以前にもこのブログで紹介したのですが (あなたの脊柱、あなたのヨガ)、後屈の得意な人と苦手な人の違いって何?という記事です。
実は、私も数年前の陰ヨガのトレーニングで知ったのですが、後屈だけでなく、柔軟性と可動域についてはそれぞれの部位で同じことが言えます。
つまりは、見かけじゃなく、自分の感覚とそれに対する認識や感情のコントロールがヨガの本質ということですよね。バレリーナや体操選手のようにポーズする必要はないのです。
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あなたのヨガの先生はあんなに凄い美しいバックベンドができるのに、なぜあなた自身は始める前から行き詰まっているのか不思議に思ったことはありませんか?その答えの骨子は、あなたの骨の形かもしれません!腰椎にはそれぞれとても多くの差異があり、それにはあなたの腰椎の数(4個から6個の間)やあなたの生まれつきの後方曲線(脊柱前弯)の量(29度から69度の間)も含まれます。
あなたの後屈に大きな影響を持つもうひとつの要因は、あなたの棘突起です。
棘突起とは、脊椎をなぞると感じる椎骨のぼこぼこした先のことです。大きな棘突起の人もいれば、1、2個完全に無いという珍しい人もいるのです!(図1参照)
図1 形状や大きさ、棘突起の向きの違いを見てみましょう。 それぞれ、左が第一腰椎L1、右が第5腰椎L5です。 (Image courtesy of Paul Grilley.) |
棘突起の差異
腰椎の主な動きは、屈曲(前屈)と伸展(後屈)です。これら動きの限界は、多くの場合緊張(特に屈曲)と圧迫(特に伸展)です。緊張は、組織が引っ張られて抵抗し、筋肉や筋膜、靭帯が硬くなることで起こります。後屈では、棘突起がお互いに「キス」し合っているのが主な圧迫の原因です(椎間関節もまた小さな要因ではありますが)。ですから、棘突起の大きさや向きというのは、後屈ポーズで入れる深さに対しとても重要なのです。もし棘突起が短く、狭く、角度も水平に近いならそれぞれの間のスペースが広くなり、突起が長く、広く、下向きの人よりずっと伸展しやすくなります。
腰椎の長さと角度の平均を示したのが下の表1です。約3000人の男女の平均値です。突起の大きさは比較的差異が小さいですが、角度の差異が大きいのに注目してください。差異が小さいということは標準値からの変化が狭いことを表しますが、差異が大きいと言うことは平均から大きく離れた人がたくさんいるということです。角度の差が大きいということは、生まれつき後屈が得意な人と、そうでない人がいるということです。
腰椎 突起長 突起角度 角度差
表1 腰椎棘突起の長さと角度の平均値。 標準偏差(SD)1では全体の68%が含まれるが、標準偏差2では95%まで含まれる。 (全てmm単位) |
一般的に、女性の突起は男性よりも小さく角度が急な場合が多いが、これは単純に女性の方が平均的に体が小さいからでしょう。人種的背景の差異もあり、ヨーロッパ系の人は、アフリカ系の人よりも長く水平の棘突起を持っています。興味深いことに、年齢と共に曲突起は伸びる傾向があり、つまり歳を取ると後屈の能力を失うのですが、これは普通のことです。
棘突起の長さの差異から起こる興味深い錯覚があります。棘突起がより短いあるいはより長いと、腰の脊柱前弯が大きくあるいは小さく見えます。下の図3はそれを表しています。臨床医学者もヨガ指導者も、患者や生徒が脊柱前弯が不足ぎみだと思った際、それは実際には前弯が正常であるにも関わらず棘突起が正常よりも長いかもしれないということに気付かねばなりません。前弯の度合いについては見かけだけで判断してはならないことに注意しましょう。
図1の腰椎を持つ生徒が、図2のようにコブラ・ポーズをしているところを考えてみましょう。この二人が同じように後屈することはあり得ません!棘突起の間のスペースを見てください。ご覧の通り、右側の生徒の方が突起間の隙間が大きく、左の生徒の隙間はとても小さい。L4とL5の間には全く隙間がないほどです。彼の突起はすでにキスし合っており、この関節ではどんな伸展の場所も残されていません。しかし、彼の生まれつきの限界を変えることができないとか、注意と意思を持ってヨガの練習をすることができないということではありません。
もちろん、どんな時も他の組織での緊張が伸展を最大にする邪魔をする可能性はありますが、そうした制限を対処することにより、圧迫が起こるまで脊椎を伸展することは可能です。平均的に女性は男性よりも棘突起間のスペースが広いのですが、それが伸展の範囲を大きくさせ強い前弯を作ります。
図1の各突起の角度の違いを見てみましょう。表1では、各椎骨そして各個人で角度に大きな差異がみられます。標準偏差が大きい、つまり角度の違いがとても大きいです。これは、腰椎の角度がとても小さいか全く水平である人もいれば、大きな角度の人もいるということを意味します。一般的に、そして彼らの伸展の範囲は大きいにも関わらず、男性よりも女性の方が腰椎棘突起の角度は大きいのです。
また、図1の右の腰椎L2の棘突起の長さを見てみましょう。他のものよりも極端に短くなっています。解剖学の本のほとんどでは、脊柱の絵は全ての棘突起がほぼ同じ長さで描かれています。これは平均的な状況を表しているだけで、実際に誰かのものというわけではありません。ある研究では、女性の腰椎の棘突起の長さは 7.6 mm から 28.4 mm の幅があり、それはほぼ4倍もの差になります!男性では、8.9 mm から 33.5 mm となっています。他の全ての要因が同じでも、突起が短ければ長い時よりもより広い範囲の動きが可能になります。
どれくらい後屈できるかは、最初はあなたの組織がどれくらい張力抵抗しているかによります。例えば硬い腹筋や股関節屈筋は脊椎の伸展を制限します。しかし、体の前面の緊張を解いたあとは、やがて骨同士が圧迫し合うところで止まることになるでしょう。そこが、あなたの限界なのです。後屈の時どんな感覚がありますか?脊椎の圧迫?もしそうなら、すでに限界に達していると受け入れて喜んでそこに留まりましょう。
最後に
棘突起の長さの差異から起こる興味深い錯覚があります。棘突起がより短いあるいはより長いと、腰の脊柱前弯が大きくあるいは小さく見えます。下の図3はそれを表しています。臨床医学者もヨガ指導者も、患者や生徒が脊柱前弯が不足ぎみだと思った際、それは実際には前弯が正常であるにも関わらず棘突起が正常よりも長いかもしれないということに気付かねばなりません。前弯の度合いについては見かけだけで判断してはならないことに注意しましょう。
図3 見かけに騙されないで! 脊柱前弯の度合いは棘突起の長さで隠されている可能性があります。 |
(a)は、棘突起が長い腰椎、(b)は通常の長さ、(c)は通常より短いものです。これらの3つの場合、実際の前弯を示している脊椎の前のアーチは全く同じなのですが、脊椎の後ろの曲線はかなり違って見えます。(a)の前弯は小さく見えますが(c)の前弯はずっと大きく見えます。
*この文は Bernie Clarkの Your Spine, Your Yoga—Developing stability and mobility for your spine からの抜粋です。
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