います。






13. シャヴァアサナ






ブランケットに両手やかかとを預けたままシャヴァサナでリラックスし、途切れることなく数分間、深く楽な呼吸を続けます。リラックスしている間、暖かさや安らぎが全身を満たすのをイメージしましょう。


起き上がって動き始めてからも、今この瞬間に留まり感じた感覚の名残りに寄り添ってみましょう。












2025年6月4日水曜日

関節に焦点を当てた関節炎のためのヨガ・シーケンス Vol.1
A Joint-Focused Yoga Sequence for Arthritis


注: 以下はヨガ実践者や指導者のための一般的な助言を与えることを目的としています。医療従事者による個人への助言の代替ではなく、ヨガの指導者はその範囲にとどまるべきです。つまり、生徒に対して診断や治療、医学的な助言をしようとはしないでください。



ヨガにおいて関節炎と向き合う場合の最優先事項は、そうした関節にかかる負担を減らすことです。ただ動きを減らすというだけではなく、もっと複雑なことです。



The Back Pain Secret: The Real Cause of Women’s Back Pain and How to Treat It(腰痛の秘密:女性の腰痛の本当の原因と対処法)」の著者である理学療法士のビル・リーフ氏によれば、関節の動きが減れば減るほど、「時間とともに」維持できる可動域は狭くなるのです。「関節周りの筋肉が短くなって、動きを制限」するようになります。


関節リウマチや変形性関節炎の患者の多くは、可動域を維持し痛みを軽減するのに、罹患した関節をストレッチしたり強化したりすることで恩恵を受けることができます。「一般的に変形性関節炎は股関節や膝関節に現れます、関節リウマチは手足のより小さな関節に影響を与えることが多いです」関節炎はまた特に腰など背中にも現れることもあります」とリーフ氏は付け加えます。


以下のシーケンスは関節炎に優しく穏やかで、床から立ち上がったり座ったりの動き(膝に関節炎のある人には不可能あるいは不快である可能性がある)を最小にし、両手への荷重を無くし(関節炎は手や手首に現れることが多い)、バランスを取るためのサポートを使用(膝や股関節の関節炎の人にとってバランスを取ることは困難)しています。荷重を減らす、つまり足や膝、股関節へのストレスを緩和するために、壁や補助具を使うことをお勧めします。


リーフ氏が関節炎の人に推奨するのは、このシーケンスを週に数回行うこと、罹患している関節に最も効果的なポーズを書き留めて毎日練習することです。


「全てのポーズは不快を軽減するためであり、増加させてはいけません。痛みではなく、穏やかな伸びを感じる点までストレッチしてください。 もし不快感が増すようなら、ルーチンを控えましょう」


関節炎の方はまた、主治医医に十分な検査をしてもらい、信頼できる診断、また個々人にあった治療の提言を得ましょう。それには、ヨガの練習をする際に圧迫を制限できるよう関節を固定することも含まれるかもしれません。



🟠 練習法


始める前に、入浴や温かいシャワーを浴びる、サウナやスチームバスに入る、温湿布をする、歩いたりサイクリングマシンに乗るなどしてウォーミングアップをしましょう。シーケンス前にそうすることで、より動きやすくなります。壁、ヨガストラップ、ブランケットやバスタオル4、5枚が必要です。


もし重ねたブランケットに立ったり座ったりするのが不快であれば、椅子を使いましょう。最初の5ポーズはまっすぐ座ったままでも練習できます。椅子のポーズ(5番)では、上半身を前に倒して両腕を上へ伸ばし、少しだけ椅子の端から腰を持ち上げましょう。瞑想(11番)でも、よければ椅子に座って行うこともできます。



1. 山のポーズ(タダアサナ)のツイスト




リーフ氏によれば、この優しいツイストは「肩や肘、股関節、膝をゆるめて、関節のスペースを広げます」また、動きをなめらかにするには、「まず視線を動かしてから、胴体、そして体の他の部分を動かすようにしましょう」


足をおおよそ並行に股関節幅に開いた山のポーズで立ち、耳は肩の上に、肩は股関節の上に、股関節は踵の上にと並べます。腕は、手のひらを内側に向けて体のわきに置いておきます。つま先と膝の向きを揃えたまま、胴体から右へ、そして左へと捻りましょう。腕は揺れるままにしておきます。この動きを、深く優しい呼吸を数回分繰り返します。



2. 肩の回転




この動きは、三角筋や胸筋をストレッチすることで肩関節を自由に動かすのに役立ちます。


山のポーズのまま、両腕を肩の高さ位で開きます。両手は緩く握って、親指側を上に向け、親指をリラックスさせます(あるいは、快適で行えるほどの柔軟性があるなら、親指を後ろ向きに回して肩の外旋を深めます)。


体の他の部分を安定させたまま、深く数呼吸しながら、ゆっくりと両腕を一方向に動かし大きな円を描きます。そして反対方向へもう数呼吸動かしてから体のわきへと下ろしましょう。



3. 手首の回転




この動きは、手首の屈筋や伸筋などの筋肉を強化することで、手首を自由に動かすのに役立ちます。


山のポーズのまま、両腕を体のわきに下ろし、手をもう一度ゆるく握り、親指をリラックスして前に向けます。両腕を動かさないで、両手首をゆっくりと一方向へ回し2、3回呼吸してから、反対方向へ回しながら数呼吸しましょう。



4. 両手のグーパー





このエクササイズは、手の関節をストレッチし強化するのに役立ちます。


両手でグーを作る時に腕はさまざまな位置になることがあるでしょうが、肩の高さで並行に腕を前に伸ばすと、腕を優しく強化することができます。


山のポーズから、両腕を肩の高さで体の前に持ち上げて、親指側を天井に向けてゆるく握り(親指はリラックスさせて上に乗せる)、手首は自然な向きにしておきます(前腕から手の甲までが直線になるよう)。息を吸って、手首を自然な向きにしたまま両手を開き、指を大きく広げます。息を吐いて、手首はそのままゆっくりと手を握って拳を作ります。この動きを、呼吸とともに数回繰り返してから、腕を体のわきでリラックスさせましょう。



5. 椅子のポーズ(ウトゥカタサナ)と壁際のかかと上げ


このポーズはハムストリングス、四頭筋、臀筋、腓腹筋を強化し、股関節や膝、足首の可動性を促進します。股関節や膝、足にかかる荷重を最小にし、かかとを上げる際のバランスを補助するために壁を使います。


壁から30cmほど離れて立ち、背中と臀部を壁にもたれかけます。(後頭部も壁についていることが理想です。ですが、そうすることで下顎が不快なほど持ち上がるようであれば、下顎を床と並行に、そして首の後ろを長くしたまま、心地よく行えるまで後頭部を壁から離してください)。両手を腰に置きます。膝を曲げて足を前に歩かせながら、腰を壁でスライドさせ、辛いけれど安定させられる程度まで膝を曲げたところで止まります。リーフ氏は「最初な数センチしか曲げられないでしょうが、そのうち四頭筋が強くなると、90度まで曲げられるようになるかもしれません」




より強度を得るには、両腕を頭上に上げます(あるいは心地のよいところまで)。そのまま数呼吸します。





それからまっすぐ立って、壁にもたれて1、2呼吸のあいだ休みます。


壁を使って椅子のポーズに戻ります。今度は、ふくらはぎを強化するため、膝を曲げたまま両かかとを持ち上げられるか試してみましょう。




ひと呼吸ごとに両踵を持ち上げるところから始め、そのあと徐々に数呼吸へと延ばしていきましょう。


かかとをおろして、両脚への荷重を減らすため、壁に背中を滑らせながら立ちあがります。




6. 壁際のランナーのストレッチ


これは、ふくらはぎの筋肉(腓腹筋とヒラメ筋)、アキレス腱のストレッチで、足首の可動性を促進します。後ろの膝を曲げたバリエーションでは、ストレッチをヒラメ筋へと繋げます。


壁に向かって立ちます。30cmほど離れて立ち、両手を壁に胸の高さ位で置きます。左足を後ろへ60〜90cm下げます。両足先は壁に向けておきましょう。背骨を伸ばしたまま(股関節から曲がり背中は丸めない)で上体を斜め前に倒し、後方の踵を地面に着けまま、左ふくらはぎの筋肉にストレッチを感じるまで肘を曲げます(ストレッチを感じなければ、左足をもう少し下げます)。そのまま数呼吸します。





今度は、左足の中心と直線に並べたまま左膝を曲げます。左足の指の付け根で根付かせて、左踵を後方へと下げます。このまま数呼吸しましょう。




ポーズから出て、反対側で繰り返します。


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2025年5月8日木曜日

アーユルヴェーダのスーパーフード:ギーの持つ消化や免疫などの効能 
The Ayurvedic Superfood: Ghee Benefits for Digestion, Immunity, and Beyond


アーユルヴェーダの文献には、精製したギーバターは1000以上もの治療的性質を持つと言われてきました。それを受けてインドでスーパーフードと考えられてきたギーは、今や最新の研究に基づいたスーパーフードです。ギーは酪酸の最も豊かな食料源で、牧草で育てられたギーバターには、穀物で育てられたものに比べて健康的な代謝を向上させることで最もよく知られる共役リノール酸(必須脂肪酸であるリノール酸の異性体の混合物)が5倍多く含まれています。



ペンタデカン酸C15とは何か、どのようにギーの健康効果を高めるのか


精製ギーを称賛する理由がまたひとつ新しい研究で示唆されました。ペンタデカン酸C15です。近年、この奇数鎖脂肪酸の健康効果が見つかってきています。主として牛や数種の魚など反芻する動物の腸内で作られるこの脂肪酸は、その量がとても少ないためあまり注意を向けられてきませんでした。この脂肪酸はギーの中にも見つかっています。今日では、ペンタデカン酸の効能について言及する研究が数多く存在し、ほんの少量で長期にわたる健康や長寿の効果が得られることを示唆しています。




ペンタデカン酸C15によるギーの効能


この奇数鎖飽和脂肪酸の効能は、ペンタデカン酸C15という名前の通り、炭素の数(15)にあると考えられています。効能は以下の通りです。

  • 免疫を高める
  • 心臓の健康をサポートする
  • 肝機能をサポートする
  • 健康的な血糖値をサポートする
  • 赤血球を強化する
  • 代謝や脂質をサポートする
  • 細胞の健康的な老化をサポートする


対照的に、偶数鎖飽和脂肪酸のパルミチン酸C16は、炎症や血糖値、心臓の疾患などの原因となります。その鍵は、脂肪酸鎖の中の炭素数にあり、ペンタデカン酸C15はほんの少量でも生物学的に活性しているという事実にあります。


アーユルヴェーダには「微細であればあるほどより力強い」という古いことわざがあります。体内の数え切れない機能を調整している腸内のバクテリアは目に見えません。渡り鳥の移動や季節を司る昼夜のサーカディアンリズムもまた目に見えません。ですから、最も効果のある脂肪酸のひとつがほんの少量で癒しの効果があることは驚くことではないのです。



C15の効能を裏付ける研究


体が老化するプロセスのひとつとして、AMPKと呼ばれる酵素が減少しますが、これが減少するとエネルギーレベルが下がり始めます。AMPKは、私たちの細胞内にあるエネルギーを作るミトコンドリアにグルコースを届けています。ペンタデカン酸は、AMPKを刺激してミトコンドリアへグルコースを提供するのを促し、細胞エネルギーの生産を増加させたりレベルを高めたります。


その他の研究でも、奇数鎖脂肪酸(ペンタデカン酸C15など)の高い人に比べて値が低い人は、死亡率が高く全体的に不健康であることを示されています。健康的な血中の鉄分レベル、血糖、コレステロール、正しい炎症反応に加えて、ミトコンドリアのエネルギー生産の回復や機能的なAMPKプロセスをもサポートします。


また、C15は生物学的に活性である代謝物を作るために体内で使われます。代謝物のひとつがペンタデカノイルカルニチンで、CB1やCB2受容体を活性化するとされますが、気分や睡眠、健康的な免疫反応、痛みのレベルなどを調整します。研究では、このC15由来の代謝物はまた、体内のストレス軽減受容体を活性化することでストレスを和らげることが示されています。また、この代謝物にはヒスタミン受容体を抑制する能力があり、季節性の刺激物への(アレルギー)反応が健康的であるようサポートします。



ギー・バターは健康に役立つ?






最後に、C15と魚油(EPA)を比較した研究では、C15の方が安全であり、より広い効果もあることがわかりました。また、かなり少ない量でも効果が見られました。気分の栄養によるサポート、不健康な細胞や望ましくないバクテリアの増殖防止においては、C15が魚油と同様の効果があることが研究者らによって発見されています。




C15を食事に取り入れる方法は?


全ての無加工の乳製品には、ペンタデカン酸C15がほんの少量含まれていますが、牛乳の脂肪酸を凝縮し乳糖(ラクトース)を全て除去しているのは、牧草で育てたオーガニックの牛乳をゆっくりと熱して作ったギーバターなのです。この脂肪酸の凝縮プロセスによって、ギーのペンタデカン酸C15の量は、ほんの少量からより癒す力があるレベルまでに変化しています。


ギーの作り方

無塩バター450g

バターを中火にかける。バターが溶けてから12分間ほど火にかけ続ける。バターが煮えて表面に泡が出てきます。kの泡に薬用効果が含まれています。火を弱火にしてギーが黄金色になるのを待つ。ギーに水を一滴垂らしてみて、弾ける音がしたら出来上がりです。火からおろして冷ます。濾し器でこして室温で保存する。




超健康のための超油脂:ギーの効果を取り入れる


牧草で育てた牛から搾った牛乳で作ったオーガニック・ギーの力強い性質全てを考えてみれば、なぜアーユルヴェーダの文献がこれが最も癒しの効果のある食品だとあがめる理由がより理解できるようになるでしょう。





(出典) https://yogainternational.com/article/view/the-ayurvedic-superfood-ghee-benefits-for-digestion/