さて、ハムストリングスのためのヨガ、後半です。
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4. 大臀筋とハムストリングスを鍛える
大臀筋とハムストリングスが一緒に働いて、股関節伸展をさせることを思い出しましょう。毎日何時間も座って股関節を屈曲させる副作用のひとつに、慢性的に大臀筋が伸びハムストリングスが短くなるということがあります。
筋肉は、容易に収縮し弛緩できる時により効果的に働きます。ある位置で動かなくなるとこれを妨げるのです。そうすると筋肉はほとんど「怠けた」状態になり、働かせるのがより困難になって働かせようとしてもうまく働かなくなります。短くなる位置に止まるだけでなく、ハムストリングスは「怠けた」大臀筋の代わりに縮むことが多いです。この重労働に応えようとして、ハムストリングスが硬く緊張して炎症することがしばしば起こります。当然の反応として、私たちはハムストリングスをストレッチ(ヨガでよく行いますね)しますが、炎症した筋肉をストレッチするともっと緊張してしまうことがあることに気づく人も多いでしょう。その一方で、大臀筋とハムストリングスを鍛えて、同じ場所に長時間いるために起こった緊張や炎症を和らげることで、それらがより効果的に働くことを促進できるかもしれません。
理論的には、脚を伸展させたり(例えばダウンドッグから片脚を上げるなど)股関節の屈曲から伸展に移る(前屈やランジから立ち上がるときなど)たびに、臀筋やハムストリングスが使われます。しかし練習では、体は弱い箇所を補うことが得意で、代わりに脊柱起立筋や股関節外旋筋(梨状筋、双子筋、閉鎖筋)などより強い筋肉を使いがちです。ですから、ブリッジ・スライドのようなエクササイズでは大臀筋やハムストリングスを特定することに価値があるのです。
試してみよう: 滑らかな堅い床の上でブランケットかタオルを手が届く場所に置いておきます。両ひざを曲げて仰向けで横たわり、右足をブランケットの上に左足は床の上に置いておきましょう。両足と両ひざは骨盤幅にし、両かかとは坐骨にかなり近いところまで近づけておきます。両足を踏ん張ってお尻と腰椎を持ち上げて、膝から肩まで体がまっすぐになるようにします。必要なら、足首の真上に膝が来るように調整しましょう。
腰を上げ続けるのに大臀筋を使うことになります。下腹部をすくって尾骨を膝の方に伸ばすと背筋を使いそうになるのを防ぐことになり、両膝を外に開かないで骨盤幅にしておくと股関節の外旋筋を使うのを防げます。
右足のかかとに体重を移しましょう。右脚が伸びきるまでかかとを滑らせ、そして右のハムストリングスを使ってゆっくりと右かかとを右膝の下まで引き戻しましょう。5-10回繰り返してから、ゆっくりと腰を床に下ろし反対の脚に移ります。
このエクササイズが簡単に感じるようなら、両足をブランケットにのせて同時に動かしましょう。
このエクササイズを毎日か一日置きに最低1ヶ月繰り返すと、臀筋とハムストリングスの自然な強さのいくらかを取り戻すことができるはずです。
5. 股関節屈筋と四頭筋を解放する
体の前面にある股関節屈筋と四頭筋は、体の後ろにある大臀筋とハムストリングスの拮抗筋だということを思い出しましょう。四頭筋は通常ハムストリングスよりも強いですが、ヨガには四頭筋強化(平均的なクラスで何回戦士のポーズや椅子のポーズをやるか考えてみて)や、ハムストリングスのストレッチ(ウッターナサナとダウンドッグで始まってどんどん続きます)がたくさんありますが、その逆はほとんどないのです。そのうえ何時間も座っていると、もっとバランスを崩して前面の筋肉が短く硬くなり後面の筋肉が弱くなっていくことに気づくでしょう。時間が経つにつれ、このバランスの崩れは骨盤を前に引きハムストリングスをより緊張させるのです。
大臀筋とハムストリングスのストレッチをよく行うことが均衡の片方に働き、股関節屈筋と四頭筋を定期的に解放することがその反対側に働きます。頑固な股関節屈筋と四頭筋の緊張を優しく解きながら、より長時間リラックスできるポーズはとてもよいことです。私のお気に入りは陰ヨガのハーフ・サドル・ポーズです。
試してみよう: 座ります。左に体重をかけて右膝を曲げ、右かかとを右のお尻の外側近くに引きましょう。つま先を伸ばして足の甲を床に下ろしましょう。快適に感じるために必要ならば小さなタオルか畳んだマットを引きましょう。両手にもたれ、腰を少し浮かせて仙骨を両ひざ裏の方向に伸ばします。この少しの骨盤後傾が全ての四頭筋群や腰筋を伸ばすのに必要なのです。すでに右の股関節や腿の前にストレッチを感じていたら、左脚に快適なポジションを取りながら、そこにしばらく快適に止まりましょう。
そうでなければ、ボルスター、重ねたブランケットやクッションなどの上、あるいは床の上か、快適に感いじれるところで横たわりましょう。もし右膝に圧迫を感じていたら、左腰にもっと体重をうつしましょう。もし腰に少しでも圧迫を感じたら、もっと骨盤を後傾しましょう(そうするために半分サイズのブロックか、きつく畳んだブランケットの上に股関節をのせる必要があるかもしれません)。
左脚は最も快適なところにおいておきましょう。曲げた左膝を外に開くと(上図)右腿のストレッチが緩み、左足を床に押し付けて膝を天井に向けると(下図)ストレッチが深まります。
理想的な場所がみつかったら、そのままスムーズに呼吸して3分以上止まりましょう。準備がでいたら、ゆっくりと左側に転がって左脚を伸ばし、横向きか仰向きで横たわって数回優しい呼吸し感覚を感じたあと、反対側に移りましょう。このストレッチを週に2-3回行って四頭筋とハムストリングスのバランスをよくしましょう。
6. ハムストリングスとふくらはぎの筋肉バランスを整える
解剖学的な広い視点に戻ると、ハムストリングスの股関節伸展における協力筋は大臀筋で、拮抗筋は股関節屈筋と四頭筋でした。ハムストリングスの健康を考えるなら、ハムストリングスを膝屈曲で補助する腓腹筋もチェックするのは理にかなっているでしょう。
この表面にあるふくらはぎの筋肉の2頭は大腿骨の両サイドに着いており、ふくらはぎを通って(ふくらはぎ深部の筋肉、ヒラメ筋に沿って)、アキレス腱になりかかとへと入ります。膝を曲げて足をそらす(足先を脛の前面に向かって動かす)ことで、この筋肉を伸ばすことができます。ですから、腓腹筋の緊張はダウンドッグでかかとが浮いてしまう理由のひとつになるのです。聞き覚えがあるなら、あなたの腓腹筋は、膝屈筋の自然な関係性を変えてしまうほど堅くて、ふくらはぎのストレッチに時間を割く方がいいのかもしれません。。
試してみよう: 巻いたブランケットか巻いたマットを壁に平行に、腕の長さくらい離して置きます。片手か両手を壁に置いて支えにし、巻いたプロップスの上に足指の付け根で立って、かかとが床に向かってゆっくりと重力で降りるようにしましょう。両脚はまっすぐに保ち腓腹筋のストレッチに焦点を当てましょう(膝を曲げるとヒラメ筋に効きます)。
もしこれが簡単に感じたら、同じようにかかとが降りていくよう、ダウンドッグやウォリアーIの後ろの足で行ってみましょう。最低3-5回ゆっくりと呼吸し、かかとの重みで徐々にふくらはぎの筋肉が長くなるようにしましょう。このストレッチを毎日か一日置きに行って、膝屈筋がバランスを取り戻してハムストリングの緊張が解けるか確認しましょう。
7. 健康的な血流を取り戻す
健康的な筋肉というのは、強く柔軟であるだけでなく淀みのない血流によって栄養が行き渡っています。毎日ハムストリングスの上に何時間も座っていれば血流が減流可能性があります。座っている時間を減らしたり、定期的に休憩したり、様々な形でストレッチしたり、副交感神経に働きかけて筋肉の慢性的な緊張を解いたり、ハムストリングスの強化をしたり、こういったことはすべてそれぞれの方法で健康的な血流を促します。もうひとつの効果的であろう方法は筋膜リリースです。狙った圧をかけて筋肉と筋膜の緊張を解いて血流を促します。
試してみよう: テニスボールかゴムのマッサージ・ボールを2個用意します。体の前に幅の狭いV字になるよう両脚を伸ばして座りましょう(快適でなければ堅い座面の椅子に座ります)。マッサージ・ボールを、坐骨から3-5cm程度の腿の下にひとつずつ置きます。両脚をリラックスするか優しく左右に転がしましょう。それが快適であれば両手か椅子の背にもたれましょう。2回深い呼吸をしたらさらに3-5cm下へと動かして同じように行い、膝まで3ぶんの2あたらにくるまで続けましょう。ボールが脚の裏側を動くにつれ、体重をかけるようにやや前方にもたれて、ストレッチというよりもボールの上で両脚が重たく載るように集中しましょう。
ボールを取り除いて2-3分経ったら、仰向きに横たわってハムストリングスになにか変化を感じるかみてみましょう。痛みや炎症を感じたらやめるようにして、週に2-3回この練習を繰りかえしましょう。刺激によってハムストリングスが快適に感じるか観察します。
結論
ハムストリングスの柔軟性は、ヨガの練習と通常関わりがありますが、長期的なハムストリングスの健康への道というわけではありません。それらが周りの全ての筋肉とともにバランスよく働くことができるのは、大きな視野でハムストリングスを考える時だけなのです。